海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

[ サスペンス ]
愛人関係
笹沢左保 出版月: 1976年09月 平均: 5.00点 書評数: 1件

書評を見る | 採点するジャンル投票


光文社
1976年09月

光文社
1984年10月

No.1 5点 人並由真 2023/06/19 17:26
(ネタバレなし)
 大手商社「日興倉石」に勤務する23歳の美人OL・剣城夕子は、三百年近くも続く老舗の和菓子屋「夕月堂」の長女でもあった。夕子の父で夕月堂の当主でもある54歳の久太郎は、彼が眼をかけてる若手菓子職人・磯部達也と夕子が夫婦になって店を継いでくれることを望んでいた。だが夕子にはそんな気はまるでなく、それどころか彼女は別の部署の同僚で妻帯者でもある35歳の青年・伊集院夏彦に2年前に処女を捧げ、それ以来ずっと実家にも世間にも秘密の愛人関係を続けてきた仲だった。そんななか、夕月堂が同家とはまったく関係のなさそうな殺人事件に巻き込まれ? さらに夕子と伊集院の愛人関係にも、不測の事態が生じた。

 日本でいちばん「愛人」というキーワードをタイトルに用いたであろうミステリ作家・笹沢佐保のラブロマン・ミステリの一冊。光文社文庫版で読了。 

 二号や妾はパトロンからお金をもらうが、愛人は心身の純愛で結ばれているから高潔だとか、情人に奥さんと別れて私と結婚してほしいなどという女の欲求は、生活のために体を売る娼婦と同じだとかいうメインヒロイン(主人公)夕子の主張は、大昔に同じ作者の『愛人岬』で、似たようなヒロインの物言いを読んだような記憶がある。ぶれない笹沢ラブロマン。

 ブックオフの100円棚で手にしたら、解説で武蔵野次郎がラストの意外性が印象的とか書いている。それで購入して読んだが、さほどでもない。犯人もストーリーの流れと登場人物の配置、さらには作者の手癖からおおむね予想がつくし。
 ただし途中の細部での話の転がし方は、部分的には曲があってそこそこ面白かった。
 窮状に陥った夕子のため、彼女が秘密にしていた愛人の立場を鼻白みながらも、剣城家の家族がほぼ一丸となるあたりは、この時期の笹沢作品らしい。不器用な家族の絆は、笹沢作品の底流にある文芸テーマのひとつだ。

 評価はこれもまさに「まぁ楽しめた」なので、この評点。


キーワードから探す
笹沢左保
2023年06月
シェイクスピアの誘拐
平均:5.00 / 書評数:1
2018年01月
流れ舟は帰らず 木枯し紋次郎ミステリ傑作選
平均:8.00 / 書評数:2
2000年07月
生存する幽霊
平均:5.00 / 書評数:1
1995年04月
殺したい女
平均:7.00 / 書評数:2
1994年09月
危険な隣人
平均:4.00 / 書評数:1
1993年11月
取調室 静かなる死闘
平均:4.50 / 書評数:2
1992年07月
一方通行
1991年11月
追越禁止
平均:5.00 / 書評数:1
1991年08月
夕暮れ
1991年05月
白い悲鳴
平均:5.00 / 書評数:1
1991年02月
昼下がり
平均:5.00 / 書評数:1
1990年09月
夜明け
平均:6.00 / 書評数:1
1990年07月
アリバイの唄
平均:5.57 / 書評数:7
1990年06月
青春の葬列
平均:6.00 / 書評数:1
1989年05月
霧の晩餐―四重交換殺人事件
平均:6.00 / 書評数:2
1987年11月
真夜中に涙する太陽
平均:4.67 / 書評数:3
1987年01月
ふりむけば霧
平均:5.67 / 書評数:3
1986年11月
血の砂丘
平均:5.00 / 書評数:1
1985年02月
逆転
平均:4.00 / 書評数:1
1984年08月
密会
平均:5.00 / 書評数:1
1983年11月
四十八時間の告発
平均:6.00 / 書評数:1
1983年10月
盗作の風景
平均:7.50 / 書評数:2
1982年12月
魔の不在証明(アリバイ)
平均:4.00 / 書評数:1
1982年07月
悪魔の関係
平均:3.00 / 書評数:1
1982年05月
三人の登場人物
平均:6.00 / 書評数:1
1982年01月
華やかな迷路
平均:5.00 / 書評数:1
1981年09月
どんでん返し
平均:5.50 / 書評数:4
1981年05月
愛人岬
平均:4.00 / 書評数:1
1981年02月
後ろ姿の聖像
平均:5.50 / 書評数:2
1981年01月
悪魔の部屋
平均:5.00 / 書評数:1
1980年12月
沈黙の追跡者
平均:6.00 / 書評数:1
1980年05月
セブン殺人事件
平均:5.67 / 書評数:3
1980年04月
遥かなりわが愛を
平均:6.50 / 書評数:2
1978年07月
求婚の密室
平均:6.67 / 書評数:9
1978年05月
異常者
平均:8.00 / 書評数:1
1976年09月
愛人関係
平均:5.00 / 書評数:1
1976年03月
金曜日の女
平均:4.00 / 書評数:1
1976年01月
他殺岬
平均:5.88 / 書評数:8
1974年12月
真夜中の詩人
平均:6.00 / 書評数:7
1973年01月
闇の性
平均:7.00 / 書評数:1
1972年01月
地獄を嗤う日光路
平均:6.00 / 書評数:1
1971年01月
いつになく過去に涙を
平均:5.00 / 書評数:1
六本木心中(角川文庫、ナショナル出版 版)
平均:8.00 / 書評数:1
雪に花散る奥州路
平均:7.00 / 書評数:1
1968年01月
六本木心中(文華新書 版)
さよならの値打ちもない
平均:6.00 / 書評数:2
1967年01月
東へ走れ男と女
平均:6.00 / 書評数:1
幻の島
平均:6.00 / 書評数:1
明日に別れの接吻を
平均:5.50 / 書評数:2
1966年01月
孤独な彼らの恐しさ
平均:7.00 / 書評数:1
二人と二人の愛の物語
平均:6.00 / 書評数:1
1965年01月
明日まで待てない
平均:6.00 / 書評数:1
誰もが信じられない
死人狩り
平均:5.00 / 書評数:2
1964年01月
火の虚像
平均:6.00 / 書評数:3
1963年01月
赤い氷河
平均:5.00 / 書評数:1
揺れる視界
平均:5.00 / 書評数:1
突然の明日
平均:6.00 / 書評数:4
1962年01月
崩壊の夜
平均:6.00 / 書評数:1
暗い傾斜
平均:6.83 / 書評数:6
1961年01月
真昼に別れるのはいや
平均:6.50 / 書評数:2
泡の女
平均:5.67 / 書評数:3
空白の起点
平均:6.10 / 書評数:10
1960年01月
結婚って何さ
平均:5.67 / 書評数:6
霧に溶ける
平均:7.22 / 書評数:18
人喰い
平均:6.38 / 書評数:13
招かれざる客
平均:6.15 / 書評数:13