皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格 ] 二つの密室 フレンチシリーズ |
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F・W・クロフツ | 出版月: 1961年01月 | 平均: 6.12点 | 書評数: 8件 |
東京創元社 1961年01月 |
東京創元社 1961年01月 |
東京創元社 1961年01月 |
No.8 | 7点 | レッドキング | 2022/09/29 17:20 |
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クロフツ第十二作。どーせ、クロフツ「密室」なんて、ドイル・チェスタトンの類レベルだろ、て高をくくってたら・・あらら、ちゃーんと密室してて、しかも「黄色い部屋」なんかより、面白いじゃん! (^.^) |
No.7 | 6点 | E-BANKER | 2015/11/08 19:21 |
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「英仏海峡の謎」に続くフレンチ警部ものの長編作品。
1932年発表。 原題は“sudden death” ~平和な家庭には影があった。病弱な妻、愛人がいる夫、典型的な三角関係から醸し出される不気味な雰囲気。悲劇の進行は、若き家政婦アンの目を通して語られる・・・。アリバイトリックの巨匠・クロフツが趣向を変えて密室トリックを考案した。ひとつは心理的、もうひとつは物理的ともいえるトリックで、このふたつが有機的に関連する殺人事件の謎にフレンチ警部が挑戦する!~ 確かにクロフツらしくないと言えばそう頷かざるを得ない。 何しろ「密室トリック」テーマなのだから・・・ 他の方も書かれていますが、クロフツといえばイギリスはおろか、フランス・オランダなど広域にまたがるアリバイトリックとそれを丹念に捜査するフレンチ警部(初期は違いますが)・・・というのが定番。 ファンにとってはその捜査行こそが一番の楽しみ=読み所なわけです。 (それを退屈と捉える方もいるでしょうが・・・) ということで問題の密室トリックなのですが・・・ まず「物理的」と紹介された最初の密室は図解も挿入され親切なのだけど、今ひとつピンとこなかった。 昔の設備に関するトリックだからという面もあるのだけど、それ以前にそこまでして・・・というWhyの方に無理を感じた次第。 (もちろん自殺に見せかけるという理由はあるにせよ) 次の密室は「心理的」と紹介されているが、これは拍子抜けと思われても仕方ないかな。 それほど堅牢な密室だし、これはトリックそのものに拘ったというよりは、二つの密室という舞台設定に拘ったと解釈すべきだろう。 密室ものになっても、やはりフレンチはフレンチで、トリック解明のために靴底すり減らすという捜査方法は不変。その辺りのダイナミズムは本作でも十分に味わえる。 「視点」の問題は当初あまり気にならなかった(途中から視点がフレンチ警部ら捜査方に変わるというのは他作品でもよくお目にかかるので・・・)のだが、本作では結構頻繁に視点が変わっている点が斬新といえば斬新。 フーダニットについてはちょっと唐突感があったかなぁー。(動機については果たして伏線があったのだろうか?) いずれにしてもシリーズ作品としてはやや毛色の違う作品ではある。 評価はそうだなぁ・・・やや微妙。 |
No.6 | 7点 | 斎藤警部 | 2015/05/18 12:06 |
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ネタばれの核心突きそうな事を書きますと、この小説は「あのアリバイ破りのクロフツが密室トリックに挑戦(しかも一気に二つ)」と思わせておいて実はアリバイも密室でもない、クロフツにとっては密室以上にあるまじき(?)「意外な犯人」こそトリックの主眼という、売り文句の密室を隠れ蓑にした高等戦術こそがその肝かと思われます。犯人の意外性にしても、ややもすれば「ひょっとして、まさかアノ手の叙述トリックか?」と疑わせるシーンをちょいちょい挟んで来るし、実に抜け目が無い。
さて真犯人は、私が一番最初に疑った人物でした。しかし物語のその後の展開のムードで「やっぱり意外な犯人って事は無いか。。」とすっかり「犯人は決まってる、問題は密室トリックをどう解くかだ。」と思い込まされてしまった。。最後の最後の解決篇を読むと、私が冒頭近くで犯人に疑いを持つヒントとなったある行動(第二被害者とのやり取り)の他にも一杯伏線が張られていたんですね~ 上手いことやるもんです、クロフツ。 正直な所、中盤から最終盤まではちょっと退屈だなあと思って読んだのですが(犯人は分かってるつもりだったし、第二密室のトリックは詰まらなそうだったので)、、 最後の最後に大幅加点で7.45点(四捨五入で7点)に! |
No.5 | 7点 | 了然和尚 | 2015/05/07 17:39 |
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他の方のご指摘のように、クロフツっぽくない作品で、クリスティー的かと思います。
前半は叙述物のような展開で、犯人は推測できます。あと100ページ余りというところで、とんでもなく都合の良い証言が後出しで飛び出して、真犯人と作者の真の意図が推測できます。本作はトリックがしょぼいので、評価が低いようですが、構成としてはかなり楽しめると思います。フレンチがいちおう前半の主役の家政婦も疑うあたりは、作者の創作意欲を感じます。アクロイド的展開もいちおう考えてみた名残かと思います。 |
No.4 | 6点 | ボナンザ | 2014/12/23 20:34 |
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クロフツらしくさくさく読み進められる傑作。
密室トリックはまあ及第点でしょう。 |
No.3 | 6点 | 空 | 2011/03/09 21:21 |
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クロフツと言えば、アリバイ崩しでなくても広い地域をフレンチ警部などが飛び回って捜査するものが多いという点では、確かに本作は異色とも言えるでしょう。しかし、舞台を限定して密室ものを書いても、じっくりした捜査過程はやはりクロフツ、という印象を受けました。むしろnukkamさんも指摘されているように、探偵役でもなく、倒叙ものの犯人でもない人物の視点が大幅に取り入れられていることの方が、この作者らしくないと思えます。最初の1/3は完全に家政婦アンの視点です。
第2の密室はどうということもありませんが、第1の事件の機械的トリックは悪くないと思います。しかし、密室構成方法より第1の事件が殺人であることを証明する手がかりの方に感心しました。また、第2の密室トリックが露見するきっかけ部分は意外にサスペンスがあります。 悲惨な事件ですが、ラスト、アンの将来性にはほっと一息できます。 |
No.2 | 4点 | kanamori | 2010/07/16 20:57 |
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フレンチ警部シリーズの第8作。
家庭内の殺人ものという点で、地理的広がりがなく他作家の古典本格ミステリの趣でクロフツらしくない印象。 密室トリックは心理的なものと物理的なものですが、ともに陳腐でした。 |
No.1 | 6点 | nukkam | 2009/01/26 10:13 |
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(ネタバレなしです) 地味で退屈というのがクロフツの一般的評価だと思います。もっとも最近のミステリーは筋がすごく複雑で登場人物も多いものが珍しくないので、クロフツも相対的には読みやすく感じるようになりましたが。1932年発表のフレンチシリーズ第8作の本書はその中では読みやすく、入門編として勧められるのではと思います。捜査するフレンチの視点だけでなく事件関係者のアンの視点も絡めているのが構成の工夫になっており、家庭内悲劇を描いているのも(クロフツとしては珍しい)新鮮です。密室トリックはあまり期待すると失望すると思いますが無理なトリックに走っていないのが堅実なクロフツらしいですね(ちなみに英語原題は「Sudden Death」です)。 |