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[ 日常の謎 ] 喜嶋先生の静かな世界 |
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森博嗣 | 出版月: 2010年10月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 2件 |
講談社 2010年10月 |
講談社 2013年10月 |
No.2 | 4点 | メルカトル | 2014/03/23 22:06 |
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本作は、森博嗣をこよなく愛する人に捧げられるべき作品であって、私のように大学生活をパチンコと麻雀に明け暮れていた下衆が読む小説ではないね。まあ真面目で真っ当な学生生活を過ごしている人、或いは過ごした人にとっては有意義な読書体験になるかもしれないけれど。特に理系の人間にはね。要するにこれは内容こそ難解ではないが、それだけ私にとって敷居の高い作品なのだ。
そして敢えて苦言を呈するならば、森博嗣という作家は執筆作業から得られる代償を単なる労働の対価と考えており、それを公言してはばからない人だ。ならば尚のこと、読者を裏切るような作品を書いてはいけないだろう。また、私はすべての小説は広義でのエンターテインメントでなければならないという持論ももっていて、その意味で本作は全くその条件を満たしていないのも不満の一つである。これを読まれた多くの方は「何を寝ぼけたことを言っているんだ」と憤慨されるかもしれないが、あくまで個人の意見なので大目に見てもらいたい。 ただ、終盤の数ページだけは少しばかり意外性もあり、考えさせられるものではあった。 蛇足だが、中学生の頃、近所の女子大だか女子短大だかの学園祭に、友人に誘われて遊びに行ったことがあるが、招いてくれた女子大生たちは一様に楽しそうだった。大学というのはそんなに楽しいところなのかとその時思ったものだが、それが幻想だと気付くのにはまだ数年の時を必要とするのであった。 |
No.1 | 10点 | ∠渉 | 2013/12/14 00:21 |
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文句なしの10点つけさせていただきました。
第一短編集「まどろみ消去」の「キシマ先生の静かな生活」とストーリィは全く同じで、短編の方に書いてあることは全てこちらの方にも書いてあります。短編で読んだときは、自分とは相容れない世界の話で新鮮だったけど、いまいち作品に感情移入できなくて、後味も決して良いとは言えない印象だった。けれど、本作を読んで180度印象が変わりました。天才ともまた違う、まっとうな研究者。でも非常に稀有な存在で、逆説的になりますがやはり「天才」なのでしょう。喜嶋先生、すごい。凄い。研究とは、学問とはとても崇高で純粋なものなんだなと感じた。 そして、その世界を純然と生きることはとても難しい、ふと立ち止まって考えてみるともうその世界に自分はいないことに気付く、そこに戻れないことに気付く。ラストの橋場君の言葉には切なさと重さを感じた。沢村さんの自殺もそう思うと切ない。そして喜嶋先生はどこかで・・・と、想像しながら余韻を堪能してました。きっとまた、「王道」を歩いているのでしょうが。 自分も大学生となり、子供と大人の境界条件が環境や立場によって変わるような立ち位置で、これからどうやって生きていくのかを考えなきゃいけなくなって、周りに流される部分と自分が向かいたい部分とのせめぎあいのなかを過ごしているので、そういう意味でも、感情移入せずにはいられないというか、大切にしておきたいスピリットを再確認できた作品でした。心地いい反面、残酷さもあって、かなり刺さります。そして、またいつか必ず再会しなければいけない作品だと思った。僕にとっての未来への手紙のような作品です。なんて大袈裟に言ってはみましたが。 |