皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 本格/新本格 ] 悪魔が来りて笛を吹く 金田一耕助シリーズ |
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横溝正史 | 出版月: 1956年01月 | 平均: 7.16点 | 書評数: 32件 |
東京文芸社 1956年01月 |
講談社 1970年01月 |
角川書店(角川グループパブリッシング) 1973年02月 |
講談社 1975年01月 |
KADOKAWA / 角川書店 2001年10月 |
出版芸術社 2007年04月 |
No.32 | 6点 | パメル | 2024/02/17 19:31 |
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宝石商で十名が毒殺されて宝石が奪われた天銀堂事件。事件の容疑者は椿元子爵。彼は謎の失踪をし、娘・美彌子宛てに屈辱に耐えられないという遺書を残し、自殺死体が発見される。しかし、死んだはずの椿元子爵の目撃情報を受けた美彌子は、金田一耕助に調査を依頼する。
椿家では死んだ子爵を降霊術によって呼び出そうという催し物が企てられ、そこに金田一耕助も同席するように依頼される。そして降霊術の最中に事件は起きる。それは恐るべき連続殺人事件の幕開けであった。実際にあった帝銀堂事件を探偵小説的に事件を再構築したらどうなるかと言わんばかりのプロット。 天銀堂事件、椿家での事件、椿家内部の人間関係など構造がかなり入り組んでいる。全編において響き渡るフルートの音色、楽曲名「悪魔が来りて笛を吹く」。この曲が実に重要な意味合いを持ち、結末に衝撃的なものを用意するに至っている。 読み物として面白いことは間違いないのだが、使われているミステリ的要素は、密室トリックを含めて特筆すべきところはなく不満な点がいくつか。全編を覆う異様なムードに浸るのが、この作品を楽しむのに一番いいのではないだろうか。 |
No.31 | 10点 | 密室とアリバイ | 2023/05/02 19:38 |
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読んだ時期と前評判の影響は大きいだろうけれど「本陣」や「獄門島」より圧倒的にこれが好き |
No.30 | 6点 | 虫暮部 | 2021/09/23 10:31 |
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フルート曲の秘密は素晴らしい。美禰子と菊江のキャラクターもいい感じ。
しかし事件の展開は今一つ吸引力に欠ける。全然強調されていないので、トリック解明のシーンに至るまで、密室があったこと自体忘れていたよ。 何度か登場する“いかの墨のようにどす黒い”と言う表現はどーなの? |
No.29 | 8点 | mediocrity | 2019/09/26 06:41 |
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<ネタバレあり>
『犬神家の一族』と同じく、トリックよりプロットの妙が光る作品だと感じました。密室殺人はトリックというよりは流れ的にああなったという感じですし、砂の上の火焔太鼓の絵のトリックも金田一の帽子の一件と絡めたからこそ面白い。 須磨、明石、淡路への捜査行はトラベルミステリの原型みたいで、この作家のイメージと違ってちょっと意外でした。 出生の秘密は正直食傷気味ですが、今回はかなり思い切った設定で驚きました。まあ、読んでいてあまり気持ちの良いものではなかったですが。ただ、痣の遺伝はちょっと都合が良すぎるのではないかと感じました。 |
No.28 | 5点 | ALFA | 2018/11/29 17:21 |
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絢爛たるディテールに比べて構成は弱いと思う。全編を通して、犯人とその動機をしっかり暗示してほしかった。そもそもこの動機のもとになる行為、確かにタブーではあるがそれほど悪魔的かな?
共犯者の造形もご都合主義的だし、それまであまり目立たなかった人物(犯人や共犯者)が終盤になって急転直下注目されるというのは、あまり好まない。 おどろおどろしいディテールや帝銀事件的モチーフも今となってはいささか陳腐。むしろストーリーと関係ない情景描写がほっこりする。 余り難しく考えずに作者のサービス満点のギミックを楽しむならいいかも。 |
No.27 | 5点 | レッドキング | 2018/06/19 11:24 |
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「爺やはイカン!」(「虚無への供物」中のセリフ) あとフルート吹くのに使う指なんて分からん |
No.26 | 5点 | 文生 | 2017/11/06 13:40 |
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岡山を始めとする地方ものに名作が多い金田一シリーズにおいて東京ものの最高傑作という位置付けの作品。確かに、本作は没落貴族の悲哀をメインに12人を毒殺したことで有名な帝銀事件を絡ませ、作者のストーリーテリングぶりが存分に発揮された力作に仕上がっている。しかし、物語の充実ぶりに対してミステリーの骨格は案外貧弱でどうしても物足りなさが残ってしまう。密室トリックなども全く面白みに欠け、無理に組み込む必要はなかったのではないだろうか。 |
No.25 | 9点 | 青い車 | 2016/05/16 22:32 |
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まったくの私事ですが、ここ最近は就職活動であまり本を読んでおらず、投稿が減っていました。先日、ようやくひとつ内定が頂けたのでまた少しずつ書評していくつもりです。お目汚しですが宜しくお願いします。
スケジュールに余裕ができたこともあり、まずこの『悪魔が来りて笛を吹く』を再読しました。記憶を補いながらの二度目の読書も十分楽しめました。この作品の書評で、ミステリーとして見るべきものが少ない、もしくはアンフェアといったご意見もけっこうあるようです。でも『悪魔が来りて~』の評価すべき点はそういう些末なことではないと僕は言いたいです。消えた椿英輔子爵をめぐる謎、密室殺人、東京を離れての捜査など、ストーリーは金田一シリーズ中出色です。後半に行くほど加速度的にサスペンスが増していきます。風神・雷神、悪魔の紋章、レコードなど小道具の扱いもすばらしく、文句なし。 ただし、トリックの一部にタブーともいえる要素があるのが唯一マイナス・ポイントです。しかし、それを差し引いても全体からみなぎる雰囲気の形成は見事の一言で、おぞましい真相、鮮烈な幕引きに至るまで横溝のテイストがふんだんに詰まった傑作と思います。 |
No.24 | 4点 | nukkam | 2016/04/24 22:13 |
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(ネタバレなしです) 1951年発表の金田一耕助シリーズ第8作の本格派推理小説です。横溝には「悪魔」をタイトルに使っている作品がいくつかありますがその中でも本書は最もそれにふさわしく、特に第16章の最後の文章には戦慄さえ感じます。謎解きは不満点が多く、ある手掛かりが文章では読者に伝わりにくいものであることや、何よりも淡路島の事件の真相は反則技にしか感じられません。しかし戦後の混乱期と没落貴族の描写はさすがですし、インパクトのある悲劇ドラマとして読ませる作品です。 |
No.23 | 8点 | ロマン | 2015/10/20 17:55 |
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旧華族内で起こる連続殺人。近親相姦という禁忌も退廃的な雰囲気に拍車をかけていてより一層物語が際立つ。犯人はそりゃ悪魔になるわって感じで被害者こそが本当の悪魔にしかみえなかった。救いのない話の中で美禰子が最後に見せたたくましさはただ一筋の希望であったように思う。最後の最後でタイトルの意味がわかってぞくりとした。 |
No.22 | 7点 | HORNET | 2015/03/08 19:36 |
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密室トリック,なかなか納得◎。しかもこの厚みと展開の中ではそれはあまり重要ではなく,純粋なフーダニットで◎。しかしこの人の作品を読んでいると,華族とか名家とか,そういう高尚な家柄の人間は何か歪んでいるという偏見をもってしまう。
後半怒涛の勢いで分かってくる新事実が多く,飛躍的な想像やなんとなくの勘でしか真相を事前に看破できる感じはないとも思うが,「悪魔が来たりて…」のフルート曲に隠されていた真実には思わずうなった。そこで+1点してこの点数。 横溝作品にしてはすらすら読める印象が強かった。 |
No.21 | 6点 | ボナンザ | 2015/01/22 21:55 |
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タイトルでまず人を引きつける傑作の一つ。
岡山もののような舞台のおどろおどろしさではなく、血縁を用いたストーリーも秀逸。 |
No.20 | 7点 | 大泉耕作 | 2012/06/02 22:07 |
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横溝正史生誕百十周年を記念して、角川文庫では当時の杉本一文による、あのおどろおどろしいカバーが復刻した模様。黒背表紙の表紙と比べボヤけた輪郭が目につきますが、自分は十冊買いました。
代表作『八つ墓村』や『犬神家』などの一連の作品と比較すると、実にドロドロとした血縁を真正面から捉えた作品と言えます。 これは以前も同じようなことを書きましたが、当時、天銀堂事件のもととなった帝銀事件、資料を見ると昭和二十三年一月十六日に犯人と思しき男性が逮捕され、またこの小説は昭和二十六年の十一月から連載が開始されるところを見て、わずか三年しか経っていない。当時の日本で希に見る全国に手配されたモンタージュ写真が各地で尾を引き、また容疑者の容疑確定が決定づけされていないために、モンタージュ写真の「そっくりさん」は、肩身の狭い思いをされ、いまだに巷の話題になっていたと思われます。そのため、かの帝銀事件を模した天銀同事件が小説化されるというのだから、この作品が多少なりとも話題にならない筈はない。 それを見透かして、横溝はこの作品が、かなり多くの人達に読まれることを予想して随分と読者を意識して描いたような節が数多く見られます。必然性に欠けた密室殺人、あちこちへと飛びまわる旅行、風神、雷神の役割、死んだ筈の男の登場など、必然性に欠けた要素が多分に詰まっているふうに思います。ミステリ的にはそれが大分マイナスになっていることは否めません。 個人としては、こういう面白い読み物は最近じゃ見当たらないと思う故、あまり批判したくない思いが強いのですが・・・。 |
No.19 | 7点 | いいちこ | 2012/02/04 18:07 |
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本格ミステリとしては瑕疵が多く脆弱な印象。
第一の殺人を密室とする必然性の乏しさ、真相に辿り着くプロセスがロジカルに説明されていない、「あざ」の遺伝、帝銀事件に範を取った冒頭の事件がご都合主義に過ぎる・・・ ただ、イントネーションの相違からの推理や、タイトルと同名の曲に秘められた謎はさすがのキレ味。 明かされた陰惨な真相も極めて衝撃的で、多くの伏線を回収し犯行動機を納得させるに十分なもの。 それでいて若干の希望が垣間見えるラストの読後感もよく、読み物としての完成度の高さを評価 |
No.18 | 6点 | りゅう | 2011/10/23 14:45 |
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再読です。犯行方法やアリバイなどには特に見るべきものはなく、隠された人間関係の謎を解くことが主眼の作品です。
悪魔とは誰のことか、「悪魔が来りて笛を吹く」という曲の意味、タイプライターの打ち間違い、風神像と雷神像、火焔大鼓の紋章が換気窓から見えていたかどうか、偽電話と偽電報を誰がしたのかなどの細かい謎が盛り込まれ、最後まで読者の興味を引っ張ていくストーリー展開はさすがと言えます。金田一耕助が事件の謎を解明するために神戸や淡路島に遠征するくだりは、個人的によく知っている地名が出てきて楽しめました。人間関係の謎に関する真相は作者らしい意外なものですが、全体の真相はあまりすっきりとしていません。 (完全にネタバレをしています。要注意!) 犯人が椿子爵の邸宅に潜り込んだ経緯や、後に天銀堂事件を起こす飯尾と犯人との関係がいい加減で、ご都合主義に感じられます。 また、犯人が最後の告白で語っているように、犯行は場当たり的ですきがあり、飯尾殺しの際のアリバイを調べれば金田一耕助の登場がなくても犯人を逮捕できていたのではないでしょうか。 最初の殺人が密室状態になったのは、玉虫元伯爵が怪我をした理由を思案するために自らドア・閂・掛け金をかけたためなのですが、密室にした行為とその理由との間につながりが感じられません。 |
No.17 | 7点 | 空 | 2011/01/23 10:30 |
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謎解きの面から見れば、犯人やトリックの意外性は、この作者の他の有名作品に比べるとたいしたことはありません。他の方も指摘しているように、最初の殺人を密室にする必要も感じません。密室になる段取はまあ納得できますが、血の火焔太鼓なんてややこしいことをし過ぎです。しかもごく早い段階で、紐を使えばなんとか密室にできると言ってしまっているのですから、不可能興味はありません。
ある人物が嘘をついていることは、『本陣殺人事件』や『獄門島』事件を手がけた金田一耕助なら気づいて当然ですが、少なくとも発表当時は一般的でない知識がないとわからないので、フェアとは言えません。 などと悪口を書いてはいますが、小説としての構成はさすがです。晩年の数作を除くと、作者の最も長い作品のひとつですが、冗長さは全く感じられません。最後の殺人も、結局こうならざるを得なかったのだろうなと思えます。 映画やドラマ版は見ていないのですが、実際に作曲されたタイトル曲の演奏を視聴すれば、ラスト・シーンはよりインパクトがあるでしょうね。 |
No.16 | 6点 | 臣 | 2010/12/27 09:46 |
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帝銀事件を模した「天銀堂事件」の事件場面がいつまでも記憶に残っている。「悪魔の手毬唄」ほどではないが十分に楽しめた。
今年は横溝を再読しようと思っていたが、他の未読作品ばかりを追いかけてほとんど手が出せなかった。来年こそはぜひとも。 |
No.15 | 7点 | E-BANKER | 2010/09/05 15:22 |
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金田一耕助シリーズ。
作者中期の代表作の1つといっていいでしょう。 『悪魔ここに誕生す』という有名なフレーズが頭にこびりついて離れません。まさに、本作はこの「悪魔」の意味を解明するための物語なのでしょう。 「出生の秘密」というギミックは、作者の有名他作品にもたびたび登場してきますが、第二次大戦前後の波乱の時代とはいえ、何とも言えない偶然=運命のいたずらに心を打たれます。 氏の作品らしく、途中のそこかしこに伏線があからさまに明示されているので、純粋な「謎解き」としてはやや不満が残りますし、神戸~須磨~淡路島の場面はもう少しあっさりしていてもよかったような気がします。 本作は映像作品(TV)でも何度か見ましたが、やはり文書よりも映像でより栄える作品なのかもしれません。 |
No.14 | 8点 | メルカトル | 2010/08/07 23:49 |
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天銀堂事件の真相、無駄な密室など、細かい疵はあるものの、様々な小道具を駆使しての雰囲気作りは素晴らしい。
横溝作品の中にあっては異色作かもしれないが、それだけに貴重な存在ではないかと思う。 犯人が黄金のフルートを吹く場面では嫋々たる切ない余韻を残す。 暗い話ではあるが、それなりに救いもあって印象的なラストだと思う。 |
No.13 | 8点 | kowai | 2010/02/14 14:53 |
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金田一ものは「このことが後に思うと・・・」と割と伏線を張ってくれていることが多く、読んでるときにはその意味がわからないのですが、もやもやしながら読み続けると最後に全部が繋がって明らかになる、という構成が実に爽快感がありますね。でも、時代の違いのせいでしょうか、殺人の動機が理解できません。。私にモラルがないからでしょうか。。。あと、楽曲に鍵があるって言われてもわかんないでしょ、アレは。 |