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[ 短編集(分類不能) ]
地球儀のスライス
森博嗣 出版月: 1999年01月 平均: 6.94点 書評数: 17件

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講談社
1999年01月

講談社
2002年03月

No.17 7点 斎藤警部 2024/08/03 18:36
夢ℚをちょっと思わす 『小鳥の恩返し』 を皮切りに、様々な様相の人生/生活エッセイを爽やかな短篇ミステリの形で次々と披露する納涼流しそうめん大会。 文理両道気取りだったり、ラ◯ってるっぽかったり、いじわるっ娘だったり。  「某シリーズ」に属する二作が、緩いけどハイライトになっている/緩いからアクセントにはなっていない。 「鮎川某短篇」の鉄道写真トリックをロネッツ “ビーマイベイビ” とすると、そのちょっとした複雑化の視点から『マン島の蒸気鉄道』のそれはビーチボーイズ ”ドンウォリベイビ” に喩えられるかも知れない。  先行チラ見せ逆スピンアウト?みたいな作もあったし、手の込んだ自己紹介みたいな作もあった。 作者らしい、作品間の密かな連関もあった。  最後の 『僕は秋子に借りがある』 がいい。 日常のファンタジーかと見せて、きっちり現実世界の軸足を、時を越えて地面に突き刺している。 独特だ。

長い間『天球儀のスライス』だと思っておりました。

No.16 6点 白い風 2016/03/16 23:44
10編の短編集ですね。
犀川&萌絵が2編出てくるのも嬉しいですね。
ただ『マン島の〜』には未解説なところや『僕に似た人』も分からないまま終わった人もいるんじゃないかな?
その点はちょっと不親切だったと思う。
作品としては『小鳥の恩返し』が良かったですね。

No.15 9点 Tetchy 2015/12/25 23:30
とにかく冒頭の3編が素晴らしい。「小鳥の恩返し」の湛える大事な物を喪った切なさ、「片方のピアス」の禁断の恋に溺れるカップルが迎える悲劇、全編手記で展開する「素敵な日記」の読めない展開が最後に一気に想像を遙かに超えた、そして全てが腑に落ちる驚愕の真相と立て続けに打ちのめされる。

その後には完結したS&Mシリーズが短編で2編収録されているのはファンとしては嬉しいサーヴィスであろう。特にその2編では今まで前作に登場しながらも萌絵の影となり支えてきた執事の諏訪野にスポットを当てているのが興味深い。しかもそれらは日常の謎系のミステリでほのぼのとした雰囲気が心地よい。萌絵の非常識ぶりも抑えられていて、これなら普通に読むことができる。

そして次は幻想小説が続く。
作者の幻想趣味が短編では存分に発揮されている。「僕に似た人」、「有限要素魔法」、「河童」の3編。幻想強度としては「河童」<「僕に似た人」<「有限要素魔法」の順になろうか。特に「有限要素魔法」は有限要素法とは関係がないように思えるのだが。

そして最後はオーソドックスでありながらもやはり心に強く残る、想い出の物語。「気さくな人形、19歳」は老人が自分の亡くなった娘にそっくりな女子大生に共に過ごすだけのバイトを頼む。それは自分の財産を娘に残すために老人が周囲に打った芝居というのが動機なのだが、ここはやはりそんな理由ではなく、偶々テレビで見かけた自分の娘そっくりな女性を発見したことで適わぬ想い出づくりをしたかったのだろう。そしてその役目を務めた小鳥遊練無の魅力的な事。イントロダクションに相応しい快作だ。
そして最後の「僕は秋子に借りがある」は実に美しい物語だ。物語が閉じると同時に木元が感じた思い、つまりそれは題名「僕は秋子に借りがある」と思わされる。この物語は作者の想い出に似た宝石のようなものがこぼれ落ちて生まれたようなものなのだろう。当然ながらこれが個人的ベストだ。

しかし小鳥遊練無といい、秋子といい、森氏の描く女性は難と魅力的なことか。西之園萌絵には最初から最後まで辟易し、この短編でも好感度が増すことがなかったので、正直森氏の女性像には失望していたのだが、本書ではその考えを180度変えざるを得なくなった。いやあ次のVシリーズが愉しみになってきたぞ!

No.14 5点 メルカトル 2015/05/03 21:27
『まどろみ消去』の時も思ったが、どうも森博嗣の短編集はらしくない。こちらの期待しているというか、想像しているものとは全く別の代物である。ジャンルはともかく面白ければそれでもいいが、正直面白みに欠けるため、どう考えても高評価は出来ない。
かろうじて『気さくなお人形、19歳』と『僕は秋子に借りがある』がなんとなくではあるが、心惹かれる部分がある以外、どれもこれも森博嗣にしか書けない作品とは程遠いと言わざるを得ない。残念ながら、私には凡作が並んでいるようにしか思えない。少なくとも、本書を高く評価するほどの読解力は持ち合わせていないのである。
勝手な意見だが、名前で高評価を得ているとすら感じてしまう。森氏のカリスマ性に惹かれる読者も少なくないだろうが、正当に見てこれはいただけない。

No.13 6点 虫暮部 2015/04/13 07:34
 ミステリ度の高いものは面白かったが、そうでないものはそうでもなかった。「僕に似た人」はなんだかさっぱり判らん。何か裏の意味があるの……?

No.12 8点 ∠渉 2015/01/31 23:54
森博嗣の短編集の中では一番人気というか、好評を得ている印象。試行錯誤と荒削りさで実験的風味の強い『まどろみ消去』を経て、作家としての武器を増やして挑んだ第二短編集、面白くないわけがない。個人的な好みはどこか脆さのある『まどろみ消去』だけど完成度的には圧倒的にこちらだとは思う。単純に面白い作品がたくさんあるし。
『小鳥の恩返し』『片方のピアス』『素敵な日記』はミステリィの中にしっかり著者の個性がベースになっていて、キレ味もあるおいしい作品。『僕に似た人』『石塔の屋根飾り』『マン島の蒸気鉄道』はファンにとってはなかなか嬉しい作品だし単発としても楽しめるクイズ要素の強いミステリィ。
『有限要素魔法』『河童』は森博嗣らしい「ゆがみ」のある、かつ美しい作品になっている。「有限要素法」と芥川の「河童」というモチーフも興味深い。
『気さくなお人形、19歳』はけっこう記憶に残る短編だったけど、まぁシリーズひととおり読んでから戻ってくるとこれがまた心地良い。ほろっとくるし。既に小鳥遊くんと紫子さんキャラが出来上がっているのにビックリ。
そしてなんといってもトリの『僕は秋子に借りがある』。個人的には『キシマ先生の静かな生活』と双璧をなす森短編の大傑作と認識している笑。少女マンガチックなんだけどオシャレで洗練されててダラダラしてなくて。そして何より仄かにあったかく、仄かに冷たい。この形容しづらい感性が森作品であり自分と森博嗣の果てしない距離である笑。あぁ果てしない。

あ、あと冨樫が油売ってます。笑。

No.11 6点 まさむね 2014/02/15 21:49
 森氏の第2短編集です。
 詩的な作品から馴染みのシリーズキャラが登場する作品まで,それなりにバラエティに富んだ作品集と言えましょう。どうもしっくりこなかった短編も無い訳ではないのですが,全体的には十分に楽しめました。前短編集よりも好印象。
 特に良かったのは, 「小鳥の恩返し」,「片方のピアス」,S&Mシリーズの2作品(「石塔の屋根飾り」,「マン島の蒸気鉄道」)あたりか。
 それと,「僕に似た人」は,読後“そのこと”に全く気付かず,次の「石塔の屋根飾り」の読中に「もしや?」となりました(最終的にはネタバレサイトで確認…)。こういう作品も悪くないですね。

No.10 6点 E-BANKER 2014/02/02 16:16
1999年発表。S&Mシリーズ二篇を含み全十作から成る作品集。
同系統の作品集としては、「まどろみ消去」に続く二作目に当たる。

①「小鳥の恩返し」=タイトルどおり民話「鶴の恩返し」をモチーフにした作品。殺人現場で飼われていた小鳥を逃がしたところ、その小鳥が献身的な看護婦になって現れるという夢のようなストーリーなのだが、そこは「夢」で終わらずミステリーらしい結末が付けられる。なかなかの佳作。
②「片方のピアス」=こちらは双子の入れ替わりがプロットとなった作品。終わりがあるようなないような結末・・・っていうことはリドルストーリーということか?
③「素敵な日記」=まさに日記で始まり、日記で終わる一篇。狙いは・・・??
④「僕に似た人」=いかにも曰く有りげな主人公やその他の登場人物たち・・・。きっと何かあるはずと大技を予想していたが、そういう方向性の作品ではなかった。でも、ラストの一行(或いは二行)はどういう意味(或いは意図)?
⑤「石塔の屋根飾り」=本編と続く⑥がS&Mシリーズ作品。本編は犀川が萌絵や喜多、国枝らにクイズを提供するというプロットとなっている。問題の方はちょっと“絵的に”思い浮かびにくかったんだけど、なる程という解答が示される。
⑥「マン島の蒸気鉄道」=本編については、謎がどうのこうのというより、とにかくマン島という存在自体が面白い。浅学にもこれを読むまでこんな島があることすら知らなかった。行ってみたいねぇ、乗ってみたいねぇ・・・蒸気機関車。
⑦「有限要素魔法」=書き下ろし作品なのだが、ある意味ファンタジックでブラックな一篇。
⑧「河童」=冒頭に示されているとおり、芥川の「河童」に触発されて書かれた作品なのかな? とにかく純朴なはずの田舎の女子高生・亜依子がコワイ・・・
⑨「気さくなお人形、19歳」=⑦に続く書き下ろし。プロットとしては特段目新しいものではないんだけど、とにかく纐纈老人の一途で偏屈な思いに最後はホロリとさせられる。でも「僕」っていうのは、もしかして叙述トリックかと思わされた(!)
⑩「僕は秋子に借りがある」=これも⑨に続き“いい話系”の作品。こういう美少女に振り回される役を一度はやってみたいよねぇ・・・

以上10編。
前作(「まどろみ消去」)と同様、「作者が書きたいものを書いて、それを集めました」という雰囲気の作品集。
ということで、凡そミステリーとは呼べないものもかなり含まれていて、長編と同じノリを期待するとガックリくるかも。
ただし、ストーリーテラーとしてやはり非凡な才能を十二分に感じさせられるし、レベルの高い作品集という評価。
どちらかというと、前作よりもこちらを押したい。
(個人的ベストは①かな。後は④⑥⑨というところか)

No.9 5点 ムラ 2011/08/04 07:44
短編的に好きなのは「小鳥の恩返し」、S&Mの話は本編よりも専門していたが大御の再登場が個人的には嬉しかった。
森的な話で好きなのは「僕に似た人」。詩的で余韻の残る終わり方がいい。(他でネタバレ見てやっとまあ君が誰かわかりました。これは気がつかなかった、ヒント沢山あるのに!)
一番面白かったのは<気さくなお人形、19歳>。サリンジャーっぽい文章で読みやすい。
素敵な日記と片方のピアスは楽しめなかった。なんというか駄目な意味で地味。

No.8 6点 yoneppi 2010/01/12 20:34
さらっと読めて、少し考えさせられる。コーヒー1杯や電車1本で読める短編としてはちょうどいい感じ。

No.7 8点 あんくう 2007/08/11 13:27
粒揃いの短編集。
読み始めてから読み終わるのに2ヶ月もかかったのは収録作『マン島の蒸気鉄道』中で大御坊が出したクイズに悪戦苦闘していたから。多分考えていた時間は延べ10時間前後。他の読者はどのくらいで解けたのだろう。
作中で犀川と萌絵はおそらく1分くらいで解いていたから単純計算で僕の頭脳は彼らの600分の1以下(もっと?)ということか…としょんぼりする。
地球儀のスライスっていうタイトルがカッコいい。

No.6 8点 iti 2004/11/02 04:07
森博嗣は、長編よりも詩的な短編の方が肌に合う。
不可解なもの、意味深なもの、良く判らないもの、郷愁を誘うもの。なんだかいっぱい詰め込まれているようで、けれども深入りしていない処が良い。

No.5 7点 ばやし 2004/01/12 11:10
おもしろかったのでサクサク読めました^^

No.4 10点 なりね 2003/12/31 14:25
「きさくなお人形、19歳」はあとでもう一度読み返すはず。
その他の話もとても興味深い。

No.3 5点 なな さんいち 2003/08/02 22:18
詩的な感じだった。
けど、僕にはあまりあわなかったようだった。

No.2 9点 一千花 2002/09/01 16:22
地味な作品とそうじゃない作品が混然としてる感じ
<小鳥の恩返し>と<気さくなお人形 19歳>が
個人的に気に入っています

No.1 7点 馨子 2002/05/20 21:11
これもS&Mシリーズを含む短編集です。
「まどろみ消去」があまり肌に合わなかったので期待しないで読んだのですが、こっちの方が楽しめました。挿絵のせいもあってか、昔の少女漫画みたいな雰囲気の話が多く感じましたが。


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