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[ 短編集(分類不能) ] ささやかな復讐 |
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笹沢左保 | 出版月: 1988年12月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 光文社 1988年12月 |
No.1 | 7点 | 人並由真 | 2025/03/25 20:21 |
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(ネタバレなし)
光文社文庫オリジナルの一冊。 ①闇からの声……………カラー小説 1969年8月 ②反復……………………別冊週刊朝日 1961年7月 ③死神考…………………小説エース 1968年11月 ④ささやかな復讐………講談倶楽部 1962年5月 ⑤偽名とダイナマイト…推理ストーリー 1961年12月 ⑥娘をそこで見た………週刊現代 1964年8月20日 ⑦炎の女…………………別冊サンデー毎日 1968年8月 ⑧青い地上………………小説推理 1976年8月 ……の8本を収録。 解説の山前さんによると <書籍化はされているが、この時点でまだ文庫化されていなかった、比較的レアな作品を集成した短編集(主旨)>だそうである。たぶん(&当然)、山前さんご本人のセレクトだろう。 60年代作品が大半だが、諸編に妙な純朴さを感じる一方、各作品がバラエティ感に富み、とても楽しい一冊だった。作者の作風の広さを改めて感じる。 以下、備忘録メモを兼ねた寸評&感想。 ①……妊娠した不倫相手の部下を殺してしまった中間管理職。だが死体を無事に始末までしたはずの、殺害した相手から、連絡が!? まんまヒッチコック劇場路線の短編。 ②反復……妻と死別し、娘の成長だけを楽しみに生きてきた平凡な小役人。だが娘の華燭の宴で……。 個人的にはこれが一番、強烈だった。人によっては大したことないと思うかもしれないが、へー、笹沢ってこういうの書くん……いや、たしかに作者らしいかもな……と思わされた一本。 ③「死神」と綽名の友人と久々に再会した主人公。その友人は奇妙な話を語る。 事件の異様さと犯人像の不気味さ(地味な怖さ?)で、印象に残る。ラストは奇妙なほどにぞ~とした。 ④旅先で知り合った美貌の人妻とその場限りの不倫を楽しもうとするジャーナリスト。彼にはある苦い記憶があった。 割と凡庸な話。粒ぞろいの本書のなかではこの表題作が一番オチるか? ⑤偽名を使って山奥の観光地に潜伏したらしい、爆弾を持った殺人犯。容疑者の爆弾を警戒しながら慎重に包囲網を狭める捜査陣は「偽名」から当人を割り出そうとするが。 昭和ミステリの諸作にたまに見られる地名トリヴィアネタの一編。これはこれで楽しい。 ⑥公園でひそかな覗き趣味に走る中年は、そこで娘と美青年の若い同僚の情交を目撃した。 刺激的な倒錯エロネタだが、ショート・ミステリに器用に転換するあたりはいかにも作者らしい。 ⑦人妻となった昔の彼女に再会した主人公。かつて「炎の女」と呼ばれたほど情熱的だった現在の人妻は、3年前に失踪した夫の死体が見つかったというが。 男女の劣情の機微を軸に、うまく(中略)派のミステリにまとめた話。事件の構造は先読みできるだろうが、ある種のサプライズを用意。クロージングの妙味が心に残る。 ⑧プレイボーイの主人公が関わった女たち。だがそのなかの一人が変死して。 ダイイングメッセージもの。他愛ない話で殺人の実現性もあれだが、あれこれその辺の隙をリカバリーしてある。作者の語り口の芸で楽しめた。 以上8本、おおむね作風の振り幅もあって面白かった。この辺の笹沢の旧作だと、いい意味で期待値が低い面もあって、その辺りも踏まえて楽しめる。 しかしレビューを書く前はトータルで7点あげたいと思っていたのだが、実際に感想をまとめてみると6点クラスかな。 でも「反復」のなんとも言えない読後感に免じて、やっぱり所期通りの評点をあげよう(笑)。 |