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ぷろふいる 昭和11年9月号 リチャード・カーネル「いなづまの閃き」掲載 |
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雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 出版月: 不明 | 平均: 6.00点 | 書評数: 2件 |
No.2 | 6点 | 弾十六 | 2024/03/24 08:23 |
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私は当該雑誌「ぷろふいる」を読んでないのですが、おっさんさまがフィーチャーしたRichard Connell作 "A Flash of Light"(初出Redbook Magazine 1931-06)が読みたくなって、悔しいので原文で読んでみました(おっさんさまに確認いただいたところ、これが「いなづまの閃き」で間違いないとのこと)。
以下は「掲示板」の再録ですが、今後のみなさまの参考に。 原文は、幸いWebサイトInternet Archiveに雑誌Redbook当該号の全ページが白黒コピーでアップされていたので無料で読めました。なお辿り着くにはやや難しいところがあるようなので、お馴染みのすごく便利なWebサイトFictionMags Indexから飛ぶのが便利です。 まずトップページwww.philsp.com/homeville/gfi/0start.htm#TOCにあるPrimary Indexes:直下の作者名リストby Nameから作者名を探して、アルファベット順の作品リストから当該作品(A Flash of LightはFのところ)を見つけてください。作品の掲載雑誌のリンク(Redbook Magazine June 1931)をクリックすると、雑誌のページが開きます。そこのFULL TEXT(緑色表示)を押すと、internet Archiveの該当ページに飛ぶはず。 短いし平明な英語なので、根気のない私でもすぐ読めました。 ゾクゾクする不可能状況、秘められたトライアングル、そして引用されるチェスタトン!まさにJDCな作品でした。解決も「うわあ!何それ!」でマニア受けしそう。 1931年なのでJDCの影響、というよりチェスタトンの影響大なんでしょうね。「ぷろふいる」の翻訳にはチェスタトンという固有名詞は翻訳されてたのかなあ… 翻訳したいなあ、と書いたら、本サイトの重鎮お二人から誠に光栄なご助言をいただいたのですが、「ぷろふいる」翻訳が1936年なので10年留保は使えません。(当時翻訳権をちゃんと取得してたのかはちょっと怪しい?)でも作者死亡が1949年なので戦時加算を含め保護期間は死後約81年、2030年には完全に著作権が消滅します。ここら辺、よく調べていませんが、旧規定(作者死後50年)が適用されるなら保護期間は約61年なので、もう既に著作権切れなのですが… <追伸> おっさんさま、「ぷろふいる」には伯父さんの名前が書いてありませんでしたか? 長篇Murder at Seaを調べていて愕然としたのですが、A Flash of Lightで見事な探偵ぶりをしめした伯父さんの名前はMatthew Keltonでした… これは長篇も読まなきゃ! |
No.1 | 6点 | おっさん | 2024/03/23 14:10 |
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Tetchyさんの、『世界傑作推理12選&ONE』の書評のなかで、リチャード・コンル(コーネル)の「世にも危険なゲーム」(ギャビン・ライアルのあの有名長編の、アイデアの出所ですね。筆者はどっちも好きです)に対する高評価コメントを読んでいたら、急に、同作者の、もうひとつのミステリ短編について書いておきたくなりました。
で、当該短編の載った、探偵小説専門誌『ぷろふいる』の昭和11(1936)年9月号を登録させていただく次第です(「掲示板」で忠告と助言をいただいた人並由真さんに、厚く感謝いたします)。評価点は同短編のみのピンポイントで、セイヤーズとかフレッチャーとか、同号のその他の作品については含まれていません。 作者名リチャード・カーネル表記で掲載された「いなづまの閃き」(酒井嘉七訳)は、荒天の夜、帰宅中の男が、浜辺で頭を強打されて殺されるが、周囲に犯人の足跡はまったく残されていなかった――という不可能犯罪を、被害者の弟をワトスン役に、伯父を探偵役にして描いた一篇。謎解きのデータに関しては完全な後だしで、種明かしを待つしかありませんが、〝鳴らなかった雷〟というユニークな伏線が利いており、照応する豪快なトリックと鮮烈なクライマックスが、忘れがたい作品です。アンソロジー向きだと思うのですが、復刻版『ぷろふいる』第11巻(ゆまに書房)くらいにしか入っていないはず。これは勿体ないですよ。 原作は、不勉強で同定できていないものの、The FictionMags Index のサイトを参照した限りでは、 “A Flash of Light” (ss) Redbook Magazine June 1931 というのが、それっぽいですね。 ちなみに、映画やTVドラマの脚本家として知られ、あまりミステリ・ジャンルで語られることのないコンルですが、1929年に発表した長編 Murder at Sea は、マシュー・ケルトンというアマチュア探偵が活躍する船上ミステリのようです。ちょっと読んでみたいかも。 さて。 「いなづまの閃き」のなかで、個人的にとても印象に残った伯父さんのセリフを引いて、終わりにしましょう。 「――お前がそうしたことをする筈がない、と確信している。しかし、犯人を探査する場合には、自分の最も信じる人物をも、一度は疑えるだけ疑わなければならない。分かってくれるだろうな」 (追記)弾十六さんのご調査により、翻訳と原文の照合が可能になり、「いなづまの閃き」の原作が “A Flash of Light” と同定できました(感謝!)。 戦前訳の常として抄訳であり、弾さんがご書評のなかで気にされているチェスタトンのくだりなどは、カットされています。やはり新訳が欲しい。 探偵役の「伯父さん」はどうやら、Murder at Sea の主役のようです。酒井訳で、登場時に一回だけ「マシュー・ケルトン」と記されているのを見過ごしていました(抄訳では、以降ずっと「伯父さん」なんですよ('Д'))。 あらためて、ご指摘いただいた弾十六さんにお礼申し上げます。(2024.3.24) (追記その2)クラシック・ミステリを楽しむための評論誌「Re-ClaM」第14号(2025.5)に、リチャード・コネルの短編訳「医師と狂人」を寄せられた、弾十六さんは、情報満載の「訳者解題:マシュー・ケルトンご紹介」を付し、そのなかで、A Flash of Lidhtの初訳が、じつは『新青年』昭和7(1932)年8月夏期増刊号掲載の「正義の塑像」(石川伴花訳)であることを、明らかにされました。ビックリです。その号を筆者は未見ですが、” 正義の塑像」”という訳題は作中のアレを指しているのね……と得心できます。あらためて、このユニークなアイデアの短編を気に入り、自身の手になる完訳「閃光」(ウェブサイト「十六×二十」)まで実現させた弾十六さんの、その熱意と努力に敬意を表する次第です。(2025.5.13) |