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[ 本格/新本格 ]
夜歩く
金田一耕助シリーズ
横溝正史 出版月: 1957年01月 平均: 6.86点 書評数: 28件

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東京文芸社
1957年01月

角川書店(角川グループパブリッシング)
1973年03月

KADOKAWA
2001年11月

No.28 10点 持ち 2021/04/26 11:22
いくら完璧と言っても足りないほど感心したミステリは片手ほどある。その中で暗黒を代表するのがこの作品。タイトルだけ取っても酔いしれるほど好きだ。

No.27 9点 虫暮部 2021/01/21 12:06
 おっと凄い。アンフェアな書き方が許される状況をフェアな範囲内で設定する、と言うメタ的なアプローチを横溝正史が試みるとは驚いた。“アンフェア”とはトリックそのものではなく“心理的な虚偽の記述”のことね。この小説の存在自体が、どす黒い悪巧みの証左として、グイッとページの中から立ち上がって来るようだ。読み物として物凄く面白いとまでは言えないが、記述者がへぼ作家なのだから整合性は保たれている。正直なところAC作品よりこっちが上。
 しかし、最初の殺人の凶器の扱いは不自然。そこでおどろおどろの雰囲気作りを優先しちゃうのが横溝か……。

No.26 7点 斎藤警部 2020/07/28 19:10
最後、一気に暴露され迸(ほとばし)る犯罪動機大絵巻、そこに全てのトリック経緯まで凝縮された有無を言わせぬ濁流ぶりが圧巻。ご都合、偶然、綱渡りの露悪的黒光りさえ魅力的。表題も単に夢遊病の件のみならず、そいつが如何に犯罪とその背景要因に絡みついているのかを一撃に突いており、異様な哀れを誘う。 首無し屍体の拡がりある機微は本当に素晴らしいし、振り返れば何たる”苦しい”伏線だらけの水泳大会な事か、こりゃおりも政夫も溺れます。なんとなくネタ知ってるって人も、読んでみたほうがいいです。小説の締まりも良い。金田一さんがちょうど後半分くらいから登場してさっさと大活躍するのは最近の小林悠(川崎フロンターレ)を思わせる、と思ったけどやっぱり余計な犠牲者も複数出してるか。


【ネタバレ】
日本刀を隠した金庫のパスコードの件、フォーシング或いはそれを逆手に取ったトリック(特に後者)かと思ってしまいました。金庫の件は全体的にマジックっぽい不可能興味横溢って事もあった。それより何より、そこで無理して作って捜査を混乱もさせた折角の(?)不可能状況が、アリバイ破り、ひいては真犯人特定まであっさり一気通貫でパス切られてチェックメイトって、ここでは俄然偶然が犯人にとってネガティヴな方向に働いちまったってのが趣き深い。 あ、「蜂谷」って名前はミスディレクション兼目くらましなのか。。


【ネタバレ&逆ネタバレ】
もしかしてだけど、島田某氏『某高評価代表作』のメイントリックって、本作の「実は××二人が両方とも首斬られてた」って部分からパーーンとインスパイアされてたりしないか。。。(妄想)

No.25 5点 雪の日 2020/05/03 21:21
この手のトリックは今ではたくさんあるので、あまり驚かなかった。

No.24 5点 レッドキング 2020/03/11 01:06
思い出した。これを先に読んでたんで、アガサ・クリスティーので驚きがなかったんだ。
「真珠郎」ともども、三津田信三の傑作「首無の如き祟るもの」の源流筋だな。

No.23 7点 ミステリ初心者 2018/07/18 16:38
 自分が過去に読んだ他の横溝作品よりも本格度が高く、楽しめました。


 以下、ネタバレを含む、ちょっと気になる点
 直記の部屋から取り出した日本刀で首をちょん切ったようですが、日本刀である必要があったんですかね? 念密な計画を練ったようだし、もっといい凶器があったのではw
 あと、血のついた凶器をそのまま直記の部屋の部屋においておくのはリスキーでは・・・? 金庫にしまうときも、犯行時間をずらすトリックが矛盾するとは思わなかったんでしょうか? 探偵小説家のサガでしょうか?

 他、細かい不満がありますが、楽しかったです。高木作品に似た雰囲気のものがありましたね!

No.22 6点 HORNET 2017/08/18 20:57
 話題になっているように、海外某作品で物議を醸した「あの手法」を横溝正史が使うとは… 良くも悪くも、イメージではなかったので驚いた。

 ただ、先行の海外某作品は、はっきりと一か所、そのために記述をごまかしている部分があるのに対して、この作品ではそれはない(よね?)。そもそも創作文章の体なので、そういう部分を描いていないというだけのことだが。よって、後発であったこともあって、最後の種明かしでそれほどアンフェアという印象はないのかもしれない。しかし考えようによっては、海外某作品はその「ごまかし」の部分がある意味読者にとってのフェアな(?)手がかりになっているともいえるのだが(とはいえ何といっても最初の試みなので、そんな可能性は一顧だにせず読んでいる読者にとってはやはりアンフェアに感じたこともあるだろう)。

 刀の密閉状況のトリック、首の部分の発見のトリックなどは、その場のちょっとしたことの流れでいくらでも破たんする、綱渡りのような(運に頼る部分の大きい)もののように感じるが、猟奇的な事件、複雑に絡み合う親族関係など、横溝テイストがこれでもかと凝縮されており、全体的には満足できた。

 

No.21 6点 パメル 2017/07/24 13:24
旧家で発生する連続首無し殺人事件に複雑な血縁関係と男女関係が入り乱れ真相をなかなか掴ませてもらえない
その登場人物も夢遊病者・酒乱で刀を振り回す老人・淫蕩な未亡人・佝僂(「くる」せむしの意)など個性派揃いで申し分ない
またケレン味に満ちた道具立ても揃っておりワクワクさせてくれる要素が満載
そして誰もが開けられるはずのない金庫に保管していた刀が凶器として使われていたという不可解さに惹きつけられる
ただ死亡推定時刻の解釈には不満が残るし佝僂に関しては身体的差別用語を文字面だけ残し読み方も意味も記述していないのは不親切に感じる

No.20 8点 名探偵ジャパン 2017/01/23 12:25
「らしからぬ」と言っては失礼ですが、意外なくらい「技巧」に走った一作と映りました。現代の作家が書いてもおかしくありません。
「あのトリック」を使う理由を、作中できちんと示しているというのも好感が持てます(ある一定のところまで、読者が読んでいたものが「事実をもとにした小説(作中作)」であるということを明かさないのは、フェアかそうでないか、意見が分かれるところでしょうけれど)。
「絶対に取り出せなかったはずの凶器」「一回りした首切りの論理」と、メイントリックの他にも見所は満載。
犯人が金田一のことを「ナメきっている」のも、読み終えてから思い返すと痛快です。

No.19 8点 2016/08/30 09:53
ミステリー性も十分、物語性も十分。
制作時期は1948,9年。名作群『本陣』『八つ墓村』『獄門島』『犬神家』『悪魔』などとおおむね同じ、脂ののったころ(1945年~1960年)に書かれています。
良作かと思いますが、やや印象が薄いのは、金田一の登場が遅く、事件周辺の(一人称の私を含む)関係者たちが主人公に見えてしまうからなのかもしれません。

事件が起こるまで多くのページが割かれていますが、その部分のサスペンスは申し分なしです。その前半で関係者の人物像を、種々の事象を交えながら描写し進めていく流れは、そこだけ読んでいても楽しめます。
そして、後半(特に金田一登場後)、登場人物だけを見れば前後で何も変わりませんが、舞台をがらりと変えたのは、読者を飽きさせない絶妙な(ある意味安直な)ワザだと思います。これぞ、ストーリーテラー・横溝という感じがします。

最大に評価できるのは、アリバイトリックやあの真相を含む本格色全般でしょう。あれだけあれば上記作品群に決して負けていません。ただ、いろんな意味で問題や疑問点のある作品ではありますが。

No.18 7点 蟷螂の斧 2016/05/31 06:08
題名「夜歩く」はディクスン・カー氏の作品名(1930)と同じだったので、氏を意識した内容か?と思いきや全く関係ありませんでした。それよりクリスティー氏を意識した作品だったのでビックリ!(笑)。首なしの真相とアリバイトリックは秀逸でした。

No.17 6点 風桜青紫 2016/02/11 16:17
トリックは古典的だけども、それなりに楽しめた。古い作品には古い作品なりの奥ゆかしさがあるということでww。元ネタ(?)と同じく首のない死体ものの作品なんだが、せむし男だの夢遊病だのなんだか乱歩っぽい道具が散りばめられていて、空気もなんだかエログロっぽい。しかし最後のどんでん返しには意表をつかれた。横溝もこんなネタを使うんかい。彬光のあれと同じで、「話題になってるからとりあえず使ってみた」という感じがあるけども、まあ、許容範囲。「八千代は処女だったぜ!」とかいちいち台詞が笑えるし。一風変わった横溝を楽しめたということで6点。

No.16 6点 いいちこ 2015/03/27 20:09
横溝としては本格色の強い作品。
夢遊病を犯行の隠蔽に活かしつつ、凶器である日本刀の保管を巡る状況証拠から真相解明に至る手口は鮮やか。
メイントリックについては、登場人物が少なく、かつ犯人と目される人物が相当に限定的であることから、想定した効果を挙げているとは言い難い。
プロットの相違点も含めて、同じ趣向の高木彬光の作品よりは高く評価。

No.15 6点 ボナンザ 2014/04/08 15:43
本格ものとしては中々完成度が高い。ストーリーがよければ他の代表作に匹敵しただろう。

No.14 8点 りゅう 2011/10/11 19:19
 再読です。ストーリーの一部を覚えていたくらいで、犯人は覚えていませんでした。横溝作品にしては登場人物が少なく、人間関係もシンプル。
 海外の某有名作品と同じトリックが使われていますが、一つの趣向であって、この作品の構成要素の一部に過ぎないと思います。犯人の犯行計画が実に巧妙で、予期せぬ人物からのアシストもあって、謎解きを困難なものにしています。夢遊病者の存在がうまく犯行の欺瞞に結びついていますし、また、誰も触れることができなかったはずの日本刀で殺人が行われたことなど謎の提示も魅力的です。犯人が予測していなかったある出来事(これは逆アシストともいえます)によって矛盾が生じているのですが、それを指摘する金田一耕助の推理も鮮やかでした。

(完全にネタバレをしています。要注意!)
 最初の蜂屋殺しの手法に若干疑問があります。犯行に使った日本刀は、直記が父親から奪って自室のベッドの下に隠していたものですが、犯人はどうやってその場所を知ったのでしょうか。また、犯人に首切りを行うような時間があったかどうかが文章を読むだけではわかりませんし(この真相であれば致し方ないとも言えますが)、犯行現場のはなれまで日本刀を運ぶのは目撃される危険性が高いと思います。
 蜂屋と守衛、八千代とお藤、直記と屋代、肉体的条件が似ている人物がこれほど揃うというのもちょっと出来過ぎの感じがします。

No.13 8点 大泉耕作 2011/07/22 14:08
(察しの良い方ならネタバレの危険性もあります)
 横溝正史の作品で様々な人の評価を見たのですが「人間関係がドロドロしている」ということを予め知っていて読み進めていきましたが、ここまでドロドロしていると横溝慣れした僕でもなんだかたまらく憎悪を催します。
 物語中半まではいつもの横溝先生だったのだけれど最後のネタバレで横溝の作風が一風変わったンじゃないか・・・? と、物語のあちこちに証拠を提示してきた横溝の今までの本格探偵を踏まえたならある意味、この作品は横溝作品でも珍しくメタミステリ的なトリックを応用していたところが、そう錯覚させたのかも知れません。
 「物語自体」に奇怪なトリックは登場しますが、大した驚愕は受けません。しかし、最後のトリックは作品をひっくり返してしまうのです。そこでこの物語の本当の驚愕を読者は知ります。ただ、そのトリックのために読者は犯人を「読みちがえる」と同時に、その「読みちがい」が文章を僕らに提示させたためのものということになっているのですが、それがアンフェアだという方もいます。
 ぼくの場合は事前用意のこの作品のことを、評価を見て調べてみると「これはアンフェアじゃないか?」と多々耳にするのですが、たしかにフェアはフェアなのですが、そんなのアリか! って、横溝ファンの僕でも正直、作品を読み終わったあとにそう思わずにはいられないトリックです。ただ、そのトリックに向けて物語の終盤にしっかり伏線も張ってあり一応フェアなのです。だから、良い目線から見れば前例のない大規模なトリック。しかし、疑問を感じずにはいられない方にとってはアンフェアとなりうる、微妙なところにあります。
 この型破りでスッキリしないトリックは文中ではなく物語自体にも伏線が張ってあるので未読の方はよく読んでいただきたい。一度読んだ方ならご存知ですが、登場人物から物語も最後の唐突な展開も狂気じみています。そして、『文章』も引っ張られるように狂いだします。そのためだか、何やら金田一耕助という男もいつもと違う感じがしてならないのです。
 余談ですが、この作品を僕がまだ読んでいない時から調べているうちに金田一耕助があまり登場しない一人称型の小説だということがわかりました。「ええ、出ないの・・・?」僕もあの飄々とした金田一さんが出ないから、横溝正史の事件は全体的に暗いから金田一さんみたいな人がでないとなんだか不安でした。「八つ墓村」や「三つ首塔」も一人称形式で事件は進みましたが、金田一さんが時々現れるので何の不快もなく物語は決着しました。しかし、この物語は違うのでは・・・? と心配する方がいらっしゃいましたら、「大丈夫です」と一言。事件の中心となる探偵作家の男と古神家の男のキャラクターが色を出しているので、寂しい思いはしません。ただ・・・。読み返すときにはその安心も束の間かもしれません。
横溝作品の中でもあまりにトリッキーな作品です。
しかし、首斬るなら古谷のドラマのように腕も斬ったほうがと思うこともありますが、傑作です。

No.12 6点 E-BANKER 2011/01/30 22:18
金田一耕助シリーズ。
他の有名作品に埋もれがちですが、横溝作品のガジェットをこれでもかと詰め込んだ作品の一つ。
~古神家の令嬢八千代に舞いこんだ「我、近く汝のもとに赴きて結婚せん」という奇妙な手紙と男の写真は陰惨な殺人事件の発端だった。卓抜なトリックで推理小説の限界に挑んだ作品~

まず、例の「アクロイド殺し」との関連性云々についてですが、個人的にはあまり気になりませんでした。
確かに、唐突にネタバレが行われるので、一瞬「エッ?」という感覚には陥りますが、読み慣れたファンが素直に読んでいれば、ミステリー的に真犯人足り得る人物は相当限定されるはずですし、まぁ想定の範囲内と言えなくもありません。
次に「首切り」についてですが、当然ながら「被害者は本当は誰なのか?」という魅力的な謎を構成させるための条件になっているわけです。
ただ、本作については、ここがかなりシンプルなトリックのため、あまり効果的ではなかったかなと・・・
加えて気になったのは、「指紋」が全く無視されていること。この時代でも指紋捜査は存在してますよね?(もちろん、現在ならDNA鑑定等もあり、孤島や嵐の山荘でない限り首切りトリック自体不可能ではありますが)
トータルでみて、非常によく練られた作品という評価でいいとは思うのですが、個人的な期待感にはやや達しなかったということで、こんな評点になっちゃいました。
(変人たちの間で渦巻く愛憎劇というのが、まさに「横溝!」という感じですよねぇ)

No.11 7点 メルカトル 2010/06/25 23:39
もしあのトリックが前例のないものだったとしたら、間違いなく満点をあげるのだが、残念だなあ。
しかし本作は、首なし死体=入れ替えトリックのお手本としての評価は高いと思う。
また、金庫に保管された日本刀の謎は見事であり、そこから犯人を推理する事もできる、とてもよく出来たアリバイトリックである。

No.10 8点 だい様 2009/10/01 12:34
金田一耕助シリーズ

予備知識なしで読んだ為素直に楽しめました。
また横溝正史氏がこういう作品を書いていた事にも驚きを感じました。

No.9 5点 江守森江 2009/09/21 00:47
※大多数の方々には完全ネタバレです。
諸処でクリスティー「アクロイド」の技法を用いた作品だと語られているので伏せません。
この作品が書かれた時には翻訳され日本人にも「アクロイド」が読めた事。
更に前に同じ日本文学の巨匠・谷崎潤一郎が使用していた事を踏まえると、当時の日本探偵小説界はアイデアの転用(パクリ)に非常に寛容で、大横溝をして何度も“この技法”を使用した事が残念でならない。
その為に基本採点が低くなるのは仕方がない。
根深い憎悪を描いた人間描写、首切り&すり替えトリック、二番煎じである事を感じさせない書き出し等々を評価し同系統な高木「能面〜」より1点高く採点した。
※この技法を使用した後続作品の評価については「アクロイド」の書評で触れたので御参照下さい。


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