皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格/新本格 ] セブン殺人事件 |
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笹沢左保 | 出版月: 1980年05月 | 平均: 5.67点 | 書評数: 3件 |
実業之日本社 1980年05月 |
徳間書店 1984年03月 |
勁文社 1997年01月 |
双葉社 2016年06月 |
No.3 | 5点 | パメル | 2021/03/27 09:15 |
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警視庁捜査一課のスマートな刑事・佐々木と所轄署の無骨な刑事・宮本が捜査方針を巡って対立、時には協力して事件を解決してゆくという趣向の連作集。
「日本刀殺人事件」一見当たり前に見えた人間関係の些細な矛盾を突く宮本の推理が見事、伏線が効いている。 「日曜日殺人事件」主夫業に専念する夫と芸能記者の妻。夫が自宅で刺殺される。アリバイトリックだが凡作。 「美容師殺人事件」プロ野球選手と恋人の美容師をめぐる殺人事件。トリックはある設定でバレバレだが、異様な動機に驚かされる。そんなに上手くいくとは思えないが。 「結婚式殺人事件」ホテルで結婚式に出席していた刑事が逃亡中の凶悪犯に殺される。ホテルの密室状況とその真相の解明がユニークだが意外性を狙いすぎでは。 「山百合殺人事件」殺人現場に残された山百合をめぐる謎。凡作。 「用心棒殺人事件」タレント夫婦の娘が強盗を撃退して時の人に。だが、強盗の相棒が復讐のため娘を狙っているらしい。奇抜な殺人トリックと捻りの効いた動機が上手い。 「放火魔殺人事件」連続放火事件が発生するが、途中から女性の予告電話が入るように。動機の意外性に驚かされる。 刑事の名字が佐々木と宮本ということで、歴史上の人物、佐々木小次郎と宮本武蔵に例えられているが、そのデコボコぶりの扱いが中途半端で十分に生かされていないのが残念。 |
No.2 | 6点 | 斎藤警部 | 2016/11/30 00:35 |
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最近シャレオツな新刊で気になってたんだけど、おっとコレかなり前に読んだヤツじゃん、とE-BANKERさんの書評を読んでやっと気付きました! リパッケージされちゃってねえ。でも昔の、やたら美化された二人の主人公刑事が表紙の、平成初期っぽいのも味わい深かったっすね。 まァ読み捨て連作短篇でしたけど、百円で買って五円くらいで売っちゃいましたけど、面白かったですよ。いい意味でほどほどの面白さ。ライヴァルと呼ぶには信頼し合い過ぎの二人の刑事像が絶妙に良く描けています。その人物描写に絞って言えばかなりの高得点。ほんと、歴史のあるシリーズ物みたいです。 |
No.1 | 6点 | E-BANKER | 2016/10/27 22:17 |
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1980年発表の連作短篇集。
~新宿淀橋署の宮本刑事部長と本庁から来た佐々木警部補。年齢も容貌も経歴も好対照のふたりは、その名前から「宮本武蔵と佐々木小次郎」に例えられれるライバルどおし。そんな異色の凸凹コンビが七つの難事件に挑む~ ①「日本刀殺人事件」=成金で日本刀収集が趣味の男がその日本刀で惨殺される事件が舞台。仲の悪い息子という格好の容疑者がいるのだが、鉄壁のアリバイがあって・・・という展開。一見すると動かない事実の裏に実は・・・というよくある展開。 ②「日曜日殺人事件」=今で言う“W不倫”状態の男女。その女の亭主が殺される事件が発生。これもアリバイが問題となるのだが、それよりも“釣り合いの取れない夫婦”の問題がクローズアップされて・・・。 ③「美容師殺人事件」=元高校野球のスター選手。だがプロ入り後は鳴かず飛ばずの投手・・・。そんな男に千載一遇のチャンスが到来! しかし付き合っていた美容師の女性が自宅で不慮の死を遂げる。これは・・・最初から予想できた結末。 ④「結婚式殺人事件」=結婚式会場のホテルに逃げ込んだ凶悪犯。しかし、警察が踏み込んだホテルから彼は忽然と消え失せる。しかも別人の死体を残して・・・。本作で唯一「密室」がテーマとなる作品なのだが、トリックそのものはどうってことない。 ⑤「山百合殺人事件」=宮本刑事が拘った現場に残された「山百合」がテーマとなる一編。最後にはまさかの真犯人が詳らかにされるのだが・・・。 ⑥「用心棒殺人事件」=芸能人である両親の子供にして目立たない普通の人間として育った娘。彼女がある事件をきっかけにスポットライトを浴びたとき、事件の幕が開けられた・・・。これも何というか逆説的。 ⑦「放火魔殺人事件」=決まった日に新宿区内で発生する放火事件。しかも犯人から警察へ予告までしてくるというオマケ付き。偶然ある女性と知り合ったふたりの刑事はある事実に気づくのだが・・・。これも哀しい真相だな。 以上7編。 本作も書店で派手なポップ付きで平積みされていた作品。 なのだが、それほどでもなかったかなというのが正直な感想。 面白くないわけではないんだけど、至って普通の作品集といった感じだ。 (いい意味でオーソドックス、とフォローしておく) どの作品もそれなりに意外な結末が用意されているし、駄作と評すべきものはなかった。 それが作者の力量というやつだろう。 宮本=佐々木の絡み合いも、妙に安定感があるというか。まるで長年読み継いできたシリーズという雰囲気。 (個人的には④がベストかな。次点は⑥。あとは横並びという感じ) |