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[ 本格/新本格 ]
時間の習俗
三原警部補と鳥飼刑事
松本清張 出版月: 1962年11月 平均: 6.00点 書評数: 10件

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光文社
1962年11月

文藝春秋
1971年01月

新潮社
1972年12月

No.10 5点 ボナンザ 2021/09/03 12:24
点と線の系列だが、アリバイ崩しとしてはこちらの方が凝っていると思う。

No.9 6点 クリスティ再読 2020/04/19 23:12
先日カーの「緑のカプセルの謎」の評を書いたんだが、作中で登場する16ミリ映画のことを、「ヴィデオ」と書いている評を見て、評者なんてショックを受けていたよ。まあ昭和なメディアの知識はどんどん時の彼方に忘れ去られていくもので、「知らない」世代を責めるわけにはいかないのだが、本作のトリックも、極端な話「なぜアリバイトリックとして成立するのか」さえ、そのうちに理解できない人が出てきそうだ。
トリックに使われた写真が白黒、というのさえ、実は最後になるまでちゃんと書いてない。まあ個人が撮るのが白黒が普通、という時代だから書いてないんだが、評者に言わせれば犯人の写真がカラーだったらたぶんトリックが見破られると思うんだ。メディアの特性を利用したトリックというのは、いろいろ取り扱いが難しい。でも、年寄りの評者に言わせれば、このトリック、実践するにあたって研究は必要だけど、かなり通用しそう...と感じているよ。
だからどっちかいうと、評者はこの作品、清張の俳諧趣味と、古代史への関心が出てて、そういう面に魅かれるのを感じる。こういうアリバイ崩しの地味系ミステリなんだけど、和布刈神社とか大宰府とか盛り込んで、ロマン味を出しているのが大衆小説としてのアピールポイントになっているように思う。まあ「点と線」の続編だから、九州ネタなんだよね(出身そうだし)。

No.8 6点 蟷螂の斧 2019/11/01 19:00
(再読)本作は、「点と線」と同様に書かれた時代(1962年)を考慮しなければならないでしょう。その時代でなければ成立しないような物理トリックがあります。反対に心理トリックはいつの時代でも通用するのが強みかもしれません。今となってはトリックよりもアリバイ崩しの過程や、崩しの爽快感を楽しむ方がベターな作品と言っていいでしょう。

No.7 6点 文生 2017/11/10 07:37
社会派ミステリの巨匠松本清張としては珍しい純本格に特化した作品。写真を利用したアリバイトリックはなかなかユニークにであり、点と線よりも格段に進歩の跡が見られる。ただ、カメラ事情が大きく異なる現代の読者からすると読んでいてわかりにくい部分があるのが難点か。

No.6 7点 斎藤警部 2015/06/24 17:01
清張中庸の美を放つ良作。 「点と線」の流れを汲む(担当刑事も同じ)社会派興味はほど薄い鮎川哲也風アリバイ崩し本格推理。 トリック自体もさる事ながら、手掛かりが晒されトリックが崩されて行く過程が実に滋味溢れるもの。 程よい旅情あり、或る性風俗(当時の言い方)への言及あり、物語背景のイメージは豊か。昭和30年代の日本がありありと眼前に浮かび上がって来ます。

No.5 6点 了然和尚 2015/04/01 00:43
松本清張の作品って、捜査側の人間が神がかり的な発想でトリックを見破っていくのが多いですね。本作も動機も背景もわからぬまま、ただアリバイが完全であるだけで容疑者にされます。犯人側が可哀想すぎます。女性同伴の男が殺害されますが、アリバイに協力したと思われる男性が死体で発見されます。実は同伴女性が女装男性で殺されていたという構図には震えるほど感動しました。どうせなら動機が男ー男ー男の三角関係なら、プラス2点でした。(昭和37年では斬新すぎか) 他の清張作品よりは手がかりが多く本格色が強いのですが、定期券の謎は、当時のカラープリント事情を知らないので無理ですよね、このように、清張作品は昭和時代の歴史小説的趣もあるので、読んでいて楽しいです。

No.4 6点 E-BANKER 2014/06/06 22:19
昭和36年、雑誌「旅」に連載され後に発表された長編作品。
「点と線」の三原警部補=鳥飼刑事コンビが再び関東~九州間の鉄壁のアリバイに挑む本作。
つい最近地上波でドラマ化もされたのだが・・・(見てないけど)

~神奈川県の相模湖畔で交通関係の業界紙の社長が殺された。関係者の一人だが容疑者としては一番無色なタクシー会社の専務は、殺害の数時間後、遠く九州の和布刈神社で行われた新年の神事を見物し、カメラに収めていたという完璧すぎるアリバイに不審を持たれる・・・。『点と線』の名コンビが試行錯誤を繰り返しながら巧妙なトリックを解明していく本格長編推理~

見事なまで“アリバイ崩し”テーマの作品に仕上がってる。
「点と線」ではさんざんもったいぶった後、航空機が登場してきたが、本作では最初からメインの交通機関として航空機が登場する。
羽田~伊丹~福岡間で航空機がアリバイトリックの肝として登場し、三原警部補は翻弄されることに・・・
それだけでも「点と線」から数段進歩したと言えそう。

で、肝心のアリバイトリックなのだが、本作でも小道具として「写真」が登場してくる。
鮎川哲也や土屋隆夫の作品のなかでも写真をアリバイトリックに使った作品が数編あるが、巧妙さや納得感でいえば本作が最も優れているように思えた。
「アリバイトリック」においては、「それが崩れた瞬間」というのが作品中のハイライトだろうけど、本作では三原警部補がさんざん苦労してきただけに、読者としても思わず「よかったねぇ」と声をかけたくなってきた。

ただし、本作はアリバイ崩しにあまりにも偏重したため、他の要素はほぼ響かなかったのが残念。
特にフーダニットについては、最初からある容疑者一辺倒で進んできており、そこに面白みを仕掛けられなかったのはちょっと疑問符がつく。
全体的な評価としてはどうかなぁ・・・ミステリー作家としてかなり熟れてきたという気はするが、「点と線」ほどのダイナミズムには欠けるという気がして、評点はこんなもんだろう。
(この時代の航空機の「乗り方」が解説されていて、興味深く拝読させていただいた・・・)

No.3 4点 江守森江 2009/12/08 09:30
清張には珍しい本格ミステリ寄りな作品。
清張作品は「点と線」のアリバイや「砂の器」の殺害方法にゲンナリし、社会派作品はドラマで観ると決めているので見落とす所だった。
書かれた当時は写真によるアリバイ崩しが流行ったのだろう(カメラ自体が貴重品な時代だった)土屋隆夫や鮎川哲也にも同系統な作品があったと思う(読み比べも一興かも)
しかし、今読むと西村京太郎の量産されたトラベル・ミステリーと本格ミステリとして大差ない気がするのは私だけだろうか?
※因みに、このサイトの採点では、文学としての格調なんかは一切考慮していない。

No.2 7点 2009/03/22 17:11
30数年前に読み、数年前にまた読んだ作品。
清張以後という言葉も生まれたほど、清張は社会派推理の原点の人だが、本作品は写真トリックも秀逸で、謎解きに関して本格派作家と十分に肩を並べているように思う。
個人的には、点と線よりも好きですね。
ただ、再読のとき、初読のときほどの感動がなかったのが残念。

No.1 7点 2008/12/09 21:41
いつもは動機の社会的背景を重視する作者ですが、これだけ練り込まれたトリックを思いつけば、かえって社会性は邪魔になると判断したのではないでしょうか。シリーズ探偵を使わない著者が『点と線』と同じ2人の刑事を4年ぶりに起用して、アリバイ崩しに徹してくれます。
写真を使ったアリバイは共犯者がいれば簡単に実現できますが、それを単独犯でいかにして行うかが眼目です。逆に社会派的動機であれば、共犯者がいてもおかしくないわけで、そのあたりが松本清張のバランス感覚でしょう。
ただ、『点と線』に比べて、このアリバイのある人物が真犯人だと目星をつける根拠が弱い点は、気になりました。


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松本清張
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不明
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