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[ 本格/新本格 ]
アムステルダム運河殺人事件
松本清張 出版月: 1970年03月 平均: 5.75点 書評数: 4件

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朝日新聞社
1970年03月

文藝春秋
1972年01月

KADOKAWA
1973年12月

KADOKAWA
1973年12月

朝日新聞
1994年02月

光文社
2013年04月

No.4 6点 メルカトル 2023/10/30 22:04
アムステルダムの運河に浮かぶトランクから死体が見つかった。首、両脚、両手首が切断された死体は日本人商社マンのものと判明するが、捜査は進まず迷宮入りに。そこで記者である「私」は友人の医者と共に調査に乗り出す。一九六五年に起きた実際の事件を著者が謎解く表題作。ゴルフの聖地を舞台とした日本人変死事件「セント・アンドリュースの事件」も併載。
『BOOK』データベースより。

空さん、先回はお世話になりました。今回も貴重な作品のご紹介、恐れ入ります。

社会派の巨匠だけに、飽くまでリアリズムを追求し、無駄のない文章と隙のない作品に仕上がっていると思います。あの松本清張がこの様なガチガチの本格ミステリを書いていたとは全くもって知りませんでした。やれば出来るじゃん、なんでもっとこういうのを書かなかったんだ、というか、書いていたのか他にも?

表題作はトランク詰めにされた、首と手首から先と下肢を切断された胴体だけの死体が、アムステルダム運河に浮かんでいたという、かなりショッキングなシーンから始まります。余計な前置きがないのが良いですね、早く事件が起きて欲しいタイプなので。現実味を増すために、探偵役さえも個性を抑えた作者の意気込みが伝わって来るようです。
そのクイーンばりの端正なロジックは繊細かつ大胆で、警察すら見落としていた一つの謎から論理を繰り広げ、犯人にまで辿り着く様はなかなかのカタルシスを与えてくれます。
併録の『セント・アンドリュースの事件』は、雰囲気ではなくプロットが横溝正史を思わせる作品で、トリックも小振り乍ら気が利いています。清張としては小品でしょうが、結構楽しめました。

No.3 5点 パメル 2017/07/13 23:43
1969年の中編2編を収録
表題作は実際に起きた事件をもとに作者が再構成し推理を加えた作品
被害者は行方不明の被害者なのかと前半はドキュメンタリー調に事件を紹介している
後半になると主人公と医者の二人組で現地で迷宮入り事件を再調査していく展開
「死体が首と手首を切断されたのは何故か」の意表を突く真相には驚かされる
ただ作品の性質上仕方がないといえば仕方ないのだが盛り上がりに欠ける点は残念
セント・アンドリュースの事件はアリバイ工作には鮎川哲也氏の前例あるトリックと江戸川乱歩氏ばりのトリックが融合している

No.2 6点 人並由真 2016/08/03 12:00
(ネタバレなし)
『アムステルダム運河殺人事件』(長めの中編~短めの長編)と『セント・アンドリュースの事件』(短め~普通の長さの中編)の二本を収録。海外を舞台にした邦人の殺人事件ものというくくりで、二作品を一冊にまとめている。

 表題作は、現実に起きたバラバラ殺人事件に立脚したロジカルな謎解きパズラー。実話を題材にした前提の分だけ、社会派的な要素も骨太な人間ドラマも抜きにガチガチのパズラーに向き合えるという清張のワクワク感が窺えるようで微笑ましい。
 死体の身元を隠すために頭部や手首を切断したなら、なぜその一方で当人に関連した遺留物をいっしょに残しておいたのか? という謎の設定はなかなか魅力的。なお小説として語られるその真相は説得力はあるものの、前述の謎の解明としてはちょっとだけ肩透かしなのは残念。なんでバラバラにしたか? という理由づけ自体は、なるほどひとつの創意だろうが。
 しかしこの事件、たしかに謎解きミステリとしての解法はほかにもありそうな感じで、だからこそ有栖川作品や2016年の新作『アムステルダムの詭計』(原進一)などの後続作が登場しているわけである。そのうちそれらも読んでみよう。

『セント・アンドリュースの事件』の方は、清張には珍しく? ××トリックが用いられており、その方向でトリッキィな一編。
 大ネタは途中で気づくが、細部まで全部先読みすることはちょっと難しいかもしれない。ただし探偵役が語る事件の真相のなかで、被害者が殺害される場面をイメージするといささか間抜け。その状況で注意を払わなかったのは、アンタの方も悪いだろ、と思えたぞ(笑)。

No.1 6点 2010/04/05 22:17
外国を舞台にして日本人が殺される中編2編が収められています。
『アムステルダム運河殺人事件』は現実のバラバラ殺人事件に取材したものだそうです。首無し死体テーマですが、首と手首を切り落とした理由がなかなか意外で、松本清張には珍しく純粋な謎解きが楽しめます。途中で、やはり現実の事件をモデルにしたポーの『マリー・ロジェの謎』をかなり長々と解説までしているところからしても、作者がこの推理の着眼点には自信があったことがうかがえます。
『セント・アンドリュースの事件』はゴルフ発祥の地と言われるスコットランドの町での事件。これも謎解き中心の作品ですが、その地への旅行計画から話は始まり、なかなか事件が起こりません。トリックは悪くないのですが、もっと短くてもよかったかなと思えました。


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松本清張
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