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[ 本格/新本格 ] 屋上の道化たち 御手洗潔シリーズ/改題『屋上』 |
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島田荘司 | 出版月: 2016年04月 | 平均: 5.80点 | 書評数: 10件 |
講談社 2016年04月 |
講談社 2018年02月 |
講談社 2019年02月 |
No.10 | 4点 | makomako | 2020/01/01 09:55 |
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高評価の方もおられるようですが、私はいまいちでしたね。
謎はすごい。こんなお話にどうやって合理的な結論を付けられるかと思うほど。結構長いお話を読んでいくと読者に挑戦のようなところがあるが、私にはさっぱりわからない。 御手洗が出てきてあっという間に真相を見破る。 その結果がよければ誠にすごいお話なのですが。なんとこれは、バカミスにもならないぐらいあほらしい真相でした。 これって「風が吹けば桶屋が儲かるより」さらにありそうもないでしょ。 物理的に絶対無理なだけでなく、ばかばかしいほどの偶然の積み重ね。 こんなトリックしか思いつかないのかねえ。大がかりなら何でもよいというものでもないと思うのです。 私は島田氏が江戸川乱歩賞に応募していたころから読んでいます。「占星術」(これは乱歩賞取れなかった)や「斜め屋敷」などを書いたころは斬新な発想と感心したのですが、歳をとるとこんなもんなのかなあ。同年代としてそして作者が登場した時からの読者として期待しているのですが。 |
No.9 | 5点 | E-BANKER | 2019/12/17 20:04 |
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現代を代表する名探偵(?)御手洗潔登場50作目となる本作。
“記念碑的”作品となるはずの本作だが、文庫版の帯には「『暗闇坂』や『龍臥亭』に劣らぬ強烈な謎」という魅力的な惹句。 これは期待せずにはいられない・・・はず。文庫化に当たってなぜか「屋上」というシンプルなタイトルへ変更。 単行本は2016年の発表。 ~自殺する理由がない男女が、つぎつぎと飛び降りる屋上がある。足元には植木鉢の森、周囲には目撃者の窓、頭上には朽ち果てた電飾看板。そして、どんなトリックもない。死んだ盆栽作家と悲劇の大女優の祟りか? 霊界への入口に名探偵・御手洗潔は向かう。人智を超えた謎には「読者への挑戦状」まで仕掛けられている!~ 文庫版417頁にある御手洗のふたつの台詞。 『はっはっはぁ、神のいたずらだぜ石岡君、いったいどうしてこんなことが起こったんだろう・・・』 『たぶんこいつは偶然だぜ石岡君。偶然の寄せ集め、奇跡のような偶然の方程式だ・・・』 これが今回の事件、そして謎のすべてを表現していると言っていい。 そう。“神のいたずら”というレベルの話なのだ。 読者は、神の視点を通じて関係者の動きや頭の中まで詳らかにされているからいいようなものの、実際にこんな事件が起こったら、迷宮入り間違いなしだろう。 「偶然の連続」ということなら、「北の夕鶴」だって「奇想、天を動かす」だって「暗闇坂」だって間違いなく「偶然の連続」だった。 でも、それらの作品には確実にカタストロフィがあった。そんな偶然を引き起こすような登場人物たちのドラマがあった。 翻って、本作にはそんな感覚はない。 確かに、御手洗は御手洗だった。海外へ渡ってしまって、もはや人間・御手洗潔というよりは神の如き頭脳を持つ、スーパーマンのような御手洗に違和感しか感じなかった私にとって、やはり馬車道の御手洗はある種の郷愁を覚えさせてくれた。 ただ、どうにも・・・うまく表現できないのだが、作者の熱量は感じなかったなぁー (巻末解説の乾くるみ氏は、ユーモアミステリの側面をさかんにアピールされてましたが・・・) 「荒唐無稽」でもいい、「有り得ないレベル」でもいい、とにかく読者を「これでもかっ!」とねじ伏せるくらいの熱量を持った作品が読みたいものだ。でもまあ、齢70歳を超えたレジェンドにそれを求めるのは酷なんだろうね。 何となく寂しい気がした。 (因みに、本当にあれだけの現金が銀行からなくなれば、すぐに気付かれるはずです) |
No.8 | 7点 | Tetchy | 2019/04/28 23:17 |
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御手洗シリーズ第50作目にしてもその奇想度が全く衰えない。今回は曰く付きの盆栽が置かれた屋上から突然人が飛び下りる不思議な事件を解決する。
いやはやよくもまあこんな話を思い付いたものだと感心した。先の山口氏のキッド・ピストルズの短編集の感想で私は偶然や予想外の出来事が起こることで不可能的状況が生まれるインプロビゼーションの妙が面白いと評したが、流石は巨匠島田氏、そんな山口氏の作品を遥かに凌駕する想像を超えた偶然をこれでもかとばかりに導入し、我々読者を上に書いた不可解事の世界へと誘うのだ。 しかも本書は久々の、実に久々の読者への挑戦状が付いており、今回はそこで作者自身(語り手の石岡自身?)が述べているように、事件の背景となったそれぞれの登場人物の背景について語られており、今までの挑戦状付き作品よりも推理する材料は与えられていると感じた。従って私もこの挑戦状を読み流さず、敢えて受けて立つことにした。 さてその真相は90%合っていたと云っていいだろう。豪腕島田ならではの、アクロバティックな事件の真相は本書でも健在。「疾走する死者」や『暗闇坂の人喰いの木』、吉敷物の『北の夕鶴2/3の殺人』の系譜となる物理トリックだ。 しかし本書では文庫版の表紙が全てを物語っている。 かなり意匠化されたその内容は事件の舞台となるU銀行と作中何度も出てくるグリコならぬプルコの大型看板の位置関係、そして放物線と数式が描かれているそれがこの真相を解く、実に有用なヒントになっている。 というよりほとんどネタバレかもしれないが、私は物語を読まないとその内容が理解できないこの表紙を実に素晴らしいと思った。読み進めるうちにこの表紙も絵解き物として理解が増してくるのだ。 また重箱の隅をつつくようで恐縮だが、以下の2点について触れておこう。 本書は短編集『御手洗潔のメロディ』所収の短編「SIVAD SELIM」の後の事件、つまり1991年の1月ごろの話となっている。しかしその時代だと、例えば田辺信一郎のエピソード“苦行者”の章で彼がY家電に入社し、労働省が「過労死ライン」を設定し、通達したとあるが、この通達は2001年12月に行われており、1991年の時点ではそれがなされていないため、時制が異なるのだ。 またプルコの看板を点検する際に御手洗が小鳥遊刑事にクレーンを呼ばせて道路を一部通行止めにするが、この場合は事前に警察に道路使用許可を申請して許可を得なければならないので、本書に書かれているようにはできないので注意が必要だ。 この原点回帰のような健筆ぶりは評価したいが、特定の企業をモデルにしたエピソードが正直事件に寄与しているとは云い難く、作品の怪異性、もしくは読者の興味を他へ逸らすためのミスリードのために盛り込まれているようにしか感じられないのは正直不満だ。 書かれている内容は決して好意的な物でないため、実在する企業に対してそれは失礼であろう。 また元々の題名『屋上の道化たち』から『屋上』と非常に素っ気ないタイトルに変更したのも気になるところだ。 島田流本格ミステリが味わえるのは大歓迎だが、上に書いたような些末なミスや創作作法にいささか不満が残った。特に上に書いたような時代考証の齟齬や公共機関への届け出の不備などは校閲の段階で指摘すべき点であろう。それは寧ろ出版社の務めだ。 島田氏が巨匠になり過ぎたために意見できないようになったのか。もしそうならばそれはそれで出版界も衰退していくだけだろう。本作品は単行本からノベルスを経て既に3度目の刊行でありながらこのようなミスが見られるのは何とも情けない限りだ。 |
No.7 | 7点 | 名探偵ジャパン | 2017/07/26 21:20 |
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「世界よ、これが島荘だ」
島荘がまだこういったものを書いてくれるということだけで嬉しい。 超常現象としか思えない不可解な謎。それに翻弄される市井の人々。愛され変人御手洗。炊飯器でケーキを作る石岡くん。そして、御手洗が暴き出す「あっと驚く」異様な結末。古き良き時代、と言っては違うかもしれませんが、懐かしい景色がそこにありました。 全くの無関係と思われた各登場人物の行動の全ては、「あのトリック」を引き起こすための周到な(作者としての)計画だった。「これをやるためだけに、お前たちは人生の艱難辛苦を乗り越えて(乗り越えられなかった人がほとんどだけど)きたのだ」本作のキャラクターたちに対しては、本当にお疲れ様、と言いたい。全ては、あの一瞬のために……。 ハードカバーで400ページ越えという分量ですが、ほぼ一気に読んでしまいました。引き込まれるように読む、というよりは、「もう少しだけいいでしょ?」と、中断しようとしたところを上手く誘導されて読んでしまった。というような変な感覚でした。これもベテランの手腕なのでしょう。 ところで、本作の舞台設定は1991年ですが、当時「イケメン」という言葉はあったでしょうかね? |
No.6 | 4点 | 蟷螂の斧 | 2017/04/01 14:57 |
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意図的に軽薄な登場人物にしているのは分かるのですが、そのおかげで物語自体も軽薄な感じとなってしまいました。著者に期待していた作風とは、かけ離れていて残念な結果。 |
No.5 | 5点 | 虫暮部 | 2016/09/30 11:48 |
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私は、風圧か電気による事故だと予想したんだけど……。
銀行強盗の夜の出来事だが、トイレのドアがこじ開けられる→外壁から屋上にダイヴ→サンタがジャンプし電線が切れる、という成り行きなのだから、“ドアを開けた瞬間に停電”ではない筈。秒単位の時間差であって同時だと認識しても現実としてはおかしくないが、小説の文章なのだから“瞬間”という言い方についてフォローすべきだと思う。 過剰に俗物的な登場人物の会話は、たとえ作者の意図だとしても、私には笑えなかった。 |
No.4 | 7点 | メルカトル | 2016/07/14 22:16 |
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さすが島田先生、群を抜くリーダビリティで一気に読ませます。
全編を覆うコミカルな雰囲気と連続墜落死という不可思議な謎の対比、それに並行するように寄り添うしがないサンタクロースのティッシュ配りの思いがけない展開、何かとついていない男の苦行。これらが混然一体となって一つの収束に向かうプロットは、島荘の本領を発揮していると私は思う。 ただ、トリックには確かに無理があるし、あまりに偶然が重なりすぎており、さすがに手放しで称賛するわけにはいかない点も多い。それも含めてのこの点数である。甘すぎるかもしれないが、往時の重厚な雰囲気の欠片も感じられないが、それでも本作にはどこか憎めないところがある気がしてならない。 作風はずいぶん変わってしまったが、御手洗だけはあの頃と変わらないのが嬉しいのである。 |
No.3 | 5点 | 人並由真 | 2016/07/01 03:41 |
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(ネタバレなし)
およそありえない連続怪死事件(自殺? 殺人? 事故死?)という魅力的な謎を提示。やがて種々の多様な伏線の果てに、バカミス的な大技で真相を豪快に割り切ってしまう流れは、なかなか好ましい(まぁ短編ネタのトリックを、むりやり長編化しているという批判もうなずけないでもないのだが)。 しかし一方、本作の主要登場人物と言えるメインゲストキャラ複数の叙述があまりにくどく、その割には該当の連中にほとんど感情移入の類もできない。そういう部分で、一冊の作品としての評価が下がってしまうのも正直なところ。 まぁ作者がそういった種類の作劇に込めた狙いは<最後にキーパーソンとして浮上してくるある劇中人物>にも、きっとメインキャラの彼らと似たようなシンドく生臭い事情があったんですよ、と暗に感じさせるためなのだとは思うんだけれど。 ところで本書は、タイトルロールにある「道化」のキーワードがあまり意味を持ってないよね? なんか計算違いがあったんでしょうか。 新人か、まだ新鋭と呼べる領域の作家がこれを書いていたのなら、評価はもう1点上がるんだけれど、ベテランなら、まぁ良くも悪くも期待の範疇・・・ということでこの評点。 |
No.2 | 8点 | Campus | 2016/04/28 10:27 |
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「まったく自殺する気がないのに、その銀行ビルの屋上に上がった男女は次々と飛びおりて、死んでしまう。いったい、なぜ? 「屋上の呪い」をめぐる、あまりにも不可思議な謎を解き明かせるのは、名探偵・御手洗潔しかいない! 「読者への挑戦」も組み込まれた、御手洗潔シリーズ50作目にあたる書き下ろし傑作長編! 強烈な謎と鮮烈な解決! 本格ミステリーの醍醐味、ここにあり!」(Amazonの作品紹介欄より)
うっわあ、驚いた。 滅茶苦茶ストレートな御手洗潔シリーズの傑作です。 たった一つのネタで全ての謎をねじ伏せる様は、もしかしたら『暗闇坂』……いや、『北の夕鶴』あたりの初期作品以来かも。 ぶっちゃけた話、そのネタ自体は(島田ファンにとっては)分かりやすいとは思うのですが、まさかそれでここまでの物語と謎を作り出すとは。作中で御手洗が美しい数式と述べていますが、まさにそれで、xに特定の数を代入することで全てが解き明かされる方程式みたいな趣があります。 まさしく剛腕。ぶっ飛びました。 もうちょっと具体的に良かった点を並べてみます。 ・謎が強烈 粗筋に書いてある通り、自殺なんてする筈がない銀行員たちが屋上に上ってぴょんぴょん飛び降りて死んでいくのがメインの謎。どうです?これ、読みたくなりません? 「はは、僕が自殺なんてするわけ…」→ドーン!の連続はただただ強烈。 これ以外にも、死んでいった銀行員たちの中での隠し事や宇宙人、ひいては近所の店が妙に景気が良いなど、関係ないとしか思えない謎がぽんぽん出てきます ・で、その謎が全て一つのネタで解明される 上で述べた通り、ここが素晴らしい。 島田荘司フォロワーというと谺○二や小島○樹など、みみっちいショボイ謎を人が飛んだりする程度のショボイトリックで解明してドヤ顔する系の連中が多いわけですが、はっきりいって、そいつらとは格が違います。 島田荘司は人を飛ばすから剛腕なんじゃないんですよ。全ての謎を一つのトリックで解き明かす手腕が剛腕なんですよ。 やはり神。 ・『嘘でもいいから~』以来のコミカルさ 謎解きもの以外の部分でも結構楽しませてくれます。 まず、全体を通して非常にコミカル。 道化という単語は多分、このあたりから来るのかなあ。第一章の飛び降りの連続とか大爆笑です。 ・御手洗潔が御手洗潔してる! で、更に素晴らしいのがこれ。 『ネジ式』とか『魔神』とかのミタライではなく、「舞踏病」とか「疾走する死者」あたりの御手洗をしてくれています。もう、ここだけでファンとしては感涙。 久々にかっ飛ばしてくれた快作でした。 もうちょっと文章を絞って300頁前後にしてくれれば引き締まったのになという感じがしなくもないくらいかな。不満を言いたいのは。 でも『幻肢』みたいな冗長さはないので、そこまで気になったというわけでもないのですが。 本格ファンは必読でしょう |
No.1 | 6点 | Fareast | 2016/04/27 18:51 |
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長編というよりは短編の御手洗物を思わせる展開。舞踏病事件の頃の雰囲気を感じました。
登場人物がおかしな人ばかり。 肩の力を抜いて楽しむのがいいのかも。 |