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[ 本格/新本格 ]
イナイ×イナイ
Xシリーズ
森博嗣 出版月: 2007年05月 平均: 5.14点 書評数: 7件

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講談社
2007年05月

講談社
2010年09月

No.7 7点 Tetchy 2025/09/16 00:44
椙田泰男が探偵役を務める(?)Xシリーズ第1作。?付なのは本書では椙田は出張中で終始不在のまま事件が解決されるからだ。
椙田の代わりに事件を解決するのは椙田の事務所に入り浸る芸大生真鍋瞬市と秘書の小川令子、そして探偵鷹知祐一朗の3人だからだ。ひねくれ者の森氏のこと、Xシリーズの探偵役は椙田ではなく、この3人で行くかもしれない。

さてシリーズ第1作目で起こる事件はもはや森ミステリでは定番とも云える密室殺人事件だ。鍵の掛かった地下牢で殺された死体の謎に上の3名が挑む。

かなり無理矢理感のある設定だが、金持ちの考えることはよく解らんという無敵の方程式を用いれば理解できんこともない。

おどろおどろしいモチーフと業の深い家族と云えば横溝正史のミステリを想起してしまうが、森ミステリは同種の材料を扱っても決してドロドロしたものにならず、実にさらりとした肌触りを保って展開していくのだから不思議だ。

その要因の1つとして掘り下げていけばかなり陰湿な人間関係が浮かび上がるのに森氏はそこまで立ち入らないことが挙げられる。森ミステリの特徴の1つに動機について明らかにしないことがあるが、それは人が殺す理由は結局当人以外に本当に理解することはできないというスタンスだからだ。つまりそれは今回の佐竹家のような少し複雑で昏い過去のある家庭であっても同様なのだろう。
それぞれの家庭や家族、一族の因習や事情、掟なども他者には関係のないものであり、十分に理解できないものだろうから深く掘り下げても仕方がないといったところだろう。

意外な犯人の設定だけを目的にしたようなミステリでその真相に繋げるプロットや設定が実にお粗末である。
この頃の森ミステリはGシリーズが特に顕著に見られるように、ミステリとしての構成や明かされるべき謎が放置されたままで、なんとももやもやした感じが拭えない。つまり納得感がないのだ。

エピローグで椙田が西之園萌絵の勤める大学の図書館を利用していたことが明かされ、彼女に出くわすことを恐れて図書館を変えることを検討するが、それは椙田の正体が保呂草潤平であるからだろう。
このシリーズに西之園萌絵が今後も関わってくるのか、いやそもそも椙田がこのシリーズで探偵を務めるのかも不明であるのだが。

シリーズ開幕としてはなんとも云えない幕開けをしただけにGシリーズともどもあまり期待せずに今ある蔵書分を読んでいくことにしよう。

ああ、Vシリーズが懐かしいなぁ。

No.6 3点 虫暮部 2020/06/04 11:47
 犯人が事件を、誰に対して、何の目的で、どのように見せかけたかったのか、まるで判らない。私の理解力の問題ではなく、辻褄が合っていないからだと思うのだが。
 エピローグでの小川令子の“もっとうまく(商売として)立ち回る方法はなかっただろうか”と言う発想は、ミステリっぽくなくて面白い。

No.5 5点 まさむね 2019/03/13 21:01
 Xシリーズ第一弾。森作品はとりあえず出版順に読んだ方が安全(?)のような気がするので、Gシリーズを(惰性的に、そして遅々と)読み進めている段階とは言え、新シリーズにも手を出してみた次第です。
 謎自体は、シンプルであるからこその魅力がありました。軽快な進行具合もあって、終盤まで期待は持続したのですが、真相は何とも平板で、「ありがち」というのが率直な感想ですね。多少の肩透かし感も残ります。
 とはいえ、次作も読んでみようかな、という気にはさせられたので、まぁ楽しめたとは言えるのかな。

No.4 3点 ムラ 2011/11/19 05:33
ラスト数ページのほうが本編よりも重要という今作品。
事件の内容はあまり面白いと呼べるものではなかった。
Gシリーズと繋がる話として期待したいところ。

No.3 3点 くりからもんもん 2011/03/28 16:48
おもしろくなかったです。2時間サスペンスの脚本にもならないレベルではないでしょうか。氏のファンでいろいろなシリーズを読破していますが、これはちょっと・・・
一応、ミステリの体を成しているのでこの評価、おもしろさとしてはもう一段下だと思います。

No.2 7点 VOLKS 2008/05/07 22:46
×シリーズ、第一弾。

読み返してみると、ラストはそこそこの衝撃波に襲われたが、何故かすっかり内容を忘れていた(汗) ありふれていると言えばありふれている謎だったせいだろうか。
西之園嬢をゲスト起用とは憎い演出。

No.1 8点 北浦透 2007/12/25 20:33
『すべてがFになる』を書いて以来、自身の作品を深める方向で執筆を続けた森博嗣さん。
「犀川・萌絵シリーズ」では、本格の完成度にこだわり。
「Vシリーズ」では、キャラクターの面白さと、スパイスの効いたミステリーにこだわり。
「四季四部作」では、真賀田四季という天才を書き・・・。
「Qシリーズ」では、思想を一段深めて、ミステリーの概念を完全に破壊するような手法だった。

その間、僕はついてきていたわけではありません。むしろもうついていけないと思いました。ファンの人にはたまらないと思いますけれど。
だけど、本シリーズは、原点に戻りました。
『すべてがFになる』ほどのインパクトはなくとも、私のファンである作風に戻ってきました。


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