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[ 本格/新本格 ]
真実の10メートル手前
ベルーフシリーズ
米澤穂信 出版月: 2015年12月 平均: 6.06点 書評数: 16件

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東京創元社
2015年12月

東京創元社
2018年03月

No.16 4点 yoshi 2021/03/21 12:52
ミステリーとしては謎が小粒で盛り上がりに欠ける。ジャーナリズムのあり方を問うというサブテーマがあるようだが、正直どうでもいいと感じた。何よりも、話として面白くない。

No.15 6点 ミステリーオタク 2020/11/06 17:24
ベルーフシリーズとやらの最終巻?とのことだが、自分は本書以外は未読。


《真実の10メートル手前》
推理クイズの積み重ねのような展開は興があるが、閉め方は如何だろうか。平凡なのか叙情性を狙ったのか。

《正義漢》
20ページ弱の取り分け短い短編だが面白い構成になっている。

《恋累心中》
掘り下げが少し物足りない気もするが、よくできていると思う。何と言っても動機の意外性。

《名を刻む死》
例によって、推理クイズ的ないくつかの小ネタは悪くはないが、全体として何か理屈っぽい感じだし、また「そんな拘りを持つ奴」もいるかもしれないが、それをミステリー小説にしあげても、あまりしっくりこない。

《ナイフを失われた思い出の中に》
これも緻密な造りだが、やはり理屈っぽすぎる推理と抽象的なメディア論にいささか疲れる。

《綱渡りの成功例》
この真相が何か問題に?
まあ、コレもメインテーマはメディアの意義だろうが、ちょっとピンボケな気がする。


全作力作だとは思うが、総じてミステリーとジャーナリズムの関連づけに少々コジツケっぽさを感じてしまった。

No.14 6点 猫サーカス 2020/07/24 16:41
主人公は探偵ではなく記者。女性記者・太刀洗万智が取材先で出会う「謎」に立ち向かう。探偵は真実を明らかにすることが、記者は真実を見つけ出して人に伝えることが仕事。両者は似ているようで、あまりにも異なる。それでも作者は、彼女を主人公に据えた。この点で、ミステリでありながら、「メディアの役割とは何か」「メディアのあるべき姿とは何か」という命題が背景に存在し、そこから透けて見えてくる人間の心理が魅力的な作品。主人公は、取材した人間の本当の思い、「真実」を見抜く。そして取材を受けた人間の「本当の思いをみんなに分かってほしい」という願いを、代弁したいと望む。メディアが伝えるべき真実・真理とは、こういうものではないだろうか?しかし、それを暴くことを、主人公は思い悩む。自分のしていることは正しいのかと惑う。この作品で展開されるこのような物語を目撃した時、読者も真実というものに悩むでしょう。

No.13 6点 メルカトル 2020/04/28 22:27
高校生の心中事件。二人が死んだ場所の名をとって、それは恋累心中と呼ばれた。週刊深層編集部の都留は、フリージャーナリストの太刀洗と合流して取材を開始するが、徐々に事件の有り様に違和感を覚え始める…。太刀洗はなにを考えているのか?滑稽な悲劇、あるいはグロテスクな妄執―己の身に痛みを引き受けながら、それらを直視するジャーナリスト、太刀洗万智の活動記録。日本推理作家協会賞受賞後第一作「名を刻む死」、本書のために書き下ろされた「綱渡りの成功例」など。優れた技倆を示す粒揃いの六編。
『BOOK』データベースより。

本格ミステリとは言い切れない異色の連作短編集。必ずしも殺人事件が絡んでいる訳ではなく、色々なタイプの事件簿と言えるでしょう。『さよなら妖精』の太刀洗真智が成長した姿で探偵役を担い、颯爽とクールに事件を解決していく物語は、それぞれが苦みのあるものばかりです。
個人的に好みなのは、『綱渡りの成功例』。災害にあった無辜の老夫婦の犯罪と言えない犯罪。しかし、太刀洗はジャーナリストとしての使命を全うしようとする辺りが、必ずしも正義感と言えない生身の姿をさらしており、ある意味リアリティを追求しようとしています。

全体的にインパクトという点では物足りなさを感じます。それに物語の締めくくりが何となく終わってしまうようで、印象に残りません。強烈な何かを秘めたタイプの作品が好きな私のようなダメな読者には、ちょっと刺激が足りませんでしたね。

No.12 8点 斎藤警部 2019/12/10 21:10
「表題作」 辛すぎる思索エンディング(考えオチとは違う)に至るまでの名推理 7点
「正義漢」 ショートショート社会派 6点
「恋累(こいがさね)心中」 連城っぽい。パズルのためのやり切れなさなら、まあ耐えられるか。プロの嘘付きは九の本当に一の嘘を忍び込ませると言うが。。反転の場所は、そこかァ!! 8点
「名を刻む死」 真犯人捜しの謎と、被害者の心の謎。 二つの謎がリンクした一点から多くの事実が解き放たれ、解き解されなかった或る登場人物のわだかまりを、年長者が或る一言で解き解さんとする。 7点
「ナイフを失われた思い出の中に」 あまりの深淵街道まで突き飛ばされてぐうの音も出ません。やばすぎます。流石の俺様も歯ァ喰いいしばって泣きました。翻訳と原語のあいだの何処かにある第三の何かに寄り添い雪崩打つような謎事象の解放。だんだん微妙にパスティーシュの粉砕香が漂い始めるのもたまらない趣向。 連城っぽい。 10点(最初14点付けっちゃって、思い直しました)
「綱渡りの成功例」 しんみりの風景。非日常行為の中に潜んだ、日常心理の謎ですね。 しかし、現代日本人なら玄米フレークだろがあ!! 7点

通底する、謎めいた静謐と、さり気ないきれいさに惹かれる一冊です。 最初、主人公のヴィジュアルに日本共産党のあさか由香さん的なものを何となく思い浮かべたんですが、文章よく読むとちょっと違うみたいですね。

No.11 5点 ボナンザ 2019/08/18 10:50
米澤流のブラックさを交えた短編集。所々にさよなら妖精要素を交えているので、今後も続きがあるのだろうか・・・。

No.10 7点 sophia 2018/09/17 19:12
●真実の10メートル手前 7点・・・「満願」のあの話みたいなオチですね。今回のこのオチは蛇足なのでは。後味を悪くする必要があったのでしょうか。文字通り手前で終わっておけば。
●正義漢 8点・・・短いながら視点の切り替えが見事に決まった一編。
●恋累心中 8点・・・「満願」のあの話みたいな動機ですね。それが今回は他人に害を及ぼしているから始末が悪い。心中の方の動機はありがちです。
●名を刻む死 6点・・・読み終わっても「名を刻む死」というレトリックがいまいちピンと来ず。
●ナイフを失われた思い出の中に 9点・・・これが一番。なかなか泣かせますね。ちょっと展開が都合よすぎる気もしますが。「さよなら妖精」の書評でも書きましたが、こんなすごい手記を書く10代はいないでしょ(笑)
●綱渡りの成功例 5点・・・それだけのこと?と思ってがっかりしました。そんなことで誰も責めないと思うのですが。完成度は一番低い。この短編集を出すために急いで書き下ろしたのでしょうか。

No.9 7点 E-BANKER 2018/05/25 23:06
「さよなら妖精」に登場した大刀洗万智を探偵役に配した連作短篇集。
“ジャーナリストとしての矜持”というテーマも垣間見える作品が並ぶ。
2015年発表。第155回の直木賞候補作にも挙がった作品。

①「真実の10メートル手前」=表題作に相応しい冒頭の一編にして、本作で唯一新聞記者時代の太刀洗を描いた作品。電話での会話から推理を広げていくプロット自体はそれほどではないけど、タイトルどおり、真実の10メートル手前に迫った刹那・・・残酷なラストが待ち受ける。
②「正義感」=電車への飛び込み自殺騒ぎが、終盤鮮やかに反転するプロットが光る。実に短篇らしい一編。
③「恋累心中」=前評判どおり、コレが本作NO.1だろう。②と同様、高校生カップルの心中事件と思われた事件が、ラストに鮮やかに反転させられる。伏線も見事に嵌ってるあたりもなかなかの出来栄え。
④「名を刻む死」=これは・・・何とも痛々しい感じだ。男って生き物はこういうものに拘るところはあるんだけど、何もそこまでねぇ・・・。でも、こういう投書をしてる奴って多そうだ。
⑤「ナイフを失われた思い出の中に」=世界観がよく分からん!って思ってたら、これって「さよなら妖精」の続編的な作品だったのね・・・。「さよなら妖精」が未読なもんで、どうにも・・・。何か、七面倒臭いことやってるし、考えてるなぁーという感想しか思い浮かばない。
⑥「綱渡りの成功例」=いくら田舎町の年寄りだって、今どきコーンフレークの食べ方くらい分かるんじゃない? 人間、生きるか死ぬかの瀬戸際になったらこれくらいのことやるって・・・

以上6編。
「満願」の書評で、『このレベルの作品を出し続けられたら、作者は稀代のミステリー作家だ』って書いたんだけど、本作もまずまず高レベルの作品集だと思う。
「儚い羊たちの祝宴」や「満願」ほどの悪意や後味の悪さはないけど、本作の主人公・大刀洗万智もかなりのツワモノだし、彼女の冷徹でストレートな視点が作品に程よい緊張感を与えている。
何より、作者の短編ならきっと何かが仕掛けられてるっていう期待に応えられる引き出しの多さ、これこそが作者の腕前っていうことかな。
このあと、長編「王とサーカス」も文庫化されるみたいだから、楽しみにしておこう・・・(ついでに「さよなら妖精」も読んでみるか)
(ベストは前述のとおり③。あとは④か①)

No.8 5点 パメル 2017/11/24 01:12
「王とサーカス」のヒロイン、フリージャーナリストの太刀洗万智を主人公にした短編集。
ミステリ的には、電車の人身事故の背景を探る「正義漢」と高校生の心中事件に迫る「恋累心中」が良く出来ているが、ベストは豪雨による土砂崩れで孤立した家の老夫妻の秘密をめぐる「綱渡りの成功例」。
救出された夫婦を取材する話で、食事という、とりあげれば何でもない日常の出来事なのに、特殊な状況下では意味合いが異なる。あたかも罪のように捉え、人間がもつ営みの重さを静かに提示している。
アイデアが練られ、筆致は繊細で、プロットは驚きを秘めている。
ただどの作品も、テーマ・ストーリー共に地味すぎて「巧い」と感心させられる部分はあったが、「面白かった」という感覚は残念ながら少なかった。

No.7 6点 HORNET 2017/02/04 17:35
 「王とサーカス」を読んでからこちらを読んだ。「さよなら妖精」のシリーズは読んでいないので、逆から進んでいる感じか(?)。印象として、「王とサーカス」よりも主人公・太刀洗の無骨な雰囲気が強かった。話としてもブラックな要素が強い。こっちの方が好みかも。
 作りのクオリティは、話によってややまちまちだった感はある。

No.6 7点 青い車 2016/10/20 23:03
 『さよなら妖精』の主要登場人物のひとり、太刀洗万智を主人公に据えた連作短篇集。内容に重なりはないので『王とサーカス』を飛ばして読んでも問題はありません。
 どの話も何らかの読みどころがあり、一定の水準をクリアしていると思います。ただ、突き抜けた傑作も見当たらず、本来の作者の実力を発揮しているとは言えません。「もっとやってくれるだろう」という気持ちが残り、米澤穂信の愛読者としては肩透かしにも感じました。

No.5 5点 虫暮部 2016/07/21 11:07
 必要以上に後味の悪い結末をいちいち用意するあたりには好感が持てる。
 しかし実のところ、米澤穂信の作風には慣れてしまった。主題に異物を突っ込む手際がどれも似通っているように思う。ストーリー展開には確かに驚くのだが、それがお約束というか、驚いたこと自体に驚けなくなった。短編だと特に顕著。勿論それはこの作者が好きで作品をあらかた読んだ結果の弊害ではあるのだが。

No.4 6点 風桜青紫 2016/05/03 17:28
表題作の「真実の10メートル手前」はこの作者としては久しぶりに小さな推理を重ねて話を進めていくタイプの作品だったが、『氷菓』や『さよなら妖精』からの成長が確かに感じられた。……が、オチが「死人宿2」でげんなりしてしまった。いい加減、先が読めるし、食傷気味である。これで少し不安になってしまったが、続く「正義漢」は、違和感のある状況から、はっとさせる結末にもっていく、この作者の本領発揮ともいえる作品で、やや持ち直してくれた。「恋累心中」もつっこみどころ全開なのはさておき、伏線の回収の巧みさと意外な結末を見せつけてくれてなかなか楽しめた。「名を刻む死」はなんともしょうもない話で笑った。迷惑じいさんを追い払うのにわざわざ「切り捨てる」という言葉を使わせるあたり、「道徳の逆こそ正論だよね」みたいな作者のしょっぱい意図が読み取れる。「ナイフを失われた思い出のなかに」は期待が大きかったぶん、やや肩透かしだった。日本人が書いた西欧人の一人称には悪い意味で鳥肌がたってしまう。しかし『さよなら妖精』の後日談という意味ではそこそこの出来か。「綱渡りの成功例」もベタな米澤短編だが、なんか面白かった。シリアルが
美味しそうだからか。

『満願』と『王とサーカス』のボーダーライン上の作品だが、正直この二つより面白かった。米澤の本格ミステリ作家としての実力を印象づけてくれる作品である。

No.3 5点 まさむね 2016/03/28 22:48
 「さよなら妖精」、というか最近では「王とサーカス」で名を馳せる、太刀洗万智を主人公とした短編集。
 物語の時系列的には、「王とサーカス」の前ってことになるのかな。収録短編自体が、それなりに一定の期間を経て書かれており(2007年~2015年)、作中の太刀洗万智の職業も新聞記者からフリーの記者に変わったりしています。よく言えば、太刀洗万智に対する作者の想いの変遷が滲んでいますし、思い切って言ってしまえば、何とも中途半端で面白味が薄いような気もします。短編集と長編を単純比較するのは気が引けますが、「王とサーカス」と比べると…。
 いや、確かに巧い作品もあるのです。でも、無理やり「報道のあり方」にというようなテーマに結び付けたと感じずにはいられない作品もあって、個人的には米澤氏に対する期待が大きいだけに、このくらいの点数にいたします。

No.2 7点 白い風 2016/02/19 23:36
女性記者太刀洗が事件を解く6つの短編集。
通常の犯人捜しとはまた一味違った味わいがありましたね。
個人的には「正義漢」「恋塁心中」がよかったかな。
ドラマ化されても面白いかもね。
このまま続編も書いて欲しいですね。

No.1 7点 kanamori 2016/01/06 18:34
『王とサーカス』のフリー記者・太刀洗万智を探偵役に据えた連作短編集。”真実を暴き、それを報道することの意味”が連作に通底するテーマになっていることから、ベルーフシリーズともいわれているらしい。

太刀洗の鋭い洞察力による快刀乱麻を断つ推理がいずれも魅力的ですが、同時にテーマを見据えた主人公の行為・言動が重く心に残ります。
最初に置かれた表題作「真実の10メートル手前」は、太刀洗の新聞記者時代の話で、編中で唯一、彼女の一人称で語られる。録音で残されたわずかな会話から”真相”を導き出すという趣向はケメルマンの「九マイル~」を思わせるが、結末は暗くて苦い。ミステリとしての仕掛けの部分で一番面白いと思ったのは、高校生の心中事件の裏側を暴く「恋累心中」。嫌われ者の老人の孤独死を扱った「名を刻む死」は、意外な真相もさることながら、”彼”に対する太刀洗のラストの言動が印象深い。アンソロジー『蝦蟇倉市事件』で既読だった「ナイフを失われた~」は、『さよなら妖精』とリンクする後日譚のような話ですが、改稿された今回の作品もいまいち面白さが分からなかった。最後の「綱渡りの成功例」は、あんなことが”罪悪”か?という疑問があるものの、些細な一点から隠された秘密を暴くロジックの切れ味が素晴らしい。


米澤穂信
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