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[ 本格/新本格 ]
血の砂丘
笹沢左保 出版月: 1986年11月 平均: 5.00点 書評数: 1件

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光文社
1986年11月

光文社
1991年12月

日本文芸社
1998年08月

No.1 5点 人並由真 2021/09/02 15:27
(ネタバレなし)
 かつて大企業「船津屋」の現社長・船津久彦の妻だった30歳の美女・能代三香子は、2年半前に飲酒運転で人を死なせたことから実刑を受けて妻の座を追われた。だがその事故の裏には、愛人・芙美代を正妻に迎えるため、夫の久彦が仕組んだからくりがあったことを出所後に知る。真実の立証も困難な三香子は、久彦への復讐を考えた。三香子は久彦を狂乱させようと、彼が溺愛する当年4歳の実の娘で、三香子自身の実子でもある千秋を誘拐。もちろん大切に保護した上で、久彦をさんざん苦しめたのちに返すつもりでいた。だがその千秋が何者かにさらに誘拐された! 三香子は、現在の彼女の愛人で復讐計画にはまったく無縁の大企業の常務取締役、そしてミステリマニアの別所功次郎にすべてを告白して、千秋救出の協力を願う。だが三香子と彼女の要請に答えた功次郎の前に、この事態に関連するらしいある殺人事件が?

 昭和61年に「小説宝石」に連載された作品に、加筆して書籍化。

 カッパ・ノベルス版の著者の言葉で作者が自負する通り、二重誘拐という物語の着想そのものは、(ちょっと)面白い。

 ただし鳥取市周辺での殺人事件(これが題名に通じる文芸)との連携がいささか強引だし、肝心の幼女・千秋の隠し場所などもいろいろと無理はあるような……。あと、犯人の意外性もあまりない。

 三香子がハメられた経緯、ある種の漢気からその真実を告白する某・登場人物の描写、そして窮地の中で本気で男と女の絆を固める三香子と功次郎の関係性の進展などは、ああ、いかにも笹沢作品という感じ。特に三香子に深く詫びながら、久彦の姦計を暴露する該当キャラなんかは、自作の渡世人ものの方の影響が感じられるような(評者はそっちの方はまったく読んでないので、あくまで勝手なイメージだが)。

 男性主人公といえる41歳の別所功次郎は割といいキャラだが、そのネーミングが昭和~平成において現実のフジテレビの名物プロデューサーだった別所孝治(べっしょたかはる)を想起させる(第一作アニメ版『アトム』や東映動画の『マジンガーZ』『ゲッターロボ』ほかを担当した人)。
 そういえば笹沢は『木枯し紋次郎』でフジテレビと縁があった。東映動画版『ゲッター』(74年)に「大枯文次」というアニメオリジナルのレギュラーキャラクターが出てくるので、それを知った笹沢がほとぼりが冷めた頃にやり返したのか? と馬鹿馬鹿しい妄想をしたりしてみる。
(「紋次郎」から「郎」を外して「紋次(文次)」にされたから、逆にこっちは「郎」をつけたとか?)

 評点はそれなりに楽しんだけど、6点も微妙だなあということで、この点数で。


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