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[ サスペンス ]
泡の女
笹沢左保 出版月: 1961年01月 平均: 5.67点 書評数: 3件

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東都書房
1961年01月

芸文社
1965年01月

講談社
1981年08月

徳間書店
1990年12月

徳間書店
2023年08月

No.3 7点 ねここねこ男爵 2024/02/08 11:38
ネタバレ気味です。

笹沢左保版「幻の女」ということで期待しましたが、死刑執行が迫る中懸命に調べても調べても手がかりがすり抜けていく…といったハラハラ感のある「幻の女」と比べて、状況がさほど深刻でもなくサクサク重要な情報が集まってくる本作はやや拍子抜けです。またメイントリック?は作者の他作品にも例があります(作者のお気に入りだったのでしょう)。
ただ流石の筆力で読ませるし、最後のどんでん返し(というか構造の変化)はお見事でした。個人的にはかなり好きです。

No.2 6点 人並由真 2020/07/19 04:53
(ネタバレなし)
 その年の12月。統計庁に務める共働きの若い女性・木塚夏子は、茨城の大洗にて、実父で小学校の校長、木塚重四郎が死んだとの連絡を受ける。早速、婿養子で同じ庁に勤務する夫、達也とともに、現地にむかう夏子。だが当初は首吊り自殺に見えた父の死には不審点があり、さることから達也は地元の警察に嫌疑を掛けられた。やがて達也は、重四郎が死亡した当夜のアリバイが証明できず、殺人容疑で逮捕されてしまう。夫の無実を信じる夏子は、検察庁が起訴して、職場の懲戒免職処分を受ける前に、達也の身の潔白を晴らそうとするが。

 1961年10月に東都書房から「東都ミステリー」の13巻目として、書き下ろし刊行された長編。島崎博の書誌情報(1964年版)によれば、作者の11番目の長編作品となる。

 評者は今回、大昔に入手してそのまま放っておいた、宝石社の叢書「現代推理作家シリーズ」の笹沢左保編(1964年4月刊行)で読了。
 この叢書「現代推理作家シリーズ」は一冊しか持っていないが、仕様が後年の「別冊幻影城」を思わせるムック的な編集で造本。今にして気づいたがこれって、日本出版史においてかなり先駆的な、ミステリムック(風)の叢書だったかもしれない。
 具体的にくだんの笹沢佐保編には、本長編『泡の女』とあわせて『六本木心中』『不安な証言』『反復』の初期3短編を併録。ロングインタビューこそないが、巻頭に作者のポートレイトを載せて、巻末に数本の評論、作者による自作群へのコメント集、詳細な書誌情報などを掲載する「現代推理作家シリーズ」の構成は、正に「別冊幻影城」のプロトタイプの趣がある。編集の主幹はもちろん島崎博。

 それでこの「現代推理作家シリーズ」版『泡の女』の本文には、作中に登場する実在の場所のロケーション写真が多数掲載。たぶん1960年代当時の都内各地や大洗の雰囲気の一端を記録した貴重な? 資料にもなっている。そういった編集のありようも物語そのものへの臨場感を高め、おかげで楽しく本作を読めた。
 
 ミステリとしての設定・大筋パターンは、ほぼ、まんまアイリッシュの『幻の女』の縮小再生産という方向。
 しかし夫の無実を晴らすにしても、現時点で処刑されるばかりの死刑囚になっているわけでもなく、今後の生活・人生を考えて早いうちに状況をよくしておきたいという思惑で動いてるので、なんかまだまだ余裕があるうちのワガママ、という感じがしないでもない(まあたしかに、リアルさを感じる思考だが)。サスペンス、テンション的な訴求力はギリギリだろう。
 
 ストーリーそのものの語り口は例によって滑らかだし、21世紀の今なら絶対に個人情報保護法に触れるような情報もホイホイ入手できてしまう大らかさも、まあ昭和ミステリの味だね……という感じ。
 でもってそんな風にちょっと舐めながら(?)読み進んでいたら、最後は結構、足元をすくわれた(!)。
 真相への道筋が全般的にチープな感触はあるものの、終盤の反転ぶりは、それなりにホメておきたい出来。少なくとも佳作ぐらいには、評価してもいいでしょう。

 ちなみにこの叢書の巻末の、前述した作者の自作コメントを覗くと、この作品については「(前略)推理小説ファンには失敗作といわれましたが、一般読者からの評判はこれが一番良かったようです。好きな作品です」とのこと。
 素直に読むなら、それなりに広い裾野の読者の支持があり、作者も気に入っていたらしい作品ということになる(まあ、本作を本叢書に入れてもらったことを前提にした、リップサービス的なコメントかもしれないが)。
 評者も個人的に、良い意味での笹沢カラーがにじみ出た作品だとは、思うのですよ。

No.1 4点 蟷螂の斧 2013/01/22 20:42
(タイトル・女⑨)主人公・夏子の夫は、父親殺しの容疑者として拘束されてしまう。夏子は、夫の無実を信じ、起訴処分までの3日間奔走する。無実を晴らすためには、父親の醜聞を世間にさらさなければならない・・・。想定内の結末で、本格色は薄く、女性心理を描いたサスペンスに分類されると思います。


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