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[ 本格/新本格 ]
求婚の密室
ルポライター・天知昌二郎
笹沢左保 出版月: 1978年07月 平均: 6.67点 書評数: 9件

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光文社
1978年07月

光文社
1984年12月

徳間書店
1999年02月

光文社
2009年01月

徳間書店
2022年08月

No.9 7点 ミステリ初心者 2022/09/25 11:35
ネタバレをしております。

 非常に読みやすい文章とプロットですいすい読み進められ、あまり時間をかけずに読了できました。
 金も権力もある人物が曰く付き(?)な関係の者を多く招待したパーティーで、場所を移さず割とすぐに殺人事件が起こります。余計な部分が少なく、テンポもよかったです。
 途中、法廷ではないですが、2人の婿候補による推理バトルが楽しめます(笑)。ページ数や展開からそれが真相ではないことは予想がつきますが、こういうものが取り入れられていると事件の概要がスッと頭に入ってくるのでうれしいですね。

 推理小説部分も優れていました。
 密室というだけあって、どうやって殺したか?がメインの謎になってきます。共犯であり、子供を使っているので、ややアンフェアなのかもしれませんが、真相を読んだときは思わず膝を打ちました(笑)。ミネラルウォーターのボトルがプラスチックであったことはもっともっと考えなければなりませんでした(笑)。60歳の被害者が人2人分(しかも若子はやや肥満)を壁づたいとはいえ肩車できたは疑問ですが、これは私の思考の盲点をつかれました!
 私は富士子の特殊な生い立ちやキャラクター、絵になるとかそういうことで犯人だと決めつけておりました(笑)。しかし、アリバイや密室の謎がまったく解けず、白旗でした(笑)。私もロープで脱出したかと考えましたが、途中の推理バトルでその説が登場してがっかりと安心を味わいました(笑)。

 総じて、本格度の強い推理小説で満足しました! 読みやすく、密室らしい密室、意外な(?)犯人と意外な殺害方法。少々ロマンチックな要素もありましたね…私にとってはベッドシーンがしつこくてもう少し軽いほうがよかったですが(笑)

No.8 8点 ねここねこ男爵 2020/04/13 21:49
少しネタバレ風味です。

中盤のメインである推理対決は人によってはやや退屈か。残りページ数からして真相が暴かれるはずがないというのは分かりきっているので…w
密室とその周辺の仕掛けがあまりにも素晴らしい。特に密室は唯一無二。どこかで見た評価だが、「人を殺さなくてはならないのなら、自分の手を汚さずに済ませるのが望ましい」というこの作者の作風が密室でも活きている。
この時代の日本の推理小説はトリックのためのトリックが多く、必然性は「探偵への挑戦」「犯人がミステリマニア」「密室だから自分は犯人じゃない」といったしょうもないこじつけばかりなのだが、本作はそのあたりを見事にクリアしている。
ダイイングメッセージなんて飾りです。

No.7 7点 パメル 2017/04/08 01:02
使い古されたトリックの焼き直しや安易な機械トリックに飽き飽きしていた作者が初めて密室トリックに挑戦した意欲作
策謀と駆け引きが張り巡らされて陰湿で悲劇的な人間模様が描かれている
ダイイングメッセージに今一つ納得出来ないがフーダニットとして意外性もあるしある人物が事件に関与していたという真相はこれぞ盲点といった感じで驚かされた
ここまで上手くいくかなという疑問もあるが密室トリックも独創的で良いアイデアだと思う

No.6 5点 蟷螂の斧 2016/08/26 17:27
パーティの招待客13人ですが、事故が起こっているにも拘わらず、4~5名以外の描写や会話がほとんどなく、いてもいなくてもいいような感じで、小説として非常に異質なものを感じました。また「心中説」の章が冗長でしたね。読者も、あり得ないと思っているようなことを、長々と説明されても・・・といったところです。ダイイング・メッセージもいま一つ。密室も完全な密室ではなく、あまり興味が湧かなかったです。まあ、本作のアイデアはオリジナリティがあり、その点は認めますが・・・。それより、どのように二人が水を飲んだのか(飲ましたのか)が本作では白眉でした。もっと登場人物(生前、女性スキャンダルを仕組んだ教授、助教授、女本人、その恋人)を活かしながら、アリバイ崩しに重点を置き(ページを増やし)、そこから浮かび上がってくる犯人像!とした方がインパクトがあったように思います。真相などは気に入っているのですが、全体にちぐはぐ感が残り、やや辛目の採点となりました。

No.5 6点 nukkam 2016/07/04 12:12
(ネタバレなしです) 笹沢左保は多作家ゆえに簡単にアイデアが浮かぶと思われているようですが創作力が落ちて壁にぶち当たった時期もあったそうです。一世を風靡した木枯し紋次郎シリーズに代表される時代小説家として復活するのですがミステリーへの意欲も再び湧いてきたらしく、1978年発表の天知晶二郎シリーズ第2作の本書は堂々たる本格派推理小説で密室に推理合戦と謎解き好き読者にはたまらない趣向が用意されています。密室トリックは解くのも実行するのも難易度が高いと思いますがタイトルにわざわざ使うだけあってよく考えられています。作者が目指した「ロマンとムード・サスペンスの味つけ」も(好き嫌いは分かれるかもしれませんが)効果的です。

No.4 7点 はっすー 2016/02/22 23:52
有栖川氏の密室図鑑から知り読みました
密室トリックは個人的には大好物…なかなかエゲツないなぁ…
ダイイングメッセージはふーん…というレベル
まぁダイイングメッセージにはそもそも期待しないのでそこまで作品としてマイナスにはならなかった

No.3 8点 ボナンザ 2014/04/07 23:04
国内の密室ものとしてはかなりレベルが高い部類だろう。

No.2 7点 E-BANKER 2013/03/09 22:42
1978年発表。作者が「久々に本格ミステリーに取り組んだ」という位置付けの作品。
探偵役を務めるのは「他殺岬」にも登場したルポライターの天知昌二郎。

~東都学院大学教授・西城豊士は、自らの誕生日を祝うため軽井沢の別荘にルポライターの天知昌二郎をはじめ、十三人の男女を招待した。西城はここで娘・富士子の婚約を発表するつもりでいた。だが、パーティーの翌朝、密室状態にあった離れの地下室で、西城夫婦の服毒死体が発見される。床にはWSの文字が残されていた・・・。ダイイング・メッセージと密室の謎に挑む会心の本格推理小説~

本格ミステリーとしてのギミックを詰め込んだような作品。
そういう意味では作者の面目躍如というべきなのだろう。
60年代はじめに、「霧に溶ける」や「人喰い」という代表作を発表した作者だが、トリックやプロットの限界を感じ、しばらくこういう手の作品から遠ざかっており、ようやく本格ミステリーに「復帰」したのがこの頃ということらしい。

紹介文のとおり、密室とダイイング・メッセージ、他にも意外な犯人やE.クイーンばりの「操り殺人」など、本作は本格好きの読者の心をくすぐる趣向に満ちている。
なかでも「密室トリック」は相当レベルが高い。
堅牢な鉄扉と外から決して開けられない南京錠、天窓はあるが人の身長をはるかに超える高さ・・・。鉄壁とも思える密室状況を打ち破るトリックは見事。無理がないこともないが(○○と○○と○○がアレできるのか?)、この着想は素晴らしいの一言。
ダイイング・メッセージはまぁこじつけと言えばこじつけだし、これがあることで逆に真犯人が察しやすくなっている気がする点がマイナスかもしれない。
推理合戦を絡めたフーダニットは、意外な真犯人というどんでん返しをラストで炸裂させるなど、作者の一流の手腕が冴えている。
ただ難を言うなら、手練のミステリーファンにとっては、この「意外性」が逆に「分かりやすさ」に繋がってしまうかもしれない。
(登場人物を見回してみて、コイツが怪しいよなぁーって思っちゃうよねぇ・・・)

でも好きだな、こういう作品。密室トリックだけでも読む価値ありだろう。
難癖を付けるのは容易いが、作者の心意気を買いたい。
(綺麗な薔薇にはトゲがある・・・ミステリーでは言い古された台詞だな)

No.1 5点 2009/01/25 11:39
タイトルにもある密室、クローズド・サークル、ダイイング・メッセージ、バークリーの『毒入りチョコレート事件』をも連想させる推理合戦…
とまあ、作者が久しぶりに徹底的に謎解きの要素をぶちまけてくれた作品です。ダイイング・メッセージの不自然さはともかくとして、密室構成の方法はよくできているのですが、どうもそれほど褒めあげたいという気にならないのです。勝手な思い込みかもしれませんが、笹沢佐保の作風がクローズド・サークル向きではないように感じられるからかもしれません。
ダイイング・メッセージについて言えば、作者自身もそうですね。


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