皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 本格 ] ポンスン事件 |
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F・W・クロフツ | 出版月: 1969年01月 | 平均: 6.25点 | 書評数: 12件 |
東京創元社 1969年01月 |
東京創元社 1989年12月 |
No.12 | 5点 | レッドキング | 2022/06/21 18:31 |
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実証のみを支えに、ただただ真実のみに仕える探偵警官の、容疑者アリバイハント。驚き・外連味・ツイスト一切抜きの、ゆっタリとタルさを味わう古典・・と思いきや、車・列車・船・果ては飛行機まで総登場のチェイス追跡劇出て来て・・・オチに不思議な驚きが待ってた・・ちと、タルいが。 |
No.11 | 7点 | 人並由真 | 2020/09/06 20:53 |
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(ネタバレなし)
その年の7月。ロンドンから少し離れた田舎町ハーフォード。屋敷ルース荘の主人で引退した鉄工所の社主ウィリアム・ポンスン卿が、ある夜、姿が見えなくなった。気がついた執事バークスと使用人イネスが捜索を開始。やがてウィリアムの別居している息子オースチンにも知らせが行くが、当の老主人は近所の川で死体となって発見された。当初は事故死と思われたが、ウィリアムの友人の医者ソームズは他殺の可能性を指摘。スコットランドヤードのタナー警部が捜査に乗り出すが、主だった関係者たちにはそれぞれアリバイがあった。 1921年の英国作品。 少年時代に購入して数年前から読みたいと思っていたが、家の中の本が見つからない。そうしたら昨日ひさびさに出かけた古書市で、家の中にあるはずのものとほぼ全く同じ装丁の創元文庫(1974年の第10版)を発見。ちょっと迷った末に、売価300円+消費税で買ってきた。 それで帰宅してからすぐに読み始め、二日間で読了。 例によってパズラーというより地道な警察捜査小説だが、容疑者の揺れ動くアリバイ、ほぼ同格に数を増していく被疑者たち、とミステリ的な趣向でも普通に面白い。海外にまで懸命に容疑者を追跡するタナーの奮戦ぶりも盛り上がる。 しかし創元文庫のトビラにはずいぶんとトリッキィな作品のごとく書いてあるので、それでかねてより興味を煽られていたが……ああ、こういう意味合いで、ね。いや、今となっては素朴な感じもあるけれど、謎解きミステリとしての狙いどころは21世紀の現代でも、時代を超えて微笑ましいと思う。告白による真相解明の部分がちょっと長過ぎる気はするけれど、こういうのはまだまだ好きですよ。 ちなみに最後まで忘れていたけれど、どっかの雑誌か評論本かなんかの記事で、この作品の大ネタ((中略)は(中略)は(中略))を教えられていたんだったよな。 最後になるまでそのことは完全に失念していた。ジジイになってから初めて旧作ミステリを読んだおかげゆえの僥倖ってのも、タマにはある(笑)。 評価は、これを当時ドヤ顔で書いたのであろう? クロフツの茶目っ気を微笑ましく思って、0.5点オマケ。 |
No.10 | 6点 | 弾十六 | 2019/06/21 09:53 |
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1921年出版。創元文庫(井上勇)で読みました。端正な翻訳です。
事件発覚から捜査の流れがプロっぽい描写で静かに描かれます。この文体、ハマりますね… 展開が良く、ネタも結構面白い。印象は『樽』に良く似ています。ところで当時の英国鉄道は定刻発着が普通だったのでしょうか… (現在は定刻だとビックリな状態らしいんですが) 以下、トリビア。 銃は「小型の六連発のコルト拳銃」(a small-sized six-chambered Colt’s revolver)が登場。該当はColt Pocket Positive(1905-1940)、32口径(.32 Colt弾, .32S&W弾)、2.5", 3.5", 5", 6"銃身あり。3.5インチ銃身だと銃長191mm、重さ500g程度。 7月4日が日曜日との記述(p351)あり、1920年が該当。事件は水曜日の夜に発生。 現在価値は英国消費者物価指数基準(1920/2019)44.32倍で換算し、円で表示。 p11 三シル六ペンスの葉巻(three and sixpenny cigars): 1058円。1本あたりの値段。 p11 “だんな”(the boss)と呼ぶくせ: 執事には耳障り。 p18 五シル出せば一ポンドかける(I’ll lay you a sovereign to five bob): 5対20の賭け。そば仕え(valet)の請け合い。1511円対6043円。 p19 年額千ポンド: 息子への手当て。604万円。 p40 十シル賭けてもいい: ボート係の推測。3021円 p123 クラブ人種(a club man): シルクハットとフロックコートで変装出来るらしい。 p125 一ポンドのチップ: タクシー運転手に、指示付きで。6043円。 p126 二ポンド: 給仕長に席の便宜を図ってもらうため。12086円。 p220 五ポンドの謝礼: ある風貌の人物がタクシーに乗車したかどうかの情報提供に対する謝礼。30215円。この額でガセネタが一件もないというのはちょっと不自然か。 |
No.9 | 7点 | ボナンザ | 2018/03/05 21:26 |
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初期の傑作の一つ。クロフツが難しそうと敬遠している人にもおすすめできる明快トリック。 |
No.8 | 5点 | nukkam | 2016/05/10 18:49 |
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(ネタバレなしです) 1921年発表の第2長編のアリバイ崩し本格派推理小説です。プロの捜査官であるタナー警部の捜査に対抗させるかのようにアマチュア探偵を登場させているのがいい意味でのアクセントになっています。それでも物語のテンポはゆっくりですが、終盤の追跡劇はなかなかスピーディーでサスペンスに富んでいます(ある意味クロフツらしくない)。デビュー作の「樽」(1920年)にはない工夫を色々織り込んだ意欲作だと思いますが、問題は真相でしょう。堅実な作風のクロフツですが本書では実に大胆なことをやっています。しかしマニア読者なら評価するかもしれませんが、一般的な読者はどちらかといえばお粗末と感じてしまうかもしれません。 |
No.7 | 7点 | 了然和尚 | 2015/11/20 16:50 |
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クロフツと松本清張は似てますね。展開がわかりやすく、スリリングで読み飽きさせないのですが、その分、謎は出尽くしてしまうので、ラストはちょっとさみしくなりやすいです。また両者とも、時代の雰囲気や旅情の描写が得意で、作品の雰囲気の醸しだし方がうまいです。本作なんかは、まるで25年物のウイスキーを飲んでいるような熟成感があり、推理小説も時代を経て、味が出る作品もあるんだなと感心しました。 |
No.6 | 7点 | 斎藤警部 | 2015/06/17 10:56 |
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「ペトロフ」で鮎川哲也がもう一ひねりしたくなった気持ちもよく分かる、既に一ひねり施された、最後何とも不思議な気持ちになるアリバイトリック巧篇。
(「三つの棺」を敢えて密室物と呼ぶ流儀で「ポンスン」は単純にアリバイ物と呼んでおく) 「樽」に尻込み中の方も、こっちは読んでおくといいですよ。 |
No.5 | 7点 | 空 | 2014/01/31 22:54 |
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クロフツ第2作で活躍するのはタナー警部で、たぶん後のフレンチ警部もの『スターヴェルの悲劇』で言及される人と同一人物でしょう。ただし、別の素人探偵役によって捜査の不備が指摘されるのは前作と似ています。
今回は、殺人容疑者が2人いて、その両方にアリバイがあるのですが、そのそれぞれを別の探偵役が崩してしまいます。一方は足跡利用、もう一方は時刻表タイプと変化をつけていますし、鮎川哲也の某作品のような偶然の重なりではないところが、うまく考えられています。さらにその後3人目の容疑者まで出してきて、逃亡したこの容疑者をタナー警部が様々な乗物を駆使して追跡していくところは、サスペンスもあります。 クロフツらしい試行錯誤捜査の果てにたどりつく真相については、肩すかしだと言う人がいるのもわかるタイプではありますが、個人的には論理的に納得のいく解決でした。 |
No.4 | 7点 | toyotama | 2010/10/06 11:19 |
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口封じに殺人を計画していた人間が、アリバイを作っておいて事故で死ぬ。しかも、残りの2人は計画だけしていて犯してもいない殺人計画の理由が言えないために、当初のアリバイ頼みで逃げようとする。アリバイを崩してみれば、犯人はいなかった。
んー、なんとなく日本人が書くと喜劇風になるのですが、そこは真面目な(?)クロフツ先生。ちゃんと真面目な作品になってます。 「ポンスン殺人事件」という題名じゃないのがミソ? 創元推理文庫の紹介文に「ミステリの愛読者は冒頭のたった一行のヒントから推定するだろう」って書いてありますが、そんなの無理! |
No.3 | 6点 | E-BANKER | 2010/10/05 22:55 |
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名作「樽」に続く2作目の長編。
探偵役はスコットランド・ヤードのタナー警部ですが、キャラクター的にはほとんどフレンチ警部とイコールのような印象です。 本作品、”いかにもクロフツ”といった作品。 当初有力視された容疑者2人については、タナー警部の丹念な捜査により、アリバイ成立! ところが、その後登場した素人(容疑者の婚約者)の推理が的中し、何とアリバイが崩れる・・・という展開。何だか「樽」と似てますね。(タナー警部形無しです) こういった作風自体は嫌いではないんですが、本作は他の佳作に比べると、やや捻りが足りない印象ですねぇ・・・ 特に「殺人事件」そのものの真相が「あれ」では、ちょっと肩透かし・・・ |
No.2 | 6点 | kanamori | 2010/07/15 18:21 |
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フレンチの登場しない初期4作の2作目。
ポンスン卿殺害の容疑者は早くから3名に絞られており、前作の「樽」などと比べると地理的広がりにも欠けるので、比較的地味な印象です。 タナー警部の捜査によって状況が二転三転する所が面白いのですが、捜査小説好きでないと退屈と感じるかもしれません。 |
No.1 | 5点 | 測量ボ-イ | 2009/06/05 21:09 |
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クロフツらしいアリバイくずしもの。この作品もフレンチ
警部は出てきません(確か)。 |