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[ 時代・捕物帳/歴史ミステリ ]
黒牢城
米澤穂信 出版月: 2021年06月 平均: 8.00点 書評数: 5件

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KADOKAWA
2021年06月

No.5 8点 メルカトル 2022/01/26 23:00
本能寺の変より四年前、天正六年の冬。織田信長に叛旗を翻して有岡城に立て籠った荒木村重は、城内で起きる難事件に翻弄される。動揺する人心を落ち着かせるため、村重は、土牢の囚人にして織田方の智将・黒田官兵衛に謎を解くよう求めた。事件の裏には何が潜むのか。戦と推理の果てに村重は、官兵衛は何を企む。デビュー20周年の集大成。『満願』『王とサーカス』の著者が辿り着いた、ミステリの精髄と歴史小説の王道。
Amazon内容紹介より。

昨年の12月初旬の事。本サイトの広告欄でAmazonがしきりに薦めてくるし、評判も良さそうなので購入しようかどうしようか案じていました。そんな時行きつけの書店で単行本の新刊コーナーの隣の棚に、比較的新しい中古本が30%OFFで販売しており、その中に新品同様の本書を見つけ、数瞬ののち購入を決めました。その時はまさか、ミステリランキング4冠制覇を成し遂げるなどとは露とも思わず、又直木賞、山田風太郎賞をダブル受賞するとは夢にも思いませんでした。

初っ端から圧倒的な重厚感と静謐さを兼ね備えた村重と官兵衛の対決に、心を持って行かれそうになりました。終始これが米澤穂信の手になる小説なのかという、一種の畏怖を持ちながら読みました。本作は正に時代小説の手練れが書いたものにしか思えず、その見事なまでの描きっぷりには只管平伏するしかありませんでした。この人は一体どれだけの引き出しをを持っているのか、想像も付きません。
ただ言えるのは、間違いなく本作は『折れた竜骨』と並ぶ米澤の代表作となるであろうということであります。戦国の世に生まれた男たちの生き様と本格ミステリの見事なまでの融合などは、どんな読書の達人をも唸らせるに十分なポテンシャルを持った、堂々たる歴史ミステリの結晶であると言えるでしょう。
畢竟、評判通りの傑作だったと思います。

No.4 6点 虫暮部 2021/10/28 14:44
 歴史小説にも時代劇にもあまり縁が無い私にとって、天正年間に関する最も身近な資料は重野なおき『信長の忍び』なのである。しかも本書を読んだ時にちょうど雑誌連載が荒木村重の謀叛の真っ最中。種々の予習になったのは良くもあり悪くもあり(史実なのでネタバレは如何ともしがたい)。折に触れてぎゃぐまんがのきゃらくたぁが頭に浮かび参ったでござる。
 歴史小説としての重厚なりありてぃは、みすてり的にあまり凝れないと言う弱点でもあって、第三章までは物足りなくあったが、くらいまっくすのかたるしすは流石と申すほかなく感嘆致し候。

No.3 10点 sophia 2021/10/24 18:45
わたくし日本史にはとんと疎く、どこまでが史実かも分からなかったのですが、それが却ってよかったのでしょうか、フィクションと割り切って楽しむことが出来ました。行き詰った捜査員が囚人の知恵を借りて事件を解決するなどというのは映画などでもままあるパターンですが、本作は囚人の官兵衛からの働きかけもある点が新しいです。いや、壮大な遠望です。この戦乱の時代の武士道や死生観が四つの大きな事件と絡み合っており、ミステリーとしても時代小説としても一級品です。この作品を著者名を伏せられた状態で読んでいたとしたら、米澤穂信だとはまず分からなかったと思います。まさに新境地です。
そしてこの作品には優れた点がまだあります。私は先述の通り日本史に疎いがゆえに、ラストの「×××は実は~」のくだりで驚くことが出来ましたが、恐らく歴史に詳しい人とそうでない人で異なる楽しみ方ができる作りになっているのだと思います。個人的に著者の最高傑作は「折れた竜骨」でしたが、これはあるいは超えたかもしれません。

No.2 8点 文生 2021/08/29 18:50
織田信長を裏切った荒木村重が立て籠る有岡城で次々起きる怪事件の謎を、幽閉中の黒田官兵衛が解き明かす連作ミステリー。

いわば戦国版日常の謎というべき作品ですが、ここで用いられている仕掛けは小粒なものばかりなので、もし現代を舞台にしたミステリーでそれらのトリックを採用していたとしたら凡作に終わっていたでしょう。しかし、そこに歴史的背景を重ね、なぜそのような謎が生じたのかを追求していくことで物語としての深みが加わり、非常に面白い作品に仕上がっています。

歴史小説としても良くできており、個人的には米澤穂信の最高傑作に推したいほどです。

No.1 8点 makomako 2021/06/26 17:44
 歴史推理として力作と思います。
 以前より荒木村重ほどの男が妻子、部下を残して城を放棄して逃げてしまい、その後妻子も部下も殺されたのにひとり生き延びて晩年をけがしてしまったことについてもう一つ納得がいかないところがあったのですが、これは一つの解決ではあります。
 勿論これが歴史の真実か否かは別でしょうが。
 お話は荒木が信長に背いて兵をあげ、それをいさめに黒田官兵衛が単身有岡城へ乗り込み、説得は失敗し村重により土牢へ閉じ込められてしまったところから始まります。
 有岡城内で不可能と思われる事件が次々と起こります。解決がなかなかできない村重は囚われの身である官兵衛に謎を持ち掛ける。すると菅兵衛はあっさりと謎を解いてしまうが完全な回答は発しない。村重も有能なので謎かけでけで答えを見つける。といった出来事が4つほど起きる。ちょうど連作長編といったかたちです。最後は意外な結論となりますが、これはまた読んでのお楽しみです。
 歴史が好きで推理が好きならかなりのおすすめです。


米澤穂信
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