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[ 本格/新本格 ]
真夜中の詩人
笹沢左保 出版月: 1974年12月 平均: 6.12点 書評数: 8件

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中央公論新社
1974年12月

角川書店
1984年01月

廣済堂出版
1994年03月

徳間書店
2022年04月

No.8 7点 斎藤警部 2024/10/02 00:40
「ありとあらゆる野菜、それに肉からとったスープを、レモンとお醤油で味付けしたのよ」

まずこのタイトルは一体何なんだ? 。。。 と戸惑う間も無く、激烈に面白い異形の誘拐物語が始まった。 攫われたのは二人、富豪の子と普通の子。 どちらも身代金要求無し(!!)。 やがて富豪の子だけ無傷で返還。。 一体何なんですか、それ?   雰囲気は普通にサスペンスタッチだが、企画性くっきりの強い謎を次々にババーンと打ち出して来る所は本格/新本格風。 そこへ来て、ストーリーの程よい錯綜ぶりはハードボイルド(ロス・マク?)調かも知れん。

序盤から、まるで何かのアリバイ工作でもその裏に疑わせるような、謎の高速展開。 意外な「被害者」。 疑惑連鎖の渦中へとロジック手探りのセンサーを伸ばす探偵役/主人公?(普通の子の母)の、所々豪快わんぱく過ぎるエピソードが威勢よく降り注いでくれちゃったりなんかしてね、しかも時々弱気の弱虫で。 意外な人が頼りになる探偵役2(あるいは1?)として爆浮上したりね。 いっくら何でもこいつはメタ怪し過ぎるぞォーと光りまくる登場人物の、やたら膨らむキーマン性にも注目だ。 とにかくストーリーにいちいち機敏な動きがあって面白いんだ。

事の大元に位置した “事象“ (諸悪の根源)の、あまりに馬鹿げた悲劇性。 そこから工夫を凝らして繰り出された、ちょっと凄い、豪快とも言える真相。 振り返って見りゃあ大ヒントもゴロゴロしてたわけだが、、 分からなかったよねえ。。 アラは多い。シュっと締まってないネジレや穴も見当たるが、読んでてとにかく面白い。仕掛けて攻める意気を感じる。

最後に、これ言うと鋭い人にはネタバレかも知れないけれど ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 最終章が終わった後、マスコミを沸騰させること必至の大スキャンダルと、 それに翻弄される登場人物たちを思うと ・ ・ ・

No.7 6点 人並由真 2024/04/25 07:58
(途中から、ネタバレあり。注意)
 誘拐ものの秀作という定評? の作品。
 笹沢作品のなかでは結構、量感のある紙幅だが、例によってスラスラ読める。
 ある程度の大きな仕掛けは見えるが、ラストのサプライズは効果的。

 で……。
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(ここからネタバレ)
 真相には驚いたが、犯罪者側の計画を聞かされたのちに疑問が湧く。
 
 こういう犯罪計画だったら、麻知子の方から真紀に接近し、親しくなるのは悪手だったんじゃないか? 具体的には「和彦」の帰還後、「良かったですね。お祝いに、お坊ちゃんのお顔を拝みにお伺いしても、よろしいでしょうか」とか真紀に言われたら、どうするつもりだったのか。最終的に遠方に逃げようとはしているが、それまでにヤバいタイミングはそれなりにあったのではないか、と思うが。それまでに真紀が動かないという何らかの確信でもあったのか?
 あと、やはり「和彦」の帰還後、月単位で「誘拐」されていたんなら、主治医の産婦人科なり小児科医なりの健診があるだろうに、その時点で別人と判明するのではないか?
 さらに言うなら、警察レベルならさすがに子供の顔写真は要求してるだろうに、捜査陣は帰って来た子供の顔の確認もしなかったのか?
 本来ならいくつものイクスキューズが必要なところ、作者もひとつひとつ、シロートでも思いつく疑問に応えるのが面倒くさくなって、うっちゃっている感じ。
 トータルではまあまあ面白かったが、出来のよい作品ではない。

No.6 5点 ボナンザ 2023/02/11 18:50
真相は笹沢らしく中々だが、そこに行きつくまでが主人公を主婦にしたせいで冗長になっているのは否めない。

No.5 6点 パメル 2017/11/13 01:08
幼児誘拐事件が発生する。普通ならここで、犯人と警察との身代金の受け渡しなどでの駆け引きで、楽しませる展開なのだろうが、この作品は毛色が違う。
犯人は、何も要求しないどころか、さらに誘拐事件が発生するという展開で惹きつけられる。
ストーリーは進行するとともに、過去の人間関係が浮かび上がり、少しづつ謎が明らかになっていくが、肝心の誘拐の目的はなかなか見えてこない。
この作品は、誘拐された母親が探偵役となっているが、些細な手掛かりから真相に迫っていく姿は魅力的。
意外性があるといえばあるのだが、結末はあっさりしていて衝撃度は低い。

No.4 6点 蟷螂の斧 2016/09/05 14:05
誘拐サスペンスものです。メインは動機探しになるのでしょうか。3分の1くらいで大筋は見えてくるのですが、真の動機がうまくカムフラージュされて分からずじまいでした。ヒロインの妹の恋愛に絡んでくる男性陣がいま一つ効果的でないところが残念な点です。
余談ですが、岐阜の景勝「中山七里」が出てきました。中山七里氏のペンネームは岐阜出身でここからきていることを知りました。

No.3 7点 kanamori 2010/06/29 18:07
初めて読んだ笹沢作品ということで、思い入れがあり個人的に一番印象に残っている誘拐ミステリの秀作です。
当時は、誘拐の動機の斬新さとサスペンス溢れる展開に結構満足したように思います。
再読していないので、今読んだ評価はわかりませんが。

No.2 6点 teddhiri 2009/03/16 11:50
 この作者の作品の中でも代表作に挙げられているらしい作品。 
 テンポは非常によかったです。ただ身代金要求のない誘拐を扱っているのですが、真相が何となく読めてしまったため、同じ作者の誘拐もので恐ろしくひねくれた真相の「他殺岬」に比べるとサプライズという点では数段劣る気がしました。
 そのため代表作というほどの代物ではないと感じました。

No.1 6点 こう 2008/08/17 03:45
 誘拐を扱ったミステリです。冒頭で大手デパートの孫が誘拐されたことが説明され、半月後ヒロインの主婦が同様の手口で息子が誘拐される。いずれも犯人から身代金の要求が全くなく時間だけが過ぎてゆく。その後突然ヒロインの母親がひき逃げされ死亡する。犯人は見つからず、ヒロインは息子を見つけるために真相を探ってゆく、というストーリーです。
 よく考えられたストーリーですが最終的にヒロインは真相にたどり着くわけですが個人的には警察が無能すぎるとしか思えませんでした。ヒロインの最終的な推理がすべて正解なのも御都合すぎる気がします。
 また犯人の一連の行動も納得しづらいです。2つの事件の関連性があからさまだったためにヒロインの追及が生まれたわけですがそもそも関連性をアピールする必要性が全くなく不自然でした。
 そもそもの誘拐事件の動機は興味深いものですがメインキャストのヒロインの家族以外の登場事物たちのの心情、行動は理解しづらいです。犯行も杜撰と思いました。
 動機については他にはないものでストーリーも読みやすいと思いますが個人的にはヒロインにもあまり共感できずまあまあ、といった所でした。


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