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[ 本格/新本格 ]
高層の死角
森村誠一 出版月: 1969年01月 平均: 6.56点 書評数: 18件

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講談社
1969年01月

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1974年04月

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祥伝社
2009年10月

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No.18 6点 HORNET 2024/03/03 19:23
 社会派ミステリ、アリバイものが隆盛を誇っていた時代を強く感じさせる一作。「…であった。」といういささか仰々しい文体もまた。
 密室のトリックも、飛行機を使ったアリバイ工作も、今の時代の眼から見ると色褪せたしろものではあるが、読み手としては当時の社会状況に仮想的に身を置くので気にならない。あとは好みの問題で、時刻表によるトリックは面倒で煩わしく感じる人はいるかもしれない。
 秀逸に感じたのは最後の壁「レジスターカード」のトリック(これも現在のようなセキュリティではない話だが)。連番で打刻されるナンバーの途中に、アリバイにする自身のカードを挿入させる手口は、ホテル勤務を経験していた作者ならではの着眼点だろう。

No.17 7点 よん 2023/12/05 13:49
パレスサイドホテル34階のスイートルームで、老社長が殺された。しかしホテルの部屋は、二重にプロテクトされた密室であり、容疑者には完璧なアリバイがあった。
特筆すべきはホテルの描写。作者は元ホテルマンだったというだけあって、舞台となったホテルやホテルマンは、ディテールまでしっかり書き込まれている。このディテールが、物語に厚みとリアリティを与えている。
幾重にもガードされた犯人の策略を破るべく、刑事たちがさまざまな仮説を立て検証する、試行錯誤の連続。一つの謎を解いたと思ったら、すぐさま次の謎が立ちはだかる。テンポのいい展開と堅実な捜査シーンも魅力の一つ。時代背景に負うところが多いのは事実だが、今でも十分に通用し楽しめる。

No.16 4点 虫暮部 2022/02/16 13:44
 第二の殺人(美人秘書殺し)について。犯人は何故こんなトリックを弄したのか?
 アリバイ工作とは基本的に、自分が疑われる前提で行うものである。しかし、犯人は被害者との関係を厳重に秘匿していた。トイレの一枚の紙切れから捜査線上に名前が挙がったのは想定外、かなり運が付いていなかった。
 つまりは “無駄に終わる可能性は高いが、念の為に” と言う工作なのである。それにしては随分と手間暇も金もかけていて、当日はハード・スケジュールをこなして、これで疑われなかったら勿体無いくらいだ。
 そして結果として、暴かれてしまうと数々の不自然な行動について言い逃れ出来ないだろうから、却って仇になったのではないか。そのへんの皮肉さに全く言及されていないのだから、作者は気付いていなかったのだろう。
 要するに、アリバイものを書くなら、端から疑われるポジションに犯人を設定しておいた方が、こうしたイチャモンを付けられずに済むと言うことである。

No.15 6点 ねここねこ男爵 2020/06/15 13:57
前半3割ほどが密室殺人、後半7割ほどがアリバイ崩しの本作

力の入れ具合からして後半のアリバイ崩しがメインなのだろうが、個人的には微妙だった。盛りだくさんで次から次へとなので読んでいて楽しいものの、内容は「とにかく奇抜なルートで目眩まし」「小ネタ小ネタで物量作戦」に留まっており、公共交通機関を利用する以上はいずれ発覚するのは目に見えているので…奇抜と言っても現代はもちろん執筆当時でもさほど目新しくはなかったのではなかろうか。盛りだくさんなだけにツッコミどころも盛りだくさんだし

むしろ前半の密室が素晴らしく思う。シンプルにして効果的でスキがなく、何より「侵入するための密室」ゆえに密室の必然性を無理なく備えているのが良い。乱歩賞の選考委員も密室を評価している人が多い。長編を支えるには量的に不足であろうが、このネタで良質の中編が書けたかもしれない

テンポが非常に良いのでリーダビリティが高く(文章に苦言を呈する選考委員が多かったが…?)、密室の素晴らしさとアリバイ崩しの微妙さを考慮してこの点数。少なくとも読んで損はないかと

No.14 8点 2018/04/17 09:40
森村誠一氏の代表的本格ミステリ作品と言えば、乱歩賞受賞作品でもある本作。

密室トリック、アリバイトリック、さらに暗号トリックもある。欲張りすぎで、きっと気負いはあったのかもしれないが、でもみなうまくはまり、どれも上質に仕上がっている。力作です。

特にアリバイトリックには、力が入れてある。
かなりのページ数を割き、一歩進んでもすぐには答えにたどり着けない多段階構成となっている。時刻表はたしかに出てくるが、それだけではなく、組み合わせ技であるところがすごい。
解決のかけらを小出しにしながら読書欲を持続させてくれるこの展開は、ほんとうに堪らない。これこそがすぐれたリーダビリティにつながっているのでしょう。

No.13 6点 パメル 2017/12/04 12:46
企業間争いという社会的背景と怨恨、愛憎、金銭以外の動機を示した社会派ミステリのモチーフの中に、外側と内側の両方に鍵がかかった状態での二重の密室、アリバイ崩しという本格ミステリとが融合している。
乱歩賞選考委員は、密室トリックを褒めていたらしいですが、後半からの容疑者の鉄壁のアリバイを崩していくところが、やはり読みどころでしょう。
アリバイ崩しの攻略のヒントとなる発想も、特に不自然に感じることなく、刑事の執念による追及の演出の描き方は素晴らしい。
ただ、●●●を利用したアリバイに、少々不都合に思える点が残念。

No.12 4点 いいちこ 2016/01/05 17:26
密室トリックは添え物程度の扱いで、メインはアリバイトリック。
移動経路のトリックは、ただ複雑なだけで警察が地道に捜査すれば必ず真相が判明するだけに、本質的には単なる眼くらましでありトリックとは言い難い。
チェックインのトリックは、ディテールに巧緻さが感じられるものの、その構造上必ず共犯が必要である点、それが第二の殺人の動機と矛盾しているように感じられる点等が非常に難点。
刑事・被害者女性・犯人の歪んだ三角関係をより深く抉り出せば、違った展開も見えたように思うものの、その方向には展開しなかった。
以上、力作感はあるものの、本格ミステリとしては構造的に極めて脆弱であり、評価としては4点の最上位クラス

No.11 5点 蟷螂の斧 2015/08/12 13:28
第15回江戸川乱歩賞作品。密室とアリバイトリックですが、期待したほどでもなかった。密室トリックはかなり簡単なものであったし、アリバイは時刻表トリックであまり好みでないこともありました(苦笑)。ある人物が犯人ならば・・・と期待したのが大きかったのでこの点数。

No.10 8点 斎藤警部 2015/07/06 19:29
題名通り、シャープに都会的な冴えを見せる一品。 高層ホテルを舞台に連関した二つの殺人事件。一方は二重密室(の中で当ホテルの社長が!)、一方は容疑者に強靭なアリバイの壁(殺られたのは前事件の第一容疑者にされた社長秘書!)。ホテルの構造(ハ―ド、ソフト両方)を踏まえたトリック構築とその瓦解に至るプロセスが実直ながら実にスリルに満ちて興味津々。専門事項の解説も巧みで分かりやすい(少なくともミステリの雰囲気を壊さず分かった気にさせる)。 ホテルの外で労される大規模物理的アリバイトリック(?)は、少なくとも現在の常識では、瞬殺で見えてしまう類だが、それですら「いつ気付くんだ、いつ気付くんだ!!」と面白いほどの切迫型リーダビリティ。
トリックに関しては明瞭に 密室<アリバイ の私ですが、この作はどちらも同じくらい良かった!!
でも一番の美点はやはり読ませるサスペンスであり、滋味有る事件捜査の描写だと思います。たとえトリックが古びてもその古さが小説の彩りに化けるタイプの古典名作ではないでしょうか。

No.9 8点 STAR 2012/04/19 16:50
森村氏の代表作と言えば、『人間の証明』とこちらかな?とお思い、読んでみました。古い作品ですが、そんなに古さを感じませんでした。
高層がトリックに関係しているのかと思いきや、高層はあまり関係なかったようで、そこはちょっとがっかり。
崩したとおもっても二重・三重で犯人のアリバイが出てくる展開はおもしろかったです。
つぎ足して拡張していくホテルで、都内のあるホテルを思い浮かべたら・・・森村氏は昔ホテルマンで、私が思い浮かべたホテルで勤務していたのですね。

(以下はネダバレあり!)
女性の死んだホテルにあった敗れたメモ(一部の文字だけわかる)はおもしろいと思った。難解な暗号解読とかは読んでいて疲れるが、よくある文章(もらったことがある人は多いはず)の一部であるというところがいい。「●男国男」って?と思うがたしかにある文章の一部とすれば、納得。
飛行機のトリックも、台湾を使うあたりおもしろいと思った。だからこそ女性が死んだ場所が福岡だということで、納得もいく。

No.8 5点 nukkam 2010/11/01 21:22
(ネタバレなしです) 累計発行部数が1億冊を超える森村誠一(1933-2023)の初期作は犯罪を扱っていても非ミステリー作品に分類されており、ミステリーデビュー作とされるのが1969年発表の本書です。後年の社会派推理小説要素はなく、純粋な本格派推理小説といっても差し支えないでしょう。密室トリックの鮮やかな解明も印象的ですが、崩しても崩しても再生するアリバイの強固さはすさまじいものがあります。私にとっては犯人当ての楽しみを放棄することの多いアリバイ崩しは相性がよくないのでどうしても辛目の採点になりますが、緻密に考え抜かれた佳作であることは認めます。

No.7 8点 E-BANKER 2010/10/27 23:46
作者の「本格物」代表作。
今読んでも「古さ」を感じさせないところが見事!
超高層ホテルでの堅牢な密室と、東京-福岡間の鉄壁のアリバイという2つの大きな謎に熱血刑事が怯むことなく立ち向かいます。
密室トリックについては、途中で割りとあっさり解決してしまいますが、問題はアリバイトリックの方。真犯人が仕掛けた二重三重の「欺瞞」の壁を刑事たちが1つ1つ壊していく展開は、読者を飽きさせることなく解決まで導きます。
航空機のアリバイトリック自体は後年同種のものが多数出ていますから、正直それほどのサプライズはないのですが、ホテルのチェックインの仕組みを巧みに利用したアリバイトリックは賞賛に値します。(作者の経験の成せる技でしょう)
とにかく、時代を超越し、一読に値する名作という評価で間違いないと思います。
ラストが割りとあっさりしているところと、「動機」にちょっと違和感を感じる(そこまでするか?)のがやや残念!

No.6 7点 2010/09/18 13:04
この密室トリックについては、斬新さは方法よりもその設定・効果にあると思うのですが、そのことについて触れられている評はどうも見かけないようです。通常密室と言えば脱出不可能な部屋のことですが、本作では作者が知り尽くしたホテルを舞台にして、侵入不可能な密室を構築しているのです。
第2の殺人における飛行機を利用したアリバイの方は、原理的には鮎川哲也等でもおなじみのパターンですが、行きと帰り、異なる方法を使っていて、警察の捜査で少しずつ解明されていくところが興味を持続させます。さらにホテルのレジスターカードに関する細かい芸でのアリバイのダメ押し。文生さんの言われるように、まさに物量作戦です。
ただ飛行機利用の場合、もっと直接的な便を使わなかったことの証明が、その便に偽名乗客がいなかったことにかかってしまうという偶然頼みの欠点は免れていません。

No.5 7点 kanamori 2010/07/31 22:26
「東西ミステリーベスト100」国内編の52位は、社会派+本格トリックの乱歩賞作品。
森村は「人間の証明」(85位)と併せ2冊ランクインしています。
ホテルの密室トリックと考えられたアリバイトリックが印象に残りますが、硬質だが迫力ある文章でリーダビリティもあると思います。

No.4 8点 文生 2010/01/21 13:40
密室殺人とアリバイ崩しを組み合わせたトリック尽くしの作品。
特にアリバイトリックは二重、三重、四重と仕掛けられており、その執拗さに唖然とする。
ひとつひとつのトリックは小粒だが、その物量に脱帽。

No.3 7点 測量ボ-イ 2009/05/04 11:04
密室殺人の対する解答に新しいパタ-ンを考案したという
点では評価に値すると思います。

No.2 8点 makomako 2009/01/03 22:14
このサイトで森村誠一へのコメントが少ないのは社会派推理小説への評価が下がっているからだろうか。一世を風靡した人間の証明も採点がない。高層の死角を最初に読んだときはまだ学生で高級ホテルのことなど全く知らなかったためかホテルに関する事柄ばかりが印象に残っていたが、今回再読してみるとホテルの密室殺人はそれほどウエートがあるわけでなくむしろそれ以後のアリバイ崩しの分量が多いのにちょっと驚いた。ホテルでの密室殺人も犯人のアリバイも細かいところまで実に良く考えてあり、一流の推理小説だと思う。読んでいないならおすすめですよ。
 森村誠一は熱く情に流される人間が良く出てくる割には小説全体がとてもクールな印象を受けるところが、大好きな作家とまではいかないところです。でももうちょっと評価されても良いがなあ。

No.1 6点 あい 2008/06/30 14:41
有名な作品なので密室トリックに期待していたら、外れてしまった。本格に期待しなくて読めば悪い作品ではないと思う


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