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[ 本格/新本格 ]
王とサーカス
ベルーフシリーズ
米澤穂信 出版月: 2015年07月 平均: 6.56点 書評数: 16件

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東京創元社
2015年07月

東京創元社
2018年08月

No.16 7点 みりん 2023/03/03 12:30
ミステリにおいてエンタメ性とメッセージ性を両立させるのはとても難しいと思いますがさすがは米澤穂信。ちょうど良いバランスどころか相乗効果を生んでいると言える珍しい作品です。

No.15 7点 ʖˋ ၊၂ ਡ 2021/06/29 17:23
正しさとは何か。誰も傷つけず、傷つかず幸せになることは出来るのか。幸せの裏に必ずしも悪がないとは言い切れない。深く考えさせられた一冊。

No.14 8点 じきる 2021/05/23 17:50
ジャーナリズムというテーマが、ストーリー・ミステリー部分とがっちり噛み合った完成度の高い傑作。
八津田の去り際の台詞や「敵の正体」の章は、特に強く印象に残った。

No.13 6点 いいちこ 2020/11/17 17:51
ジャーナリズムのあり様に対する問題認識には賛同できるが、それとミステリとしてよくできているかどうかは別の話。
非常に世評の高い作品であるが、1個のミステリとして評価すると、この程度

No.12 6点 パメル 2020/06/01 10:44
2001年にネパールで実際に起きた事件を題材に、事実を知ることと、それを伝えることの意義と疑問を真摯に問いかけている作品。
フリーライターの太刀洗万智がネパールで巻き込まれた王族殺人事件。ジャーナリストの血が騒ぐ太刀洗に情報と提供をしてくれた軍人の殺人事件。この二つの事件、どう関係があるのか。誰が味方で誰が敵なのか。正しさとはとても曖昧といえる。だから人は壁にぶつかるたびに考える。なにが正解なのかを。
真実を求めるためのジャーナリズムが時には誰かを傷つけることになっても、それは正しいことなのか。主人公が突き付けられる疑問や苦悩に読み応えがあり、深く考えさせられながらもスピード感があり心地よい。

No.11 5点 ボナンザ 2019/08/20 11:18
真実の10メートル手前に比べると初々しい感じが残る大刀洗が楽しめる長編。ミステリとしても中々の出来だと思う。

No.10 6点 E-BANKER 2019/06/05 23:27
「さよなら妖精」から約10年。勤めていた新聞社を辞め、フリージャーナリストとなった太刀洗万智が描かれる本作。
舞台は神秘の国ネパールの首都カトマンズ。
2016年に発表され、その年の「このミス」で第一位にも輝いた作品。

~海外旅行特集の仕事を請け、太刀洗万智はネパールに向かった。現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を過ごそうとしていた矢先、王宮で国王殺害事件が勃発する。太刀洗はさっそく取材を開始したが、そんな彼女をあざ笑うかのように、彼女の前にはひとつの死体が転がり・・・。2001年に実際に起きた王宮事件を取り込んで描いた壮大なフィクション。米澤ミステリーの記念碑的作品~

何ていうか・・・評価しにくい作品。
テーマは“太刀洗万智にとってジャーナリズムとは?”ということなのかな。
日本から遥か離れた高地の街・カトマンズ。今や人口70万人を抱えるそこそこの都市なのだが、そこは発展途上国。
人々は貧しく、文化的な習熟度も高いとはいえない。
そして、突如発生した王族の殺害事件(いわゆるクーデターなのか?)に巻き込まれることになる。

そこからが彼女にとっての正念場。ジャーナリストとしての存在意義を問われることになる。
うん?
とてもじゃないがミステリーの書評とは思えない書きっぷりだな・・・
ここが「評価しにくい」ということ。
正直なところ、よく「このミス一位」になったよなーって思う。
いや、決して批判的なわけではなく、貶しているわけでもない。もちろん終盤には、太刀洗の鋭い推理やミステリー的なサプライズもあるんだけど、評価されたのはそこではないのだろう。

ちょうど太刀洗がジャーナリズムに向き合う姿勢に、作者がミステリーと向き合う姿勢が重なって見えたのではないか?
並みの作家ではなかなか取り組めないプロットだし、プライドや気高ささえも感じてしまう。
太刀洗万智というキャラクターも重要。
こんなキャラクターを持てたこと自体、作者の勝ち!ってことかな。
(結局褒めてる割には評点は辛いような気が・・・)

No.9 6点 VOLKS 2018/09/02 17:18
太刀洗万智を知らずに手に取ってしまったが、全く問題なく読むことができた。
ネパールという舞台、太刀洗というキャラクター、王族の殺し合いというスキャンダル…と、思いきや、そっち(王族の)話はどーなってしまったのか…?
少々疑問が残りましたが、殺人事件の方はキャラクターも手伝ってなかなか面白く読めました。
正直、最初はグダグダな感じもありましたが、半ばくらいから一気に盛り上がった気がします。

No.8 8点 sophia 2018/07/31 21:54
殺人事件自体はそう大したことはないけど、それに付随して起きたことがすごかった。糞坊主に腹立ちますね。タイトルもしかして「オートフォーカス」とかけてます?違いますか(笑)

No.7 8点 青い車 2016/12/31 22:11
 『さよなら妖精』の太刀洗万智が主人公として再登場したことでファンを驚かせ、その年のランキングを総なめにしたヒット作です。舞台ネパールの生活描写が充実しており、程よい情緒を感じます。
 事件の内容と推理の方はまずまず。つまるところ犯人は誰が唯一機会を有していたかがカギで、アクロバティックな論理展開は特にありません。目玉と言えるのはむしろその先にある反転で、さりげなく張られたそれを示唆する伏線も作者の安定した実力を見せつけています。同時にその反転が重く苦い問題提起に連結しているのも完成度を高めている要素です。
 でも、これが作者の中で突出した出来かというと、そうとは言い切れないとも思います。まとまりの良さは評価に値するものの、突き抜けたパワーはないですし。本作で作者が一皮剥けたというより、ようやく正当に認められるようになってきた証拠がこの高評価というのが正しいのではないでしょうか。

No.6 6点 白い風 2016/06/04 23:45
分野的には本格ミステリーなんでしょうね。
でも、准将殺しよりもフリージャーナリストになった太刀洗の矜持・信念の方が読みごたえがありました。
ただ個人的には王族の殺害事件はどうなったの?放置??と少し欲求不満が残りました。
ベルーフシリーズのスタートですね。
順番は逆になりましたが先に「真実の10メートル手前」を読みましたが、じっくり太刀洗の心情に迫る長編も期待したいですね。

No.5 5点 風桜青紫 2016/05/03 17:04
知り合いからの評判があまりよろしくなかったので、ハードルを下げて読んだ。……そこまで悪くないと思うが、かといって面白いかといわれるとなんとも微妙で、平均的な米澤穂信の作品だという印象だった。

わりと本格としては凝ったつくりなんだが、真相がやや予測しやすく、先行きが気になる謎もなければはっとするどんでん返しもない。となると読ませどころはセンドーの葛藤と成長……なんだが、こちらもいかんせん月並というか軽いというか、虫警部氏のおっしゃる「いかにも」という言葉がふさわしいように感じる。

筆致は落ち着いてるし、話のまとまりもそれなりにあるから、読ませはするけども、ラストシーンの大袈裟さほど余韻の残る読後感ではなかった。第二の『折れた竜骨』を想定していたが、どちらかといえば、第二の『追想五断章』だった。

No.4 7点 まさむね 2016/03/23 20:26
 新聞記者を経てフリージャーナリストとなった太刀洗万智。彼女を知ろうと思い「さよなら妖精」を先読したのですが、特段読んでいなくても問題ありませんでしたね。すんなりと入り込めます。
 さて、各種ミステリランキングで評価の高かった本作。2001年6月に実際に発生した、所謂「ネパール王族殺害事件」を扱っており、舞台となったネパールの首都カトマンズの異国情緒も含めて興味をそそられます。
 一方で、謎の解明という側面で多少の肩透かし感を抱いたのは事実です。また、王族殺害事件の真相について新たな切り口を見せてくれるのかと思いきや…という印象も残ります。
 しかし、ジャーナリズムのあり方という古くて新しい問題と、がぶり四つに組んだ姿勢は評価すべきでしょう。奥深く、読みごたえのある作品ではあります。

No.3 5点 虫暮部 2016/03/03 15:36
 悪くはないけど、期待し過ぎた。主人公の苦悩が“いかにも~”という感じで物足りない。そんなことはフリーになる段階で悩み終わっとけ。この程度で“記念碑的傑作”と謳ってしまうのは、寧ろ作者の資質に対する過小評価なのでは。

No.2 8点 HORNET 2016/01/10 22:09
まず、この「さよなら妖精」シリーズを読んでいなくても大丈夫。前作までを読んでいないとわからないことはない。そういう点で米澤氏はいつもフェア(?)な感じがする。
 実は氏の講演を聞く機会に恵まれた。その講演の中で、「小説(ミステリ)を書くには三つの要素が揃えばよい」と話されていて、それは①物語②謎③舞台だとおっしゃっていた。そして氏のこだわりというか、信念として最も伝わってきたのは、「①物語と②謎は不可分のものでなくてはならない」と言われていたことだ。つまり、「こういう『謎』を解く話のアイデアができた」というとき、それをどんな物語の中でも使えるのではなく、その「謎」が必然的に結びつく物語でなければばならない、ということ。例えば本作品のメインとなる謎やトリックも、「この、『ネパールという舞台、取材に行った太刀洗…』といった設定の話と不可分に結び付いたもの」にならないとダメ、ということである。
 前置きが長くなったが、それが見事に具現していた。米澤氏は、上記のような考えから「謎の解明だけで終わるミステリはダメ。ミステリはクイズではない。物語に結び付いて終わらないとダメ」ということもお話しされていたが、それがよくわかる。本作品も、一応フーダニットではあるが、骨子がそれだけの痩せたものではない。ジャーナリズムの意味について、受け止める我々について、私たちが気付かなかったそこに内在する問題について、ミステリとしての謎に絡んで描かれている。
 米澤氏の深く考え抜かれたプロット、哲学的ともいえる深い物事への深い洞察に、こちらも腕を組んで考えてしまう。

No.1 7点 kanamori 2015/08/30 20:05
新聞社を辞めたばかりの太刀洗万智は、知人の雑誌編集者から受けた仕事の事前取材のためネパールにいた。現地で知り合った少年のガイドで首都カトマンズの街を取材していた矢先、王宮で国王をはじめ王族の殺害事件が勃発。そして、彼女の前に背中に英文字が刻まれた男の死体が横たわる--------。

あの「さよなら妖精」から十年、当時女子高生だった太刀洗万智が、新米のフリーライターとして再登場しますが、前作と直接の連動はありません。本作は、ネパールで2001年6月に実際に起きた王宮事件を背景に置き、”ジャーナリズムの存り方”をテーマにした骨太の作品になっています。
王宮事件の情報を得るために彼女が接触した相手が殺されたため、ジャーナリストとして、その殺人事件の真相解明に関わらざるを得ないという構成はよく出来ていると思います。ただ、カトマンズの街並みの情景描写や、王宮事件の経過説明など(情報としては非常に興味深いのですが、謎解きミステリとしてみると)その前段の背景説明部分に筆を費やしすぎていて、やや冗長に感じるところもありました。
真相開示の部分では、細かな伏線の回収に妙味はあるものの、”こんな通俗的な”と一瞬は思わせます。しかし、次の「敵の正体」の章で明らかにされる、テーマと結びつく”もうひとつの真相”が重く、心に響きます。
謎解きやトリックの面でそれほど傑出したところはないものの、作者の作風の幅広さを再認識させてくれる佳作という評価。


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