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[ 時代・捕物帳/歴史ミステリ ]
流れ舟は帰らず 木枯し紋次郎ミステリ傑作選
笹沢左保 出版月: 2018年01月 平均: 8.00点 書評数: 2件

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東京創元社
2018年01月

No.2 8点 蟷螂の斧 2022/12/27 09:20
ハードボイルド的キャラクターの紋次郎と思いやりのある紋次郎とが味わえる本格ミステリーです。
①赦免花は散った 8点 「甘ったれちゃあいけませんぜ」・・・「マイ・ベスト・ミステリーⅣ」で書評済
②流れ舟は帰らず 8点 「流れ舟は二度と元のところへ帰っては来ねえもんなんでござんす」家出をした息子を探す父娘に振りかかる災難・・・身代わり
③女人講の闇を裂く 8点 「堅気のお人に教えるような名めえは、持ち合わせておりやせん」今夜、与七郎が孫兵衛に復讐するため町にやってくるという噂が・・・仕掛けられた罠
④大江戸の夜を走れ 7点 「近所の手前も、あろうというもんじゃあござんせんか」(濡れ場)盗人・為吉が死刑になる。その妻は病床で逢いに行けない。紋次郎は伝言を頼まれるが・・・千五百両の隠し場所 
⑤笛が流れた雁坂峠 6点 「余計なことに、関わりたくありやせん」夜逃げした女郎6人を関所を避け山越えさせる羽目に・・・その裏には 
⑥霧雨に二度哭いた 7点 「何から何まで、あっしの知ったことじゃあござんせんよ」娘から両親が殺されるから助けてくれと懇願される。その3人が殺された・・・双子の姉妹
⑦鬼が一匹関わった 7点 「無理な注文でござんすよ」足が化膿して歩けない男から娘を弟の所まで連れて行ってくれと・・・娘の出生 
⑧旅立ちは三日後に 8点 「火の粉の降りかからねえ暮らしってのは、夢のまたその夢なんでござんすよ」怪我をした紋次郎。手当をしてくれた農家で腰を落ち着かせてもいいかと・・・盗難事件 
⑨桜が隠す嘘二つ 7点 「関わりががあるとでも、言いなさるんですかい」娘が殺され、紋次郎が下手人として・・・紋次郎の弁明
⑩明日も無宿の次男坊 7点 「あっしに関わりねえことでござんすからね」毒キノコを食した無宿者が助けを求めて・・・跡目相続人

No.1 8点 メルカトル 2022/06/23 22:38
三度笠を被り長い楊枝をくわえた姿で、無宿渡世の旅を続ける木枯し紋次郎。己の腕だけを頼りに、人との関わりを避けて孤独に生きる紋次郎だが、否応なしに旅先で事件に巻き込まれてゆく。幼なじみの身代わりとして殺人罪を被って島送りになった紋次郎が、島抜けに参加して事件の真相を追う第1話「赦免花は散った」。瀕死の老商人の依頼により、家出した息子を探す「流れ舟は帰らず」。宿場を脱走した女郎たちとの逃避行の意外な?末を綴る「笛が流れた雁坂峠」。ミステリの巨匠が描く、凄腕の旅人にして名探偵が活躍する珠玉の10編を収録。
Amazon内容紹介より。

笹沢佐保と言えば木枯し紋次郎、木枯し紋次郎と言えば長い楊枝、左頬の古傷、「あっしには関わりのねえことでござんす」という決め台詞。と思っていましたが、十編の短編の中でその台詞は二度しか書かれていませんでした。第一話でシリーズ最初の作品『赦免花は散った』を読んだ後、そのミステリ性の高さに驚きました。他の作品も多かれ少なかれ骨格がミステリであったり、何らかの仕掛けやトリックが施してあったりと、流石はミステリ作家の書く時代小説だと感心しました。しかも全ての作品が秀作や傑作に属すると思われ、長かったけれど少しもダレルことなく読み終えました。

個人的にはやはり先述の『赦免花は散った』がベストかなと思います。あの紋次郎がまさかの島流しに遭っていた話で、この経験が後の紋次郎の言動に影響してくると思うと、かなり重要な一作ではないかと。そして私が最も好きなのは思わず涙した『旅立ちは三日後に』です。漸く訪れた平穏な日々が遂に自分にも巡って来たのかと思った矢先に・・・。とても優しくて哀しい作品です。
紋次郎は一見冷たい男だと勘違いされがちですが、決してそうではなく情に厚い一面を持っている人間なのです。ただ自分が渡世人だという自覚から、寡黙になりがちで人と関わりを持つのを恐れているのでしょう。

ドラマでは紋次郎が泥臭く戦うのに対して、原作では本物の剣豪として描かれており、敵が何人いようが華麗な身のこなしですんなりケリを付けてしまいます。しかし、ドラマも原作も紋次郎の格好良さは変わりませんね。


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笹沢左保
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