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[ 日常の謎 ]
春期限定いちごタルト事件
小市民シリーズ
米澤穂信 出版月: 2004年12月 平均: 5.25点 書評数: 20件

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東京創元社
2004年12月

No.20 5点 ぷちレコード 2022/02/23 22:35
学園ものの連作ミステリ。一見、命の生々しさとは無縁のように思える。だが、読み出してすぐに印象は変化する。平穏を至上の価値として「小市民」を目指す高校一年生の男女が巻き込まれる小事件の数々。
この徹底的な爽やかさとひ弱さが、我々の命がナマモノであることを強く感じさせる。

No.19 6点 2021/02/21 07:04
 『さよなら妖精』に続いて書き下ろし刊行された、〈ちょっと変わった二人が手に手を取って、清く慎ましい高校生活を目指す〉小市民シリーズ第一弾。収録作は 羊の着ぐるみ/For your eyes only/おいしいココアの作り方/はらふくるるわざ/孤狼の心 の五編。第二話からのストレスフルな展開の連続に、二作目以降を読んだ身としてはいつ爆弾が破裂するかとビクビクもの。作中人物とは別な意味で胃が痛く、小佐内さんには「よく我慢したね」と言ってあげたい。
 一作目だけあって登場人物同士が微妙な距離を保ちながら進行するが、意図不明の二枚の絵の謎を扱った「For your eyes only」の結末はかなり不穏で、この連作が安直には収まらない事を予感させる。が、個々の短篇の出来は、全体の趣向とキャラクターの確立を優先した続編『夏季限定トロピカルパフェ事件』を上回っており、個人的にはあちらよりも楽しめる。
 〈日常の謎〉として優れているのは、やはり意図せず提出されたミステリーを解く形の第三話だが、些細な疑問から紛失したポシェットの行方を突き止める第一話「羊の着ぐるみ」も、動機の微笑ましさも相俟ってバランスがいい。底にある種の軋みを湛えながらストーリーは進むのだが、自転車の盗難から通奏低音のように流れていた犯罪を暴き出す最終話「孤狼の心」では、精緻な論理もさることながら、常悟朗と本音をぶつけ合う堂島健吾の廉直さが物語全体を救っている。個々のキャラクターに支えられた、地味ながら尖った持ち味の作品集である。

No.18 6点 じきる 2020/08/30 16:36
この登場人物達には賛否分かれるだろうなぁ。
こういう系統のヒロイン、割と好きです(笑)

No.17 5点 青い車 2016/05/20 23:17
 小鳩くん、小佐内さんのコンビに好感を持てるかどうかが評価の分かれ目になっているようですね。僕は正直なところ後者かもしれません。どこか高慢な感じがちょっと鼻につくのは確か。ただ、『For your eyes only』など、(成功しているかどうかは別として)人間の機微を描こうという姿勢は高く評価したいです。日常ミステリーとしての出来は『おいしいココアの作り方』が抜きん出ており、単純な答が盲点になる典型を示していると思います。

No.16 5点 風桜青紫 2015/12/19 08:30
ゆき嫌いなのよね。ああいう、ロリキャラなのに中身は凶暴――ってなキャラつけはそこから胡散臭さを感じる。この作品を評価する人に「キャラな魅力うんぬん」という人がいるけど、果たして、ジョーゴロやゆきやジョーゴロの元同級生の人に、作品ひとつ支えられるだけの魅力ってあるのか? ちなみに私はアンチ米澤だけど、この作品集はそんなに嫌いじゃなかったりする。日常ミステリとしての道具仕立てが面白いのだ。『おいしいココアの作り方』とか普通に感心しちゃったし。米澤穂信は文学を書く才能がないんだから、「青春のほろ苦さ〜」とか「人間を書く(書けてないっちゅうの)」とかやらんでいいと思う。こういう仕掛け重視の作品を多く出してりゃ、割と好きになれるかもしれないんだけどね……。

No.15 5点 505 2015/09/30 20:33
〝小市民〟という目的を持つ探偵役が遠回りをしつつも、消極的に絡む構図が微笑ましい。
「羊の着ぐるみ」は、不自然な行動を上手くカモフラージュしている点がよく出来ている。そこから発想を展開していく流れもスムーズ。2人の関係性を端的に表現することに適した短編としての役割もきちんと担っている。
「For your eyes only」、これはやはり強烈なオチ。この容赦のない後味こそが米澤節だと感じることも。
「おいしいココアの作り方」のスクラップアンドビルトは、ただの着想と破棄の繰り返しだけではなく、問題の捉え直しが強調されている所がポイント。「どのようにココアを作ったのか」という日常の謎の中でも比較的取っ付き易い状況を演出している所が良い。真相もミスディレクションが効いており、人物の行動に沿ったものだという説得力があるのが素晴らしい。
「はらふくるるわざ」はミステリとしては甘々だが、2人の関係性を問うものとしては興味深い。2人の深層心理と行方に一石を投じる作品になっているという意味では、今後を占う重要な分岐点になっている。
「狐狼の心」で、『春期限定いちごタルト事件』の結末に相応しいストーリーが展開。〝小市民〟への欲求と二面性が露わになる作品。連作短編の味もあり、着眼点の聡明さもあり、推理が連なる様が気持ちいい。「自転車を乗り捨てた」理由から導き出される真相が痒いところに落ちる感覚もありと満足な一篇。小市民シリーズの出だし、そして先行きを予感させるものとして、これ以上に相応しいスタートはないのではないだろうか。

No.14 4点 makomako 2014/06/12 22:27
 きんとん事件を先に読んだので、その前の話はどうなっているか知りたくなって読んだのだが、「きんとん」よりさらにつまらない内容でちょっとがっくり。一緒に「トロピカルパフェ」も買ったのだがあまり読みたくなくなってしまった。
 謎もつまらないが登場人物もちっとも可愛くなくて残念。女子高生がかわいいなんて幻想だよと作者に言われそうだが、せめて小説の中ではもう少し素敵な気分になりたいのだが。
 やっぱりおじさんの幻想なのでしょうかね。

No.13 4点 ボナンザ 2014/05/23 00:43
謎に心惹かれるものがない。
ストーリーは相変わらず斜に構えたような青春ものだが、氷菓から入るとそのダークさに驚くかも。

No.12 7点 mohicant 2012/10/16 23:46
肩の力を抜いて読めるキャラクター先行型のライトなミステリ短篇集。個人的には古典部シリーズより好き。

No.11 3点 3880403 2011/04/06 20:03
もっと重い話(殺人事件など)を想像していたので物足りなかった。

No.10 6点 HORNET 2011/03/02 15:41
 日常的な高校生活の中で,些細な謎にめぐり合いそれを解いていくというほのぼのしたミステリ。肩に力を入れずに読めて,こういうのもアリかな・・・気に入りました。小鳩くんと小佐内さんはもちろん,個人的には堂島くんのキャラもよい。それにしても,小鳩くんの過去は作中である程度示されていますが,小佐内さんはいったいどんなだったのか・・・気になります。

No.9 6点 ウィン 2010/09/25 12:18
面白かった。
俺は基本的に殺人事件の起こるミステリの方を好むという物騒な人間なのだが、そういった部類に入らないこのミステリをすっかり気に入って読んでしまった。
本書では日本中を震撼させる事件どころか、一つの市を震撼させる事件さえも起こらない。
起こる事件と言えば、些細な盗難事件が一番物騒で、「おいしいココアの作り方」では、事件は起こらない。
些細な謎を解くのみだ。
しかし、ちゃんと謎解きが成立しているからおもしろいのである。

No.8 5点 まさむね 2010/08/12 21:14
ライトな謎で,綺麗にまとめてるなって印象。
ちなみに,主人公の男子にちょっとイライラ。
なお,アラフォー男子としては,図書館で借りるのに多少の勇気が必要であった(題名及び表紙が)。
それでも続編も読んでみようという気にはなった。

No.7 5点 kanamori 2010/07/11 22:52
日常の謎系のミステリとしては普通ですが、主人公の男女高校生の関係がユニーク。
ともに15歳にして、過去の自分と決別するため小市民に徹するのを信条としながら、結局そうはならない。同じ学園ミステリの古典部シリーズの主人公と底流で通じるものがあるように思います。

No.6 5点 bage 2010/01/21 16:18
青春物としては少し弱い。
ちょっとした伏線が最後にきちんと回収されているので
一つの作品として纏まっているが、それまでは単なる短編集で物足りなかった。
大した物証もなく強引に話が進む感は否めないが、まずまず楽しめた。

No.5 6点 あるびれお 2009/06/13 04:36
「おいしいココアの作り方」が良かったのでこの点数。それがなければもうちょっと辛いかな。古典部よりも入り込みにくかったのはなぜだろう。

No.4 6点 江守森江 2009/05/22 18:34
シリーズのスタートはこんなもんでしょう。
甘党なのでよんだらスイーツが食べたくなった。
ついでにココアも飲もう!

No.3 6点 だい様 2009/03/30 22:55
小市民シリーズ第1弾

普通に面白かった。
気軽に読めて強引な推理が笑えた。
「おいしいココアの作り方」は非常に良い着想だと関心さえした。

No.2 5点 なの 2008/02/08 13:54
小鳩のウザさが凄い
こんなのが目の前に居たら、確実に殴りそう
小佐内さんはいいキャラです

No.1 5点 ぷねうま 2007/11/17 07:07
なんというかわいらしい装丁。
キャラに感情移入はできないのだが、肩入れはしてしまう。
「おいしいココアの作り方」は北村薫の「砂糖合戦」に引けをとらない日常の謎の良作だと思う。


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