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[ 短編集(分類不能) ] 御手洗潔の追憶 御手洗潔シリーズ |
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島田荘司 | 出版月: 2016年05月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 2件 |
新潮社 2016年05月 |
No.2 | 5点 | E-BANKER | 2017/11/29 21:09 |
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~「ちょっとヘルシンキへ行くので留守を頼む・・・」。そんな置き手紙を残し、御手洗潔は日本を去った。石岡和巳を横浜に残して。その後、彼は何を考え、どこで暮らし、どんな事件に遭遇していたのか。活躍の場を世界へと広げた御手洗の足跡をたどり、追憶の中の名探偵に触れる番外作品集~
2016年発表。 ①「御手洗潔、その時代の幻」=LA在住の“あの方”が何と御手洗にインタビュー。 ②「天使の名前」=この作品こそ本作の白眉。御手洗の父親が戦前・戦中に遭遇した数奇な運命。そして御手洗の出生の秘密とは? というわけで、そこまで神秘的にしなくても、っていう気はした。 ③「石岡先生の執筆メモから」=犬吠里美がけっこうウザイ。 ④「石岡氏への手紙」=レオナから石岡への手紙という形態。 ⑤「石岡先生、ロング・ロングインタビュー」=永遠の小市民キャラ・石岡和巳へのインタビュー。インタビュアは①と同様、アノ方。 ⑥「ジアルヴィ」=?? ⑦「ミタライ・カフェ」=北欧の街・ウプサラ市。スウェーデン第四の都市であり、ノーベル賞受賞者を四人も輩出したウプサラ大学が著名な美しい古都・・・。行ってみてぇー 以上7編。 「追憶のカシュガル」と同様、ノン・ミステリーの連作集であり、御手洗潔及び石岡和巳のファンブックである。 よって、ファンでない方はスルーしても全く問題なし。 ファンという方も特段手に取る必要はない。その程度の作品。 ただし、②だけは別。「追憶のカシュガル」でも戦時中が舞台となる作品(「戻り橋と彼岸花」)があったが、今回はスケールアップし、日米開戦を何とか阻止せんとする気鋭の外交官として御手洗の父親が初めて(?)登場することとなる。 既視感のあるプロットではあるけど、やはりそこは島田荘司。行間からは何と言えない圧というか、エネルギーが迸るようだった。 この熱量がある限り、例えどんな批判があろうとも、島田荘司は永遠に不滅だと思う。 (願わくは吉敷竹史も復活させてはくれまいか、と切に願う私・・・) |
No.1 | 5点 | Tetchy | 2016/10/23 22:03 |
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『御手洗潔と進々堂珈琲』同様、御手洗潔が登場する非ミステリの短編集。シリーズの中心人物御手洗潔と石岡和巳に直接読者からの質問をぶつける、もしくは近況を語らせるというメタフィクショナルな内容がほとんどで、唯一の例外が御手洗の父親直俊が外務省に勤めていた第二次大戦の頃の話が語られる「天使の名前」だ。
この作品も非ミステリではあるが、元々物語作家としても巧みな筆を振るっていた作者のこと、実に読ませる物語となっている。日本の敗戦を予想し、首脳陣へ戦線の拡大を留まらせようと粉骨砕身の努力を傾注したにもかかわらず、無視され、謂れなき誹りを受けて外務省を後にせざるを得なかった直俊の不運の道のりが描かれ、胸を打つ。特に島田が常々自作で披露していた日本の縦社会に根付く恫喝を伴う権威主義への嫌悪感がこの作品でも横溢しており、その犠牲者として直俊が設定されているのはなんとも哀しい限り。しかし戦中は報われなかった彼の最大の功績は御手洗潔をこの世に生み出したことであると声を大にして云ってあげたい。それが彼にとっての救いとなることだろう。 それ以外のファンサービスに徹した作品では読者からの質問に回答したり、未発表御手洗作品について触れられていたり、登場人物の近況が報告されたり、御手洗がウプサラ大学教授時代の彼の博識ぶりを彷彿とさせるエピソードがあったりと御手洗と石岡が実在するかのような語り口である。特に作者島田自身が石岡に読者への質問をぶつける作品では錯覚を覚えるくらいだった。しかし石岡君はどうしたものかねぇ。 今では日本を代表する名探偵シリーズにまで成長した御手洗潔が逆にそれほどまで支持されるようになったのは本書のように事件のみに挑む彼の姿以外の素顔を折に触れあらゆる媒体で作者が語ってきたことが要因であろう。一作家の一シリーズ探偵として登場した御手洗潔が今日これほどまでに人気があるのはこのような地道なファンサービスの賜物であろう。一瞬で事件の構造を看破する天才型の探偵という浮世離れした御手洗潔に血肉を与えることに見事に成功している。 しかし作者がすでに還暦を超えており、即ち御手洗もまた同じような世代であることを考えるとこれからのシリーズは御手洗の過去の活躍を紹介するような形になるのではないだろうか。そしてそれらの事件がまだまだ眠っていることが解っただけで本書は読む価値のある1冊なのかもしれない。 |