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[ 本格/新本格 ]
招かれざる客
倉田警部補
笹沢左保 出版月: 1960年01月 平均: 6.14点 書評数: 14件

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講談社
1960年01月

東都書房
1961年01月

東都書房
1967年01月

KADOKAWA
1971年08月

光文社
1999年06月

光文社
2008年09月

徳間書店
2021年10月

No.14 6点 ことは 2024/07/14 02:12
「有栖川有栖選 必読! Selection」シリーズのカバーがなかなかよいので、もう1冊。
前半は記録の抜粋にして、後半、主人公による捜査行というのがなかなか良い構成。前半で提示される情報の量が多くて、かなりスピード感があって楽しいし、後半の捜査行は、鮎川哲也の鬼貫ものを思い出させる地道なものだが読ませる。(鮎川哲也と比べると、順調にいきすぎだが)
いくつかのトリックは、それだけ取り出すとシンプルすぎたり無理があったりで、驚けなかったが、楽しむ部分は、トリックを解明していく捜査の道行きだろう。
動機については、ちょっとどうかな。1つめの事件の動機はドロドロしすぎだし、2つめの事件の動機については、原因となるある事実が無理すぎる(誰か気づく!)。ミステリに徹して、この部分は無いほうが好みだった。

No.13 5点 ねここねこ男爵 2024/02/08 11:25
ネタバレ気味です。

笹沢左保氏特有の作風とは違った、古典的なトリックによる本格もの。
それだけにミステリを多く読んでいると色々見当がついてしまいますが、流石の筆力で読んでいるうちはそこそこ楽しめました。
ただあくまでそこそこなのでこの点数で。


アリバイトリックは鮎川哲也氏の作品にほぼ同じものがありますが(たまたま続けて読んだので混乱した)、徳間文庫版の有栖川有栖氏の解説によると、執筆時期からして独立して同じアイデアを思いついたということらしいです。
まったく独立に微積分を編み出したニュートンとライプニッツみたいなもんでしょうか。
ただ死体の発見が完全な偶然によるものであり、アリバイトリックを仕込んでいる以上適切なタイミングで発見させる必要があるはずなのでそこが瑕でしょうか。どこかで言及されるのかと思いきや何もありませんでした。

No.12 4点 虫暮部 2022/03/10 11:28
 第一の事件。非常階段にあった死体の発見、犯行時間の特定、いずれも偶然なのである。発見は犯行の2日後。もっと遅れて死亡推定時刻に1日単位の幅が出たら、犯人のアリバイ工作は無意味になってしまう。かと言って早過ぎてトリック完了前に呼び出されても困る。適切なタイミングで発見させる工夫も必要だったのでは。

 第二の事件。ガレージの二階。犯人の行動は非常にやる気のあるトリックと言うか、自分が容疑者になる前提で一芝居打っているわけで、とても積極的。私の印象として犯人は “深く傷付き疲弊した人” なんだけど(そして第一の事件では “あいつを殺してやる!” と言うこと自体が気力の支えになったと思うんだけど)、それがこの段階で、この動機の殺人で、こんなことするかなぁ? と違和感あり。
 それとも、ボロボロになった故にこそ、“自分に対して冷たい世界と密かに敵対する” ことを楽しんでいたのだろうか。警部補とのやりとりには確かにそんな突っ張ったニュアンスが無くもない。

 そもそもの発端となった労組スパイ事件。そんな処分通告をしたらスパイ行為がバレて当然じゃないか、阿呆か、と思った。

 壮年夫妻が妊娠中の20代女性を養女として迎える際、生まれて来る赤ん坊も夫妻の子として入籍するのがいちばんいい――このくだりの意味がよく判らない。もしかして、戸籍上だけでも両親揃っている方が良い、と言うこと?

No.11 7点 測量ボ-イ 2019/12/01 13:40
氏の作品を初めてよみましたが、暗号・密室・アリバイ
と盛りだくさんですね。
丹念な作りには好感が持てます。

暗号・・・これは特殊知識がないと解けない
密室(凶器)・・・外国の古典に類似あり
アリバイ・・・これも鮎哲氏の某作品に似てますね(パクリはさすがに
       失礼ですけど)
       作品もほぼ同年代だけに、どっちが先なんでしょう?

ネガティブなことも書いていますが、総合的には本格志向の人間を
満足させることのできる作品です。

No.10 8点 斎藤警部 2017/02/10 16:10
海の底みたいな娘。。 昔の大井町。。(昔みたいな一画、今も残ってますが)

ちょっと肩に力が入ってそうだが最後は上手く収まった。大胆な二部構成も却って全体像見えやすいかな、何しろトリックにロジックに社会派(労組スパイ)に恋愛に人間悲劇に男の生き様と盛りだくさん。トリックに限って見ても、色んな方面のが規模感大小入り混じりでね、面白いけどちょっと詰め込み過ぎって思う人も多いだろかね、だけど、謎の核心の所で言えば、本作実は「時計館のなんとか」に(原理は違えど)ちょっと通じるかなり悪魔チックな、でもぐっと人間臭い、灼熱系豪快アリバイトリックの話じゃねえの!? ってか【以下、伏字にしたけどネタバレ】ある意味人工的な●定時●でキメやがったって話じゃないのさキキーッッ!!(ハンケチを噛む)

探偵役(休暇中警部補)の、やっぱり何とも人間臭い足掻きっぷりも読ませてくれます。この人は良かったです。妹さんも幸せになってほしい。妹さんと言えば、なかなか無い類の余韻をくれるこのエンディング。。。

清張に先立ち自ら(昭和三十年代の)「新本格」を名乗ったという作者の、旧新本格(へんな言葉)堂々のデビュー長篇。こりゃ三十年代フェチの人に限らず、世界中のミステリファンに幅広く読まれて欲しい快作ですよね!

No.9 6点 E-BANKER 2017/02/08 21:14
作者の実質デビュー長編。
1959年の第五回江戸川乱歩賞へ応募され、惜しくも受賞を逃した作品。
(受賞作は新章文子の「危険な関係」)
光文社の笹沢左保コレクションの新装版で読了。(他にエッセイ『青春飛行』を併録)

~事件は商産省組合の秘密闘争計画を筒抜けにしたスパイを発見したことが発端だった。スパイと目された組合員、そして彼の内縁の妻に誤認された女性が殺され、ふたつの事件の容疑者は事故で死亡する。ある週刊誌の記事から、事件に疑問を感じた警部補が挑むのは、鉄壁のアリバイと暗号、そして密室の謎! 笹沢左保のデビュー作にして代表作となる傑作本格推理小説~

実に重厚な本格ミステリーだ!
さすがに二十一世紀の現在からすると、いかにも古めかしく時代背景が忍ばれるのだが、行間からは作者のミステリーに対する情熱すら感じられて、次第に引き込まれている自分がいた。

紹介文のとおり、本作に詰め込まれた主要な謎は、アリバイ/暗号/密室の三点。
まず暗号については、他の方もご指摘のとおりで、当時の業界関係者でなければ解読不可能なのが玉に瑕。まぁ“○○”なんて、いかにもなルビがふってあるので、察する読者は多いと思われるが・・・
つぎに密室。
犯人というより凶器が密室から消えた謎がメイン。
よくよく考えれば推理クイズ程度のものなんだけど、小道具がうまい具合に使われていて、なかなか鮮やかなトリックとなっている。
化学者の証言が挿入されていて、リアリティを担保しているのも良いと思う。

で、アリバイなのだが・・・これが微妙。
他人の感覚に頼っている段階で、このトリックは相当危ういと思うのだが、どうか? 
どこかで気付かれるリスクが大きくて、さすがにリアリティが欠如していると感じる。
(目の付け所は面白いんだけどね)

最後に動機。タイトルにもつながってくる何とも重く、哀しい事実・・・(そうか、そういう意味だったのか・・・)
いかにも50~60年代の日本っていう感じだし、作品に深みを与えている。
ということで、デビュー作とは思えない完成度。さすがに三百作以上の作品を世に送り出しただけのことはある。
初期の笹沢左保恐るべし!っていうことだな。

No.8 6点 パメル 2017/01/09 16:10
作者のデビュー作
密室での凶器消失トリック・誤認トリック・アリバイ崩し・不可解な暗号そして動機は?と本格推理小説の醍醐味が味わえる作品
殺人事件の有力容疑者が事故死した事により捜査を打ち切りにする雰囲気が漂っていく
そんな中釈然としない警部補が地道な捜査と推理で少しずつ真相を明らかにしていくところが読みどころ
ただあの暗号が読者で解る人はまずいないでしょう

No.7 6点 蟷螂の斧 2016/08/19 21:33
目新しいものはないのですが、動機、アリバイ、トリックを複合的に組み合わせたもので好印象を受けました。警部補の消去法的推理はなかなかのものです。ただし、題名はイマイチ、ピンときませんでした。

No.6 7点 ボナンザ 2014/04/07 23:01
完成度は高い。最後まで上質な本格ものであった。

No.5 6点 2012/09/03 20:38
久々に再読してみると、笹沢左保も最初はこんながっちりした渋めの本格派を書いていたんだなあと多少びっくりさせられました。特に第1部後半は警察の調書をそのまま載せたという体裁です。
メインのアリバイ・トリックは、気づかれる危険性がかなりあったのではないかという点が気になりましたが、おもしろいアイディアではあります。シンプルな暗号は、一般読者にとっては変換方式がわかるはずがありませんが、これはこれでいいと思います。第2の殺人の手順については、犯人の計画に、都合の良い偶然がなければ成り立たない部分があるのがちょっと不満です。
渋めといっても、最後の方タイトルの意味が明らかになる部分には、後の作品をも思わせるメロドラマチックさがありました。その秘密は意外だったのですが、本当にそのことをしなければならなかったのかという疑問も感じます。その心理を納得させるような結末にはできなかったのかなあ。

No.4 6点 文生 2012/04/04 12:37
笹沢左保の初長編であり、第5回江戸川乱歩賞候補次席作品。
トリックやミステリー的ガジェットをふんだんに盛り込むという著者の特徴がすでに現れており、本格好きにとってはたまらない限りだが、トリック自体はどこかで見たようなものが多く、使い方自体もいまひとつ浅い感じがするのが残念な所。

No.3 6点 nukkam 2011/01/25 11:46
(ネタバレなしです) 生涯に350作以上の作品を世に出した笹沢左保(1930-2002)の1960年発表のデビュー作で本格派推理小説です。犯人の正体は早い段階で見当がついてしまい犯人当てとしては楽しめませんが、メインの謎解きであるアリバイ崩し以外にも凶器、暗号、動機など実に様々な工夫が織り込んであり推理も丁寧です。デビュー作ゆえかまだ文章にロマンは感じられず、特に報告調の前半はむしろ素っ気無いほどですが謎解きの魅力で最後まで押し切ったような印象を受けました。

No.2 6点 kanamori 2010/08/01 15:51
プロットに工夫を凝らした社会派風の本格ミステリで、著者のデビュー作。
2部構成になっており、前半は新聞記事や関係者の証言を綴ったドキュメンタリー風な内容で事件を多面的に描き、後半は一転、刑事の私的捜査を本格ミステリ風に描いています。
若干ちぐはぐ感はありますが、暗号、密室、アリバイ崩しと本格のガシェットを多用し、乱歩賞応募作らしい作者の意気込みが感じられました。

No.1 7点 2010/05/27 09:52
最初の章は事件の状況説明に終始し、次の章は一人称で刑事が事件を追う展開となっています。笹沢左保も松本清張の影響を受けたのでしょうか。出だしは社会派風で、冒頭から中盤ぐらいまでは、清張なみの読みやすさと筆力に、グイグイグイと引き込まれます。これがデビュー作とは驚きです(改稿はあったようですが)。と、いい調子で進むのですが、気が付けば最初の社会性はいったいどこにいったのだろう、というほど社会派ミステリではなくなっていきます。それはそれで問題はないのですが。
確実性は低いものの、ひと工夫あるアリバイ、暗号等のトリックが色々とあり、また物語性もあって、かなり楽しめた作品でした。


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