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[ 本格/新本格 ]
奇想、天を動かす
吉敷竹史シリーズ
島田荘司 出版月: 1989年09月 平均: 7.88点 書評数: 67件

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光文社
1989年09月

光文社
1993年03月

南雲堂
2021年01月

No.67 8点 みりん 2023/08/24 17:55
吉敷竹史シリーズ第10弾
【ネタバレあります】


今まで密室殺人、死者の亡霊、人間消失、列車消失と数々の不可能状況を演出してきた作者はシリーズ10作目で「もうこれ流石にオカルトに頼らないと解決不可能だろ」ってレベルの謎を提示してきます。
特に"トイレからの人間消失"の不可能っぷりには蟻の這い出る隙間もありません。あるけど。

しかし、ここまでされるとハードルが上がりすぎて、この世の法則を捻じ曲げてしまう程のトリックを期待してしまいました(タイトル的にもね)。解決編は驚く部分もありましたが、やはり即席の殺人なのもあって少々チープな真相も… あらゆる不可能状況は連動していて、一つの真相で全てが解けるタイプの方が私は好みなんだなぁとふと思いました。そういった観点では『北の夕鶴』の方が好きかな〜とか…
社会派との兼ね合いも難しいところだとは思いますので贅沢な要望ですが(笑)

遊郭の情景描写や社会的背景の蘊蓄、『冤罪』や『日本人の罪』をテーマにした社会派要素、最後の吉敷竹史の信念など島荘ベストに上げる方がいるのも不思議ではありません。しかし、これに満点をつけるのは自分自信を騙しているような気がするのでこの点数で

No.66 5点 じきる 2021/11/09 01:20
謎はとてつもなく魅力的なんですけど、その解決は拍子抜けするものやネタが読めてしまうものが多かったです。
期待が大きかった分、少し残念な印象…。

No.65 5点 レッドキング 2018/05/29 18:29
不思議怪奇現象とそのタネ明かしに、胡散臭い「浪花節」が肉付けしてある。車内便所からの消失トリックはなかなかだが、お話自体がチト頂けない。乱歩「踊る一寸法師」オマージュと社会派プレゼンテーション両方を包括しようとする、島荘の自己顕示欲がミエミエであざとく・・

No.64 9点 パメル 2017/03/20 01:15
消費税12円を請求された事に腹を立てナイフで殺人を犯したとされた老人
この裏には何かあると老人の過去を洗い出し数十年前の奇怪な殺人事件に辿り着く
・走行中の列車のトイレでピエロが拳銃自殺し30秒後に焼失
・列車飛び込み自殺した死体が歩き出す
・赤い目をした巨人による列車転覆事故
このような怪奇現象的なトリック(トリックでは無いものもあるが)も良く出来ていると思うしこれらの現象を一つ一つ解明しつつ犯人は変わりようが無い中動機の真相を追及していく吉敷刑事のカッコ良さが堪能出来る
また「冤罪」という問題も考えさせられる作品

No.63 6点 nukkam 2016/06/03 17:45
(ネタバレなしです) 1989年発表の吉敷竹史シリーズ第10作です。社会派推理小説要素の強いこのシリーズは王道的な本格派推理小説の御手洗潔シリーズがあまり売れなかった時代の打開策的に書かれたと理解しています。しかし新本格派の全盛時代になっても作者は本格派ばかり書かれることは決して好ましいことではないと思っていたうようで(心境複雑ですね)、このシリーズは打ち切られずに精力的に書き続けられました。本書はいきなり犯人が現行犯で逮捕され、その後は犯人や被害者の過去を調べていく地味な展開で、ここは狭義の(犯人当て)本格派好きの私には少々辛かったですが後半になると様相が一変、首なし死体が歩いたり(結構恐いよ~)、走行中の列車の車両が突然空中に浮かんだり、天を衝くような巨人が目撃されたりと、派手な謎のオンパレードが謎解き好き読者にはたまりません。社会派と本格派のジャンルミックス型として高く評価されているのも納得です。

No.62 7点 風桜青紫 2016/03/01 01:34
同じトラベル・ミステリ作家でも、西村京太郎のほうが社会派ミステリ作家としてはるかに優れているな、と思わされた。「本格と社会派との融合」だなんてとんでもない。結局のところ、島田荘司のやっていることは、社会問題を安直にエンターテイメントと結びつけて「水戸黄門」をやっているだけ。大西巨人の言う「俗情との結託」をここまで地でいってしまうとは涙が出てくる。

「悪」として日本人を設定し、「被害者」として外国人を設定し、「正義の味方」として主人公を設定する。それだけの発想から生まれた単なるヒーロー小説に社会派のリアリティもへったくれもあるわけがない。単なる不幸な外国人の人生を追ったホワイダニットものだったんなら、まだ良かったんだが、「我々は謝っても謝りきれませんなあ」だとか「俺たちは負の面をたくさん持ってるんだ〜」とかキャラクターに言わせているあたりでドン引きしてしまった。こんなもん、「自虐している俺はなんて善人なんだ」みたいな無自覚ナルシストじゃない限り、萎えること請け合いである。売れたいがためにこんなもんを書いたのかは知らんが、島田荘司は社会派を書くなら、森村誠一みたいなゴミじゃなくて、『天使の傷痕』の個人と社会の対立にもっと学ぶべきだったというべきだろう。

しかし困ったことに、この作品、本格ミステリとしては抜群に面白い。事件のスケールの大きさもさることながら、消失するピエロ、空飛ぶ列車、白い巨人と、とんでもなく魅力的な謎を提示してきたうえで、それを本格的に絶妙に処理してしまう。老人の気味悪い&ミステリアスな空気も話の掴みとしては十分で、作品としては、全体的にかなりバランスがいい。それだけに前述の薄っぺらい社会派成分が残念だった。

本格ミステリとしては8点だが、社会派ミステリとしては3点がつけばいいほうだろう。

No.61 9点 ロマン 2015/10/29 18:55
踊るピエロ、死体の消失、動く死体、白い巨人とどうやって収拾つけるんだという奇妙な謎のオンパレード。やっぱ島田作品はこうでないと。最後には多少力技もあるけど謎は綺麗に解き明かされる。「斜め屋敷の犯罪」「死者が飲む水」の牛越刑事、「火刑都市」の中村刑事もサポート役として登場するので、過去の島田作品を読んでる人には嬉しい内容となっている。作品のテーマとして戦後の日本が抱える様々な問題提起にもなっており、考えさせられる作品。本格と社会派が見事に融合した傑作。

No.60 10点 斎藤警部 2015/08/27 19:57
読了直後「こりゃあ満点作だ!」と大いに感服したものであります。 私にとって島田荘司おじさんが特別の存在であるのはこの作品に出遭っていればこそ、かも。

冒頭より何やら社会の大きな問題を取り上げているようなオーラが漂うのですが、いったい「社会の何」が問題になっているのか相当読み進まないと見えて来ない、ってのがミソかも。この巧妙な作りが実に刺激的に知的興味を誘い、やがて明かされる「社会的問題」への関心もひとしお深まるというものです。

読了後、自然と「こりゃ社会派と新本格の奇蹟の完璧な融合だ!」との思いが湧きました。いや融合が完璧かどうかは分かりませんけど、完璧に面白いミステリ小説には間違いないと私には思えます。 何しろあの、規模の大小取り混ぜたバカトリックの数々(?)がごく自然な美しいものとして受け入れられたんですもの、大したマジックを掛けられたものです。 「手品が好き」の一言で全てをアリにする(全てを引っくり返すのではなく!)という大叙述トリック(?)にもやられました。   

それにしても、主人公の気の遠くなるような悲惨な過去、哀れな境遇は本当に強く記憶に留まりますね。

No.59 7点 ボナンザ 2014/04/08 00:32
トリックの斬新さと社会派を思わせるテーマを融合させた傑作。

No.58 9点 take5 2013/10/27 07:50
久しぶりに自分の内省や血肉になる作品でした。
*文庫めくってすぐ北海道路線図、鉄道ミステリー?やや不安…↓
*城東の京成沿線描写に親近感、↑
*前半で社会派の正統派、気概を感じ↑
*地道な捜査は鮎川氏作品がよぎりました
*最後は清張氏に並ぶ名作と感じました

日本人的気質インシュラリズムは、例えば戦争の問題に対して、議論の余地があるとか歴史的見解に相違があるとか言って逃げる人たちがまず見つめなくてはいけない視点ではないでしょうか。
自分事とするために冒頭に内省と書きました。

No.57 8点 メルカトル 2013/06/25 22:36
再読です。
吉敷竹史シリーズの最高傑作が『北の夕鶴2/3の殺人』だとすれば、本作はさしずめ集大成と言ったところか。
とにかく、不可思議、不可能犯罪を無理はあるにしても合理的に処理する豪腕は、さすがに島荘である。
例えば死体の周りにぐるりと火の付いたろうそくが並んでいる理由などは、常人にはちょっと考え付かないものではないだろうか。
ただ、犯人の存在感がやや薄く感じられたのは少々残念な気もする、もっとこの一見頭の弱そうに見える老人をクローズアップしても良かったと思うが、いかがなものか。
まあしかし、あれこれ文句をつけても、本作は島田氏の代表作の一つであるのは間違いないだろう。

No.56 9点 itokin 2012/01/24 15:41
最初から物語に引きずり込まれ、荒唐無稽と思わせない展開、トリックの連続にはまいりました。底に潜む歴史的な出来事も話の厚みを持たせ最後に感動を覚えました。やはりこれは島田さんの代表作でしょう。

No.55 7点 いいちこ 2011/12/25 11:07
本格と社会派の融合的作品。
本格部分は剛腕島田の真骨頂とも言うべき物理系大技トリック炸裂。
毎度毎度こんなことが思いつく筆者に感心しきりだが、多少の無理を感じなくもない。
一方、社会派部分は主張の当否はともかく、運命に翻弄された主人公の数奇な人生に感慨深く読ませるものがあった

No.54 9点 蟷螂の斧 2011/11/28 17:35
松本清張の社会派小説の代表作にあるような「動機」が「生い立ち」にかかわるようであったとすれば、かなり重い小説になってしまったと思います。その点、本作品は違っていたので、トリックに重点を置き読むことができました。といっても背景にあるものには考えさせられてしまいましたが・・・。

No.53 7点 isurrender 2011/11/10 21:54
メッセージ性の強い社会派でありながら、トリックはまさに島田荘司っていう大掛かりなトリック
島田荘司にかかれば列車ミステリーもここまで本格色が強くなるのかと感心してしまう

No.52 7点 ムラ 2011/10/11 19:04
消費税なんてつまらない動機でなぜ殺人をと思わせる入りがよくてどんどん飲み込まれていった。
社会派としても引き込まれたし、トリックの持って行き方も上手かった。
吉敷の熱さも嫌味がなくていい。
最後に気になったのは、老人がなぜそこまでしてこの犯罪を考えたってところだったが、「奇術が好きだった」の一言でなぜか納得してしまった。
そして相変わらずの金田一コメントで笑ってしまった。(ただこっちは事前に許可は貰ってるそうですね。)

No.51 8点 2011/01/04 12:30
ストーリー、トリックとも最高ですが、歴史問題をからめると違和感があります。
その分、減点ですね。

No.50 7点 spam-musubi 2010/07/19 10:23
一歩間違えば荒唐無稽とも思えるこの壮大さ。
この作者にしか描きえない作品です。吉敷シリーズは比較的
地味目な作品が多いですが、これは作者らしさが存分に出ていて
実に楽しめます。

列車をつまみあげる大入道、歩き出す首無し死体、消えるピエロ・・・
これをファンタジー方向に向かわず、徹頭徹尾理屈で解決し切るあたり、
弟子の綾辻氏あたりと比べ、役者の違いを感じてしますところ。

ただ、歴史的に事実関係について明確になっていないはずの朝鮮人連行問題等に
ついて、やや入れ込み過剰気味なのが残念。

No.49 8点 seiryuu 2010/07/16 17:45
絶対無理と思えるのがあるけど サーカス&奇想でまとめて
タイトルでごり押ししなのでこれもアリかなと思ってしまう。
犯人の生き様だけでも深い。

No.48 9点 STAR 2010/02/18 15:51
社会派と本格両方を書いていてよかったです。トリックも壮大ですごいと思います!


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