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駅路
松本清張 傑作短編集〔六〕
松本清張 出版月: 1961年01月 平均: 6.14点 書評数: 7件

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文藝春秋新社
1961年01月

新潮社
1965年08月

No.7 5点 ボナンザ 2021/10/28 21:57
日常から犯罪へと転落していく様を淡々と描写する短編集で、リーダビリティは確かに高い。

No.6 5点 パメル 2020/11/26 09:28
10編からなる短編集。その中から3編の感想を。
「ある小官僚の抹殺」生身の人間の欲望や心理のディテールを描かずに、汚職事件の隠蔽構造を描くところに眼目がある。人間の顔の見えない殺人事件に組織の非情さと犠牲者の哀れさが彷彿とする。
「巻頭句の女」平野謙氏が「一人の女性が俳句をたしなむという事実は、一般にはありふれたことだ。しかし、この被害者の場合、わずかに俳句に思いを託するということは、いわば全人的な思いにほかならなかった。」というように、短編の作品構成が有効に働き、タイトルの「女」はひとことも語らないだけでなく登場もしないが、明瞭な人物形象を可能にしている。
「薄化粧の男」いわば深層心理を変わった人間に具象化することで、奇矯な人間たちが行動する心理を狙っている。結末も意外性があり作者の豊かな構成力をうかがわせる。

No.5 7点 2020/08/05 23:33
表題作等10編の内、『ある小官僚の抹殺』はカッパ・ノベルズ版『黒地の絵』で読んだことがあります。この作品はドキュメンタリー・タッチで描かれた、タイトルからも推察できるようにいかにも社会派な作品です。あと倒叙もの『捜査圏外の条件』も、疑われないための段取りや、その企みが崩れるきっかけは覚えているのですが、どこで読んだのだったか。
他の方も指摘されているとおり、謎解き要素の特に強いのが『巻頭句の女』と『薄化粧の男』。後者はクリスティーの得意とするあの手ですね。表題作は、『巻頭句の女』や『白い闇』と共通するところがありますが、3つの中では最も印象が薄く、これを表題作にするのかなと思えました。
まあ『万葉翡翠』と『陸行水行』という歴史の謎を探るという意味での歴史ミステリを2作揃えたところが、本書の目玉でしょうか。後者の中では、ジョゼフィン・テイの『時の娘』も言及されています。

No.4 6点 まさむね 2020/01/27 22:14
 やっぱり、清張短編は響くなぁ…という印象。一方で、別短編集「張込み」の収録作と比べると、本作の方が清張の研究気質が強く出ている影響もあるのか、スパッと切り取る鋭利さという面では、多少劣る気もします。あくまでも「張込み」収録作との相対比較であって、水準以上であることは間違いないのですが。
 いくつかの短編の短評を(丸数字は新潮文庫の掲載順番)。
①白い闇:読むのは多分3度目かな。何度読んでもラストシーンが印象深い。
④巻頭句の女:短尺でありながら、読中あれこれ想像させられる展開は流石。
⑤駅路:あの時代だからこそという面がある一方で、サラリーマンの本質は変わっていないかもという面が何気に興味深い。
⑧薄化粧の男:ミステリーとしても面白いのだけれども、個人的には2つ目の「死」に至る心情に想いを馳せざるを得ない。
⑩陸行水行:「邪馬台国」問題。若い時分に読んで、途中で挫折したような気がする。今読んでみると、奇妙な味わいのある作品とは言えるかな。

No.3 5点 E-BANKER 2020/01/18 14:56
新潮文庫で編まれた清張短編集の第6集。
主に昭和30年代の日本。良く言えばノスタルジック、悪く言えば貧乏で暗い・・・そんな時代背景。
初版発行は1965年。

①「白い闇」=青森で女をつくり家を出奔したと思われた男。残された妻は甥を頼りにしているうちに・・・。物語はふたりの東北旅行中で思わぬ展開に。そして十和田湖の白い闇から現れたのは!
②「捜査圏外の条件」=ある男を殺すために7年も待った男。清張の作品の中でよく目にする展開なのだが、7年も待った挙句にこの結末とは・・・ご愁傷さまでした。
③「ある小官僚の抹殺」=「抹殺」である。単なる殺害でなく「抹殺」・・・。話の筋としては昔政界の事件などでよく耳にした疑獄事件。ロッキードなどでもそうだけど、トカゲのしっぽのように切られるのが“小官僚”なのだ。悲しい・・・
④「巻頭句の女」=胃癌で余命いくばくもない女。俳句の才能を買っていた男が、女の死に疑問を持つ・・・。本作のなかでは珍しくミステリー色が濃い作品。
⑤「駅路」=刑事が最後に放つセリフ。『まぁ一概には言えないが、家庭というものは、男にとって忍耐のしどうしの場所だからね』(!)
そのとおりですな。プロットとしては④と被る印象。
⑥「誤差」=死亡推定時刻の「誤差」のことなのだが、結局それだけかよ!って思うのは私だけ?
⑦「万葉翡翠」=万葉集に登場する和歌の解釈の話かと思いきや、途中から一転殺人事件が発生。種が芽吹いて事件が表面化するところは島田荘司の「出雲伝説7/8の殺人」を思い出した。
⑧「薄化粧の男」=中年オヤジのくせに若い女性にモテると勘違いしている男。そいつは太ぇ野郎だなぁ・・・というわけで殺されます。しかしながら死亡推定時刻には本妻と愛人は取っ組み合いのケンカ中だった。女ってやっぱり恐ろしい・・・。気を付けよう!
⑨「偶数」=自分の出世の邪魔になる嫌な上司。そいつを謀略のうえ罪に陥れた男なのだが、清張作品ではこういう輩はたいがい自ら墓穴を掘ることになるのだった・・・。ご愁傷さまです。
⑩「陸行水行」=“邪馬台国はどこにあったか”という古くからあるテーマ。要は魏志倭人伝の解釈次第ということなのだが、本作はそんな邪馬台国の謎に取り憑かれた男のある種悲しい物語。

以上10編。
清張の短編もかなり読み込んできた。するとどうしても似通ったプロット、テイストが目に付くようになる。
それはまぁ仕方ないのだが、本作収録作にも既視感のあるものが多かった印象。
もちろん手堅い面白さはあるし、特に余韻を引くラストはさすがというものも多い。
というわけで、トータルでは水準級という評価に落ち着く。
(個人的ベストは④or⑧。⑩はどうかな?)

No.2 6点 ALFA 2017/03/08 14:47
表題作を含む11編からなる短編集。
いずれも40ページほどの短尺なので、長めの前振りと急転直下の解決という構成になるのは仕方がない。
中では「巻頭句の女」が本格ミステリの骨格を持っている。できればもっと長い尺で読みたかった。
フェイバリットは「陸行水行」。厳密にはミステリではないしハッピーエンドでもないが奇妙な味わいのあるエンディングである。

No.1 9点 斎藤警部 2015/11/03 19:04
新潮文庫のキラーコンテンツ「松本清張 傑作短編集」推理小説篇の第二巻。
第一巻「張込み」と較べたら多少は息の詰まる緊迫も緩まるが、だからと言って。。。。
清張のハードな短篇が好きなら必読。

白い闇/捜査圏外の条件/ある小官僚の抹殺/巻頭句の女/駅路/誤差/万葉翡翠/薄化粧の男/偶数/陸行水行
(新潮文庫)


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松本清張
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