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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
フレンチ警部とチェインの謎
フレンチシリーズ/別題『チェイン氏の秘密』
F・W・クロフツ 出版月: 1963年01月 平均: 4.86点 書評数: 7件

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早川書房
1963年01月

東京創元社
1971年03月

No.7 3点 レッドキング 2022/08/12 21:18
クロフツ第六作。「赤毛組合」「技師の親指」風味に、ドイル十八番の海洋奇譚と「黄金虫」オマケも付いて、ミステリではないとは言えず、サスペンスとして面白くないこともない、が、ラストにかけて何のツイストもなく逆に驚いた・・・どんでん返しラスボスだろう、普通、「あの」キャラ・・・

No.6 6点 弾十六 2022/07/21 04:41
1926年出版。フレンチ警部第2作。井上勇さんの翻訳は端正。「めっかる」が微笑ましい。
つぎつぎと不思議な事件が起こる物語。冒頭に「わたし」が唐突に出て来るのですが、これは作者の事なんでしょうね(登場するのは冒頭だけ)。推理味は薄いです。
物語後半に登場する「モーリス・ドレイクのWO2のすてきな物語(p336)」フレンチ警部も「いちばん面白い本」という”WO2”(1913) (「2」は二酸化炭素CO2のような小さな下付き文字)は英国エドワード朝冒険スリラーの先駆的作品で、チルダース『砂洲の謎』(1903)とともにクロフツの愛読書だったらしい。私は二作とも読んでいませんが、研究者によると『製材所の秘密』はこの二作の影響を受けており、本作の主人公の名前は“WO2”の登場人物から採られ、ヒロインの造形も似ているようだ。Maurice Drakeの作品は英国冒険小説の一つの潮流を作り、後年のガーヴにも繋がるという。
クロフツさんが鉄道業を辞めるのは1929年になってから。それまでは仕事をしながらのパートタイム作家だった。本作の最初のほうに出てくる評価(「まるで商務省の報告のような文章」とか「低級雑誌」とか)はクロフツさんの自虐ネタだったのかも。
以下、トリビア。
作中現在はp9から明白のようだが、実は問題あり。p279の記述で『フレンチ警部最大の事件』が先に発生しているようなのだが『最大の事件』は日付と曜日から1924年のはず。さらに作中のポンド/フラン交換レート(『最大の事件』が£1=70フラン、『チェイン』が£1=80フラン)と近いのは、それぞれ1923年と1924年。だが、本作ではウェンブリー競技場が影も形も無い(p171)という描写があり、いろいろスッキリしないがやはり『チェイン』は1920年の事件なのだろう。
英国消費者物価指数基準1920/2023(49.68倍)で£1=8225円。
p8 白ウサギ… ジャックの裁判◆『不思議の国アリス』風味はここだけ。
p9 わたしは…◆一般論を述べているので作者が登場してもおかしくはない。
p9 一九二◯年三月(March, 1920)
p10 ハロウやケンブリッジに入学する夢
p11 プリマス
p11 モーターバイク
p13 すてきなアメリカの調合飲み物(a wonderful American concoction)
p14 短編小説
p15 まるで商務省の報告(It reads like a Board of Trade report. Dry, you understand; not interesting)
p16 十二編くらいの
p17 ザ・スタンダード(The Strand)か、どこかの月刊誌に◆井上先生にしては珍しい誤訳。
p17 低級雑誌(inferior magazines)… りっぱな新聞雑誌(good periodicals)
p18 うまくいけば一編50ポンドか100ポンドで売れる… 出版権や映画などで◆短篇小説一作なら結構な儲け。
p22 手ぎわのいい手品使い
p24 自分の電話はなかったが、一番近い隣家の… 取次◆昔は電話の取次ネタが落語でもありましたねえ。でも英国人の電話普及率の低さを考えると、やはり個人の生活に遠慮なくズケズケ入ってくる電話が嫌いだったのだろう。それが許される有閑な生活環境(急ぎの用事に振り回されない)というのもあったのだろうし…
p26 私立探偵を
p29 かつて読んだことのある小説
p32 保険
p35 紙幣の小さな束
p35 インデアンの手細工の小さな金の置時計(a small gold clock of Indian workmanship)◆英国なので「インドの」だろう。
p37 スペクテーター◆若い女性が読むの?と思ったが場違い(小笑い)の場面なのかも。
p64 フールズキャップ
p77 燻製ハムと卵の皿、かぐわしいコーヒー、トースト、バター、マーマレード
p79 小さな自動拳銃(a small automatic pistol)◆型式なし。いつものようにFM1910がお薦め。
p86 二シリング
p92 一等の食堂車(the first-class diner)
p92 小説ちゅうの探偵(the sleuths of his novels)
p93 ようがす、だんな(Right y’are, guv’nor)
p94 タクシーZ1729(Taxi Z1729)◆タクシーのナンバー
p94 料金のほかに10シル(Ten bob)
p99 大きな写真機
p104 たったの1シリングで
p108 イングランドは各人がその義務をはたすことを期待する
p117 町(ロンドン)に滞在している(was staying on in town)◆定冠詞なしの場合は英国では「ロンドン」のことらしい。
p120 労働者アパートの団地(a block of workers flats)
p122 お茶のしたく(I was just about to make tea)
p124 六シル六ペンス◆タクシー代5s.6d.と手間賃1s.
p128 矛盾は当今のはやり(since contradiction is the order of the day)
p129 “アラビアン・ナイト”の話(Why, it’s like the Arabian Nights!)
p132 小型カメラとフラッシュライト(having photographed them with her half plate camera and flash-light apparatus)
p132 雑誌の口絵やポスター(for magazine illustration and poster work)
p133 十の階段(the ten flights of stairs) ◆五階なのでひとつながりの階段が一階につき2つあり、合計10回階段を登った、という意味。試訳「階段を十回登って」
p145 五シリング
p153 四月五日
p155 二百ポンド
p157 天罰覿面
p171 ウェンブリ・パーク… 当時はまだ博覧会の開催は考えられていず、後年、世界のあらゆるところから、何十万という訪問客が押し寄せることになった地所は、まだまっくらで人気もない野っ原だった(at that time the Exhibition was not yet thought of, and the ground which was later to hum with scores of thousands of visitors from all parts of the world was now a dark and deserted plain)
p176 アンクレット… 鱶がが噛みつくのを防ぐため… “白の騎士”(アーサー王物語)
p177 夏期時間(this daylight saving)… 一時間はやく◆燃料節約のためにSummer Time Act 1916で定められた夏時間。1920年は3月28日(日)から9月27日(月)まで。
p180 サッシ(sash)… 掛け金(catch)
p181 ポケット尺(a pocket rule)
p184 うなぎのように
p191 コロナ(訳注 キューバ葉巻)(Try one of these Coronas)
p191 コーヒーとロール
p215 ありきたりの銀のポケット壜
p221 小さなハンドバッグ(purse)◆上着のポケットに入るくらいのもの。
p222 駅の食堂(the refreshment room)
p223 一等食堂(the first-class refreshment room)
p232 ひとかたまりのパン、バター、ニシンの罐詰、卵
p248 お礼として2ポンド
p262 ネルソンの言葉… 歌の替え文句(‘England expects every man to do his duty’ was amateurish…. In his mind the words ran ‘England expects that every man this day will do his duty,’ but he rather thought this was the version in the song)
p266 ゴールズワージー フォーサイト家物語
p271 古いナピヤー(an old Napier)… 五座席… 三つうしろで、二つが前… りっぱなカンバスのカバー… 黒◆1909年のfive seaterか。
p272 黄いろいアームストロング・シッドリ(Armstrong Siddeley)◆1921年の広告で29.5 hp 6 Cylinderが£875というのがあった。
p278 大陸版ブラッドショー(a continental Bradshaw)
p279 フレンチ警部最大の事件◆日付と曜日から1924年の事件と判断していたのだが…
p279 フランは80(訳注 1ポンドあたり)が相場だった(With the franc standing at eighty)◆金基準1920だと£1=52フランだが… この換算だと1フラン=158円。同じく金基準で1922年£1=54フラン、1923年75フラン、1924年85フラン。『最大の事件』では「1ポンドは70フラン相当」と書いてあった。なおベルギーは当時ベルギー・フランを採用。レートはフランス・フランと同じだったようだ。
p279 二十四フランはシングルの部屋としては相当の値段◆3792円。ずいぶんと安い。
p279 プチ・デジュネ4フラン50はかなり上等なホテル… おそらく中の上◆711円。
p279 ロンドンのサボイとか、パリのクリヨンまたはクラリッジ(like the Savoy in London or the de Crillon or Claridge’s in Paris)◆超一流ホテルの例
p282 ベデカ案内書
p285 ゼーブリューゲの海岸(Zeebrugge)◆クロフツさん得意の観光案内
p286 ブリュジェ(Bruges)
p289 フラマン語
p291 アントワープ◆クロフツさん得意の観光案内
p299 コーヒーとロールと蜂蜜の朝食
p306 五フラン◆情報料
p308 ベルリッツ学校
p315 カード遊び(to play cards)
p330 船首に十八ポンド砲(an 18-pounder forward)
p336 モーリス・ドレイクのWO2のすてきな物語(Maurice Drake)… テルノイゼンのようなやつ… わたしがめぐり会ったなかでも、いちばん面白い本のひとつ(like those chaps in that clinking tale of Maurice Drake’s, WO2.’ / ‘As at Terneuzen?’ said French. ‘I read that book—one of the best I ever came across)
p357 六ポンド砲(the six pounders)
p361 軍用拳銃(all armed with service revolvers)◆こちらはウェブリー回転拳銃か。

No.5 5点 ボナンザ 2018/04/30 22:03
冒険小説として楽しむべき一作。チェインの猪突猛進な性格を我慢できるかで評価が変わるかも。

No.4 5点 斎藤警部 2016/09/30 00:25
軽い冒険ミステリ。ヴィジュアル的に魅力ある暗号の図が記憶に鮮やか。それくらいかな。

No.3 5点 nukkam 2016/05/29 09:57
(ネタバレなしです) 1926年発表のフレンチシリーズ第2作ですがフレンチ警部が登場するのは物語が3分の2ぐらい進んでからです。そこまでは事件に巻き込まれたチェインを主役にした冒険スリラーで、チェインが何度も危機を迎える展開は読み応えたっぷりです。チェインが麻酔剤を飲まされるトリックが図解入りで説明されていますが、これは犯人の解説で判明していて推理要素は皆無です。フレンチが登場して主役交代となり、犯人追跡や暗号解読などが加わりますが典型的な棚ぼた式の解決で、本書のフレンチは名探偵の役割を果たしたとは言えません。

No.2 5点 E-BANKER 2011/07/11 22:40
フレンチ警部登場作品としては、「フレンチ警部最大の事件」に続く第2作目。
純粋なミステリーというよりは、冒険小説とでもいうべき作品でしょうか。
~快活な青年チェイン氏は、ある日ホテルで初対面の男に毒を盛られ、意識を失ってしまう。翌日自宅へ帰ると、家は何者かに荒らされていた。一連の犯行の目的は何か? 独自の調査を始めたチェイン氏を襲う危機また危機。いよいよ進退窮まったとき、フレンチ警部が登場し事件の全貌解明に乗り出す~

ちょっと微妙な感じの作品。
クロフツといえば、地道な捜査による「アリバイ崩し」がハイライトですが、本作はそれとは無関係。
第1部では、チェイン氏が何度も犯人グループに襲われ、どうやらその理由が友人から受取った手紙に関係していることが分かる。そして、仲間に加わった女性が拉致されるに及んで、フレンチ警部に救いを求めるところから第2部が始まり、主題は「暗号の解読」に・・・というのが大まかな粗筋。
あまり捻りはなく、正統派の冒険小説という感じですし、暗号も複雑に見えましたが、フレンチ警部があっさりと解明してしまいます。
唯一、犯人が手掛かりとして残した紙切れをもとに、フレンチが問題の都市とホテルを捜索する場面にクロフツらしさを感じてしまいました。
(確かに、ブルージュもアントワープもいい街です)
でも、フレンチ警部にはバカ正直な捜査&アリバイ崩しが似合うなぁというのが1ファンとしての正直な感想ですね。

No.1 5点 kanamori 2010/07/15 20:49
フレンチ警部シリーズの第2作。
前半は、準主人公といえるチェイン氏を巡る冒険小説風の物語で、脅迫や誘拐のアクションや暗号表まで出てきて、まったくテイストが異なります。
フレンチ登場後もオーソドックスな捜査小説とはいかず、ちょっと好みを外していました。


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