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2017本格ミステリ・ベスト10 本格ミステリ・ベスト10シリーズ |
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雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 出版月: 2016年12月 | 平均: 10.00点 | 書評数: 1件 |
原書房 2016年12月 |
No.1 | 10点 | Tetchy | 2017/07/29 22:56 |
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例年とは違い、待望の2006年から2015年の10年間のベスト選出結果が載っている…と思っていたら本書はなんと1997年から2016年までの20年間のオールタイムベストの選出と対象期間を倍にした企画に変っていたことに驚く。ただし前回が1996年からに対して今回は1997年からと1年のオフセットが行われているのは1997年がこの本格ミステリ・ベスト10が刊行された年であるからだ。
この年のランキングについて語ることは省略し、この20年のベスト選出について語ることにする。 まず1位を三津田信三氏の『首無の如き祟るもの』が獲得したのはその後の10年の本格ミステリがその前の10年間のミステリよりも優れてきたことを象徴しているかのようだ。しかし2位に東野氏の『容疑者xの献身』がランクインされているのはこの作品の普遍性を表している。前回の10年ベストでは3位であり、むしろ評価を挙げていることが凄い。次の『ハサミ男』も5位から3位に、4位の『人狼城の恐怖』は前回と同じ位置につけており、その価値が変わらぬことを証明した。5位の『葉桜の季節に君を想うということ』も前回から1ランクアップ。 つまり1位を除く2~5位は前回とほとんど変わらない作品がランクインしたといえ、つまり一応その後の10年で前回のランキングを打ち破る作品が出たものの、その他上位は変わらなかったという結果となった。 逆に『容疑者x~』以下の作品のランクが上がる、もしくは維持されたのは前回1,2位にランクインした京極夏彦氏の『百鬼夜行』シリーズの『絡新婦の理』と『鉄鼠の檻』の2作が大きくランキングを落としたことが要因だ(前者は18位で後者は12位)。つまりこの妖怪をテーマにしたこのシリーズの刊行が2006年の『邪魅の雫』以降、パッタリと止まった読者の渇望感を三津田氏の刀城言耶シリーズが癒していたのがこの10年であるとの証左がランキングに出ていると云えよう。 その他新しくランキングした作品は6位法月綸太郎氏『キングを探せ』、7位米澤穂信氏『折れた竜骨』、9位有栖川有栖氏『女王国の城』、11位柄刀一氏『密室キングダム』、13位麻耶雄嵩氏『メルカトルかく語りき』、15位円居挽氏『丸田町ルヴォワール』、同15位麻耶雄嵩氏『さよなら神様』、17位麻耶雄嵩氏『隻眼の少女』、18位歌野晶午氏『密室殺人ゲーム2.0』、20位梓崎優氏『叫びと祈り』と11作がランクインし、半分以上が塗り替わる結果となった。逆に2005年以前の作品はいずれも前回ランクインした作品ばかりなのはもはや評価が定まってしまったことを意味するのだろうか。 しかしこの20年において麻耶雄嵩氏の躍進ぶりは凄まじい。なんと前回に引き続いてランクインした10位の『螢』を含めると4作がランクインしたことになる。そのうち3作は2006年以降であるから、まさにこの10年は麻耶雄嵩氏の10年だったと云えよう。 しかしながら近年のランキングは上に述べたように新興の本格ミステリ作家がどんどん話題作を生み出し、ランキングを席巻しつつある。まさに群雄割拠の本格ミステリ界と云えよう。それらの作品が今後の10年で名作であると評価され続けるに足る作品であるかどうかは京極氏の作品の評価を見て解るように今後の活躍に掛かっているのである。つまり継続的に意欲作を出すことがその作者の作品を名作足らしめるということがこのランキングで示唆されているのだ。実に興味深い資料だ。 そうなるとやはり2007年から2016年の10年、いや2006年から2016年でも2006年から2015年でもいいのでこの10年のオールタイムベストも見たいものである。またまだなされていない海外本格ミステリについても同様の企画を将来的にはお願いしたい。 しかしこのムック、もっと世間的に広く認められるべきだと思うのだが、なかなか認知度が高まらないように思えてならない。内容の充実ぶりは『このミス』よりもはるかに上。世のミステリファンよ、本書を手に取り、本格ミステリの海に共に身を投じようではないか! |