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本格ミステリ・ベスト10 2008 探偵小説研究会編・著 |
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雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 出版月: 2007年12月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 2件 |
原書房 2007年12月 |
No.2 | 7点 | Tetchy | 2010/06/29 22:29 |
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ランキングはネット上での評判を色濃く反映したような感じ。
今回も前年に引き続き、一位の作品は『このミス』と違い、『このミス』が佐々木譲の『警官の血』、本ムックが有栖川有栖の『女王国の城』と、両者の特色が色濃く出た結果となっている。しかし、その後のランキングを見てみるとけっこう『このミス』に近いものがある。しかしこれは本格ミステリ作家たちが切磋琢磨し、いい作品を上梓してきた結果であるから、逆に日本のミステリ界は依然本格ミステリシーンが熱く発展してきているように思う。 確かに本ムックに寄せられたランキング作品への解説を読むと、どれもこれも読みたくて堪らなくなる、魅力的な謎、作者の企み、謎解きのカタルシスに溢れている。特に新興勢力として位置づけられる米澤穂信、石持浅海、道尾秀介、三津田信三など、当然の如くランクインし、しかも1作などに留まっていない。 そしてそれを向かい討つかの如く、新本格Ⅰ期生の有栖川、歌野、そして彼らの師匠とも云える御大島田氏が名を連ねている。 更には西澤保彦、柄刀一、霞流一といった中堅どころも負けじと参戦し、さらにちょっと最近は大人しかった石崎幸二、北山猛邦らメフィスト系作家もランクインと、なんとも絢爛豪華なランキングとなった。 もしかしたら2007年は本格ミステリ界にとって5年に一度、いや10年に一度の大収穫の年であったと、今後振り返ったときに話題に上るのではないだろうか。なにしろ有栖川の江神シリーズが15年ぶりに出た年なのだから。 とはいえ、その他の部分においては従来の形式となんら変わることがなかったというのがこのムックらしいといえばムックらしいところ。足してもなく、引いてもいない。まあ、座談会が増えたかもしれないが、全く構成・各種コラムの内容が変わっていない。本当にその年の本格ミステリシーンを従来のテーマに沿って回顧する、そんなムックに徹している。 ただ装幀大賞が京極夏彦氏も審査に加わることがなくなり、何となくトーンダウン。喜国夫妻が頑張っているが、なにげに鋭い発言をする京極氏の毒がやはり欲しいところだ。 |
No.1 | 5点 | 江守森江 | 2010/06/26 17:59 |
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最初に、海外翻訳ランキングには興味なし。
本来なら年刊雑誌なので一律の3点だが、国内・本格ミステリに原点回帰を齎したランキング上位2作品に敬意を込めて2点加点した。 その上位2作品の優劣だが、シリーズ新作を読者が渇望した状態で出版された有栖川「女王国の城」には多分に贔屓点が加算されていると思っている。 時を経た絶対評価なら差は小さいとはいえ三津田「首無し〜」の方が優っていると思う。 上位2作品から離されたが歌野「密室殺人ゲーム〜」などは、続編が今年度のランキング1位&本格ミステリ大賞を獲得し先に繋いだ。 年度的に、近年の国内・本格ミステリ最強年度と云える豊作だった。 国内・本格ミステリ・シーンの盛り上がりと違い「本ミス」自体は例年に変わらなかった。 それでも、本格分野ではラノベ・コミック・映像の方が柔軟性があると感じさせ意義はある。 映像では、私的に傑作だと思っている「キサラギ」を紹介しているのが特筆できる。 最後に、特集「ジャンル力学の周縁」でピックアップされた作品達を多くの方々が読んで是非とも悶絶してほしい(笑) |