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[ SF/ファンタジー ]
四季 秋
森博嗣 出版月: 2004年01月 平均: 6.75点 書評数: 4件

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講談社
2004年01月

講談社
2006年12月

No.4 6点 E-BANKER 2021/05/13 22:20
時は流れ、「すべてがFになる」(=妃真加島での事件)以後の世界が描かれる本作。
「秋」といえば『実りの秋』となるのか・・・?
2004年の発表。

~妃真加島で再び起きた殺人事件。その後、姿を消した四季を人はさまざまに噂した。現場に居合わせた西之園萌絵は、不在の四季の存在を意識せずにはいられなかった・・・。犀川准教授が読み解いたメッセージに導かれ、ふたりは今一度彼女との接触を試みる。四季の知られざる一面を鮮やかに描く、感動の第三弾~

なるほど・・・
シリーズファンにとって、本作はまさに“ボーナス・トラック”的な一冊だったんだな。
「犀川と萌絵」、「保呂草と各務」、「紅子と林」、「世津子と祖父江」などなど、これまでのシリーズに登場してきた主要登場人物たちの関係性、更には作者にうまいこと(?)はぐらかされてきた時間軸が鮮やかにお披露目されることになる。
個人的にいうと、vシリーズの異端作「捩れ屋敷の利鈍」の伏線がここで綺麗に回収されたことに感動。
まぁ、ネタバレサイトで凡その「仕掛け」は理解していたわけだけど、これは目の前に示されてみると、やはり「鮮やか」という一言。
あと他の方も書かれてますが、終盤での紅子と萌絵の出会い。「すべてがF」から順に読み継いできた読者としては、ただただ「万感の思い」(!)

本作でもうひとつ感慨深かったのが、萌絵の成長ぶり。
シリーズ当初、二十歳そこそこの世間知らずのお嬢さまだった萌絵。当時はただ自分自身の意見を表明しさえすればよかった「昔」、そして周りの歩調に合わせ、人生の後輩たちの成長にも目配りをしなくてはいけなくなった「今」
当たり前のことだけど、こうやって人は年を重ね、成長していくんだよなぁ・・・という思いを今さらながら強く考えさせられた。「文学的」という形容詞とは最も遠いはずの理系ミステリーで、こういうことを内省させられるなんてなぁ・・・

ということで次作はシリーズ最終章の「冬」。
そして作品世界は更に広がっていく。

No.3 10点 Tetchy 2021/02/16 23:26
四季シリーズ第3作目の本書は森作品ファンへの出血大サービスの1作となった。

今まで真賀田四季を主人公に彼女の生い立ちを描いてきたこのシリーズだが、3作目に当たる本書はそれまでと異なり、なかなか真賀田四季本人が登場せず、寧ろ犀川創平と西之園萌絵とのやり取りと保呂草潤平と各務亜樹良の再会とそれ以降が中心に語られ、S&Mシリーズの延長戦もしくはVシリーズのスピンオフといった趣向で、主人公である真賀田四季は全283ページ中たった10ページしか登場しないという異色の作品だ。

ファンにとって嬉しいのは両シリーズのオールキャスト勢揃いといった内容になっていることと今まで断片的であったS&MシリーズとVシリーズのリンクがもっと密接に結びつく内容になっていることだ。更に両シリーズのみならず、それまでの森作品のほとんどが結びつくようなものになっている。

しかし常々思っていたことだが、S&MシリーズとVシリーズ、やはり意識的に森氏はその趣を変えていたことが両シリーズが邂逅する本書で如実に判った。

S&Mシリーズが西之園萌絵の生い立ちに暗い翳を落としつつもその天然な天才少女とこれまた浮世離れした大学の助教授という組み合わせでライトノベル風に語られているのに対し、Vシリーズが小鳥遊練無と香具山紫子というコメディエンヌ(?)を配しつつも、登場人物間の関係に纏わる恋愛感情の縺れや諍いを描き、更に保呂草という犯罪者の暗躍も描いた少し大人風なダークの色合いを湛えており、それがそれぞれのパートで見事に対比できるのである。

まず犀川と萌絵の登場パートはシリーズ終了以降の2人が描かれる。それには短編集『虚空の逆マトリクス』に収録されていた「いつ入れ替わった?」で語られた犀川が婚約指輪を渡すエピソードも語られ、犀川と萌絵の結婚生活が始まりそうで始まらない状態で物語は進む。真賀田四季を追ってイタリアへと飛ぶが萌絵は婚前旅行と思い、嬉々としているが、犀川はようやく真賀田四季に逢えると思い、喜んでいるといったギャップがあり、結局そこでは何も恋愛沙汰は起きない。

一方保呂草と各務のパートは犯罪者の2人らしく大人のムードで話は進む。まあこれが実にスマートで、一昔前のトレンディドラマを観ているかのように台詞、仕草どれをとっても洒落ている。
そして保呂草は各務との再会を果たすために色んな人物と出逢ったことを後悔する。特に愛知県警の本部長を叔父に持つ西之園萌絵との再会は彼に日本の地を踏むことを半ば諦めさせるほどに。
ジャーナリストである各務が書くべき記事や原稿が沢山あると述べ、保呂草が自分でも何か書こうかなと零すシーンは彼がその後自分の一人称で始まるVシリーズを執筆することを仄めかしているようで面白い。

そしてやはり触れなければならないのは西之園萌絵と瀬在丸紅子、2大シリーズのヒロイン同士の邂逅だろう。
瀬在丸紅子は無言亭からどこかにある、ある金持ちによって移築された歴史建造物に管理人として住んでおり、使用人だった根来機千英は既におらず、1人で暮らしているようだ。
萌絵は犀川から婚約指輪を貰ったことで挨拶に行くために訪れたのだが、そこで萌絵は彼女から人生訓を授かる。
犀川創平が好きでたまらず、自分の物にし、自分の方だけを向いてもらいたい萌絵は、つまり若い女性にありがちな独占欲とも云うべき愛情を強く抱いている。
それに対し、紅子は一方向にしか風が来ない扇風機を愛するよりも全てに光を当てる太陽を愛でるように愛しなさい、それが許すということですと諭す。
私はこれを読んだ時にかつて祖父江七夏と犀川林を巡って醜い女の争いを繰り広げていた紅子がここまでの悟りの境地に至ったのかと驚き、そして感心した。

さて秋はやはり実りの秋と呼ばれる収穫の季節だ。まさにその季節が示す通り、収穫の多い作品となった。
前作で保呂草の許に飛んだと思われた各務は逆に保呂草に捕まり、その秘めたる恋を始まらせる。
西之園萌絵の収穫はやはり犀川との婚約だろう。そして彼の母親瀬在丸紅子との会談で得られた人生訓もまた大きな収穫だ。
犀川創平は妃真賀島の事件に隠された真賀田四季の動機がようやく明かされた。
まさに収穫の1冊である。

ともあれ起承転結の転に当たる本書は確かにシリーズにおける大転換を見せた作品だった。これは最終作の冬編にますます期待値が上がるというものである。愉しみにしていよう。

No.2 6点 メルカトル 2021/01/08 22:33
  四季  <秋>

妃真加島で再び起きた殺人事件。その後、姿を消した四季を人は様々に噂した。現場に居合わせた西之園萌絵は、不在の四季の存在を、意識せずにはいられなかった…。犀川助教授が読み解いたメッセージに導かれ、二人は今一度、彼女との接触を試みる。四季の知られざる一面を鮮やかに描く、感動の第三弾。
『BOOK』データベースより。

シリーズの中では外伝的な作品という位置づけだと思います。真賀田四季はチラッとしか出番がありません。犀川と萌絵のS&Mチームと保呂草潤平と各務亜樹良のVチームが共に四季の痕跡を追い、遂には彼ら四人がイタリアで邂逅します。読み所はその辺りで、何も結論らしきものは得られません。ですから、何となくですが最終巻である『冬』への繋ぎの役割を果たしているだけのような気がしますね。

やはり本シリーズでは真賀田四季の存在感が絶大で、『すべてがFになる』で探偵役を務めた犀川でさえ霞んでしまいます。まあ犀川と萌絵の関係がかなり進展するのには驚きましたが、こんなところで何やってるんだとも思えなくもありません。そして、二つのシリーズが混然一体となって展開する目論見は面白いと感じました。ああ、『夏』で出てきたあの人物はあの人だったんだなと、鈍感な私は妙に腑に落ちました。

No.1 5点 羊太郎次郎吉 2016/12/30 13:32
「秋」だけしか読んでないですスイマセン。20代後半に差し掛かった萌絵が見られるなんて思いもよらなかった!でもまだまだ90年代の26.7歳にしては大人になりきれてないような感じを受けた。
真賀田博士?との精子云々の話に動揺するところなんか、20代後半にもなってオトコの過去に動揺するなよと思った。
10歳以上年上の男と付き合うなら相手の過去に何かあっても仕方ないと思わないとやっていけないし、そう思えない女は年の離れた男と付き合う資格無いよ、萌絵ちゃん?


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