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[ 本格 ]
スターヴェルの悲劇
フレンチシリーズ/別題『スターベル事件』
F・W・クロフツ 出版月: 1954年05月 平均: 7.23点 書評数: 13件

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早川書房
1954年05月

番町書房
1977年07月

東京創元社
1987年09月

No.13 8点 蟷螂の斧 2024/04/06 10:32
放火、窃盗、殺人、死体消失など緻密に計算された犯罪を、フレンチ警部が地道な捜査と推理によって暴いてゆく。端から犯人を特定しての読書。こんな読み方は、ほとんどしませんがピッタンコでした(笑)。すると、作者が如何にミスリードを仕掛けているかがよくわかりました。なお、本邦作品であれば、大幅な減点対象となるアンフェアな記述がありました。しかし、翻訳ものなので、誤訳かも???。なので許容するしかないか(苦笑)。これを書いちゃあ絶対駄目でしょうというレベルです。また、巻末のミステリ談義で「フレンチ警部最大の事件」の犯人がネタバレされていました。読もうかなと思っていた作品なのででガックリ。

No.12 5点 レッドキング 2022/08/17 22:24
クロフツ第七作。荒野の古屋敷に住む守銭奴富豪と使用人夫婦の焼死。当初の火災事故が強盗殺人事件に反転するが、容疑濃厚な人物は既にして焼死体・・・ 姿なき殺人者へ仕掛けられるフレンチのトラップが、なかなかにワクワク。ラストツイストも見事に決まる。

No.11 7点 弾十六 2022/08/16 23:32
1927年出版。フレンチ第3作。Collins初版は “Inspector French and the Starvel Tragedy”で、フレンチ警部の名前を三作続けてフィーチャーしています。創元推理文庫(1987年9月初版、我が家のは2004年三版)は大庭さんの翻訳。安定した堅実な出来。巻末の付録は充実していて読み応えがありそう。(私はネタバレが怖くて、ざっと目を通しただけですが…)
本作は、なかなか派手な事件(難癖をつけると、当時の水準を考慮しても、消防の調査が不充分な気がします…) クロフツさんは最後に活劇を持ってくるのが多いけど、今回のは微妙。まあでも展開がいろいろあってとても面白い作品です。特に第11章から第14章への流れが良かった。
以下トリビア。
作中現在はp41、p75、p217から1926年9月。
英国消費者物価指数基準1926/2022(67.94倍)で£1=11023円。
兵器関係ではMills Bombが登場します。読後にWikiなどで調べていただければ。
p8 献辞(TO MY WIFE / WHO SUGGESTED THE IDEA FROM WHICH / THIS STORY GREW)◆クロフツ作品で献辞付きは初めてかも。
p13 九月十日(September 10th)
p13 水曜日にフラワー・ショウ(flower show opens on Wednesday)◆ The Ancient Society of York Floristsは1768年創設、世界最古の園芸協会で、最も古くから続いているフラワー・ショウという記録を保持しているようだ。当該協会のHP参照。
p14 十ポンド
p14 スコットランドの発音(in his pleasant Scotch voice)
p18 スターヴェルくぼ地(Starvel Hollow)
p22 いつも木曜日ごとにまわってくるパン屋(the baker… make his customary Thursday call)◆この表現だと週一かと誤解したが、実は「週三回」p31参照。試訳「木曜日通例の配達時に…」
p28 死因審問◆お馴染みの「インクエスト」だが相変わらず定訳が無い。
p30 すべての陪審席がふさがった(until all the places in the box were occupied)
p30 真実の評決を下すよう最善をつくす…(justly try and true deliverance make) ◆ 陪審員の宣誓の一部。全文は以下のような文言。You shall well and truly Try, and true deliverance make, between our Soveraign Lord the King[Lady the Queen], and all persons shall be given you in charge according to your Evidence, so help you God. 実は全文が載っている資料が見つけられず、数種類の宣誓文から適当に再構成したので怪しいです。
p30 陪審は遺体を調べましたか(the jury viewed the remains?)◆1926年の法改正で、検死官が不要とすればviewは省略可能となったが、ここでは昔どおりに行なっている。
p31 パン配達の馬車で、一週間に屋敷に三回パンを届けていた(drove a bread-cart… three times a week)
p39 旅館のバーメイド(barmaid)
p41 九月十五日の夜(on the night of the fifteenth of September)◆事件の日付。p75から水曜日。
p41 死因については(the cause)◆事故だったのか、故意だったのか、という事。
p45 年に約130ポンドの利子や配当金がはいる(as to bring her about £130 per annum) ◆元手は2300ポンドなので、年利5.65%。今となっては夢のような率だ。
p46 ケーキ屋でお茶を(had tea at the local confectioner’s)
p49 一代限りの生涯不動産(a life interest)◆ 辞書では「生涯利益:財産所有者が生涯にわたってその財産から得る利益; 死後, 他の人に譲渡できない」とあった。
p49 当座預金の口座(a current account)
p49 二十ポンド紙幣(£20 notes)◆白黒で裏面白紙の£20 White(1725-1945)、サイズ211x133mm
p53 探偵小説(detective stories)
p63 リーズのカーター・アンド・スティーヴンスン社(Carter & Stephenson of Leeds)◆架空メーカー。
p63 一ポンド金貨(sovereigns)◆ジョージ五世の肖像(1911-1932鋳造), 純金, 8g, 直径22mm
p75 九月十四日、火曜日◆該当は1926年。
p80 わたし自身の命令で10ポンド以上のすべての紙幣を記録するのが習慣になっていました(By my own instructions it has been the practice to keep such records of all notes over ten pounds in value)… しかし、そういう記録は長くは保存してありません◆ 英国では、銀行の決まりとして、高額紙幣は出納時に必ず番号を記録するのだと思っていた。詳細は未調査。
p86 十六ポンド八シリング四ペンス… 宿泊料、食事込み◆フランス旅行三泊四日?の旅費一人分。
p96 壁には1880年代はじめの英国王室一家の写真(pictures, a royal family group of the early eighties)◆ヴィクトリア女王時代ですね。
p109 外国旅行が好きらしいね(Fond of foreign travel, aren’t you?)
p112 五千フラン◆1926年のポンド/フラン換算は金基準で£1=149フラン。5000フランは33.6ポンド。
p114 貸金庫料三十シリング(The rent of the safe, 30/–) ◆期間不明。一年分の代金か?
p116 クリケットのバット(a cricket bat)
p142 十シリング紙幣(a ten-shilling note)◆当時の紙幣は10 Shilling 3rd Series Treasury Issue(1918-1933)、サイズ138x78mm、緑と茶色。
p188 共同墓地(cemetery)◆教会所属地以外の墓地、という含みがあるようだ。
p216 自転車用のアセチレン・ランプ(an acetylene bicycle lamp)◆懐中電灯の代わりに使われている。『製材所の秘密』にも出ていた。
p217 一九二六年九月十四日(14th September, 1926)
p220 十二ポンド◆葬儀代一式、なんとか簡素なのが出来るくらいの金額。
p222 七十五日(a nine days’ wonder)◆日数は、日本語の言い方に合わせた翻訳。
p223 アームストロング主席警部(Chief Inspector Armstrong)
p270 人相書(Age XX; height about XX ft. XX inches; slight build; thick, dark hair; dark eyes with a decided squint; heavy dark eyebrows; clean shaven; sallow complexion; small nose and mouth; pointed chin; small hands and feet; walks with a slight stoop and a quick step; speaks in a rather high-pitched voice with a slight XXXXX accent) ◆ネタバレ防止のため一部伏字。身長、体格、髪、眼、眉、髭、顔色、その他、の順番。髪、眼、眉がdarkで共通だが、肌の色はsallow(血色悪い青白)。「darkは”髪/眼/肌”が暗っぽい、と言う意味だが、髪や眼が黒っぽい人は肌が浅黒いのが普通だからdark=“浅黒い” でも問題無いのだ」というヘンテコ説への反証になるかな?
p270 警察公報(Police Gazette)
p277 ウイリス警部(Inspector Willis)◆『製材所の秘密』の刑事と同一名だが、同一人物だという手がかりは無い。
p290 三十シリングから三十五シリング◆ 19000円程度。結婚指輪(wedding ring)の値段
p293 ホンブルグ帽(Homburg hat)
p300 ピッツバーグの◯◯だったら、しっぽをつかまれた(had fallen for the dope)と言うところ◆配慮して匿名にした。『フレンチ警部最大の事件』関係者。ただし当該作の中に、この英語表現は出てこない。米語っぽい言い方という事か。
p318 スコット記念塔(Scott’s Monument)◆ 作家ウォルター・スコットの記念碑。Wiki “The Scott Monument”参照。
p318 諺に言う熱い鉄板の上のめんどりのように(like the proverbial hen on the hot girdle)◆ (chiefly Scot) Someone who is in a jumpy or nervous state
p320 タナー警部(Inspector Tanner)◆『ポンスン事件』の刑事と同一名だが、同一人物だという手がかりは無い。(p277、p300と合わせて考えると、作者のつもりでは同一人物なんでしょうね)

No.10 7点 斎藤警部 2018/10/08 14:28
「嵐が丘」を思わせるヨークシャーの荒野(ムーア)に建つスターヴェル邸で強盗放火三重殺人。第一容疑者(ホンボシ)は被害者の一人でもあり悪評芬芬の使用人。ところがこやつはぐんぐんの体で物語の中に生き還る。挙句の果て’実は生きてんじゃね?’との疑惑にフレンチも照準を合わせるが。。。 クリスティ的人間関係煙幕を俗物系ならではの渦へ巻き込み返した、これぞ心理的物理トリックスプラッシュ全開の眩しさ!真犯目星が狂っていたからこその結末意外性と意外な冒険アクション展開も見逃せない、が、そこが同時に本作の弱点を晒しちゃってるのも確か。こりゃ諸刃の剣だ。 とは言え全体通してたいへん面白い本なんだぜ。’指輪が降って来た’エピソードとミッチェル主席の粋なアレも忘れ難い。 やっと思い出して取ってつけたかのようなラスト一文さえ心地よし。もう少しで8点行った(7.4超)。惜しい。 或る場面でスコッチソーダをオーダするフレンチに、俺も乾杯だ!

創元推理文庫巻末の、旧いクロフツ鼎談(河太郎先生登場)&エッセーは良いね。

No.9 8点 ボナンザ 2018/08/15 23:13
クロフツ初期の傑作の一つ。アリバイ破りもの以外では最高の出来ではあるまいか。

No.8 7点 人並由真 2017/09/12 15:31
(ネタバレなし)
 りゅうぐうのつかいさんのレビューがとても的確で、あまり付け加えることはないのだが、私的にとりわけ印象的だったのは、事件の関係者たちが情報を語り、そのなかである者(たち)は事情から真実を隠そうとする、そのパーツを埋めていくフレンチの手際。これが丁寧な筆致で語られていて、まったく退屈しなかったこと。
 後半のある場面での(フレンチが痛手を受ける意味での)逆転劇も地味にショッキングで、これは捜査陣(名探偵)の介入まで予期した犯人側の見事な工作だよね。この辺も面白い。たしかに手掛かりの少なさや真相発覚前の情報の撒き方などを考えると、パズラーというより、フレンチと彼を支える上司・仲間たちの警察小説であるのだが。
 あと本書前半での不遇なゴシックロマンのヒロイン風のルースが後半ほとんど物語の表に登場しなくなり、フレンチの捜査主体になるのに若干の違和感も覚えたが、これは自分がクロフツの作品をバラバラな順番で読んでるからだろうな。
 たとえば後年の『船から消えた男』あたりとかは、クロフツ自身も違ったこと(フレンチとは別に、その作品オンリーのメインキャラクターをちゃんと最後まで動かす)をやってみたくなったのかと思う。

 ちなみに本作はポケミス版(井上良夫のたぶん抄訳版)も番町書房のイフノベルズ版(たぶん本邦初の完訳)も持ってるのだが、例によってブックオフで(税込み105円当時に)買った創元文庫版でついこないだ初めて読んだ(苦笑)。
 そしてその創元文庫版の巻末の座談会は圧巻の読み応えだけど、瀬戸川猛資さんが言っていたという「クロフツは好きなので老後の楽しみにとっておく」というお言葉に感無量。少しでも多く生前に楽しんでくださったことを心から願う。

No.7 8点 あびびび 2016/11/29 16:08
クロフツといえばアリバイ系…と思い込んでいたのは明らかに勉強不足で、過去に二、三冊読んだだけでイメージを固定させていた。

ところがこの作品は読むにつれ、のめりこんでしまった本格的なものである。最後の落ちは、映像で見たほうがより効果的なシーン。ヒチコックの映画、「サイコ」で犯人がシャワーをしている被害者を殺すときのあの高音の効果音、「キャン、キャン、キャン」を入れればより戦慄が…と馬鹿なことを考えてしまった。

ということで、「樽」よりもこちらのほうが好みです。

No.6 8点 りゅうぐうのつかい 2016/10/29 17:52
クロフツと言うと、「樽」と「クロイドン発12時30分」が有名で、私もその二作品しか、これまでに読んだことがなかったが、この作品は予想を超えるすばらしい作品だった。
犯人を特定するような十分な手掛かりが示されていないので本格物ではない。フレンチ警部の地道な捜査過程を描いた警察小説だが、捜査の過程で次々と意外な事実が判明し、リーダビリティーが高く、事件の見せ方が非常に巧いと感じた。作中でフレンチ警部が語っているように、殺人、窃盗、放火、死体泥棒とあらゆるものが揃った事件。フレンチ警部の聞き取り調査に対して、誰が嘘をついているのかが大きな問題となる。
特筆すべきなのは、犯人の犯罪計画の綿密さ。これぐらい見事な犯罪計画のミステリーには、なかなか出会えない。
ミッチェル主席警部の洞察力もすばらしい。捜査の途中で、ミッチェル主席警部はフレンチ警部に対して、スターヴェル事件とは一見何の関係もないような指輪投棄事件の担当を命じるが、二つの事件にはつながりがあることがわかる。ミッチェル主席警部の機知には感心せざるをえない。
劇的な犯人逮捕劇で幕切れとなるが、多分、最後の方になるとほとんどの読者が犯人の予想がつき、フレンチ警部の大失策を心配しながら見守ることになるだろう。

No.5 7点 nukkam 2016/09/11 03:16
(ネタバレなしです) 1927年発表のフレンチシリーズ第3作である本書は通常の本格派で見られる、誰が犯人か、どのように殺したか、なぜ殺したのかといった解くべき謎が明確に与えられている事件ではなく一体何が起こったのかという網羅的な謎を扱っているのが特徴です。下手に書くと焦点ぼけの謎解きになりかねない難しいテーマですがクロフツの堅実過ぎるぐらいの作風にはかえってマッチしているように思えます。当時としては思い切ったどんでん返しが用意されているのも印象的で(人によってはこのミスリーディング手法は感心しないかもしれませんが)、初期代表作と評価されているのも納得の一冊でした。

No.4 7点 E-BANKER 2013/12/29 21:48
1927年発表の長編。
フレンチ警部ものとしては「フレンチ警部最大の事件」などに続く三作目に当たる作品。

~ヨークシャーの荒野に建つ陰気なスターヴェル屋敷が一夜にして焼け落ち、当主と召使夫婦の三人が焼死した。当主の姪である若く美しい娘の旅行中の出来事で出火原因は不明。金庫の中に溜め込んだ莫大な量の紙幣も灰となった。だが、この火災に疑問を抱き、犯罪の匂いを嗅ぎとった銀行支配人の発言をきっかけに、フレンチ警部の捜査が開始される。事故だったのか、それとも殺人・放火といった忌まわしい犯罪が行われたのか。捜査が進むにつれ、残忍な犯罪者の邪な企みが浮かび上がることに!~

実にクロフツらしい「堅実&堅確」な作品。
フレンチ警部のキャラクター同様、生真面目で着実なミステリーに仕上がっている。
作品としての骨組みは「フレンチ警部最大の事件」などとよく似ていて、フレンチの捜査が進展した中盤過ぎには、事件の概要はつかめるのだが、ラストにミステリーらしいドンデン返しが待ち受けている。

クロフツといえば「マギル卿最後の旅」に代表される「アリバイ崩し」が頭に浮かぶが、本作ではそういう要素は殆どなく、専らフーダニットに拘ったプロット。
○れ○りを使ったミステリーは洋の東西問わず古典作品に多いので、気の利いた読者ならラストのサプライズは読みやすい手筋なのかもしれない。
もっとも、本作の場合、フレンチ自身が最後の最後まで真犯人を誤認しており、真犯人に気付いたのもちょっとした偶然からというのが珍しい。
(そういう意味では、読者が作中の探偵よりも先を越せるというレアな作品とも言えるなぁ)

とにかくクロフツが好きという(私のような)読者であれば、満足できる作品だろう。
ただし、他作品より優れているかいうと、それほどでもないという感じで、作者としては「中の上」という評価。
(主席警部昇進に対するフレンチの功名心がそこかしこに書かれており、フレンチの“若さ”が感じられる)

No.3 8点 2012/01/24 20:54
久々の再読ですが、最初と最後を除いて、途中のプロセスはすっかり忘れていました。
本作では、真相は最後逮捕の瞬間になるまでわかりません。いや、読者が見当をつけるだけだったらできるでしょうが、それを示す確実な伏線があらかじめ仕込んであるわけではありません。フレンチ警部はその瞬間、目の前にいる人物のある特徴に気づいて真相を悟るのです。
読者への挑戦を差し挟む余地が全くないということでは、フーダニットとは呼べないかもしれません。しかしその最終回答ですべてが説明できるよう構成されていますし、火災に始まる様々な謎を提示し、実地調査、仮説と検証を積み重ねていくところ、いかにもクロフツらしい謎解きミステリです。他の作家だったら1、2行で済ませそうな無駄に終わった調査も1ページぐらいかけるていねいさ。『フレンチ警部最大の事件』と似た構造とも言えるでしょうが、本作の方がよくできていると思います。

No.2 7点 kanamori 2010/07/15 21:03
フレンチ警部シリーズの第3作。
”アリバイ崩し”がクロフツの代名詞のように言われていますが、実際はそれが主要なテーマとなっている作品が多い訳ではなく、なかには本書のようなフーダニットの傑作もあります。
骨格は、スターヴェル屋敷の焼死事件を追求する捜査小説でありながら、知的パズラーとしても一級品だと思います。

No.1 7点 mini 2008/11/09 15:46
国内ものが中心で海外ものは厳選して読むタイプの読者にとって、読まれているクロフツ作品というとおそらく「樽」と「クロイドン発12時30分」の二冊のみではないだろうか
これではクロフツが最も脂が乗っていた中期の名作群を読み逃してしまうのが残念だ
「樽」は一作目で作者が書き慣れていないのが明らかで、だんだんと上手くなっていったわけだし、「クロイドン」はフレンチ警部の出番が少なく、クロフツ作品としてよりも、倒叙ものの一つという理由で読まれる場合も多い
私見だが、「樽」「クロイドン」などは後回しにして、「スターヴェル」から入るのがいいのではと思う
「スターヴェル」は作者の特徴が発揮されている上に、得意のアリバイ崩しではなく正統フーダニットなので入り易いのだ
実はフレンチ警部の名推理によって事件が解決する訳ではなく、どちらかと言えば探偵役の推理の失敗話に近いのだけれど、それが逆に意外性において効果を挙げているのだ
まぁ慣れた読者なら中途で見当付くけどね


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