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このミステリーがすごい!2015年版
「このミステリーがすごい!」編集部
雑誌、年間ベスト、定期刊行物 出版月: 2014年12月 平均: 6.00点 書評数: 3件

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宝島社
2014年12月

No.3 7点 Tetchy 2015/03/04 23:15
国内ランキングを見ると今年は短編集が強かったという印象だ。1位の『満願』、2位の『さよなら神様』、4位の『小さな異邦人』と上位5作品の内、4作品が短編集という特異なランキングとなっている。さらには惜しまれながらも逝去した連城三紀彦氏の作品が2作もランクインし、その他月村了衛氏、黒川博之氏が同じく2作ランクインしている。また唯一長編で上位5位に食い込んだのは何と今年の乱歩賞受賞作『闇に香る嘘』というのも大きなトピックだろう。この新人の2作目が最近刊行されたが、この評価も気になるところだ。後は純文学の垣根を超えて最近はランキングの常連となった吉田修一氏が『怒り』が入り、『ロスト・ケア』でデビュー作がランクインした葉真中顕氏も2作目が11位にランクインし、実力がフロックでないことを証明した。久々にミステリど真ん中の作品『獏の檻』を出した道尾秀介氏も11位とまずまずといったところか。
逆にかつてはランキングの常連だった真保裕一氏がランキング外でも掠りもしなかったことが残念。また三津田信三氏も刀城言耶シリーズが今年も刊行されなかったのも懸念される。

さて海外のランキングは『忘れられた花園』でランクインしたケイト・モートンが『秘密』で2位にランクインし、破格の新人と評されたロジャー・ホッブズの『ゴーストマン 時限紙幣』が3位、続く4,5位も新人テリー・ヘイズの『ピルグリム』、ダニエル・フリードマンの『もう年はとれない』と新人尽くしのランキングとなった。新人に注目すると6位以下も『ハリー・クバート事件』のジョエル・ディケールを筆頭に4作がランクインと紹介される作家の質が高まっている感が強い。常連に注目すると、最近は未訳作品が紹介されるとランクインが定着しているヘレン・マクロイにアンソニー・バークリー、現役作家ではミネット・ウォルターズ、マーク・グリーニー、ヘニング・マンケル、マイクル・コナリーらが順当に入った。
残念なのは今年こそは20位圏内かと思われたジョー・ヒルが圏外だったことと、殺し屋ケリーシリーズが復活したブロックが圏外にも入らなかったこと。そして年々ランキングを下げていたディーヴァーがとうとうランク外になったことも残念だった。

そして昨年の『幻の名作ベスト10』に引き続いて国内短編のオールタイム・ベスト選出は嬉しい企画だった。しかも前回では不満だった選者の選評も掲載されており、ランキング以外の選出作も垣間見れて大変満足。そしてこのオールタイムベストでは連城三紀彦氏の「戻り川心中」がトップに選出されており、他にも20位内に3作がランクインしているという強さを見せた。今年のランキングでも没後ながらも2作もランクインしている連城氏のクオリティの高さを思い知らされた。

以前からウェブ上の感想でも不満として挙げられていた『このミス』大賞受賞者による描き下ろし短編も最近評価の高まっている柚月裕子氏の短編のみ(読んでませんが)になり、さらには昨年好評だった『幻の名作ベスト10』に続いての国内短編オールタイムベスト選出とようやく往年の『このミス』が還ってきた感がある。紙質は相変わらず悪いが、単にその年のミステリ傾向を記録するためだけに存在していたかのような中身がスカスカの頃に比べるとミステリ好きの興趣をそそる内容になりつつあるのは喜ばしい。

No.2 5点 kanamori 2014/12/12 18:57
毎年恒例の「このミス」を購読。例年とはちがって今年は真面目に各項目毎にコメントしようかなと思いますw

まずはランキング。国内1位は昨年に続きノンシリーズ短編集で、他誌と合わせて3冠となった。あとひとつ、「本ミス」か裏ドラ(本格ミステリー・ワールドとか)が乗っていれば文字どうり”満願”だったのに、惜しいw 
あとは連城三紀彦の2冊トップ10入りや、従来「このミス」と相性が悪かった乱歩賞作品の上位ランクインが目を引いた。
海外1位はアレw ですが、版元による新しいキャッチコピー”海外ミステリ・ランキング完全制覇、史上初の6冠達成!”は、誤解をあたえそうな内容で思わず苦笑してしまった。原書房が怒りそう。
内外とも上位陣は他誌のランキングと似ており、このミスの独自性が全く見えないのは昨年と同様です。

今年の目玉企画は、”国内短編ミステリー・オールタイム・ベスト10”投票ですが、同様の企画が半年前に個人Twitter上で実施されており、二番煎じといわれても仕方がない。しかもTwitter投票のほうが投票人数など遥かに規模が大きく、ベスト100まで作品に関するコメントが付く充実ぶりだったので、比べるとどうしても見劣りがする。

次に”私の隠し玉”コーナー。過去「このミス」にランクインした作家を対象としているらしいが、興味を持てる作家はごくわずかしかいないので読む気にならない。最近ヒット曲がないのに昔の持ち歌で登場する一昔前の紅白歌合戦を連想させるw

さて、もはや唯一の楽しみは”我が社の隠し玉”コーナー。
個人的注目作品は〈クラシック部門〉では、まずパトQの本邦初訳2作品。ダルース夫妻シリーズの最後の未訳作「死への疾走(仮)」(論創社)もさることながら、ジョナサン・スタッジ名義のウェストレイク医師シリーズ第1作(原書房)が楽しみ。
クリスチアナ・ブランド「猫とねずみ」の続編(東京創元社)は、前作で端役だったチャッキー警部による本格的謎解きモノらしい。
ロジャー・スカーレットは、「白魔」(バック・ベイの殺人)の完訳版(論創社)で、これで5作全部邦訳が揃う。
あと、DMディヴァインの初訳作品、キールグッド&マーヴェル「放送局の殺人(仮)」なども期待したい。

一方〈現代作家部門〉では、巨匠カーの孫娘シェリー・ディクスン・カーのデビュー作(扶桑社)が遂に邦訳される。タイムスリップ&切り裂きジャックを扱ったヴィクトリア朝ミステリらしいが、出来栄えはともかく話題になるのは間違いないだろう。
今年の「このミス」に上位ランクインした「その女アレックス」(ヴェルーヴェン警部シリーズ)と「もう年はとれない」のシリーズ作品が早くも出るのも嬉しい。そのほか、コナリー、ディーヴァーの常連組に、トム・ロブ・スミスの新作も楽しみだ。

No.1 6点 mini 2014/12/12 10:00
ミステリー小説ファンにとって暮近くの風物詩はクリスマスツリーじゃなくてこのミスだという人も居るかも、いやいね~か(微笑)
今年はランキング常連の米澤穂信氏が意外にも1位は初めてということだ、海外では例年の接戦とは違いルメートルというフランス作家の作品が2位以下に差を付けての圧勝、当サイトでも既にkanamoriさんが御書評済ですね、私も機会が有ったら読んでみたいなぁ
海外では文春と創元の2強時代に突入の感がある、文春は1位と3位にランク、これで文春は2連覇だ
しかも昨年文春が獲った1位はS・キングだから悪く言えば大物作家の名前頼みな感が有ったが、今年は新鋭作家で獲得なので正真正銘に1位って感じがする
1位こそ文春に奪われたが質と量の両面で見るなら創元も負けていない、何たってベスト10中に6冊を送り込み、11位以下でも健闘している、内容もクラシックから新鋭作家まで幅広く、一時期の早川ポケミスを凌ぐ勢いだ

さて昨年版では面白い企画が有って内容もまぁまぁだったので久々に高目の採点をした
今年も特別企画として”歴代短編ランキング(国内編)”が掲載された、集計結果は新し目の短編には厳しい結果だったが、本家”今年のベスト6”投票のついでみたいだった昨年の投票方式とは違い、今年のは各投票者の”短編ベスト5”が一覧表の形で掲載され見易くなっている
海外編もやるか検討中との事だが、国内編の結果を見るに1位が「赤髪連盟」とかの結果になるのだったら、わざわざこのミスでやる意義という点でどうだろう‥

今年は昨年よりも点数を下げたのは企画の問題だけじゃなくて、何となくだが恒例の”我が社の隠し玉”の文面に熱意が感じられなかったのが理由
何だかルーティンワーク的な刊行予告宣伝文っぽくなっちゃってさ
まぁ私の恒例行事なんで、一応”我が社の隠し玉”にコメント、例年通りで順序は掲載順のまま(だから毎年順番が変わる、そう言えばヴィレジブックス消えた)

小学館:
昨年からベリンダ・バウアー推してるなぁ、どんな作家なんだろ

論創社:
今年は良い意味でジャンル的にもかなりヴァラエティに富んでたが来年は本格派が中心なようだ、だから駄目だとは言わないが、一部の特殊な本格マニア受けを狙ったようなものばかりにならない事を願う
新年早々はディドロにシムノンとフランス作家で幕開け、スカーレット「白魔」の完訳と、クェンティンのダルース夫妻シリーズの残ってた未訳作、いかにもその手のマニアの要望に応えましたってのもあるが、ミラーも予定しているんだな、案外と論創がミラー手掛けるのって初めてなんだな

新潮社:
目玉はあの「チャイルド44」のトム・ロブ・スミスの新作、デミドフ3部作とは別ものらしい
他は昨年亡くなったクランシーの遺作に、グリシャム、アーチャー、ランキンと大物揃い

国書刊行会:
ここ数年、ミステリー関係の話題に乏しかった国書が久々の復活
イタリアの歴史ミステリーが目玉のようだが、気になるのは”ホームズの姉妹たち”という企画、「二厘馬車の秘密」のファーガス・ヒュームに少女探偵ものがあったとは
ただ個人短編集なのかアンソロジーなのかはっきり書いて欲しかった
それとは別の”あっと驚く企画”ってのも気になる、来年の注目出版社は国書刊行会だ

扶桑社:
S・ハンターにカッスラーとこの出版社らしいラインナップ
本格マニアが気になるのはカーの孫娘シェリー・ディクスン・カー
時間遡行の歴史ミステリーって祖父譲りやん、ただし本格派なのかは不明だ、案外とサスペンスものだったりして

東京創元社:
今年は絶好調だった創元だが、来年も新顔・ベテラン取り揃えている、アン・クリーヴスはシェトランド四重奏以外の作ってことかな
ユニークなところではC・ブランド「猫とねずみ」の続編、コックリル以外のもう1人のシリーズ主役の再登場作で原著は別名義で出版されていた

原書房:
順調に復活を果たしたヴィンテージ・ミステリ、森英俊氏監修だけにそのマニアックなセレクトには驚き
最初はバークリーやパーマーと無難な名前から始まったが、今年出たブルース・グレイムに続いて来年はヴァル・ギールグッド、ヴァージル・マーカムとマイナー本格派マニア垂涎だ
トリックマニアにはクェンティンのジョナサン・スタッグ名義のやつとか待望だろうが、私が気になるのはクレイグ・ライス
ライスにはストリッパーのジプシー・ローズ・リーの代作作品が有るが、実はもう1つの代作がハリウッド俳優ジョージ・サンダース名義のものだ

早川書房:
ここ数年安定しているが、話題性だとあの「ミレニアム」の続編
スティーグ・ラーソンは先月亡くなったので、書いたのはもちろんラーソンとは別の作家

講談社:
ハリポタのJ・K・ローリングのミステリー第2弾ともう1つが謎の作品集
”総勢26人の人気作家が順番に物語を展開”との事だが、この宣伝文句だけでは内容不明、単純にアンソロジーなのか、オムニバス連作短編集なのか、リレー長編なのかはっきりさせてくれ
秋は恒例のコナリーのリンカーン弁護士もの

文藝春秋:
勢いに乗る文春が来年もさらに加速、キングのあの「シャイニング」の続編が登場
秋は恒例のディーヴァー、ライムものとノンシリーズの2本立てらしい、時期不明だがエルロイの新4部作も控える
しかし今年のランキング結果からして最大の目玉はこれだろう
今年のランキング1位ルメートル「その女アレックス」は実はシリーズ第2作目なのだ、その第1作目が予定されている

集英社:
北欧ブームもすっかり定着し、他社も英米以外の国際化をあまり前面に立てて宣伝しなくなった昨今、集英社のワールドワイドを強調した宣伝はちょっと遅れてる感はあるが
でも北欧以外にも目を向けているらしいのでまぁいいか
集英社はミステリー分野でもまぁまぁ貢献はしていて悪くは無い出版社なのだがマニアックでもいいからもう1つ個性が欲しい

角川書店:
今年もトリを逃したが、毎年狙っているんだろうか(微笑)
”過去に『このミス』1位に輝いた作品が2本映画化され、それぞれの続編が角川文庫より刊行予定”とある、さてどれだろう、何となく予測は出来そうだが

光文社:
トリ狙ったな(笑)
古典新訳文庫はもちろんミステリー専門叢書じゃない一般文芸文庫だが良い意味で何でも有り(さらに笑)、時々ミステリー分野のも出してくるが、来年はウィリアム・フォークナー
ついでだからさ、フォークナー出すんだったら”クイーンの定員”にも選ばれている「騎士の陥穽」を新訳版で御願いしたい
古本持ってるけどボロいんでねえ

さて各出版社全体にだが、何となく肝心なところを隠したままの歯切れの悪さを今年は感じた、だから”隠し玉”なんだと言われればそれまでだが、何か理由が‥
そうか一昨日10日に”特定秘密保護法”が施行されたんだ
あちゃ~、そういうオチかぁ(冷汗)


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