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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
フレンチ警部と紫色の鎌
フレンチシリーズ
F・W・クロフツ 出版月: 1972年01月 平均: 5.00点 書評数: 7件

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東京創元社
1972年01月

東京創元社
1972年01月

No.7 5点 弾十六 2023/08/20 08:33
1929年出版。フレンチもの第5作。井上勇さんの翻訳は問題なし。「めっかる」が可愛らしいです。
英国初版原題はThe Box Office Murders、こっちの方が劇場(映画館)の事件だよ、という感じがあって好きだけど、日本語になりにくかったのかも。Murderの文字がタイトルに入るのはクロフツ作品には珍しい。(長篇では唯一だろうか?)
冒険風味がありなかなか楽しい作品なんだけど、初読時には結構な不満が残った。フレンチの打つ手がなんだかなあ、で物足りなかったり、このやり方絶対違法じゃん、どうなの?とかだったり、犯人の計画もなんか無駄なところが多いような気がした。でもトリビア漁りのために再読したら、クロフツのデカが得意なのはコツコツ捜査で試行錯誤して解決!なので、犯行の先手を打ったり、犯人と丁々発止とやり合う一騎打ちにならないのは当然。とすると女性版『チェイン』の冒険風に、主人公を謎に巻き込まれる女性にしてフレンチは遠景に置くのが正解だったのかも知れない。

本作は『製材所の秘密』と同様、犯罪のアイディアを先に思いついて、これをもし上手く実行するとしたら… と練り込んでいったのではないか。ネタの大穴は作者も気づいていて、最後の方(第14章の最後)に持ってきて誤魔化してるが、絶対バレる。その特徴は全く隠せないし、上手な嘘の説明も思いつかない(作者も投げている)。なので犯行に関わった者なら絶対すぐに変だと気づいてしまうはずだから…
本作にはインクエストに対処する警察の基本態度が良く出ている。捜査上の重要ポイントはほとんど知らせるつもりがないのだ(もちろん評決に欠かせない情報は証言しなければならないのだが)。p70のようなセリフは冗談めかしているが本音だろう。フレンチも証言する羽目になりそうになってヤバイと思うところが愉快。
以下トリビア。
作中現在はp81から1928年6月が冒頭シーン。英国のトーキー上陸は1928年9月なので本作はまだサイレント映画の世界だ。
価値換算は英国消費者物価指数基準1928/2023(80.38倍)で£1=14884円、1s.=744円、1d.=62円。
p9 刑事弁護士(criminal lawyer)◆ハメット『赤い収穫』のジョークを思い出した。Yes, very.
p9 サーザ(Thurza)◆ヘブライ語でdelightの意味。聖書ではTirzahテルザ(民数記26:33)
p10 低中流階級(lower middle classes)◆日本語的には「中流の下」「中流下層」がしっくりくる。「階級は中流の下(げ)」「中流階級の下層」が良いかなあ。ただし「中流下層階級」のように繋げると下層に引っ張られて貧乏なイメージが強まってしまう。
p10 タイピスト… 店員… 帳簿係(typist… shopgirl… bookkeeper)◆外見からフレンチが職業をあれこれ推測している
p10 バニティー・ケース(vanity bag)
p11 フレンチさま(Mr French)
p11 下宿(boarding house)◆世界で一番有名なboarding houseはBaker Street 221B
p13 クラパム(Clapham)◆いかにも(ロウアー・ミドルの)普通の人が住む、というイメージの街区
p14 切符売場(box office)
p14 数学の夜学(evening class in arithmetic)◆こういう需要もあったんだ… でも切符売場でわざわざ勉強するほどの算術(arithmetic, 「数学」ではない)が必要になるの?と一瞬思ったが、英国貨幣の繰り上がりが特殊だからか!(£1=20s.=240d.)
p15 一月十日(10th January)
p15 検死(an inquest)◆死因を医学的に鑑定する行為と紛らわしいので「審問」「検死審問」と訳して欲しいなあ
p16 精神錯乱のはての自殺(suicide while of unsound mind)◆これなら教会墓地に埋葬可能となるので、自殺はたいていこの表現が選ばれるようだ(こういう隠された「常識」はノックス『陸橋』で初めて認識した)。
p21 映画館のバーメイド(barmaid in the… Theatre)◆大きな劇場には幕間のために必ず飲めるカウンターが設置されていたのだろう
p22 色はどんなぐあい?(What about her coloring?)◆容貌についてこう尋ねられ、答はfair with blue eyes and a fair complexion、髪、眼の色、肌の色の順番。
p22 フラー(Fuller’s)◆レストラン。調べつかず。架空だろうか
p24 仕事は一時ごろに始まり… 十一時ごろか、もう少し遅くなります(Our jobs stared about one o’clock… done about eleven or a little later)◆劇場の切符係の勤務時間
p25 五シリング(five shillings)◆ ささやかな賭け金。
p27 町(ロンドン)から出てゆく(leaving town)◆冠詞なしのtownはロンドンの意味
p28 札二枚[で]… 十ポンド◆当時の五ポンド札はWhite note, サイズ195x120mm
p30 ライオンズ・コーナー・ハウス(Lyons’ Corner House)◆4-5階建の大型軽食堂。ライオンズは喫茶店として出発。1909年からCoventry Street, the Strand and Tottenham Court Roadで営業開始。コヴェントリー店は最盛期には5000席を擁し、24時間営業をしていたこともあるという。
p41 ナショナル・ギャルリのターナーの部屋(the Turner Room of the National Gallery)
p44 スターベル事件ではヨークシャーで、ダートモア事件では南にさがってデボンシャーで(at Starvel in Yorkshire and down in Devonshire at Dartmoor affair)◆『スターヴェル』と『海の秘密』
p45 戦うテメレール(Fighting Téméraire)◆ “The Fighting Temeraire, tugged to her last berth to be broken up, 1838”は1839年作のターナーの油絵。「戦艦テレメール号」(タイトルの意味はこっち)の最後の姿を描いた。
p46 六つある入場券売場(six box office)
p50 検死裁判(inquest)◆インクエストは裁判ではない。ここでは誰も裁かれない。犯人と名指しされれば大陪審での「裁判に処すべき」との評決と同等の効果があり、正式に裁判にかけられる。
p54 おばあさんに説法… 卵の吸いかたを(Teach grandmother… suck eggs)◆面白い表現だが、元はスペイン詩人ケベードの英訳1707から。Wiki “Teaching grandmother to suck eggs”
p57 背の高い赤銅色をした(a tall bronzed man)
p58 模造真珠(imitation pearls)◆ 養殖真珠の生産に成功したミキモトが欧州で相場より25%安く売り出したが、質の悪い模造真珠だ、という誹謗中傷に苦しんだ。そのため訴訟を起こし、大正13年(1924年)パリ民事裁判所で「本当の真珠として売り出してかまわない」という判決を勝ちとった。安価なうえ品質を保証されたため、当時真珠ファッションは大流行したらしい。ここのimitationは普通の職業婦人がつけているので、人工真珠(ガラスなどの紛い物)のことだろう。
p62 ここで検死官が陪審に質問を募っている
p69 色の浅黒い小柄な男(a small dark man)◆「黒髪の」
p70 警察のエネルギーは裁判所をだまくらかすことに向けられねばならん(the energies of the police must be directed towards hoodwinking the courts)◆この場合のcourtsはcoroner‘s courts(検死官の審廷)のこと。
p70 エジプトたばこ(Egyptian cigarettes)
p75 シャーロック・ホームズが歩道上のためらいと呼んだもの(what Sherlock Holmes used to call oscillation on the pavement)◆正確にはOscillation upon the pavement(“A Case of Identity”の冒頭場面より)
p81 六月十九日火曜日(Tuesday, the 19th of June)◆該当は直近で1928年。
p82 ニースに滞在(Hotel in Nice)◆『海の秘密』を思い出している
p82 トルコ・シガレット(Turkish cigarette)
p89 巻き結び(an ordinary clove hitch)… 繩ばしご結び(ratline lock)◆ノルウェーの船員に教わったというratline lockはググっても全然出てこない(本作のテキストが表示される)。 船員のワタクシ語かノルウェーでの通称を直訳したものか。たぶんその結び方には英語では別のポピュラーな名前が付いているのだろう。
p93 セダン(訳注 英国ではサルーン)
p95 中型、灰色のセダン… たぶんダイムラー(a middle-sized, grey saloon… Possibly a Daimler)◆p160参照
p100 石鹸のようなジョー(Soapy Joe)
p101 パラディアム(the Palladium)◆1910年にオープンした演芸場。バラエティー・ショーや英国パントマイムが主流。1928年には映画興行も行うなど衰退していた。興行主が変わった1928年9月以降は米国音楽家(Duke Ellington, サッチモなど)のショーを含む豪華なバラエティー・ショーで巻き返した。Wiki “London Palladium”参照。フレンチはジョークで楽しんでいるのでバラエティー・ショーを観たのだろう。
p101 ハットン・ガーデンのゲシン殺人事件(『フレンチ警部最大の事件』) Gething Murder case of Hatten Garden
p101 意地悪婆さん(a bad old sort)
p102 ≪水割り≫(half a peg)◆pegはソーダ割りらしいのだが…
p106 ≪細君のやり口≫(her ‘way’)
p107 結婚は記録天使を飼いならすことだ(訳注 スチブンスン『バージニバス・ピェエリスク』) The phrase about marriage being domestication of the Recording Angel◆全文は”To marry is to domesticate the Recording Angel.  Once you are married, there is nothing left for you, not even suicide, but to be good.“ Virginibus Puerisque ii(1881)
試訳「結婚すると記録天使を自宅に住まわせることになる。結婚したが最後、自由は一切なくなり、自殺さえ奪われ、良い子にしている他ない」翻訳はちょっとニュアンスずれ。記録天使がすぐ近くにいるので行動がメチャクチャ縛られる、というのがスティーブンスンの趣旨。
p108 門衛(door porters)
p110 出納係(a casher)
p113 一ポンド札(a pound)… 一階の正面席三枚(three stalls)… [釣りは] 十シリング札と一シリング ◆つまり切符の値段は一枚三シリング。フィル・マク『ライノクス』(1930)でもstallは同じ値段だった。
p113 金属製の丸い入場券(metal disc ticket)◆当時の入場券は金属製だったのか。回収が大変そう。当時ものを探したが19世紀の英国劇場のしか見つからず。
p124 ベイカールー… ワットフォードまでの切符◆地下鉄Bakerloo LineはQueen’s Park駅で地上鉄道と接続しWatfordまで行ける。なのでWatfordまでの切符をあらかじめ購入しておけば、相手がどこで降りても清算の手間が省けるだろう、と考えた
p125 ≪定期券≫(a ‘season’)◆鉄道の。最低でも3か月単位? 未調査
p127 ペダル・ベース(pedal bass)◆オルガンのペダル鍵盤は最低音部。日本語クリシェの(間違った言い方だが)「通奏低音」っぽい表現か
p129 ティード・オフ(teed off)◆普通のカタカナ語なら「ティーオフ」
p140 正式の名刺(his official card)
p142 ゼラード4763のC(Gerrard4763C)◆電話番号なんだが、最後のCは何?
p142 旧式電話で≪あなたの番号は----≫というプレートがはりつけてあり(old-fashioned instruments which bore a plate with the words ‘Your number is ——‘)◆GPO Telephone No.105でそういうプレートの画像が見つかる。当時の広告から類推するとキャンドルスティック型は1923年ごろから一般化しているようだ。(たぶんここのは壁掛け電話、ダイヤルはついてなかったかも)
p145 検察官(the public prosecutor)◆英国では私人訴追という概念が一般化されており伝統的に専門の検察官はいなかった(198●にやっと検察官職が新設された)。このpublic prosecutorとは重大事件の被疑者の証拠をまとめてから大陪審に送る役目なので、まあ一応検察官の役目に近いが、public prosecutor は日本や米国の検察のような訴追主体ではない。しいて言えば警察が訴追主体であり、イニシアチブを握っているようだ。
p150 ヴィクトリア7000(Victoria 7000)◆フレンチに繋がる公用電話番号。なおイングランドの救急番号999は1937年に創設。英Wiki “999 (emergency telephone number)”
p153 紳士強盗フレンチ(Mr Cracksman French)◆私はRafflesを連想
p154 チャブ錠(chubb lock)◆ Charles Chubb(1779-1846)創始の錠前・金庫ブランド。
p156 二シリングばかりの(a couple of shillings)◆ ちょっとした情報へのチップ
p160 ありきたりの15/20マーキュリー・セダン… たぶん値段は新品で450ポンドくらい(The car was a perfectly normal 15/20 Mercury saloon, probably worth £450 when new)… すばらしい高級車(excellent in quality)◆当時Mercuryという自動車ブランドは存在してない。値段的にはCrossley Six(15.7hp)とかArmstrong-Siddeley 15/6あたりのグレード。「高級車」とあるが、原文の感じでは、ここは内装が高品質、ということを書いていると思う。前作『海の秘密』にもMercury 15/20が出ていた。
p162 ソーンダイク博士の手腕(the skill of Dr Thorndyke)… その真空分離器(his vacuum extractor) ◆ 短篇「ろくでなしのロマンス(A Wastrel’s Romance)」(初出1910-8)に出てきたようなやつか。ポルトン発明の集塵機(dust-extractor)と呼ばれ、絨毯掃除(restoring carpets)の“vacuum cleaners”と似た原理で動作する、とある。Webサイト”Science Museum”の記事“The Invention of the Vacuum Cleaner, From Horse-Drawn to High Tech”に1903年の馬引きのデカい機械(石油モーター使用)の写真があった。家庭用真空掃除機は1908年から(Hoover Upright Vacuum Cleaner 1908で映像や動画あり)。大量生産で安価になったのは1930年代というから、この時のフレンチに家庭用のイメージはまだ無いかも。英国家庭での普及率(1939)は約30%だった。ただしヴァンダイン『スカラベ』(1930)ではお屋敷のメイドがもう使っている。
p166 近所の子供芝居で≪ハリウッドのフック嬢さん≫のトム・ミックスを(doing Tom Mix in “Miss Hook of Hollywood” at a children’s show)◆トム・ミックス(1880-1940)はサイレント映画時代の米国西部劇の大スター。ここは「カウボーイ役を演じた」という意味だろう
p166 予備校通いの少年(a preparatory schoolboy)◆8-13歳までの子供が名門パブリック・スクールに通う準備をするための学校。ということは父親は30代か40代なのでは?
p170 五シル(five bob)◆ 3720円。子供へのお駄賃。かなり奮発
p192 半クラウン(half-crowns)◆1860円。当時はジョージ五世の肖像。1920-1936鋳造のものは.500 Silver, 14.1 g, 直径32mm
p195 週八ポンドか十ポンド(Eight or ten pounds a week)… 年六百(six hundred a year)◆週10ポンドでようやく年520ポンド。まあ額が多い時もあるから年で600にはなるだろう、というざっくりした計算か
p209 犬のレース(dog-races)
p220 一ペンス(a penny) ◆ ペンスと言いたくなる気持ちもわかる。ペニー銅貨についてはp282参照
p228 夕めしのご馳走に呼ばれる(asked me ‘ome to dinner)
p231 表紙に毒々しい絵のある、ぶよぶよになった小説本(a well-thumbed novelette with a lurid picture on the cover)… ポケットに押しこみ(pushed the novelette into his pocket)◆パルプ・マガジン風の表紙絵で薄めのペーパーバックのイメージ、well-thumbed は何度もページをめくったので(安い)紙がヨレヨレになった感じ。
p232 二シリングの郵便為替(Postal order for two bob)
p234 濃い緑色のアームストロング・シッドリのセダン(a dark green Armstrong-Siddeley saloon)◆ 15/6(1928-1934)あたり? 当時の広告で£400〜。
p239 タナー警部(Inspector Tanner)◆前作に引き続きちょい役
p239 いまいたと思ったら、もうどっかへ行ってしまって、あとかたなしだ(Now, you’ve gone and done it)◆全体で「大変なことをやらかしちゃったな!やっちまったな!」みたいな成句らしい
p239 フレンチ兄い(Brer French)◆私は『リーマスじいや』(1880)のBr'er Rabbit(うさぎどん)をすぐ思い出したのだが、Brer(米国南部方言のbrother)をググると真っ先にBrer Rabbitが出てくる。当時もそういうイメージで良い?
p240 上物のトルコ・シガレット(opulent Turkish cigarettes)
p275 インド紙刷り(India paper)
p275 ≪街灯点灯夫≫ (The Lamplighter)◆ 1854年Maria Susanna Cummins作の米国センセーショナル・ノヴェルで当時の大ベストセラー。
p275 ≪クィーシー≫ (Queechy)◆米国作家Elizabeth Wetherell, 本名Susan Bogert Warner(1719-1885)作、1852年出版。初の出版作品The Wide, Wide World(1850)がベスト・セラーになり数か国語に翻訳されたので、この作品も結構流通したのだろう。
p275 ≪フェアチャイルド家≫ (The Fairchild Family)◆ The History of the Fairchild Family (1818, 1842, 1847) by Mary Martha Sherwood(1775-1851) 英国児童向け小説のベストセラー。
p275 ≪緋文字≫ (The Scarlet Letter)◆ ホーソン作1850年出版
p275 ≪天路歴程≫(Pilgrim’s Progress)◆ バニヤン作1678年出版
p275 ほぞ穴錠(a mortice lock)◆ドアの内部にボルトを内蔵するタイプの鍵(現代ではごく普通の仕組み)。ナイトラッチ等のようにドアの表面にボルトを取り付ける式ではない。ボルト受け側にほぞ穴を開けるので、この名称。
p275 ふとい閂(かんぬき) heavy bolt
p277 鋲が打ちこまれて(a screw had been passed)◆ここは「スクリュー」とか「ネジ」が良いなあ。
p280 冷たいロースト・ビーフ(cold roast beef)… サイダー(cider)
p282 ペニー銅貨(a penny)◆当時はジョージ五世の肖像。1911-1936鋳造, Bronze, 9.5 g, 直径31mm
p283 火ばさみ(tong)◆antique blacksmith tongのようなイメージかな
p285 投げ矢(dart)◆ここはpaper dartのイメージ
p289 ギリシャ人がギリシャ人に会うとき(When Greek Meets Greek)◆ 同格の者と闘う場合は楽に勝てないのだ、という諺。Nathaniel Leeの劇“The Rival Queens, or the Death of Alexander the Great”(1677)より
p291 長距離のガソリン(with petrol for a long run)
p292 快速自動車(fast cars)

No.6 4点 レッドキング 2022/08/26 18:11
クロフツ第九作。映画館受付女の三連続殺人。これまた「赤毛組合」「技師の親指」風味・・思ったらネタまでまんま・・ そりゃあ、「製材所の秘密」同様、これも立派な違法行為だが、人殺しにつり合う程に価値ある「悪」だろか。

No.5 5点 ボナンザ 2018/07/16 10:43
なぜ見張りをつけなかったのかと突っ込んではいけない。
犯罪団の企みを見破ることが目的でもフレンチの行動はほとんど変わらない。

No.4 5点 nukkam 2016/08/17 13:58
(ネタバレなしです) 1929年発表のフレンチシリーズ第5作ですが本格派推理小説でなくスリラー小説に属する異色作です。映画館の切符売り子が事件に巻き込まれるのですが物語はフレンチ警部の捜査活動が中心になって描かれていることが本書の特徴であり、異色作と言っても他のシリーズ作品と共通部分も多いです。謎めいた話から驚きの進展を見せる序盤はなかなかサスペンスに富みますが、その後はいつものクロフツらしくじっくり丹念な展開になりますのでスリラー小説としてはやや中途半端な印象も受けます。最後は派手な大捕り物で締めくくられますが結局フレンチは活躍しているようで活躍していなかったような...(笑)。

No.3 6点 斎藤警部 2015/06/08 22:39
序盤から登場する主役級かと思えた若い女子があっけなく殺されてしまうサイコ効果(?)にはびっくり。その後も起こる連続殺人の裏側に徐々に見えて来る、不可解な、しかし奇妙に地味とも思える何らかの詐欺事件のようなもの。。 明かされる「悪事トリック」に拙者は「占星術殺人事件」のメイントリックに一脈通じるものを嗅いでしまったのだが、、考えすぎですかな。 だけど本作の主たるトリックを別角度から根気良く煎じ詰めて行くと、実は島荘サン的驚天動地の心理的大物理トリックに行き着くのではないかと、どうにも妄想してしまうのでございます。。 既に誰か何かやってるかも知れませんがね。

No.2 5点 E-BANKER 2011/01/10 22:30
フレンチ警部シリーズの第5作。
映画館の切符売りの女性だけが狙われる連続殺人事件の謎にフレンチが挑みます。
~映画館の切符売りをしている娘がフレンチ警部の元に助けを求めてきた。ふとしたことから賭け事に深入りして大きな借りをつくり、怪しげな提案を受け入れざるを得なくなったというのだ。ところが、相手の男の手首に鎌のような紫色のあざを見たとき、変死した知り合いの娘のことが思い出されて・・・~

フレンチ警部といえば、地道かつ丹念な捜査を続けていくなかで、「ついに光明が!」という展開がいつものパターンですが・・・
今回はいつにも増して苦労の連続。
自宅で捜査の助言を愛妻に頼るほど行き詰ることに・・・(フレンチの妻は実際、「フレンチ警部最大の事件」で事件を解く鍵をフレンチに与えた実績あり!)
殺人事件の謎よりも、切符売りの女性を利用してある大きな犯罪が行われており、本作ではこれを暴くことがメインテーマになります。
ただ、読者にとっては、事件のカラクリ自体の想像はつくものの、だからといって特にトリックやロジックがあるわけでもなく、サスペンス性もそれほどないわけで、どこを楽しんでいいのか分からない作品。ただ単に、フレンチがもがき苦しむさまを延々と読まされる感じになってしまいました。
ラストは犯人グループとの格闘シーンまであり!(ただし、ハードボイルド的な要素も特になし)

No.1 5点 kanamori 2010/07/15 21:34
フレンチ警部シリーズの第5作。
これもちょっと異色作の部類に入るかも知れません。映画の切符売りの女性を狙った連続事件がテーマで、フレンチが被害女性の依頼を受け、紫色の鎌のアザがある男を追うストーリー。
サスペンスに富みますが、好みの内容ではなかった。


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