皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ ハードボイルド ] その朝お前は何を見たか |
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| 笹沢左保 | 出版月: 1981年01月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 徳間書店 1981年01月 |
![]() 徳間書店 1982年12月 |
![]() KADOKAWA 1989年07月 |
![]() 廣済堂出版 1993年11月 |
![]() 徳間書店 2019年11月 |
| No.1 | 6点 | 人並由真 | 2026/03/18 08:40 |
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| (ネタバレなし)
4年前まで「東洋航空」のジェット機操縦者だったがさる事情から退職し、今は「国内運輸」でトラック運転手の業務に励む35歳の三井田久志。彼はアパートの隣人である27歳の美人・結城淳子とその母ユキエの支援を受けながら、ただひとりの家族である6歳の息子・友彦を養育していた。そんなある日、神戸の女子大生・藤宮陽子の誘拐事件がマスコミの話題となるが、ラジオから流れてきた一般公開された誘拐犯人のひとりらしい女性の声を聴いて親子は驚く。その特徴のある声は、2年前に夫と友彦を置いて蒸発した三井田の妻・沙織のものだった!? 笹沢左保の著作200冊発刊記念として、81年5月に書き下ろし刊行された長編ミステリ。 夜中の仕事が一区切りしたので朝までに何か一冊読みたい気分で、本作の徳間文庫・新装版を手に取った。 タイトルの響きが魅力的で、最初はそれだけ目にして60年代半ばあたりの初期作かと思ったが、実際には前述のとおりそうではない。題名の意味は最後の1ページでわかる(特にミステリ的なネタバレではない)。 家出した妻(実質・元妻)が重大事件の犯人だと息子が哀れだと思い、改めてキーパーソンである沙織の蒸発の軌跡を洗い直す主人公・三井田の物語で、途中で登場するちょっと面白い作中ポジションの助演キャラの活躍もふくめて、筋運びは快調。例によってリーダビリティはすこぶる高い。ポッキリ2時間で読み終えられる。 記念作だけあって(?)さすがにエロは控えめだが、読者視点での推理要素はほぼ皆無。三井田の動向に応じて与えられる情報を読み手が共有するタイプの作品だが、終盤に一応の大きなサプライズは用意されている。ただまあ笹沢の手癖で、読みなれている読者ならなんとなく察しがついてしまうかも。 ただそれでもラストをやや強引にも、剛球のヒューマンドラマにもっていく作者の職人ぶりはさすがで、その辺のスピリットは私立探偵小説でも捜査小説でもないんだけれど、かなりハードボイルドの趣が濃い。クライマックスの展開と言うか描写もいい感じに王道。 受け手がこの設定や導入部から何を期待するか、によってかなり評価が違うかも、という気もするが、個人的には良い意味で笹沢作品らしい妙味が味わえた。佳作。 |
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