皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ ホラー ] ミザリー |
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スティーヴン・キング | 出版月: 1990年03月 | 平均: 6.71点 | 書評数: 7件 |
文藝春秋 1990年03月 |
文藝春秋 1991年02月 |
文藝春秋 2008年08月 |
No.7 | 5点 | メルカトル | 2021/08/29 22:55 |
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雪道の自動車事故で半身不随になった流行作家ポール・シェルダン、元看護婦の愛読者に助けられて一安心したのが大間違い、監禁されて「自分ひとりのために」小説を書けと脅迫されるのだ。キング自身の恐怖心に根ざすファン心理のおぞましさと狂気の極限を描き、作中に別の恐怖小説を挿入した力作。ロブ・ライナー監督で映画化。
『BOOK』データベースより。 読んでも読んでも終わらない、冬の話なのにエンドレスサマーって感じです。やっと読み終わって確かなカタルシスが得られたかと問われれば、否としか言いようがありません。決して面白くない訳でも冗長な事もないですが、あまりに抑揚がなく盛り上がりに欠けるのが致命的ですかね。所々残酷シーンもあったりします、しかしそこをもっと強調しリアルに描いてくれないと。グロさに迫力が無さ過ぎます。それと舞台が固定されている為変化に乏しく、途中で若干ダレますね。ただ、主人公のポールの内面は良く描かれていますし、アニーのサイコパスぶりもねっとりと伝わっては来ます。しかし、例えば『黒い家』と比較するとまだまだ物足りないって気がします。 それでも、これはいつまでも自分の記憶に残りそうな予感はします。キングってそんな感じのばっかなのでしょうかねえ。原作は読んでいませんが、映画『キャリー』があまりに素晴らしかったので、期待ばかりが先走ってしまって辛口の点数になってしまうのは致し方ないかなと思います。 |
No.6 | 3点 | ことは | 2020/04/06 00:06 |
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これは、「世評」と「自分の評価」に乖離がある作品のひとつ。
最初は、ねっとりした描写が楽しめたが、同じような描写の繰り返しで、物語は進行しないし、ページ数は多いしで、最後には退屈してしまった。 好きな人は、ねっとりした描写を飽きずに最後まで楽しめた人なのかなぁ。 100ページくらいの中編にしてくれたら、切れ味がよくて面白かったのではないかと妄想するが、長すぎる気がするんだよなぁ。好みの問題なのでしょう。 |
No.5 | 10点 | Tetchy | 2019/06/18 23:39 |
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私も映画化作品を観たこともあり、またガーディアン紙が読むべき1000冊の1作に選ばれた、数あるキング作品の中でも1,2を争うほど有名な作品。映画も怖かったが、やはり小説はもっと怖かった。
説明不要のサイコパスによる監禁物であるが、驚かされるのが作品のほとんどが監禁状態で語られることだ。しかも物語の舞台は95%以上が狂信的なファン、アニー・ウィルクスの家で繰り広げられている。 限られたスペースで物語が繰り広げられるキング作品は先に書かれた『クージョ』が想起されるが、あの作品もメインの舞台となる車の中での監禁状態に至るまでの話があった。しかし本書は始まって5ページ目には既にアニー・ウィルクスの部屋にいるのである。文庫本にして500ページもの分量をたった1つの部屋で繰り広げるキングの筆力にまず驚かされる。 とにかく主人公ポール・シェルダンを監禁し、自分だけの新作を書かせる熱狂的なファン、アニー・ウィルクスが怖い。 このアニー、とにかく自分の思い通りにならないとすぐに癇癪を起す女性だ。 これほどまでに人に執着し、自分の思い通りにならないことに癇癪を立てる人がいただろうか。いや、いるのだ、実際この世には。 愛。それは何ものにも代え難い感情で困難に打ち克つ力として愛をテーマに人は物語を書き、詩を書いて歌にする。人が誰かと一緒になるのも愛あればこそだ。 しかしこの強い感情が実は最も人間の怖さを発揮することになることを本書は知らしめる。 アニー・ウィルクスはポール・シェルダンの書くミザリーシリーズという小説が大好きで大好きで次作が出るのを待ち遠しくしていたのに作者がこの主人公を殺してしまったから、それが許せなかった。自分の好きな作品を返してほしい。そして彼女にはそれが出来た。なぜならその作者が満身創痍の状態で自分の家にいたからだ。 彼女は献身的に重傷の作者を介護し、自分に逆らうとどういう目に遭うかを知らしめるために彼を支配した。彼が自分の手中から逃れようとしたら彼の足を切断し、自分の思い通りの話を書こうとしなかったから拇指を切断した。 彼の行方を尋ねに来た警官を殺害した。 それもこれも自分の大好きなミザリーシリーズの、自分のためだけに作者が書いてくれる続きを読みたかったからだ。 ファンというものは有難いものだが、一方で恐怖の存在にもなりうる。そしてこれはただの作り話ではない。キングが遭遇したある狂信的なファンの姿なのだ。 これがもしキング自身が抱いたトラウマだったら、彼は本書を著すことでトラウマを克服し、解消しようとしたのではないか。つまり彼は自分の紡ぐキング・ワールドに狂信的なファンの幻影を封じ込めようとしたのではないか。 そう、忘れてはならないのは本書がサイコパスによる監禁ホラー物だけの作品ではなく、小説家という職業の業や性を如実に描いた作品でもあることだ。 上述したように本書は95%がアニー・ウィルクスの家で繰り広げられるが、この長丁場を限られた空間で読ませるのは狂えるアニーのエスカレートするポールへの仕打ちとそれに対抗するポールの生への執着だけではなく、ポール・シェルダンという作家を通じて小説家の異様なまでの創作意欲、ならびに創作秘話が語られることも忘れてはならない。 最初はどうにか助かりたいと思って苦痛を抑えるために屈辱的なことも敢えて行った彼が次第に回復するにつれ、自分の命を繋ぎ留めるミザリーの新作に次第にのめり込んでいく。今までファンのためだけに書き、自身では早く終わらせたくて仕方がなかったミザリーがアニーという狂信者によって続編を書くことを強要され、文字通りその身を削って命懸けで案を練るうちに彼の中に今までになく充実したミザリーの物語が展開するのだ。それはさながら極限状態から生まれたアイデアこそが傑作になりうるといった趣さえある。 一度始めた物語は最後まで書きあげたい、自分の頭にある物語を形あるものとして残したい。満身創痍の中、必死に『ミザリーの生還』に取り組むポールはキングそのもの。 狂信的なファンによる監禁ホラーというシンプルな構造の本書は上に書いたようにファン心理の怖さ、そして自己愛が強すぎる者の異常さと執念深さのみならず、小説家という人間の業、更に物語が人から人へと広がっていくマジックなど、非常に多面的な内容を孕んでいたが、それだけに実は終始しない。 実はここに書かれていることが現実となるのである。 交通事故に遭い、満身創痍になったポール・シェルダンは本書を著した12年後のキング自身の姿である。彼自身も車に撥ねられ、重傷を負い、そして片脚に障害を負う。 この作品が他のキング作品と異なる怖さを秘めているのは、そんな現実とのリンクが―しかも未来を暗示していた!―あるからこそなのかもしれない。 キングは本書をフィクションとしてキング・ワールドに封じ込めたのではなく、実はキング・ワールドが現実にまで侵食してしまったのだ。 一人の作家が描いた世界がとうとう現実世界へ波及した稀有な作品として本書は今後私の中で忘れらない作品となるだろう。 |
No.4 | 8点 | HORNET | 2015/08/20 16:54 |
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人気作家ポール・シェルダンが自動車事故に遭い、偶然その現場から彼を助け出したのは彼の「ミザリーもの」作品に心酔しているファン、アニー・ウィルクス。ただアニーは「異常な」ファンだった―。
ポールを幽閉し、「自分の為だけに」ミザリー作品を執筆させようとするアニー。精神にも異常を来し、実は過去にも罪を犯しているアニーに、身も心もずたずたにされていくポールの苦しみ、痛み、恐怖。登場人物はほとんどこの2人しかいない展開でありながら、臨場感ある場面描写、リアルな心情描写に引き込まれる。 そして、徹底的な悪役であり、ポールにとっては憎悪の対象でしかないはずのアニーなのに、なぜかそれだけでは割り切れないような感情が描かれている。それは、生殺与奪の実権は完全にアニーが握っていながら、アニーが心から求めている「ミザリー作品」の実権はポールが握っているところに起因するのであろうが、要はアニーはイカれているけれども馬鹿ではなく、「ミザリー作品はポールが書く」というところを弁えているところが話に深みをもたせている。ポールだけでなく読んでいるこちらも、いつの間にかアニーに憐憫というか、可愛さというか、一方的に唾棄すべき存在ではなくなっていくのは私だけだろうか。 単なるサイコホラーではなく、そのあたりの2人の微妙な立場というか位置関係が、作品を秀逸ならしめている。 |
No.3 | 9点 | ∠渉 | 2014/03/06 14:14 |
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再読。
前回読んだときはなかなかえぐい描写が多くてそっちばっかりに気が行ってたんですが、改めて読んでみるとちょっとロマンチックな感じもしました。 ポールは常々アニーのことを「女神」と表現していて、最初はまぁ皮肉だったのでしょうが、最終的にはポールを再び作家へと導く「女神」になったわけです。前回読んだときはアニーは強いファン心理が生み出したモンスターみたいに思ってましたが、読み返してみると、「献身的なイイ女」に見えてきました。いちファンという点でみればかなり尊い存在なのでは?とまで思いました。 作中でポールは作品に献辞をつけることについて、「作家がよく本の始めに献辞をつけるのは、書き終えてから、それまでの自己本位の態度が空恐ろしくなるからなのさ」と言っていましたが、そんなマスタベーションの賜物にたいして献辞をおくる、普段は作家にとって実体をもたない愛読者たちの尊さを表現したかったのかなぁなんて思いました。それをキングが書くと、アニーのような躁鬱を繰り返し、傲慢で繊細で、尊大なのに感傷的な、かなり破壊的な人物が形成されています。でもやっぱ僕ら読者、愛読者、ファンも少なからずこういう不安定さを抱えているのでは?と思うと、とてもじゃないけど笑えません(失笑)。 作家と読者、アイドルとファン、色々ありますが、こういう関係って実はかなり健全な関係ではないのかもしれません。でも素敵な関係であるのも確か。「ただならぬ関係」といったところでしょうか。それが「ミザリー」に集約されていました。とても思い出深い作品ということもあって、この評価です。 |
No.2 | 6点 | 蟷螂の斧 | 2013/04/18 17:38 |
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(東西ミステリーベスト61位)超常現象のない心理的ホラーといった感じですが、血が飛び交う場面もあります。作家の心理(いつ殺されるかわからない恐怖、薬を求める自分、「ミザリー」(小説)を完成させようとする作家の性)がうまく描かれていると思います。ただ、ちょっと長いのと、好みの分野でないので、この評価です。 |
No.1 | 6点 | kanamori | 2010/07/27 19:08 |
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自動車事故で半身不随になった人気作家が、熱狂的な女性愛読者に監禁される恐怖を描いたモダン・ホラーサスペンス。
超常現象などが出てこない、人間の狂気を主題にしたホラーですが、克明な心理描写がなかなか読ませます。 主人公の人気作家「ポール・シェルダン」って、ひょっとして・・・・(笑)。 |