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ミステリマガジン2026年4月号
特集:わたしの愛する名探偵
雑誌、年間ベスト、定期刊行物 出版月: 2026年02月 平均: 4.00点 書評数: 1件

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早川書房
2026年02月

No.1 4点 おっさん 2026/05/23 09:56
「わたしの愛する名探偵」。

というテーマでの、有名作家陣13名によるショート・エッセイ(たとえば法月綸太郎はエドマンド・クリスピンのジャーヴァス・フェン教授をチョイス)と、新進作家3名による書下ろし短編(新しい名探偵キャラクターのお披露目)、翻訳では、英国の気鋭トム・ミードが、マーティン・エドワーズのアンソロジーのために書き下ろした、ジョセフ・スペクターものを掲載。
加えて「資料と研究」として、小説、コミック、映像の各分野での名探偵ガイドが付されており、酷評した2025年10月号(特集:九龍城砦に集え!)あたりに比べたら、専門誌の体裁は保たれています。新作(女児向け)アニメ『名探偵プリキュア』の紹介記事もありますが、まあ、これはご愛敬ということで。
表紙は、〈十二国記〉シリーズなどのイラストで知られる、山田章博画伯の手になるシャーロックホームズの、渾身の正面アップ。この絵力は――さすがですね(おっさん的にも、名探偵で一人となったら、やはりホームズになりますが、そうした「愛」を自身の創作で表現できるのは、やはり素晴らしいし、ちょっとだけ羨ましい)。

さて。
ここまでは褒めました。
が、老眼と戦いながら読み進めていった、肝心の短編作品の出来が、残念で……

 ①西式豊「人形はなぜ夜歩く」(〈焼け跡のホームズ〉こと入宮衆、登場)
 ②小塚原旬「ルミナフォビア」(トラウマをかかえた〈絶望探偵〉彼岸此岸沙羅、登場)
 ③稲羽白莵「能楽堂の殺人」(大阪の〈拝み屋探偵〉掃部新太郎、登場)

と、このへんは、本格ミステリ教室の創作コースの提出課題のよう。エキセントリックなキャラとエキセントリックな事件の未成熟な(ときに独りよがりな)組み合わせです。筆力で頭ひとつ抜けているのが①で、あとに行くに従ってこちらのテンションも落ちていき、結局、次回作で再会したいと思えたのは、終戦直後、GHQ占領下の横浜で活躍した、西式氏の〈焼け跡のホームズ〉だけでした。季刊の『ミステリマガジン』ではいろいろ難しいかもしれませんが、できれば彼・入宮衆の『ストランド・マガジン』になってあげて欲しいものです。

で。
一番期待していたのが、80 年前の未解決の、足跡のない(猟奇)殺人の調査でイギリスの僻村を訪れた奇術師探偵スペクターの前で、新たな足跡のない(猟奇)殺人が展開される、

 ④トム・ミード「ヒキガエルの呼び声」

だったんですが……いやあ、これが一番ダメだった(T_T)。
何が? って、小説全体。この書きかたは、独りよがりが過ぎる。前掲③の「能楽堂の殺人」もそうでしたが、小手先のテクニックでお話をでっちあげ、作者だけが悦に入っている。編集者(この場合はマーティン・エドワーズ)はきちんと問題点を指摘、作者と協議すべきでしたね(あ、くだんの③には、作中、作家にダメ出しする編集者キャラが登場することは登場するんですがねw)。

ま、そんなわけで、方向性自体は悪くない号でしたが、本号が、「編集後記」で書かれているような、「もう心残りはない、とまで言えそうなほどの全力投球号」であっては、困ります。
次号(5月25日発売)は「創刊70周年記念特大号」のようですから、そちらに期待するとしますか。


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