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[ 短編集(分類不能) ] 共犯者 |
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松本清張 | 出版月: 1965年01月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 2件 |
光文社 1965年01月 |
新潮社 1980年05月 |
No.2 | 7点 | E-BANKER | 2016/04/29 14:05 |
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新潮社より数冊出されている作者の短編集のひとつ。
ミステリー色の濃いものから薄いものまでバラエティに富んだ作品が並んだ印象だが・・・ ①「共犯者」=表題作だけあってなかなかの良作。過去の罪が暴かれることを恐れた主人公が、共犯者の存在に怯えて取った行動から思わぬ破綻が生じる・・・。名短編「顔」などとも共通するプロット。 ②「恐喝者」=共犯者の次は恐喝者ということで・・・。これも人間の醜さというか、エゴイズムがラストに因果応報という形で清算されるというプロット。余韻をひく佳作。 ③「愛と空白の共謀」=愛する夫を亡くした妻の陥穽とそれに取り入るひとりの男。地上波の二時間サスペンスのようなミステリー・ロマンス風なのだが、やっぱり冷静になるのは最後には女性なんだね。 ④「発作」=何というか、うまくいかなくなると、とことんうまくいかなくなる・・・ということか。会社での閑職というのは男のプライドには響くんだろうな・・・。こういう「発作」を起こさないように気を付けよう! ⑤「青春の彷徨」=心中しようと阿蘇山中に入って思いとどまり、次は耶馬溪に入って思いとどまり・・・。旧題の「死神」の方がいいと思うのだが。 ⑥「点」=「点と線」ではなく単に「点」。暗く貧しい時代に心まで貧しくなる・・・ということかな。他の短編でも似たようなテイストの作品をよく見かける。 ⑦「潜在光景」=う~ん。結構重いけど、実に旨い作品だと思う。特にラストの反転というか切り返しは名人芸だろう。子供の目を気にしながら愛を重ね合う二人・・・そこに潜在光景を思い浮かべる男。何とも言えない余韻が残る。 ⑧「剥製」=動物の鳴き真似名人と過去の栄光を忘れられない文豪。「剥製」はもちろんシンボライズとしての存在。 ⑨「典雅な姉弟」=今ひとつ主題がよく分からなかった。アリバイトリックはかなり小粒だが・・・ ⑩「距離の女囚」=父親の横暴で愛する夫と引き離された妻は・・・。 以上10編。 さすがの筆力を感じる作品が並ぶ好短篇集。 巻末解説で権田萬治氏が「松本清張の短編の魅力は何よりも人生の一断面を切り取る鮮やかな小説技法にある・・・」と指摘されてますが、まさにそのとおりでしょう。 知らず知らずのうちに、読者は作品世界に飲み込まれてしまい、主人公たちの人生の一場面に立ち会っているかのような錯覚を覚える・・・。 大げさにいえば、そんな感覚になる。 いずれにしても低い評価はできないと思う。 (①⑤は評判どおり。②や③もなかなか) |
No.1 | 7点 | 斎藤警部 | 2015/12/09 01:44 |
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清張にしちゃあチャラいちゃチャラい小品集。。とうっかり記憶してたんだがよく考えると表題作が際立って通俗的なだけで別に全体がチャラいわけじゃない、ちょっと小粒な短篇集と言ったところ。っつっても世間標準で見たら相当重い大粒群。捨て作品は無いねえ。
共犯者/恐喝者/愛と空白の共謀/発作/青春の彷徨/点/潜在光景/剥製/典雅な姉弟/距離の女囚 (新潮文庫) 色んなアンソロジーで見掛ける気がする「洗剤口径」は水鉄砲に詰めた強力な洗剤を相手に向けて撃ち溶かし殺してしまう話、ではなく色んなアンソロジーで見掛ける気がする「潜在光景」は相当の筆力が無いとただの結末見え見え怖い話で終わりそうな際どさ爆発の素材を丁寧に扱い、キリキリ音がしそうな緊張バランスの細い絹糸の上に斜めに立たせた酒枡の様な作品。他に、どことなく安部公房を思わす残酷喜劇「発作」、悪者ではなく哀れ者の奇妙にして暗ぁい話「点」(題名付けの妙!)、奇妙と言うより不気味な味の「剥製」、ロスマク的(?)本格推理「典雅な姉弟」、女の半生の雄大な哀しみが拡がる「距離の女囚」、どうしようもねえ人間の醜さに吐き気がする「恐喝者」等、見逃すわけに行かない清張渾身の熱い小品が並ぶ。 |