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[ 本格 ]
マギル卿最後の旅
フレンチシリーズ
F・W・クロフツ 出版月: 1951年01月 平均: 6.25点 書評数: 8件

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1951年01月

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No.8 5点 レッドキング 2022/09/09 21:56
クロフツ第十作。老資産家の失踪殺害事件。共犯者達の役割分担と列車・船・車を巧みに機能させたカラクリ仕掛け。カラクリ解剖分解は見事で、トラップ逮捕劇もなかなか。が、カラクリ現象が、「不可能」でも「不思議」でもなく、殺しの時間・場所ゴマカシによる冤罪擦り付けってのがチト淋しく・・そりゃ、クロフツにカーを期待するのもなぁ

No.7 5点 クリスティ再読 2020/06/14 12:58
クロフツ苦手だ...の評者。それでも子供の頃ジュブナイルで読んだ記憶があるから何か懐かしくなって購入。
フレンチ警部がイングランドの北部と北アイルランドを行ったり来たりする話。でもあまり旅情とか感じない。地名がやたらと出てくるけど、最初の方のページに登場する地名がちゃんと網羅された地図が付いていて親切。古本で買ったけど、その地図のページに前の所有者の付箋が貼ってあった(苦笑、ありがとうございます)。
クロフツって話を追っていくだけの作家だから、キャラの味付けもないし、描写細かいだけで、あまり「絵」として迫ってくるようなこともない。ひたすら謎を追って関係者・目撃者の話を聞いて回るので話ができている。その中で薄皮を剥ぐように真相が見え隠れ..というあたりが小説の狙いになるんだけどね。いやだったらさ、もう少しフレンチが「こう考えた」を出して、ストーリーを積極的に引っ張ってもいいように思うんだ。フレンチの推理も実験まで内容を伏せて書いてあるわけで、ここでの「びっくり」と「仮説検証サイクルの試行錯誤の面白さ」を天秤にかけたら、評者は「試行錯誤の面白さ」が出た方が小説として面白いのでは..なんて思う。クロフツを読むとどうしてもガーヴのが..なんて思ってしまう評者は、クロフツのイイ読者じゃない。ごめん。

(少しバレ)
本作共犯者アリ・犯行時刻の立証なしだから、ここまで凝った工作をしなくても....と思わなくもない。いいところは距離×時間のタイムテーブル管理がしっかりしているあたりのリアリティ、かなあ。

No.6 7点 人並由真 2020/04/07 15:21
(ネタバレなし)
 1929年の10月上旬。ロンドンに在住の72歳の大富豪ジョン・ピーター・マギル卿が、行方をくらます。マギル卿は複数の紡績工場などを経営して財を為した実業家で、現在も事業を息子のマルコム元陸軍少佐に譲りつつ、創意に恵まれた発明家として新製品の開発にいそしんでいた。当初マギル卿は、ベルファストにある工場を運営する息子のところに赴いたかと思われたが、途中で足取りが消える一方、さまざまな証人の証言が集まってくる。ベルファストの地元警察に勤務の若手警察官アダム・マクラングは、スコットランドヤードに赴き、ジョゼフ・フレンチ警部の協力を仰ぐが。

 1930年の英国作品。クロフツ10本目の長編で、フレンチ警部の6番目の長編作品。
 隠遁した大物実業家の失踪事件がやがて殺人事件に発展し、被害者の死によって何らかの恩恵を受けそうな容疑者が数名に絞り込まれる。
 そんな事件の大枠のなかで、フレンチをはじめとする捜査陣がとにかくこまめに、入ってきた情報や証言をひとつひとつ検証していく筋立て。
 あの容疑者が真犯人だった場合、アリバイがひっかかるが、それは本当に現実的に絶対の堅牢なものか? という部分で、読者も一応は推理に参加する余地はあるが、まあ実際には当時の英国の地理状況や移動手段の実態など、21世紀の一般的な日本人にとっては常識の外である。黙ってフレンチの地味な捜査につきあう構えなのが得策だが、例によってこれがすこぶる面白い。もはやパズラーではなく、原石的な警察小説の先駆だと思うが、それはそれで読み応えのある捜査ミステリになっている。

 犯人の設定が(中略)というのは、謎解き作品としては評価の上でちょっと……という面もあるが、捜査小説としてはその文芸を十二分に活用しており、物語後半でフレンチたち捜査陣が犯行時の実働を、仮想通りに実際に可能だったかシミュレーションしてみるあたりの細かいリアリティの見せ方も面白い。フレンチが終盤に(中略)までするのには、おお! と喝采をあげた。
 
 ちなみに今回は乾信一郎訳のポケミス版で読んだが、古い訳文ながら概してつきあいやすくその辺はありがたかった。
 なおポケミス版の158ページ(第12章)で、フレンチが「例のベルギー人」「灰色の脳細胞(の探偵)」とポワロについて言及するシーンがあり、うれしくなった(笑)。フレンチは小説の中の探偵うんぬんという言い方はしていないので、もしかしたらクロフツの脳内設定ではフレンチはポワロと同じ世界にいるのかもしれない?(クリスティーの了解いかんは知らないが)。いうまでもないがポワロのデビューは1920~21年。『アクロイド』も1926年の刊行で、本作『マギル卿』の4年前に英米のミステリ界を騒がしている。

 長い地道な捜査の果てにようやく金星をつかんだと確信したフレンチが、この仕事の手柄を評価されて今後昇進する可能性についてあれこれ夢想するくだりもほほえましい。現職の上級警官がさいきん心臓が弱いからそろそろ引退してもとか、勝手な皮算用を始めるのにも爆笑した。フレンチはさぞ当時の英国のサラリーマンに人気があったろうなあと思わせる。
 ちなみにアダム・マクラング刑事と、その上司であるアルスター警察署のレイニー署長は後年の『船から消えた男』にも再登場。そっちでもフレンチを支援する。

 やっぱりいいなあクロフツ&フレンチ。こーゆー良さは、若い時にはわかりにくいものだった(しみじみ)。 

No.5 6点 ボナンザ 2018/09/02 00:22
例によってフレンチの地道な捜査と犯人の綿密な犯行が持ち味。

No.4 6点 斎藤警部 2017/07/11 23:07
なんと、この小説にはハーバート ブリーンが登場します。 それと、どうしても少年隊の『仮面舞踏会』を思い出してしまう名前の人物が。。 さてベルファスト出身ロンドン在住の老実業家は、故郷である出張先の北アイルランドで行方を失い、やがて遺体で見つかります。容疑者と目されたのは息子と甥。被害者は繊維関係の特許と莫大な財産に繋がる画期的技術文書を携行していたと目されており。。。 海路陸路の旅情は沁みるが、他は小味な長篇。犯人糾弾とアリバイ粉砕の併走と思いきや、、意外な非犯人?? ドンデンまで行かないトンテン返しの様な奇妙な味わい深さがある。ソウルファンとして“ウィガン通過”シーンはちょぃと萌えました。

お喋りは喉の乾くものなのだから、何か舌を滑らかにしてくれるものを。。 ←気に入ったフレーズ

No.3 7点 2013/10/28 22:25
ずいぶん以前に1回読んだきりだった作品ですが、今回再読して意外に思ったのが、アリバイ崩しにはさほど重点が置かれていないことでした。失踪していたマギル卿の死体が発見されるのは殺されてから1週間ぐらい経ってからなので、解剖結果からは死亡日時は明確にならないというところもあるのですが。
それよりも、アイルランドへのマギル卿最後の旅の理由や行程を追っていったり、謎の訪問者の正体をつきとめたりと、あいかわらずの緻密な捜査過程を描くことで読者を引っ張っていきます。最初の内はともかく、途中からは読んでいて地理的な部分が混乱してきたのですが、それでも充分楽しめました。
部下の刑事からの、犯人の行動が必要以上に複雑なのではないかという指摘に対して、フレンチ警部が反論するところにも、クロフツらしいきめの細かさを感じました。

No.2 7点 kanamori 2010/07/15 21:44
フレンチ警部シリーズの第6作。
正統派のアリバイ崩しもので、中期の代表作でしょう。
北アイルランドの息子のもとに旅立った富豪の死体を巡っての、重層的なアリバイ崩しの捜査が読みどころ。マギル卿の生前の不可解な行動や謎の男の存在など、伏線やミスディレクションも過不足ない出来だと思います。

No.1 7点 E-BANKER 2010/04/08 20:28
フレンチ警部物の代表作の1つと言っていいでしょう。
まさに、これぞ「クロフツ流アリバイ崩し」というべき作品です。
特に今回は、舞台がロンドン~スコットランド~北アイルランドにまたがっているため、鉄道・自動車・船という3つの交通手段をフルに利用したアリバイトリックになっています。
話の進展はいかにも「フレンチ警部物」・・・フレンチが容疑者1人1人のアリバイを丹念に調べ、一旦はすべての容疑者にアリバイ成立!
かと思いきや、一筋の光明が!・・・という展開です。
まぁ、こんな筋立てが嫌いな人には退屈かもしれませんが、私は好きなので・・・


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