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宝石 昭和30年6月増刊号 |
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雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 出版月: 不明 | 平均: 8.00点 | 書評数: 1件 |
No.1 | 8点 | おっさん | 2011/02/04 12:24 |
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<探偵小説全書>と銘打ち、日本人作家による名作短編の再録や、トリック課題小説の書き下ろし競作を並べるいっぽうで、「クリスティ研究」の特集を組んでおり、実作の目玉はなんといっても、そこに掲載された、クリスティーの戯曲「ナイル河上の殺人」Murder on the Nile (長沼弘毅訳)でしょう。
今回は、これに絞っての採点とします。 1937年の傑作『ナイルに死す』 Death on the Nile を、作者みずから48年に劇化したもので、クリスティー文庫未収録作品。 なぜ戯曲の訳題が「ナイルに死す」ではないかというと・・・当時、まだ小説版は未訳だったんですね(ちなみに『ナイルに死す』のポケミス初版の奥付は、昭和32年10月31日)。 しかし、こちらで先に「ナイル」を読んだリアルタイム読者は、不幸だったかもしれません。もちろん単体で見ても、メロドラマチックなミステリ劇の台本として、水準以上とは思いますが、本作をフルに楽しむには、あらかじめ原作を読んでいるに限るからです。 全三幕。場面は、遊覧船「ロオタス」船首の展望サロンに限定されています。 いささかレッドヘリングが過剰だった小説版にくらべると、登場人物は刈り込まれ(名前や設定の微妙な変更もアリ)、三件の連続殺人も二件に減らされています。 そして一番の変更点は、名探偵エルキュール・ポアロが登場しないこと。いちおう、原作のポアロの役どころを承知していれば、“探偵役”が誰か想像することはできるのですが・・・しかし原作のある設定を利用したミスディレクションが、終盤まで余断を許しません。 小説のストーリーを忠実に舞台に移植するのではなく、骨子は押さえながらも、どう変えて、驚きを付加するか――そこに、自作を脚色するさいの、クリスティーのミステリ作家魂を見ます(そのへんの意欲を買って、採点も1点アップとしました)。 幕切れの犯人の処理(死なせるか、生き抜かせるかの選択)は、戯曲版のほうが良いと思います。 |