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ミステリマガジン1984年3月号
1983年翻訳ミステリ回顧。特集:罠をしかけろ!
雑誌、年間ベスト、定期刊行物 出版月: 不明 平均: 5.00点 書評数: 1件

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No.1 5点 弾十六 2020/04/26 09:44
HAYAKAWA’S MYSTERY MAGAZINE 1984年3月号 <335>
1983年翻訳ミステリ回顧。特集は「罠をしかけろ!」と題して騙し小説を4篇。234ページ。定価580円。
表紙イラストは岡本 信次郎、表紙・扉・目次構成は島津 義晴と野々村 晴男。表紙にはMECHANICALの文字とゼンマイのネジが毎号描かれているようだ。今号のメインは女流飛行士、飛行機の後部が見えている。裏表紙の広告は大塚製薬 カロリーメイトとポカリスエット。
ダイアン・ジョンスンの『ハメット伝』は連載2回目だが、私が一番興味がある作家以前を書いた第2〜3章(ほぼ全文らしい)が載ってるので、下の方でトリビアも含め詳しく検討。他は都筑『出来るまで』と瀬戸川『睡魔/名作篇』が見逃せない感じ。田村隆一対談にはカンシンシロー先生(乾 信一郎、昔「信四郎」というペンネームも使ってたことから)登場、新青年時代の興味深い話。(詳細は下で)
雑誌全体の暫定評価は5点として、収録短篇を読んだら追記してゆきます。
小説は11篇。以下、初出はFictionMags Index調べ。カッコ付き数字は雑誌収録順。
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⑴ Last Year's Murder by Edward D. Hoch (初出HMM 1984-3書き下ろし)「去年の殺人」エドワード・D・ホック 木村 二郎 訳(挿絵 深井 国)
国さんのイラストが素晴らしい。短篇の価値五割増し。
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⑵ Hurry, Hurry, Hurry! by Paul Gallico (初出Everywoman’s Magazine 1957-1 as “The Faker”)「急げや急げ」ポール・ギャリコ 松下 祥子 訳(挿絵 天野 喜孝)
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⑶ Emergency Exit by Michael Gilbert (初出Argosy(UK) 1968-9 as “Mr. Calder Acquires a Dog” 挿絵David Nockels)「非常出口」 マイケル・ギルバート 汀 一弘 訳(挿絵 野中 昇)
コールダー&ベーレンズ(Daniel John Calder & Samuel Behrens)もの。なお初出のArgosyは同名の米国雑誌とは関係ないらしい。ヘンリー・ウッド夫人のThe Argosy誌(1865-1901)とも繋がりはない。
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⑷ One Down by Carroll Mayers (初出AHMM 1981-4-1)「ワン・ラウンド終了」キャロル・メイヤーズ 嵯峨 静枝 訳(挿絵 細田 雅亮)
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⑸ A Deal in Overcoats by Gerald Kersh (初出Playboy 1960-12 as “Oalámaóa”)「厚塗りの名画」 ジェラルド・カーシュ 山本 やよい 訳(挿絵 楢 喜八)
詐欺師カーミジン(Karmesin)もの。
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⑹ The Iron Collar by Frank Sisk (初出AHMM 1965-6)「鉄のカラー」フランク・シスク 秋津 知子 訳(挿絵 佐治 嘉隆)
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⑺ Hérédité chargée par Frédéric Dard (初出Ellery Queen Mystère Magazine[仏EQMM]1958-2)「悪い遺伝」 フレデリック・ダール 長島 良三 訳(挿絵 じょあな・じょい)
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⑻ La main heureuse par Louis C. Thomas (初出不明)「つき」ルイ・C・トーマ 長島 良三 訳(挿絵 細田 雅亮)
Louis C. Thomas(1921-2003)の長篇デビューは1953年のJour des morts(Thomas Cervion名義)。
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⑼ Dream of a Murder by C. B. Gilford (初出AHMM 1965-5)「殺人の夢」 C・B・ギルフォード 坂口 玲子 訳(挿絵 畑農 照雄)
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⑽ A Burning Issue by Susan Dunlap (初出AHMM 1981-4-1)「後のまつり」 スーザン・ダンラップ 栗山 康子 訳(挿絵 天野 嘉孝)
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(11) Ask a Policeman (単行本1933) リレー小説『警察官に聞け』連載第3回 「解答篇2 サー・ジョン、きっかけをつかむ」グラディス・ミッチェル(Gladys Mitchell) 宇野 利泰 訳(挿絵 浅賀 行雄)
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HMM OPENING FORUMとして
『インスタント・ママ、奮戦す(深町 眞理子)』高校生の甥を預かることになった独身翻訳家。1990年から翻訳者冥利に尽きる大仕事、と予告。ホームズ全集のことでしょうね。『小説『1984年』のミステリー(新庄 哲夫)』オーウェルは探偵小説の愛読者だったか?『下町のお正月(日影 丈吉)』深川の昔の正月風景から。
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Dashiell Hammett: A Life by Dian Johnson (1983)「ダシール・ハメット伝: ある人生」ダイアン・ジョンスン 小鷹 信光 訳 連載第2回「少年—青年時代(1894〜1921)」
私の興味はいつも「その人が完成する前」にある。功成り名遂げてしまった後の話は「あとは皆さんご存知の通りで…」で十分。そんな大事な部分がこの程度(雑誌で14ページ足らず)しか書かれていないのは残念。資料が少なく関係者の証言などは拾えなかったのか。以下の日本円換算は当時の米国消費者物価指数を2020年と比較して算出したもの。
ハメットはボルティモア育ち。当時の人口は508,957(1900年全米6位, Webページ “Population of the 20 Largest U.S. Cities, 1900–2012”による) 14歳(1908)で経済的窮乏で学校を辞めた。1915年頃にはピンカートンの事務員からオプに昇格、週給21ドル(=58968円、月額25万6千円)。西部に派遣されるようになり、一泊50¢か$1(=2808円)の宿で出張をこなした。1918年6月頃、陸軍に志願し、救護自動車小隊(Motor Ambulance Corps)に配属。1918年10月にスペイン風邪に感染。1919年5月、兵役不適格者に認定され、月額40ドル(=65560円)の恩給付きで除隊。ピンカートンに戻るも体調不良で[1919年?]秋にタコマで就労不能の宣告を受ける。銃を発砲し人を傷つけた経験はピンカートン社時代の警備任務時のたった1度だけらしい。
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読み物は
『続・桜井一のミステリマップ: 隅の老人のロンドン』全然、ひねこびて無いので肖像はペケ。ポリーの髪型も当時の英国女性風ではないと思う。
『連載対談 田村隆一のクリスティー・サロン3 新青年のクリスティー(乾 信一郎)』当時タイトルは訳者が勝手につけ、原文も訳者持ち込みだった、という。英国赴任の官僚には探偵小説の読書が義務付けられている、という噂があった。(当たり障りのない会話ネタとして当時使われていたらしい) 途中、田村隆一が、割り箸のせいで森林が破壊されてる!と関係ない話題で一人盛り上がっている。当時の日本の普通の新進作家は初版300部。
『ペイパーバックの旅(小鷹 信光)15 ハント・コリンズの処女作Cut Me In(The Proposition)』エヴァン・ハンターの筆名。
『アメリカン・スラング(木村 二郎)3 ミッキー・マウスがうようよ』『フィルム・レビュー(河原 畑寧)古典的な図式をまもる『銀河伝説クルール』』『名探偵登場(二上 洋一)15 カニさんウマさん名コンビ—蟹沢警部補と相馬刑事』
『新・夜明けの睡魔/名作巡礼(瀬戸川 猛資)3』ミルン『赤い館の秘密』瀬戸川さんもネタバレ嫌い派のようなのでチャンドラーに全面的に同意、と書いて詳しく検討してない。本格ものとして評価しないが好き、という立場。ううむ。瀬戸川さんには父との確執があったのかな?
『ハメットにダッシュ!(青山 南)3 インタルード—ハメット円環』個人的連想ゲームが上手く繋がると嬉しいよね、という青山 南らしいネタ。
『推理作家の出来るまで(都筑 道夫)95 鬼たちの反発』本国から怒られたクリスティー特集は1956年12月号〈6〉。海外版掲載権は作品別に指定されているのか… 当時の翻訳の稿料が明記されている。超トップで四百字250円、ひとりかふたり。200円が何人か。150円が普通だった。新人は120円くらい。社内の場合は100円。当時の挑発的な日本ミステリ界への提言は意図的に、刺激的に書いていた、という。(まーそれは読めばわかる)
『愛さずにはいられない(関口 苑生)3 少年、おい、安っぽくなるなよ』『フットノート・メロディ(馬場 啓一)15 ミステリに於けるドラッグについて』『ミステリ漫画(梅田 英俊) 縄縛』
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1983年翻訳ミステリ回顧、として
『アンケート 私のベスト3』作家・評論家・翻訳家38人の回答。
『リレー対談「本格は当り年、冒険はやや不作」(吉野 昌之VS瀬戸川 猛資/北上 次郎VS香山 二三郎)』
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HMM Book Review(書評コーナー)
『最近愉しんだ本(森 詠)燃えさかる火のそばで』『新刊評(芳野 昌之/香山 二三郎)』『みすてり長屋(都筑 道夫/瀬戸川 猛資/関口 苑生)』『ノンフィクション(高田 正純)』『日本ミステリ(新保 博久)』『チェックリスト&レビュー(山下 泰彦)』
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Crime Fileとして海外ミステリ情報を
『Crime Column(オットー・ペンズラー)27 ‘83年秋の注目作紹介』『Mystery Mine(木村 二郎)栄光のパルプたち』『Study in Mystery(山口 勉)新作ミステリ予告篇』『外国の出版社めぐり8 ハッチンソン社』『ペイパーバック散歩(宮脇 孝雄)スティーヴン・キング「異なれる四季」』『製作中・上映中(竜 弓人)』
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最後に
『響きと怒り』『編集後記(S/N/K)』


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