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[ 本格 ]
ホッグズ・バックの怪事件
フレンチシリーズ
F・W・クロフツ 出版月: 1983年05月 平均: 6.00点 書評数: 8件

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東京創元社
1983年05月

東京創元社
1983年05月

No.8 6点 斎藤警部 2023/11/19 16:02
事件の○○点を巧みに隠蔽する技が本作の肝でしょうか。 一方で、ごく限られたエリアで執り行われるきめ細やかなアリバイ工作。徒歩や自転車、せいぜい自家用車での移動に頼るそれはなかなかに地味で、地味な良さがあり、あまりに地味なので「まさか某S30年代日本著名作の様に『実は◯◯◯を使ってました』ってな限界突破トリック使ったんじゃないだろうな?」と半分冗談で妄想してみたりもしました。(本作の場合は『実は〇〇を』の方向で。。)  地味ながら奥行きある真相が解きほぐされる最後のシーン(フレンチが上役二人と酒を酌み交わしながら会話)は実に味わい深く、本作の魅力が凝縮されていると思います。「六十四個の手掛かり」はわざわざページを見返すほどの事もなし。

ご指摘の方もいらっしゃる通り、古い創元推理文庫(’80年代)の表紙絵は、ネ●●レ的に流石にちょっとね。。 登場人物表にある人物が載っていないのも明らかにおかしい。(了然和尚さん、新表紙版でも直っていませんでした!!)

No.7 4点 レッドキング 2022/10/17 12:14
クロフツ第十四作。寒村に隠遁した老医師と遠地の看護婦の、駆落ちを連想させる唐突な失踪。さらに一人の女の失踪が続き、過去の毒殺疑惑を巻込む連続殺人事件へと急転するが、容疑者達には結構なアリバイが・・・共犯者達のアリバイトリック・・略図付き、分単位時間表付きの、眩暈を誘うようなトリックは緻密だが、車の「手押し」てのは・・・

No.6 8点 E-BANKER 2020/04/19 18:23
フレンチ警部登場作としては第十作目に当たる長編。
本作の前後には「クロイドン発十二時三十分」や「マギル卿最後の旅」が発表されるなど、クロフツ黄金期(!)とも言える時期の作品。
1933年の発表。

~イングランド南東部の町で引退した医師J.アールが失踪した。最後に彼を見たのは妻で、自宅の居間で新聞を読んでいたという。その三分ほど後にはもう彼は消えていた。数日前、彼はロンドンでひとりの婦人と一緒にいるところを目撃されていた。調査に乗り出したフレンチ警部は、その婦人は看護婦で彼女もまた姿を消していることを探り当てた。フレンチ警部が64の手掛かりを挙げて事件の真相を解明する!~

これは力作だ。クロフツ好きの私としては、これまで「マギル卿」や「最大の事件」など佳作を読んできたけど、もしかしたら作品の「熱量」としてはこれがNO.1かもしれない。
最初は単なる情事の末の蒸発事件に思えた事件。片手間で取り組み始めた事件のはずが、徐々に広がりを見せ、フレンチ警部は連続殺人事件の許されざる真犯人を追うことになる・・・
これまでの事件だって、靴底すり減らして丹念な捜査を行ってきたけど、今回のフレンチはとにかく執拗でタフ。何度も壁に当たりながらも、決して諦めることなく、ついには真相にたどり着く。
うん。実に好ましい。

本作は、今までにないほど、フェアプレイに徹しようという作者の姿が垣間見えている。
それが紹介文にある「64の手掛かり」。フレンチの真相解明の場面で、それが書かれているページについて言及されるなど、ミステリーとしての新趣向にも取り組んでいる。
アリバイ崩しもかなり“凝っている”。「マギル卿」では鉄道や船までを使った大掛かりでワイドなアリバイトリックだったが、本作では逆に「ごく限られた区域」の「限られた時間帯」のアリバイが焦点。
正直、こんな危なっかしいトリック考えるかなぁ?というものではあるんだけど、作者の苦心の跡が窺えてなかなか面白い。

ということで、世評としてはそれほど…という本作だけど、クロフツ&フレンチ警部好きの私としては高く評価したい。
とにかく自身の職務を全うしようとするフレンチの姿に今回は痛く感激させられた。
(「…アールという男(医師)は培養菌-致命的な病気を起こす細菌の培養菌、を簡単につくる方法を発見しました。頭のいい者なら素人でもつくれる方法です。」・・・いやいや、こういうご時世にこういう文字を読むとゾクッとするね)

No.5 6点 ボナンザ 2018/11/25 10:03
事件の全貌を中々明かさずに進めていくのに加え、クロフツには珍しく膨大な手掛かりを示して解決する異色作。

No.4 7点 ロマン 2015/10/20 22:10
大傑作と言えるような華やかさはないが、非常に丹念に構成された秀作(とは言え、クロフツにしては珍しく犠牲者が多い)。フレンチが手に入れる情報が、読者に対しても同時に、フェアに与えられるので、謎解きを自分でも楽しめる。謎解き編の解説も丁寧なので、遡って確認ができる。また、赤いニシンの使い方が巧妙で、初読の際、犯人と犯行手段は概ね解ったにも関わらず、最後まで迷っていたことを思い出した。

No.3 6点 了然和尚 2015/07/19 21:16
内容の採点の前に、創元推理文庫に−10点。ハヤカワの昔のクリスティーの表紙でもいきなりのネタバレが幾つかありましたが、本作もやってしまいました。ドールハウスの組み立てが出てきた段階で犯人とアリバイ工作確定です。しかも、有力容疑者の1人が最初の登場人物一覧に載ってません。本作も新表紙(あまり手にしたことはないが、かっこいいですね)に変わって、修正されていることを望みます。 で、内容ですが、動機の面で工夫されていて、複数の要素が見事に組み立てられています。この時期のクロフツは絶好調なのかなと思います。減点は、複数犯であることで、アリバイの相互補完というアイデアは良いのですが(実に細かく記述されている)、それならもう一人加えて3人でアリバイ補完がおもしろいのでは(その一人が登場人物に抜けてる人ですが)、なら何人でも。。。 となってちょっと話が台無しになってしまいますね。

No.2 5点 nukkam 2012/08/14 14:45
(ネタバレなしです) クロフツの作品は探偵役の行動だけでなく考えていることまで丁寧に描写しているので早い段階で犯人の見当がつきやすいのが珍しくありませんが、1933年発表のフレンチ警部シリーズ第10作となる本書では最後まで犯人の正体を隠しているだけでなく何と64個の手掛かり索引を使っての推理説明があります。とはいえこの手掛かりは大半が重箱の隅をつついたような細かい手掛かりで、そんなところまで覚えていられるわけないだろうと凡才読者の私としては抗議したくもなりましたが。それにしてもこんな失踪事件で(最終的には殺人事件に発展しますが)引っ張り出されるなんてロンドン警視庁って結構暇なのでしょうか(笑)?

No.1 6点 kanamori 2010/09/14 17:57
田舎に隠退した医者とその関係者が次々と失踪する事件にフレンチ警部が捜査に乗り出します。地元警察の自転車を借りて聞き込みに奔走するフレンチは、田園ミステリの趣があって新鮮な感覚がありました。
終盤の2章を使ったフレンチの謎解きがなかなか圧巻。推理の開陳場面では、小説のどのページに伏線が張られていたかという数十箇所の注釈付きという凝りようです。ただ、文庫の表紙絵はある人物の関与をあからさまに示唆するもので、アリバイ崩しが主とはいえフーダニットの興味を削ぐものになっています。


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