皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格 ] ギルフォードの犯罪 フレンチシリーズ |
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F・W・クロフツ | 出版月: 1961年01月 | 平均: 5.60点 | 書評数: 5件 |
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東京創元社 1979年11月 |
No.5 | 4点 | レッドキング | 2022/12/04 16:27 |
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クロフツ第十七作。倒叙変化球二作の後、王道直球・・緻密まったり捜査・アリバイトリック崩し・乗り物チェイス劇(英仏ベ蘭またぐ路線図の大仰な事)・・に戻り、経営危機企業トップ達の苦し紛れ犯罪が殺人事件に連動し・てな既視感溢れる設定もナカナカ居心地良く。 ※仮にも業界トップ会社の重役が貧民街に住んでるてのが、時代言うか・・ |
No.4 | 7点 | 斎藤警部 | 2021/07/16 17:05 |
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典型的クロフツ、むしろ鮎哲w!彼のファンだったら、鬼貫警部モノ幻の長篇みたいなつもりで充分読めるのでは。 宝石商の会社とその社長宅を舞台に、殺人と重窃盗、立て続けに発覚した二つの事件を巡り、犯人捜しとアリバイ破りの幸せな共存で魅せる快作。というか「そこに密室トリックはあるのか?」「そこにアリバイトリックはあるのか?」って何とも微妙な霧の深さが重なり合ってるんです。ダテに事件二つも起こしてないな有機的クロフツ、って感心します。 伝言ゲームを捻ったような電話のトリック、いいねえ。死亡推定時刻の妙、イカすねえ。指紋の在った場所にも(ミステリ的)緩急が。。金庫破りの大胆トリック、こいつは現代のSNS写真を使った或る悪事までをも彷彿とさせます。いっけん普通のようで実は特殊性を秘めた「物理的」殺人動機! んんん~、堅実ながら思わず唸る本格ミステリのポイントがいくつもあって愉しいぞ!もちろんフレンチや周りのコップ達の地道な捜査過程こそ実に味わい深くて、しかも鮎哲っぽくって、最高なんですが。 終盤タナーの登場もまた嬉しからずや。 最後の章だけは、クロージングの捕物だけでなく、もちょっと派手な意外性を弾けさせてもよかったかな、、とは思う。 でもいいさ。
どうでもいい事ですが「フレンチはたいぎそうに姿勢をあらため、坐り直した。」を「フレンチはたいそうぎに姿勢をあらため、坐り直した。」と読んじゃって噴き出しました。 冒頭地図にブライトンやらベルギーやら出て来るんで、三笘薫(川崎フロンターレ)の移籍を思い出しました。 しかしこの平成復刊版の表紙(宝石いっぱいを絶妙に犯罪っぽく配置)、何度見てもいいな。 |
No.3 | 7点 | E-BANKER | 2019/11/19 21:28 |
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フレンチ警部登場作品としては十三作目に当たる本作。
因みにギルフォードとはロンドンの約43km南西、サリー州にある都市のこと。 1935年の発表。 ~ロンドン有数の宝石商ノーンズ商会の役員たちは、会議のためギルフォードに参集した。ところが前夜のうちに経理部長が殺され、さらに続けて会社の金庫から五十万ポンド相当の宝石が紛失していることが発見された。出馬したフレンチ主席警部にも金庫の鍵がなぜ犯人の手に渡ったのか説明のつかない状況であった。経理部長の死と紛失した宝石・・・このふたつの謎の関連はどこに潜んでいるのか? フレンチの執拗な捜査が始まる~ いつものクロフツ、いつものフレンチ警部。まさにその言葉がぴったりの作品だった。 特に今回はいつにもまして、フレンチの捜査は丁寧かつ執拗。靴底の2つや3つが磨り減ったに違いない(?)ような熱の入れよう。 「主席警部」に昇進して手がける始めての大事件ということが、フレンチの心理に大きな影響を与えているようだった。 まぁ、何十年前だろうが、警察だろうが、イギリスだろうが、組織の中で働く男なら相応の出世欲はあるし、一旦得た地位を失いたくないという心情が働くということだろう。(よく分かる話だ・・・) さて、今回の謎は紹介文のとおり、①経理部長の殺人事件と②大量の宝石の紛失事件、の2つ。 もちろんこの2つは有機的に関連していて、フレンチは双方の事件に苦しむことになる。 ②については、途中である装置(!)に気付くことで、謎の解明が一気に進むことに。この装置については、21世紀の現在からすると、ちょっとピンとこないのはやむを得ないところ。実現性には正直疑問符は付くけど、まずは作者らしい常識的な解法とも言える。 ①については終盤までフレンチも手こずるのだが、最終的にはアリバイ崩しの定番とも言えるトリックで解決に導かれる。 これも作者らしく現実的なトリックなのだが、いくら病人とはいえ、至近距離であの人物に近づかれてる訳だからなぁー、相当リスキーだよなぁーというのが弱いところ。 でも総合的に評価すれば“よくできてる”作品だと思う。何より、クロフツそしてフレンチ警部らしい捜査行を読むのが楽しい。 最後はイギリス~フランス~ベルギー、そしてオランダまでも真犯人を追っての追走劇。 ある意味、満喫させていただきました。クロフツ好きにとっての満足度は高いと思う。 |
No.2 | 5点 | ボナンザ | 2018/12/27 20:58 |
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特筆することがあるわけではないが、クロフツらしく丁寧な作品。合鍵の作り方なんかは斬新。 |
No.1 | 5点 | nukkam | 2015/02/27 22:46 |
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(ネタバレなしです) 1935年に発表されたフレンチシリーズ第13作の本書は久しぶりに伝統的な本格派推理小説となっています。一応は企業ミステリーと言ってもいいのですが、ノーンズ商会の描写は表層的なものに留まっています。フレンチが担当するロンドンの盗難事件の方が重点的に描かれていますが、ここでのトリックを読者が推測するのは難しいでしょう(フレンチが唐突に見破っています)。殺人事件のトリックの方がまだしも読者が推理する余地がありますが、こちらは旧作の焼き直し的トリックであまり感銘できませんでした。アリバイ崩しと犯人探しの両立ができているのは長所だと思います。 |