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[ クライム/倒叙 ]
クロイドン発12時30分
フレンチシリーズ
F・W・クロフツ 出版月: 1956年10月 平均: 5.77点 書評数: 13件

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創元社
1956年10月

東京創元社
1959年06月

東京創元社
1959年06月

早川書房
2006年07月

グーテンベルク21
2018年04月

東京創元社
2019年02月

No.13 4点 レッドキング 2022/10/25 21:26
クロフツ第十五作。こう丁寧な倒叙をされると、犯人の主観・・「冷血」や映画「フレンジー」でさえそうだったが・・に情緒が巻き込まれてしまい、官憲側へ部分的に拒絶感さえ感じてしまう。が、そこはクロフツ、情状酌量とはいかないキャラの主人公に仕上げてくれてはいる。点数は、倒叙でない普通の描写だった場合の点数3点に、1点オマケ。
※刑事物が嫌いだった父が、格別に嫌ってた公僕がコロンボと古畑任三郎だった事をふと思いだした。

No.12 6点 2020/12/03 23:32
凡人探偵の創始者による、凡人犯人の殺人物語。
しかし犯人が伯父に殺意を抱き、殺人計画を練っていく部分には、探偵が少しずつながら着実に捜査を進めていく過程ほどのおもしろさはありません。同じ本格派巨匠でもクリスティー、クイーン、カー、セイヤーズ等だと、もっと犯罪小説的な緊迫感も出せたでしょうが、クロフツの淡々とした平易な文章では、のんびり感が先立ちます。でもまあ、これはこれでいいでしょう。
クロフツ初の倒叙長編として有名ですが、むしろ真犯人である被告人の視点から、有罪判決を受けるまでを描いた法廷ミステリでもあるという点が新鮮ではないかと思われます。70ページほどの裁判シーンはさすがにおもしろいのですが、検察側の主張が少々根拠薄弱で、たとえ有罪にならなくてももう一つの殺人の証拠は十分あったという言い訳が後から付くのは、フィクションの構成としては不満です。

No.11 5点 nukkam 2019/04/16 22:14
(ネタバレなしです) 1934年発表のフレンチシリーズ第11作で、犯人の正体を最初から明かしている倒叙本格派推理小説です。倒叙本格派の創始者であるオースティン・フリーマンのスタイルに最も忠実な作品と評価されているようですが、少し違うようなところもあります。倒叙本格派と言うと犯人と名探偵の推理バトルが読みどころの1つだと思いますが、本書はフレンチの捜査描写や犯人との対決場面が意外と少ないのです。それにはちゃんと理由があり、代わりに予期せぬ展開を用意したり犯人の逮捕で終わらせず法廷場面に突入するなどプロットの工夫をしていますが本書が典型的な倒叙本格派かと言うと微妙な気もします。地味過ぎて退屈になりかねないクロフツですが、本書は主人公(犯人)の心理描写を増やすことでそこからの脱却を図っています。それでも地味な作品ではあるのですが。謎解きとは関係ありませんが過去のシリーズ作品で昇進を期待してはお預けをくらっていたフレンチは本書でついに悲願成就、警部時代の最後の事件となりました。

No.10 4点 斎藤警部 2015/08/28 17:51
小学生の時、いかにも意味ありげな題名に惹かれてこども向け翻訳を読んだんだけど(そんなのが図書館に置いてあったんだなあ、としみじみ思う)渋過ぎたのか馴染めず、のめり込めず。
高校生の時だったか、既に「樽」に大感動している後、大叔父からもらった古い創元推理文庫で「今なら面白いかも?」と期待して再読。いまひとつ引き込まれず。いったい何処がどう合わないのか。単にスリルに欠けるだけなのか。分からない。。

No.9 6点 了然和尚 2015/07/28 04:05
「サウサンプトンの殺人」を入手したので、前書きを読んでみると倒叙物とのこと。本作と2つ続けて倒叙物を書いていたのかと思い、本書は2年前に読んでたのを再読。(あまり内容の印象は無かったので)再読で気がついたのですが、犯人の視点で犯罪の構成が描かれるというのに目が行きがちですが、本作では犯人がいきなり逮捕されて裁判で判決を待つ過程が楽しめますね。通常のミステリでは探偵が犯人に証拠を提示して、「まいりました」で終わるのですが、本作では状況証拠が示されるだけで、フレンチの解説は有罪判決の後になっています。(とってつけたようなインタビュー形式で)
裁判では、状況証拠しか無く、弁護側の反対尋問が強烈で、なんか無実の結果を予想させますが、ちょっと意外な有罪判決でした。本件は無罪で、手ぬかりが多そうな執事殺害の方で有罪(実際にフレンチは可能性を語っている)というオチもあるかと思ったのですが、他の有名作と同じになってしまいますね。では、サウサンプトンの殺人に取り掛かります。

No.8 5点 蟷螂の斧 2015/02/01 11:04
犯罪者の心理ものとすれば、追いつめられていくサスペンス感がやや物足りなかった。裁判での争点・毒購入者が本人かどうかについては、完全犯罪計画の点から甘かったのかも?。現在であれば、証拠の点からは有罪は難しいのでは?と思いますが、1930年代であれば致し方ないのかな・・・。また解決の経緯もあっさりし過ぎていること(当時の小説<名探偵>として当然?)や、飛行機に乗る人は稀なのでその様子を詳しく描写するなど、時代を感じさせてくれました。

No.7 8点 ボナンザ 2014/04/08 17:49
叙述三大作では一番のめり込んだ作品。
他の二作のようなどんでん返しはないが、きわめて誠実な作りだと思う。

No.6 7点 測量ボ-イ 2013/08/30 20:59
倒叙の古典的作品として有名ですね。
確かに地味だし、毒殺トリックもありきたり(その割に
後世の作品に引き合いに出される)です。
けど前へ読ませる何かがこの作品にはありました。
採点6点pr7点で迷いますが、歴史的意義と読みやすい
訳文を好感して採点は甘めで。

○余談
題名「クロイドン発・・・」って、飛行機の時間なんです
ね(苦笑)。本編を読むまで、電車の時間だと思い込んで
いました。

No.5 3点 mini 2011/09/26 09:58
発売中の早川ミステリマガジン11月号の特集は”刑事コロンボに別れの挨拶を”
俳優ピーター・フォーク追悼企画だろうね
刑事コロンボに興味は無いがコロンボと言えば倒叙、便乗企画として私的に倒叙祭り週間じゃ!

由来は不明だが”3大倒叙”と言われる中で第2弾は「クロイドン」だ
森事典で森英俊氏も3大倒叙の中で、「殺意」「伯母」と比較して最も厳密な意味での倒叙の概念に近いと言っている
たしかにその通りだと思う、しかしながら、だから面白いかと言うと実はつまらない
たしかに一応は”倒叙”の概念に近い、その辺は認める、特に前半は
しかしフレンチ警部側の視点による犯行隠蔽に対する崩しはラスト近くの数ページだけで物足らない、後半も延々と犯人側の視点で物語は進むし
一応は長編だから物語を膨らませる展開にはなっているんだけど、後半早々にある登場人物から密約取引が持ち込まれるという展開はいかにもありきたりだ
倒叙という形式は二重構造だから短編向きじゃないが、端からフーダニット興味を捨てているわけだから余程上手く書かないと長編ではありがちな展開に陥りやすい
やはり倒叙ってハウダニットに絞った中編位の分量が丁度良いのかも
あとこれは倒叙と直接関連は無いが、題名からトラベルミステリー的な面白があるのかと期待したがそれも全く無い、基本的舞台設定は屋敷の中といたって地味、冒頭の事件発生の飛行機の発着時間が題名の由来なだけでがっかり
これだったら犯罪心理小説だと割り切って読むなら、むしろアイルズ「殺意」の方が面白かった

※ さて倒叙祭り第3弾は当然「伯母」だと思うでしょ、へそ曲りな私はそんな予想通りにはいかないのである(苦笑)
ハル「伯母」は既読なんだけど某海外古典作品と抱き合わせ書評したいので後回しの予定
タッグを組む予定の某海外古典作品は本は入手済みだけど積読状態なんでそれ読んでからにしたい
えっ、その某海外古典作品って何かって、nukkamさんとか海外古典本格に詳しい方にはバレバレですよねきっと

No.4 6点 りゅう 2011/06/04 22:40
 倒叙ミステリの3大名作の一つですが、それほどの作品とは思いませんでした。主人公が犯行を決意する過程や実施する過程、犯行前後の心理的葛藤などが丁寧に描写されているのですが、特筆するような優れた箇所は見当たりませんでした。アイルズの「殺意」の主人公と比較すると、こちらの方が人間性はかなり上です。「殺意」の主人公はひたすら利己的で、身勝手な理由で殺人を実行し、良心の呵責に苦しむこともない悪人ですが、本作品の主人公チャールズは精神的に追い詰められた挙句に殺人を実行してしまうのであって、犯行の前後で良心の呵責に苦しんでいます。犯行計画自体は、フレンチ警部がいくつもの証拠から真相を察知しているように、完全犯罪にはほど遠い内容です。青酸カリの入手方法も安易過ぎる気がしました。

No.3 6点 kanamori 2010/07/16 21:13
クロイドン発パリ行旅客機内の富豪の死で始まるフレンチ警部シリーズの第11作は、作者が初めて書いた倒叙型ミステリということで有名です。犯人のチャールズ視点で描かれる犯行と緻密なアリバイ工作は、当時としては新鮮だったでしょう。
個人的には、クライムミステリに過度に傾斜し、フレンチの捜査過程の描写が弱いのがちょっと不満です。

No.2 8点 E-BANKER 2010/02/11 23:23
倒叙物の古典名作の1つ。
主役とはいえませんが、フレンチ警部が探偵役として登場。
とにかく、読んでいるうちに引き込まれます。
本作は冒頭とラストを除いて、すべて真犯人の視点で語られ、恐れや疑惑、安堵といった彼の心情が読み手の心とシンクロし、まさに感情を共有している気分にさせられます。
完全犯罪を遂行したと思い込んだ矢先に訪れたピンチ、それを乗り切ったと思い込んだあとに、フレンチ警部の明晰な推理力の前に敗北を喫する彼の挫折感・・・
できれば最後に”一捻り”あれば言うことなしですが、時代を考えればそこまで望むのは酷というものでしょう。

No.1 7点 ロビン 2008/11/01 17:14
三大倒叙物の一つ。
細部にまで徹底的に、本当に丁寧に描写されている。無駄な部分も本筋もどこをとっても描写に手を抜いていない。だから少しだれたなあ。でも倒叙ってこういうものみたい。
ありがちなラストのサプライズではなく、フレンチ警部が論理的に解決してくれる。犯人の立場から読んでいくと、完璧だと思っていたもの、問題ないと思っていたものも、改めて第三者の目で見た出来事を語られると「なるほど、確かにおかしい」と思わせてくれる。
だけど肝心の、推理を展開させるための絶対的な証拠が最後まで記述されていないぶんアンフェアか。
(一箇所、これは叙述トリックだなと思われる箇所があったが、見当違いでした)


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