海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

[ 本格/新本格 ]
死人狩り
笹沢左保 出版月: 1965年01月 平均: 5.00点 書評数: 2件

書評を見る | 採点するジャンル投票


徳間書店
1965年01月

日本文華社
1967年01月

徳間書店
1978年12月

徳間書店
1978年12月

徳間書店
1982年04月

祥伝社
2019年05月

No.2 5点 人並由真 2020/06/12 14:16
(ネタバレなし)
 その年の7月。西伊豆の下田と沼津を繋ぐ西海岸沿いの崖脇の道路から、運転手と車掌を含めて27人の男女を乗せた定期バスが墜落し、全員が死亡する。原因は何者かが走行中のバスの正面ガラスに散弾銃を撃ち込んだためだった。死んだ乗客の中に妻の和子と娘の千秋、息子の不二男を確認した静岡県警捜査一課の34歳の刑事・浦上達郎は、以前からの相棒の同僚・伊集院虎雄とともに「犯人は誰を殺そうとしていたのか」を最初に暴くべく、被害者たちの身元と当時に至る状況を洗い出す「死人狩り(しびとがり)」を開始するが。

 大昔にテレビドラマ版をちらりと観たような気がするのでwebで調べたら、1965年と1978年に連続ドラマ(前者は半年、後者は全5回の短期)になっている。評者が覗いたのは後者のショーケン主演版の方。トクマノベルズ版はこれに合わせて刊行されたのだろう。
(ちなみに1965年版は主演が車周作、相棒が江戸川総司令、交代で応援の若手刑事がキカイダー01ですって。こりゃ東映の製作だろと思ったら、まんまそうだった。一度観たい。)

 こういう派手で大胆な趣向で設定の作品だから、どうせ大半の被害者の調査が空振りに終わるのはわかっているのだが、とにもかくにも物語の勢いのなかで主人公がほぼ全員の捜査を相応に強引に貫徹(仕事の分担として他の刑事が一度調べた相手まで、一部、洗い直している)。その辺のリアリティに関してはまあギリギリ。
 その上で、真犯人の殺人計画に直接は関係なかった巻き込まれた被害者たちのプライバシーが、さらには「もしかしたら、こいつが犯人か?」と疑われた遺族や故人の関係者の内情までがひとつひとつ赤裸々に暴かれていく。この下世話な覗きストーリーの物量感がぢつに面白い(……といっていいのか?・汗)。
 これはすぐに連続テレビドラマ化されるわけだよ、だって毎回のエピソードがネタ話だもの(とはいえ当時、ネットの実況サイトとかあったら、どうせ今週も空振りだろ、終盤まで真相はわからんのだろ、と原作未読派からも軽口を叩かれそうな気もするが)。

 最終的な決着は予想の通りにアレでアレでしたし、その真相から逆算すると途中の筋運びも「うーん」という感じもあるんだけれど、まあこの作品は中盤の小エピソードのとてつもなく長めの串ダンゴ構成が身上でしょう。そういう意味では楽しめた(面白かったというには微妙だし、出来がいいとは絶対に言えないが)。
 なお、この作品のバージョンアップが天藤真の『死角に消えた殺人者』だというのは、nukkamさんがそちらのレビューで語ってられる通りですな。あとちょっと佐野洋の『赤い熱い海』にも通じるところのある設定だけど。

 気分的には6点あげてもいいんだけれど、こういう<ソッチの方向に特化して力入れた作品>をあんまりホメちゃいけないよね、ということであえてこの評点。良い意味で、退屈な時間に読むなら最適の作品かもしれない。

No.1 5点 nukkam 2016/02/10 13:15
(ネタバレなしです) 1965年発表の本書はタイトルに「狩り」という言葉が使われていたのでアクションを伴うサスペンス小説かと最初思ってましたが地道な捜査の本格派推理小説でした。走行中のバスが散弾銃で狙撃されて海中に転落、乗っていた27人全員が死亡という大事件が発生します。警察の捜査会議で乗客の1人を殺すための緻密な計画に基づく犯行と判断されます。真に狙われた被害者は誰なのか、被害者の身辺捜査のことを「死人狩り」と命名したのです。犠牲者が27人もいるため関係者(容疑者)も含めるとかなりの人数が登場しますが、一つ一つの捜査は簡単に終わるので意外と読みにくくはありません。ある手掛かりから容疑者を絞り込んでいますが現代の読者にはこの推理はぴんとこないと思います(当時の常識だったのでしょうか?私にはわかりません)。それ以上に気になったのがそもそも捜査の最初であのことを(ネタバレになるので詳しく書けないのですが)考えつかなかったのが不思議でなりません。徳間文庫版では意外性を誉めていますが、個人的には意外でも何でもないと思います(私でさえ可能性として考えたぐらいですから)。ものすごく遠回りして解決に至っているという印象が残りました。


キーワードから探す
笹沢左保
2023年06月
シェイクスピアの誘拐
平均:5.00 / 書評数:1
2018年01月
流れ舟は帰らず 木枯し紋次郎ミステリ傑作選
平均:8.00 / 書評数:2
2000年07月
生存する幽霊
平均:5.00 / 書評数:1
1995年04月
殺したい女
平均:7.00 / 書評数:2
1994年09月
危険な隣人
平均:4.00 / 書評数:1
1993年11月
取調室 静かなる死闘
平均:4.50 / 書評数:2
1992年07月
一方通行
1991年11月
追越禁止
平均:5.00 / 書評数:1
1991年08月
夕暮れ
1991年05月
白い悲鳴
平均:5.00 / 書評数:1
1991年02月
昼下がり
平均:5.00 / 書評数:1
1990年09月
夜明け
平均:6.00 / 書評数:1
1990年07月
アリバイの唄
平均:5.57 / 書評数:7
1990年06月
青春の葬列
平均:6.00 / 書評数:1
1989年05月
霧の晩餐―四重交換殺人事件
平均:6.00 / 書評数:2
1987年11月
真夜中に涙する太陽
平均:4.67 / 書評数:3
1987年01月
ふりむけば霧
平均:5.67 / 書評数:3
1986年11月
血の砂丘
平均:5.00 / 書評数:1
1985年02月
逆転
平均:4.00 / 書評数:1
1984年08月
密会
平均:5.00 / 書評数:1
1983年11月
四十八時間の告発
平均:6.00 / 書評数:1
1983年10月
盗作の風景
平均:7.50 / 書評数:2
1982年12月
魔の不在証明(アリバイ)
平均:4.00 / 書評数:1
1982年07月
悪魔の関係
平均:3.00 / 書評数:1
1982年05月
三人の登場人物
平均:6.00 / 書評数:1
1982年01月
華やかな迷路
平均:5.00 / 書評数:1
1981年09月
どんでん返し
平均:5.50 / 書評数:4
1981年05月
愛人岬
平均:4.00 / 書評数:1
1981年02月
後ろ姿の聖像
平均:5.50 / 書評数:2
1981年01月
悪魔の部屋
平均:5.00 / 書評数:1
1980年12月
沈黙の追跡者
平均:6.00 / 書評数:1
1980年05月
セブン殺人事件
平均:5.67 / 書評数:3
1980年04月
遥かなりわが愛を
平均:6.50 / 書評数:2
1978年07月
求婚の密室
平均:6.67 / 書評数:9
1978年05月
異常者
平均:8.00 / 書評数:1
1976年09月
愛人関係
平均:5.00 / 書評数:1
1976年03月
金曜日の女
平均:4.00 / 書評数:1
1976年01月
他殺岬
平均:5.88 / 書評数:8
1974年12月
真夜中の詩人
平均:6.00 / 書評数:7
1973年01月
闇の性
平均:7.00 / 書評数:1
1972年01月
地獄を嗤う日光路
平均:6.00 / 書評数:1
1971年01月
いつになく過去に涙を
平均:5.00 / 書評数:1
六本木心中(角川文庫、ナショナル出版 版)
平均:8.00 / 書評数:1
雪に花散る奥州路
平均:7.00 / 書評数:1
1968年01月
六本木心中(文華新書 版)
さよならの値打ちもない
平均:6.00 / 書評数:2
1967年01月
東へ走れ男と女
平均:6.00 / 書評数:1
幻の島
平均:6.00 / 書評数:1
明日に別れの接吻を
平均:5.50 / 書評数:2
1966年01月
孤独な彼らの恐しさ
平均:7.00 / 書評数:1
二人と二人の愛の物語
平均:6.00 / 書評数:1
1965年01月
明日まで待てない
平均:6.00 / 書評数:1
誰もが信じられない
死人狩り
平均:5.00 / 書評数:2
1964年01月
火の虚像
平均:6.00 / 書評数:3
1963年01月
赤い氷河
平均:5.00 / 書評数:1
揺れる視界
平均:5.00 / 書評数:1
突然の明日
平均:6.00 / 書評数:4
1962年01月
崩壊の夜
平均:6.00 / 書評数:1
暗い傾斜
平均:6.83 / 書評数:6
1961年01月
真昼に別れるのはいや
平均:6.50 / 書評数:2
泡の女
平均:5.67 / 書評数:3
空白の起点
平均:6.10 / 書評数:10
1960年01月
結婚って何さ
平均:5.67 / 書評数:6
霧に溶ける
平均:7.22 / 書評数:18
人喰い
平均:6.38 / 書評数:13
招かれざる客
平均:6.15 / 書評数:13