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[ 社会派 ]
日本の黒い霧
松本清張 出版月: 1960年01月 平均: 7.67点 書評数: 3件

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文藝春秋新社
1960年01月

文藝春秋
1970年01月

文藝春秋
1972年01月

文藝春秋
2004年12月

No.3 7点 斎藤警部 2026/04/30 23:54
清張の小説は、心が先走っている。 定められた結末を見据え、筆致こそハードボイルド的に冷静を保っているが、どうしても冷静の壁を乗り越えて先に進んでしまう一種の ‘オーラ’ が、言外の言として機能してしまう。 これが、清張特有の強烈な ‘嫌な予感畳み掛けサスペンス’ のメカニズムではないかと思う。

一方、よく誤解される様ではあるが、本作の様なノンフィクション或いはセミノンフィクションの場合、清張は最初から結論を決め付けず、手にした情報を解析した結果として結論を導こうとするので、小説の場合の様に心が先走らず、前述の ’オーラ’ が発生しない。 飽くまで個人の見解だが、私が清張のノンフィクション系作品に小説ほど乗り切れない理由はそこにあると思っている。

“しかし、今でも私は、当時の疑問に対する情熱を捨ててはいない。”

それでも内容の熱さは充分に感じるし、冒頭と掉尾を飾る 「下山事件」 「朝鮮戦争」 には相当なスリルが宿っている。 これらに挟まれた他の作には中田ルミさんもときどき姿を現すが、全体を通して見れば誠に立派で危険な大仕事を成し遂げやがったものだと総括すべきであろう。 まして、その歴史的意義や時代の中での立ち位置に思いを馳せればなおさらその価値は輝いて見えよう。 (実際に真相を暴いたかどうかより、真相を暴こうと尽力努力して、その結果を世に問うたことが一大事なのだと思う)

本作が結果的に山田風太郎の某連作短篇を髣髴とさせなくもない作りになってしまっている現象は、やはり本作に対する根強い “こじつけ” “思い込み” 批判の源泉近くに位置しているのではないかと考える。
清張の主張によれば、結果的にそうなっただけで、最初からそのような構造を狙っていたのではない、ということの様だが、本当のところ、どうなのかは分からない。

下山国鉄総裁謀殺論/「もく星」号遭難事件/二大疑獄事件/白鳥事件/ラストヴォロフ事件/革命を売る男・伊藤律/征服者とダイヤモンド/帝銀事件の謎/鹿地亘事件/推理・松川事件/追放とレッド・パージ/謀略朝鮮戦争/なぜ『日本の黒い霧』を書いたか

“私はアテ推量ながら以上のことを書いたが、これとてもどこまで事実に迫っているか、自信がない。 これが本当の謀略というものの姿であろう。”  (← むやみに使いたくない言葉だけど、深いねえ..)

No.2 8点 HORNET 2024/03/24 21:12
 清張作品は有名どころを数冊しか読んでいないが、フィクションの物語でない本作が私には最も印象深い。
 これがどれほど真相に肉薄している内容なのか、所詮一推理作家の妄想じみた謀略論なのか、まったく分からないが、昭和にあった歴史的な事件について掘り下げる記述は非常に生々しく、時に背筋を震わせながら読んだ。
 やはり、上巻一編目の「下山国鉄総裁謀殺論」や、下巻「帝銀事件の謎」の内容は衝撃的であるし、全編を通して戦後の社会の混乱や暗黒的な雰囲気が漂っていて、そこに想像を馳せながら読み進める読書体験は何とも言えないものだった。
 どこまでいっても想像の域を出ないが、国、政府、軍隊といった巨大な公的機関といえども結局は生身の「人」でできているものであり、信じられないような罪悪や隠蔽が行われていてもおかしくない…と思わされてしまう作品だった。

No.1 8点 ALFA 2024/03/21 09:00
小説ではない清張の代表作。
アメリカ占領下の日本で現実に起きた12の怪事件が主題。膨大な資料を読み込んで緻密に推理するという作法はミステリーに通じるものがある。
こんな作品を締め切りに追われる連載で書くのだから、やはり清張ただ者ではない。載ったのが文藝春秋というのも何だか今日の「文春砲」を思い起こさせて愉快。

最も読み応えのあるのは「下山国鉄総裁謀殺論」。ここにはミステリーのすべてが揃っている。
重厚なクライムストーリーだがラスボスの闇は「けものみち」や「点と線」の比ではない。



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松本清張
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