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[ 日常の謎 ]
巴里マカロンの謎
小市民シリーズ
米澤穂信 出版月: 2020年01月 平均: 6.71点 書評数: 7件

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東京創元社
2020年01月

No.7 6点 ぷちレコード 2024/02/03 22:31
中学時代の失敗から、目立たたずに生きることを旨としている高校生の小鳩君と小山内さんが、日常の中で小事件に遭遇するというのが物語の基本形式。小市民的な体面を崩さずに、その謎を解くことが彼らにとっては重要なのである。
表題作を含めお菓子の名前を配した短編が並んでいるが、動機を問うものや犯人捜しをするものなど、提示される謎の種類がすべて異なっている。「花府シュークリームの謎」は、手掛かりの出し方が抜群に巧い。

No.6 6点 パメル 2022/02/08 08:41
小市民シリーズの第四弾で、四編からなる連作短編集。
「巴里マカロンの謎」小鳩は、小山内に誘われてパティスリー・コギ・アネックス・ルリコに行き、新作マカロンを食べる。小山内は3つのマカロンを注文したが、出てきたのは4つ。増えたマカロンには指輪が入っていた。どのマカロンが増えたのか、犯人は誰かといった点についての推理の進め方は実に論理的。
「紐育チーズケーキの謎」小鳩は小山内に誘われて礼智中学校の文化祭に行く。そこで小山内がトラブルに巻き込まれ、その騒ぎの中でCDがなくなってしまう。小鳩は、そのCDがどこに消えたのかを推理する。派手さはないが、隠し場所に意外性がある。
「伯林あげぱんの謎」4つの揚げパンのうち、ひとつだけマスタードが入れてある。堂島、門地、真木島、杉の4人はマスタード入りに当たった者が記事を書くことにした。そして一斉に食べたが、誰もが美味しかったと言った。この不思議な現象は思い込みが原因。オチは気付いてしまったが良く出来ている。
「花府シュークリームの謎」古城が無実なのにもかかわらず、飲酒の疑いで停学になった。この事件を小鳩と小山内が誰の犯行かを解き明かす。何気ないやり取りが真相につながる。犯人はわかりやすい。
ほのぼのとした中にブラックな味わいが楽しめるシリーズだが、本作は少し弱めか。全体的に地味な印象はあるが、登場人物たちはそれぞれ魅力的であり、読後感も爽やか。「春季限定」「夏季限定」「秋季限定」ときて、このタイトルというのは番外編という位置づけなのだろうか。「冬季限定」としなかった意図を知りたい。

No.5 6点 ボナンザ 2021/01/24 23:00
11年ぶりか・・・。どの短編も既刊ほどの毒はないが、日常の謎としてはやはりすごくよくできていると思う。
時系列的には「また」さらわれたわけではないような・・・。

No.4 7点 HORNET 2021/01/24 12:03
 高校生・小鳩常悟朗は、同級生の小佐内ゆきと、必要な時に互いに手を貸し合うという「互恵関係」を結んでいる。ある日ゆきから、新装開店した名古屋の人気カフェにつき合ってほしいと頼まれ共に店を訪れる。ゆきのお目当ては季節限定のマカロンを食べることだったが、注文したマカロンがなぜか一つ増えていた。そして、そのマカロンの中にはなんと指輪が仕込まれていた・・・
 なんと11年ぶりの「小市民」シリーズ。春、夏、秋ときて、「冬(続編)は出ますか?」という質問に作者は「書きます」と答えていたが、なぜか急にタイトルが「国名シリーズ」に(笑)。これは、「冬」で終わらせずに今後も続くということなのだろうか・・・?
 2人の特異なキャラクターを軽妙に描きつつ、巧妙に伏線を忍ばせながら「日常の謎」を解き明かしていく作者の手腕は健在。「伯林あげぱんの謎」は、いかにも普段やりそうな人の行為をうまくすくい上げた真相で唸らされた。古典部シリーズと並んで、学生を主人公にした日常の謎もこの作者の重要な領域なのだと感じた。

No.3 7点 2020/11/26 11:49
 前作『秋期限定栗きんとん事件』より11年後に刊行された、ちょっと変わった高校生の男女が、平和な生活を求めながらも日常で発生した事件の謎に挑む〈小市民〉シリーズ第四弾。ただし時系列的には一作目と二作目の間に入る形になる。執筆は書き下ろしを含めほぼ年一作ペース。残る作品も東京創元社の隔月刊誌《ミステリーズ!》に、二〇一六年十二月から二〇一九年二月にかけて発表された。
 長らく間を置いただけあって内容も充実。収録は表題作のほか 紐育(ニューヨーク)チーズケーキの謎/伯林(ベルリン)あげぱんの謎/花府(フィレンツェ)シュークリームの謎 の全四編で、今回は小佐内さんの妹分的存在となる有名パティシエの娘・古城秋桜(こすもす)を中心に据えて、一冊に纏めた場合の効果も考えられた、サクサク読めて後味も口当たりも良い仕上がりになっている。番外編という事もあってか小佐内さんも(比較的)大人しく毒も薄め。ある意味シリーズ読者が密かに待ち望んでいた、フツーの"日常の謎"作品集かもしれない。全編を貫く企みのあるのもいいがそればかりでは胸焼けがするので、〈そうそうこういうのでいいんだよ〉という感じである。
 〈四人の新聞部員のうち誰にマスタードの入った揚げパンが当たったのか?〉という犯人当て企画短編、「伯林あげぱんの謎」の執拗さも買えるが、個人的には秋桜の登場する短編の方が好み。名古屋のスイーツ店、パティスリー・コギ・アネックス・ルリコを舞台に、「おお牧場はみどり」のメロディーが流れる姉妹編として〆た一話と四話もいいが、秋桜の通う名古屋の礼智中学文化祭での小佐内さんの二度目の拉致と、〈果たして彼女は衝突した1年生に託されたCDを校庭のどこに隠したのか?〉を常悟朗が推理する第二話「紐育チーズケーキの謎」は、タイトルが巧みなヒントになっていてもっといい。隠し場所トリックとしてもかなり秀逸である。
 全般にどの短編も小道具や展開がよく考えられていてレベルが高いが、これはやはり十分な余裕あってこそだよなあ。作者も表題作を寄稿したあとかなり思う所があったみたい。久しぶりなので筆致も丁寧だし、このシリーズにしては例外的に最後までほんわかゆったりしてて良いよね。

No.2 7点 まさむね 2020/06/06 16:29
 小市民シリーズ11年ぶりの新作。久しぶりですねぇ。そしてタイトルは「冬期限定~」ではないのですねぇ。
 ベストは「伯林あげぱんの謎」で、謎の置き方と伏線の配置、そして遊び心が好きですね。新たな妹的キャラ・古城秋桜を登場させたうえで、「花府シュークリームの謎」で締めた短編集としての全体構成にも好感。
 小佐内さんと小鳩くんの掛け合い(?)は相変わらず楽しいのだけれども、さてさて、このシリーズは今後どうなるのだろう?

No.1 8点 虫暮部 2020/05/29 11:56
 このシリーズって春夏秋冬の4部作になるのが暗黙の了解だったんじゃないの~? と誰もが突っ込んだことでしょう。恥じることはない私もだ。
 公約を剥がすだけの意義はあった。「伯林あげぱんの謎」は不可解な状況の作り方が巧みだし(シリーズ中ベストではないか)、「花府シュークリームの謎」は謎そのものよりも打開の為の心意気がナイス。ラスト・シーンでは異様に感動した。
 しかし、こうやって続けてしまったことで、“二人の青春の蹉跌に何らかの決着を付けて完結”と言った感じのバランス良くまとまったシリーズへの道は失われたわけで、ちょっと惜しい。完結させられるシリーズは完結させたほうがいいと思うのだ。


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