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[ 本格/新本格 ]
結婚って何さ
笹沢左保 出版月: 1960年01月 平均: 5.67点 書評数: 6件

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東都書房
1960年01月

春陽堂
1964年01月

講談社
1982年04月

光文社
2001年06月

徳間書店
2022年12月

No.6 6点 ねここねこ男爵 2024/02/09 12:49
素人探偵の推理力すごすぎ!
狭い範囲に都合の良い人間関係が集中している違和感はありますが、読んでいるうちは気になりませんでした
トリックにも新規性はないものの使い方が上手で、特に密室は見事(多少の不確実性があり、さらに絶対に密室にする必要はなかったかもしれませんが)
2時間ドラマにしたら面白くなると思う

No.5 5点 ボナンザ 2023/02/19 20:42
異色作だが、最後のあたりでしっかり本格のアイディアを盛り込んでいるのが流石。

No.4 7点 人並由真 2022/08/27 18:06
(ネタバレなし)
「万里石油」東京支社の臨時雇いOLである20歳の美人・遠井真弓は、職場の妻子持ちの係長から求愛されるが拒否し、それがもとで辞職した。同い年の同僚・赤毛の疋田三枝子も真弓に付合う形で退職。失業した二人は夜の町で酒を飲むうちに、森川と名乗る眼帯の男と知り合い、三人で同じ宿に泊ることになる。だが酔いつぶれた真弓たちが密室の中で認めたのは、絞殺された男の死体だった。

 先日、ブックオフの100円棚で見つけた講談社文庫版で読了。大昔に別版(文華新書版?)を持っていたような気がするが、書庫で見つからず、この数年、何らかの適当な版との出会いを待っていた。
 もともと本作のタイトルを知ったのは、70年代後半の初期の「幻影城」で、どっかの大学のミステリサークルが本書を(その時代までの)国産オールタイムミステリのベスト10、そのひとつに入れていたときだと思う。初めて題名を知った時は、なに、このマーガレットコミックスにありそうなタイトル、と思ったものだった。
『招かれざる客』『霧に溶ける』『人喰い』と同年の1960年作品のようだが、他の3作のどこか格調を残す題名に比べ、このタイトルは明らかに異質だったが、このあとの笹沢作品のタイトリングはこの手の口語的、会話でのセリフっぽいものも多くなるので、その辺が商業作家の意図的な戦略だとしたら、今日び21世紀のやたらと長いタイトリングで受け手に印象づけようとするラノベ文化などに一脈通じることもあるかもしれない。

 閑話休題。評者の場合、もしかしたら本作はすでに一度、その持っているかどうかも曖昧な蔵書で一度読んでいるかも? という記憶が曖昧なところもあったが、このたび通読してみると完全に初読。一回でも読んでいたら、どっかは記憶に残るだろうという印象的なシーンや叙述が続出する。なんで勘違いしていたんだ、オレ?

 サスペンス枠の方向性の中にパズラーの要素を組み込み、事件全体の輪郭もなかなか判然としないあたりの構成は、よく練り込まれている。
 一方で雪さんのレビューにある、終盤でのアマチュア探偵(主人公たち)の仮説的な推理が検証もされず、ほぼ正鵠を射てしまうのはナンだというのは確かに弱点だが、まあその辺は東西のミステリ全般での普遍的な隙ともいえるので、ぎりぎり。

 全体としてはかなり短めの紙幅(文庫で220ページ弱)ながら中身は濃い。評者の予想外に飛び出した密室殺人の解法もふくめて、小技と中技の組み合わせで期待通りに面白かった。
 
 ちなみに肝心のタイトリングの作中での用法は、終盤で回収されるが、作者は当初からこういう形で言わせるつもりだったんだろうなと思える一方、実際のそのハマり具合にもニヤリ。作中でこのセリフを聞いた、脇にいる人物のリアクションが微笑ましい。

 あと実にどーでもいいが、講談社文庫版の145ページで「目前に怪獣が迫ったように、顔をそむけた。」という叙述があり、1960年じゃまだ第一次怪獣ブームのはるか前だよな、国産怪獣じゃゴジラ、アンギラス、雪男、ラドンにメガヌロン、モゲラにバラン程度だよな、とも思う。もしかしたらこの種のレトリックを使用した作品(非・広義のSF系で)のかなり早期のひとつか? いつかその辺も可能なら探求してみたい(果てしなく長い道のりになりそうだが)。

No.3 6点 2021/01/31 12:06
 手酷く振った係長に難癖をつけられ、臨時雇いの遠井真弓と疋田三枝子は、せっかく就職した会社を辞めてしまった。憂さ晴らしにしこたま酔っぱらった二人は三軒目のバーで、こちらも仕事を辞めたばかりの男と意気投合し、三人で連れ込み旅館に泊ることに。翌朝起きた二人が見たものはソファの上で死んでいる件の男と、最後に真弓自身が鍵をかけた、完全なる密室だった。殺人事件と男女の恋愛が絡み合う長編ミステリー。
 『霧に溶ける』発表後ほどなく勤め先を退職し本格的な創作活動に入った著者が、東都書房より書き下ろし刊行した第三長編。タイムリミットこそ無いものの、濡れ衣を着せられた女性が、警察に怯えながら自力で犯人を突き止めようとする巻き込まれ型の筋立てで、初期だけあって軽めのタイトルとは裏腹に手堅く纏めた作品。
 序盤に片割れの三枝子が東京を彷徨い歩くうち制服警官に尋問され、半狂乱の果てに国電線路に飛び込み轢殺されるシーンがあってびびるが、それ以降は被害者の港郵便局員・森川昭司の持っていた弁護士・伴幸太郎の名刺と、河口湖⇒東京間の切符を手掛かりに、一路山梨方面に向かう展開。河口湖畔で弁護士の足跡を追う過程で、伴の妻・早苗と後にペアを組む姉に自殺された若い男・水木隆二が真弓に接触し、更に幸太郎が最近、同じ富士五湖の一つ・西湖で水死を遂げた事も早苗の口から告げられる。
 相棒・三枝子の唐突な死も作者の計算に入っており、読み進むうちそれも分かってくる。作中時折挿入される捜査の進行状況が、サスペンスの盛り上げと共に登場人物の動きの解明に使われており、この辺りの呼吸は上手い。だが犯人と思われる人物はいずれも堅固なアリバイに守られ、密室トリックは解けたものの読者は最終章まで目隠しされたまま、見えそうで見えない真相にヤキモキさせられる事になる。そこから氷解に至るヒントは自身も元郵政省簡易保険局員だったこの作者ならではで、シンプルなメイントリックを最大限に活用している。
 ただ終盤アクション連続の割に、最後は犯人の自白でアッサリ片付ける結末はやや強引か。証明難度の高さは笹沢長編の弱点だが、終始追いつ追われつの本書では特にその欠陥が出ている。時代背景もあるだろうが、好んでドツボに嵌るような主人公カップルの行動も感心しない。長所もあるがそういう訳で、採点はギリ6点。

No.2 5点 nukkam 2011/09/04 15:57
(ネタバレなしです) 笹沢左保はデビューした年の1960年に一気に4作品も発表していますが、その中でも恋愛コメディーみたいなタイトルの本書は異色の存在です。ちなみに恋愛要素もコメディー要素もほとんどなく、巻き込まれ型サスペンス風のプロットを特徴としています。密室殺人事件を扱っているところは本格派推理小説らしさもありますが、徹底して謎解きにこだわった名作「霧に溶ける」(1960年)の次作としては軽量級に感じられるのもやむなしでしょうか。意外と細部までしっかり書かれており、密室トリックはいかにしてだけでなく密室にした理由まで説明されています。

No.1 5点 kanamori 2010/04/25 17:33
通俗ミステリの様なタイトルですが、キッチリ本格しています。
作者初期の本格ミステリ群は、乱歩の「類別トリック集成」の各トリック項目から順次消化しているような感じで、色々なトリックを駆使していますが、本書も密室トリックとある有名なプロット上のトリックを使用しています。
オリジナリティに欠けるかもしれませんが、本格に対する意欲は買えると思います。


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笹沢左保
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