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深夜勤務
ナイト・シフト
スティーヴン・キング 出版月: 1986年08月 平均: 6.00点 書評数: 2件

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サンケイ出版
1986年08月

扶桑社
1988年05月

No.2 7点 Tetchy 2016/12/15 23:49
はしがきにも書かれているようにデビュー作『キャリー』以来、『呪われた町』、『シャイニング』と立て続けにベストセラーのヒットを叩き出した当時新進気鋭のキングが、その溢れんばかりに表出する創作の泉から紡ぎ出したのが本書と次の『トウモロコシ畑の子供たち』に分冊された初の短編集である。
今まで自分の頭の中で膨らませてきた空想の世界が世に受け入れられたことがさらに彼の創作意欲を駆り立て、兎にも角にも書かずにいられない状態だったのではないだろうか。
その滾々と湧き出る創作の泉によって語られる題材ははしがきで語っているように恐怖についてのお話の数々だ。

古い工場の地下室に巣食う巨大ネズミの群れ。
突如発生した新型ウィルスによって死滅しつつある世界。
宇宙飛行士が憑りつかれた無数の目が体表に現れる奇病。
人の生き血を吸ったことで殺戮マシーンと化した圧搾機。
子取り鬼に子供を連れ去られた男の奇妙な話。
腐ったビールがもとでゼリー状の怪物へと変わっていく父親。
殺し屋を襲う箱から現れた一個小隊の軍隊。
突然意志を持ち、人間に襲い掛かるトラック達。
かつて兄を殺した不良グループが数年の時を経て再び現れる。
忌まわしき歴史を持つ廃れた村に宿る先祖の怨霊。

これらは昔からホラー映画やホラー小説、パニック映画に親しんできたキングの原初体験に材を採ったもので題材としては決して珍しいものではない。ただ当時は『エクソシスト』やゾンビ映画の『ナイト・オブ・リビングデッド』といったホラー映画全盛期であり、とにかく今でもその名が残る名作が発表されていた頃でもあった。

しかしこの着想のヴァラエティには驚かされる。今ではマンガや映画のモチーフにもされている化け物や怪異もあるが、1978年に発表された本書がそれらのオリジナルではないかと思うくらいだ。

本書の個人的ベストは「やつらはときどき帰ってくる」だ。この作品は少年時代にトラウマを植え付けられた不良グループたちが教師になった主人公の前に再びそのままの姿で現れ、悪夢の日々が甦るという作品だが、扱っているテーマが不良たちによる虐めという誰もが持っている嫌な思い出を扱っているところに怖さを感じる。無数の目が体に現れたり、小さな兵隊が襲ってきたり、トラック達が突然人を襲うようになったりと、テーマとしては面白いがどこか寓話的な他の作品よりもこの作品は誰もが体験した恐怖を扱っているところが卓越している。

また最後の短編「呪われた村<ジェルサレムズ・ロット>」は長編とは設定が全く異なることに驚いた。一応長編の方も再度確認したが特にリンクはしていないようだ。ただ後者は全編手記によって構成されるという短編ゆえの意欲的な冒険がなされ、最後の一行に至るまでのサプライズに富んでおり、長編の忍び来る恐怖とはまた違った味わいがあって興味深い。

本書は最初に述べたようにキング初の短編集でありながら、次の『トウモロコシ畑の子供たち』と分冊して刊行された。いわば前哨戦と云ってもいいかもしれない。それでいて現在高評価されている漫画家へも影響を与えたほどの作品集。次作もキングの若さゆえのアイデアの迸りを期待したい。

No.1 5点 ∠渉 2013/11/24 00:43
一冊の短編集のなかに、とにかくたくさんの異形なやつらが出てくるので、ホラーですがなんかもう愉快でした。
キングの第一短編集ということもあって技術とか感性だけじゃない、威勢のいい感じがあって好きですね。才能はもちろんとして。

個人的に特に好きなのを挙げると、

「波が砕ける夜の海辺で」/パンデミックの話なんですが、パニックストーリィでなく、静かに最期を向かえようとする若者達の姿を描いた話で、生でもない、死でもない瞬間を切り取ったストーリィがなんか切ないです。

「トラック」/トラックが突然街を襲い、人間がどんどん追い詰められていく話。日常の風景から絶望を作り出すキングらしい作品という印象。モダン・ホラーというより社会派ホラーだと、僕は思ってます。

「やつらはときどき帰ってくる」/最後から2番目の話なんですがキングの手数の多さをうかがい知れます。個人的にはこれが一番怖かった。

まぁ、他にもバラエティに富んだ作品群がズラリとしているんで結構何回も読んでも飽きないと思います。


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